ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.19
(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 |
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企業名 |
株式会社キリン堂 |
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代表取締役会長兼社長 |
寺西 忠幸 |
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所在地 |
大阪市淀川区宮原4-5-36 |
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決算期 |
2月 |
業種 |
小売業(商業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2011年2月 | 100,465 | 1,118 | 1,537 | 188 |
2010年2月 | 104,964 | 1,232 | 1,527 | -443 |
2009年2月 | 106,695 | 1,781 | 2,030 | 500 |
2008年2月 | 106,098 | 2,321 | 2,530 | 804 |
2007年2月 | 72,803 | 1,312 | 1,651 | 577 |
2006年2月 | 66,690 | 1,308 | 1,574 | 753 |
2005年2月 | 58,165 | 745 | 985 | 414 |
2004年2月 | 48,281 | 1,084 | 1,283 | 607 |
2003年2月 | 39,144 | 1,095 | 1,215 | 577 |
2002年2月 | 33,274 | 868 | 982 | 253 |
2001年2月 | 28,192 | 718 | 742 | 341 |
2000年2月 | 25,537 | 535 | 596 | 309 |
株式情報(10/12現在データ) |
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今回のポイント |
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会社の特色 |
関西基盤のドラッグストアチェーン…関西ではトップクラス
小商圏に立地する地域密着型のドラッグストアをチェーン展開する。当社は関西を中心に北陸や四国、関東にも店舗展開している。ドラッグストアを主力に、調剤薬局にも力を入れている。2011年8月15日現在で、当社直営店が233店、FCが3店、ジェイドラッグが2店、ニッショードラッグが76店のグループ計314店を展開する。当社はこれまでM&Aを積極的に行っており、91年に調剤薬局チェーンのメディネットを買収(04年に吸収合併)、96年にはジェイドラッグ、ニッショードラッグを子会社化している。当社は、関西を基盤に成長、6,000~8,000世帯の小商圏でドミナントを築こうと力を入れ、関西では業界トップクラスとなっている。当社とニッショードラッグの違いは、当社が売場面積300坪の郊外大型店(スーパードラッグストアと名付けている)を主力としているのに対し、ニッショードラッグは売場面積150坪の比較的小型な店舗を住宅地に展開している点だ。さらにニッショードラッグは当社に比べ、雑貨等の売上構成比が高く、医薬品、健康食品、化粧品という粗利率の高い部門のウエイトが相対的に低い。今後はこのニッショードラッグでも医薬品、健康食品、化粧品部門の拡販に力を入れていく。 健美舎は1973年に設立され、健康食品の企画・開発を手がけてきた。現在は主に、当社のPB商品となる健康食品や化粧品等の企画・開発を手がけ、生産は外部にアウトソーシング(OEM)している。 会長が社長に復帰…「顧客第一」への仕組み作りと社員教育にシフト
ドラッグストアの事業展開において、3年前までは売上志向の拡大戦略をとってきた。売上拡大のための商品戦略や売場戦略を強めすぎたため、顧客への本来のサービスという点では課題が蓄積していった。さらにこの間、市場は変化し、ドラッグストア業界は成熟色を強めていった。顧客第一の質的サービスを基本とする当社にとって、創業者である寺西忠幸会長は売上拡大だけではこの局面を乗り切れないと判断し、社長に復帰することを決断した。2年前に会長兼社長に就任し、以来事業の見直しに力を入れてきた。
未病、セルフメディケーションへのサービスを目指す…「楽・美・健・快」を追求
寺西(会長兼)社長は創業以来、人々が「未病」、つまり病気にならないように早めにサポートすることを経営理念としてきた。一人ひとり自らが健康に配慮して適切な対応をするというセルフメディケーションのためのサービスを心掛けてきた。それによって、生活を楽しく美しく健康で快適に過ごせるようにと「楽・美・健・快」を事業の基本としている。寺西社長の考えでは、未病(病気になる前の状態でいろいろ手を打つこと)と小商圏がキーワードである。その中で、単に規模を追及した成長志向ではない経営を目指そうとしている。そのためには、社員の意識改革が必要であり、そのための社員教育に力を入れている。例えば、店頭での「ありがとう、助かったわ」という感謝の言葉が、社員の意識を変え、そこから新しい社会的価値が生まれる、と強調している。ビジネスモデル(企業価値創造の仕組み)を抜本的に変えようという試みである。 M&Aも積極化…ニッショードラッグなどを子会社化
2006年にニッショードラッグを子会社化した。同じ関西を中心としながら当社よりも小型の店で住宅地に立地している。そのほかにもM&Aを手掛けているが、現状では一人当たり売上高という生産性指標でみると、やや人員が多い。これに対して、寺西社長は人員を意図的に削減するのではなく、人を活用して拡大均衡にもっていこうとしている。一方、関西地域での競合をみると、従来は当社グループが他社を引き離してトップであったが、2位のアライドハーツ・ホールディングス(以下、アライド)が合併し、ココカラファイングループに入った。共同持株会社であるココカラファインに属する旧アライドとセガミメディクスを合計すると当社グループに肉薄してくる。関西では当社グループがトップであったが、今年からは当社グループとココカラファインのトップ争いになる。 市場成熟、業界再編の中で構造改革を推進
