ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.18

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.18】2012年5月期第1四半期業績レポート
取材概要「フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行する際の会員引継ぎが可能になる事で、スマートフォン向けビジネスの拡大が業績に素直に反映され・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年10月18日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(10/4現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
8,200円 377,000株 3,091百万円 5.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
130.00円 1.6% 450.93円 18.2倍 7,656.73円 1.1倍
※株価は10/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本エンタープライズの2012年5月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、合言葉は「コンテンツで勝つ!」。音楽やゲーム・デコメ等のコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営やシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、中国で第3世代携帯電話(3G)向けサービスの普及を睨み、各種コンテンツを配信している他、携帯電話の加入者数が急拡大しているインドでは現地法人を設立し、本格的な参入に向けて準備を進めている。
グループは、レーベル事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、因特瑞思(北京)信息科技有限公司、北京業主行網絡科技有限公司等の連結子会社5社と、瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社2社。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトや、mixi、モバゲーTOWN、GREEといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へ自社開発したコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリア等から受取っている。中国・インドをターゲットとした海外事業にも取り組んでいる。
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバネットワークの運用・監視・保守、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告(アフィリエイト広告:携帯電話販売代理店との協業による成功報酬型コンテンツ販売)、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
<宇宙空間をイメージした無料ライブ壁紙(動く壁紙)の配信>
Android端末(OS2.1以上)で楽しめるライブ壁紙アプリ「わくわく宇宙遊泳」(英名:A Space Odyssey)の配信を開始した。宇宙空間をイメージした無料ライブ壁紙で、画面をタップするたびに、カラフルなキャラクター(計7種類)が宇宙空間に登場する(稀に、大きなサイズのキャラクターが登場する事もある)。画面上でキャラクターを指で弾くと、キャラクターの動くスピードが加速する。
 
 
 
2012年5月期第1四半期決算
 
 
前年同期比13.3%の増収、同66.8%の経常増益
売上高は前年同期比13.3%増の6.3億円。アフィリエイト広告(以下、店頭アフィリエイト)、物販、スマートフォン向け受託開発等を中心にソリューション事業が伸びた他、電子書籍や女性向け健康サイト「女性のキレイ・リズム」の寄与でコンテンツサービス事業の売上も増加した。利益面では、店頭アフィリエイトや物販の増加に伴う原価の増加をコスト効率の改善で吸収し、営業利益が同61.6%増加。持分法投資利益の計上等で営業外損益も改善した。
 
 
コンテンツサービス事業は売上高が前期比10.0%増の3.0億円、セグメント利益が同11.1%増の1.2億円。電子書籍や女性向け健康サイト「女性のキレイ・リズム」の寄与でその他の売上が増加した他、メール・カスタムも堅調に推移。海外事業の売上も増加した。ソリューション事業は売上高が同16.6%増の3.2億円、セグメント利益が同18.6%増の0.8億円。広告(店頭アフィリエイト)やCD販売を中心にした物販の好調に加え、スマートフォン向けを中心にソリューション(受託開発)も回復。広告や物販の増加に伴う原価の増加をコスト効率の改善で吸収し利益率も改善した。
 
 
 
広告や物販の増加等で売上原価が増加した他、スマートフォン対応や海外事業における開発費等で販管費が増加したものの、増収効果とコスト削減努力で営業利益率は11.0%と前年同期(7.7%)比3.3ポイント改善した。
 
(2)財政状態
配当金や法人税等の支払いに伴う現預金の減少で第1四半期末の総資産は31.8億円と前期末比57百万円減少。科目別では、現預金の他、未払法人税等や利益剰余金が減少した。有利子負債に存しない健全な財務体質を誇り、第1四半期末の自己資本比率は90.7%。
 
 
 
事業別の施策と進捗状況
 
(1)国内事業
①コンテンツサービス事業
新たな成長市場として期待されるスマートフォン市場の拡大を見据え、スマートフォンの公式サイトにおける会員の引継ぎやキャリア課金への対応を進めている。

具体的には、急速に普及が進むスマートフォンだが、キャリア側の対応の遅れで、これまでは有料会員(有料コンテンツ利用者)がフィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンへ移行する際に、会員の引継ぎができなかった。このため、同社を含めたコンテンツプロバイダー各社は会員流出を余儀なくされたが、会員の引継ぎが可能になる今後は、スマートフォン向けビジネスの拡大が業績に素直に反映されるようになってくる。

加えて、年末にかけてNTTドコモやKDDIでスマートフォン向けコンテンツ(アプリ)のキャリア課金も始まる。これまではキャリアの課金体制が整備されていなかったため、スマートフォン向けは無料が大半で、コンテンツプロバイダー各社は広告収入を主な収入源としてきたが、キャリア課金が始まる事でアプリの利用に応じて収益を享受できるようになる。アフィリエイト広告に対する報酬も、無料アプリよりも有料アプリの方が高額なため、キャリア課金の開始はアフィリエイト広告(店頭アフィリエイト)を手掛ける同社にとっても朗報だ。
 
同社提供の有料コンテンツの一例
 
 
この他、Android向けアプリマーケット「Ameba AppMarket」で配信しているライブ壁紙「ぷかぷか散歩」、女性のライフスタイルをサポートする「女性のリズム手帳」、最新Androidアプリを紹介する「TAP me」、目覚ましアプリ「めざメロ♪」(Twitter対応アラーム)、ライブ壁紙アプリ「わくわく宇宙遊泳」といったアプリのグローバル市場展開や流通促進にも取り組んでいる。
 
②ソリューション事業
当事業においてもコンテンツサービス事業と同様にスマートフォン対応を進め、企業向けソリューションの強化や携帯電話販売代理店との協業強化に取り組んだ。
企業向けソリューションの強化では、サイトやアプリの制作にかかる受託が増加した他、新規クライアントの開拓が進展。スマートフォンに関するユーザーサポートやデバッグサービスも増加した。また、携帯電話販売代理店との協業強化では、来店顧客の囲い込み支援策として、スマートフォン向けの店頭アフィリエイトや物販を強化した他、スマートフォンに関する「サポート業務」の支援を強化する事で店舗運営の効率化を支援した。
 
 
(2)海外事業
海外事業においては、中国及びインドで3G(第三世代携帯電話)端末の普及を見据えた取り組みを進めた。
 
①中国
2G、2.5G向けゲームコンテンツを配信しつつ、3Gの普及を見据え、事業ドメインを電子コミックの配信サービスと位置付け、中国の作家や出版業界と連携しながら携帯電話向け電子コミックの配信を行っている。
事業強化の一環として、9月に、100%子会社である因特瑞思(北京)信息科技有限公司及び北京業主行網絡科技有限公司が、中国大手の国営総合出版社 中国軽工業出版社(中国北京市)の100%子会社である中軽(北京)網絡出版有限公司(中国北京市)と、電子コミック配信に関する業務提携で合意した。同社グループは、この提携を活かし提携先の漫画の版権収集力を活用し、電子コミックのラインナップを拡充していく考え。
 
 
また、モバイル向け電子コミックストア 「漫魚」において、無料版コミックによる広告収入モデルの構築にも取り組んだ。「漫魚」とは、10年12月にオープンした同社独自の課金システムによる電子書籍配信の有料サービス(Android端末はもちろん、2G・2.5G携帯端末にも対応し、通信キャリアを選ばない)。国通信キャリアであるチャイナテレコムの「天翼空間」や携帯電話メーカーである「レノボ」の「聯想応用商店(Le Store)」等の有力プラットフォームを配信先とし、配信タイトル数は約250タイトルを数える。
 
②インド
インドは契約携帯電話が8億件を超え、中国(9億件)に次ぐ世界第2位の携帯電話大国。現在も、毎月1,716万件規模で増加を続けており、携帯電話向けモバイルコンテンツ市場は、今後、3G端末の普及を追い風に飛躍的な広がりが期待されている。
こうした中、同社はインドにおいても電子書籍の配信を中心に事業を進めていく考えで、この一環として、9月にインド子会社であるNE Mobile Services (India) Pvt. Ltd.が、インドのライフスタイルマガジンの出版大手 MAGNA PUBLISHING CO. LTD(インド ムンバイ。以下、MAGNA社)と、電子書籍の独占配信に関する業務提携で合意した。インド子会社は、既にボリウッド関連アプリ「Bollywood on the GO」や占いアプリ「Astro on GO」等を配信しているが、今回の提携で、MAGNA社が発刊している「STARDUST」等主力7雑誌(約100万部発行)の電子書籍を独占配信する事になる。
 
 
 
2012年5月期業績予想
 
上期及び通期の業績予想に変更はなく、通期で前期比19.4%の増収、同6.0%の経常増益予想
コンテンツサービス事業では公式サイトの会員を維持しつつ、ソーシャルアプリやスマートフォン市場でのマネタイズ化(現金化、収益化)を図る。一方、ソリューション事業ではスマートフォン向けの店頭アフィリエイトやソリューション(受託開発)の増加が見込まれる。上期はスマートフォン対応や海外事業における開発費が利益を圧迫するものの、下期はこれら先行投資が収益化。通期では営業利益が2.8億円と前期比4.9%増加する見込み。配当は1株当たり11/5期と同額の130円を予定している。
 
 
 
今後の注目点
フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行する際の会員引継ぎが可能になる事で、スマートフォン向けビジネスの拡大が業績に素直に反映されるようになってくる。また、スマートフォン向けアプリのキャリア課金が始まる事も、店頭アフィリエイトを手掛ける同社にとっても朗報だ。加えて、同社が強みを有するモバイル関連の受託開発がスマートフォン向けをけん引役に動き出してきた事も明るい材料。10/5期を底に回復過程にある同社の業績だが、ミクロ面での好材料は多く、来期以降、回復速度が加速するものと思われる。