寺西社長はいかに、お客様に向き合い、サービス向上に努めるかに力を入れており、そのための構造改革に取り組んでいる。さらにここ数年、顧客第一主義を徹底するため、主体性をもった従業員を育てる社内教育を行っている。構造改革では、店舗内の無駄な作業に時間を費やすのではなく、その時間を顧客への接客や説明に対応できるように作業改善を行うため、売場改装を進めている。この店舗作業改善をバックアップするのが新物流センターと、今期導入が始まった需要予測型の自動発注システムだ。自動発注システムも1個売れたら1個発注するのではなく、予想販売数量を一括で発注することで補充頻度が下がるため、作業効率の改善が期待される。 現在、当社は小商圏に合った店作りで、繰り返し客に来店していただけるような仕組み作りを徹底しようとしている。月次の売上をみると、既存店はこの2年間、ずっと前年割れを続けてきたが、当期に入り変化を見せている。売上も大事だが、それ以上にビジネスの仕組みを顧客に向け、付加価値を高めるようにした。それが進展をみせ、売上、利益の落ち込みにも歯止めがかかり、今2012年2月期は大きく上向く方向にある。 地域コミュニティの中核として存在感を高める
当社とニッショードラッグの展開地域は、大阪と兵庫を中心に関西に拡がっている。販売管理費の配賦の仕方にもよるが、粗利率の高い商品部門の売上構成ウエイトを高めることで、営業利益段階での利益貢献が大きくなると考えてよい。また、大阪府高槻市に新しい物流センターを開設し、2010年12月より順次稼動を始めている。これまでの門真市の物流センターは配送センター的な役割だけで、十分な在庫管理機能を持っていなかった。新センターは店舗の棚ごとの納品を可能にし、返品や回収にも対応できる。これによって、小商圏での店舗効率が大きく高まることになる。
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中期3ヵ年計画 |
小商圏のコミュニティをターゲットにする
寺西社長は日本の小売業は抜本的に変わる必要があり、ドラッグストア業界も今までの延長線では経営が続かない、と考えている。小商圏のコミュニティにお店が根付いて、繰り返し来店していただけるような仕組みを一段と強化する必要がある、と強く意識している。6,000~8,000世帯の人々に安心した生活を提供しようというのが基本である。小商圏でのドミナントを形成し、高齢化に対応して地域医療にも適応したサービスの仕組み作りを進めようとしている。厚生労働省の発表によると、がん患者(年152万人)に対し、認知症などの精神疾患患者は325万人に上るとされる。今後、在宅介護がますます必要になってくるだろう。関西でのドミナントを進め、子会社であるソシオンヘルスケアマネージメント(以下、ソシオン)と協働で、医療モール併設型調剤薬局の開設や在宅介護支援を推進し、地域医療に貢献できる企業グループを目指そうとしている。
連結経常利益30億円を目指す…342店へ
今回の中期3カ年計画(連結)では、前期の経常利益15.3億円に対して、今期18.5億円、2年目26.7億円、3年目32.2億円を目指している。そのための施策の基本は、既存の事業で収益を上げていくことである。新たな布石としては、ソシオンとの協働による医療モール併設型調剤薬局の開設や在宅介護支援、マツモトキヨシHDとの連携などが注目される。中期計画では新規出店を1年目11店、2年目11店、3年目11店を予定し、3年後には342店となる見通しである。この間、全社的な販管費はおさえて、粗利率の向上により経常利益の拡大に結び付けようとしている。当社グループは毎年3カ年の中期計画をローリングしてきた。09年度の時には2015年で売上高2,000億円、店舗は500店、売上高経常利益率3%という大きな計画を打ち出していたが、2010年度にはこうした中期計画を一旦取り下げた。 従来の売上拡大志向の事業展開ではなく、効率を高めるための内部固めに入ったのである。出店すれば売れるという考えではなく、地域で信頼される店舗作りにシフトする必要があった。チラシで安さを訴求するのではなく、接客の時間をいかに作っていくかに仕組みを変えようとしている。処方せん取扱い店舗は、314店中46店である。既存店舗は調剤スペースを有しているので、クリニックの開業状況を見ながら、処方せん取扱い店舗数を増やしていく方針である。中期3カ年計画では、調剤の売上高を現在の60億円から100億円にもっていくことを目標にしている。 また、当社のPB商品のウエイトは現在商品売上高の8.7%であるが、これを早い機会に10%にもっていきたいと会社側では考えている。健康食品、化粧品、雑貨などでマーケティングを強化していく。 マツモトキヨシHDと連携…PB商品の強化
当社はドラッグストア業界最大手のマツモトキヨシHDとPB商品の開発で連携をとることにした。資本提携や業務提携という強いものではない。当社の強みである健康食品をはじめ、PB商品の企画で顧客志向のものを量産できれば、コストを下げることができ、収益性は高まる。ここを狙っている。まずは互いにメリットのあるビジネスで一定の成果を上げることが先決で、そこがうまくいけば次の展開にも拡がってこよう。マツモトキヨシHDとはPB商品の共同開発、相互供給を行うことで合意している。店舗の立地が両社でさほど競合せず、PB商品のバッティングも少ない。そこでまず既存のPB商品をやりとりして、その後に共同開発に入る考えである。マツモトキヨシHDとの連携について、寺西社長は協業と資本の論理は分けて考えている。マツモトキヨシHDと資本提携してその傘下に入るつもりは全くない。PB商品を共同で開発し、そこで生産効果を出し、コストを下げて、顧客に提供しようとしている。300店規模(当社グループ)と、1,200店規模(マツモトキヨシ)ではボリュームが違うからである。 マツモトキヨシHDとの連携は単純な規模の追求ではない
社会が高齢化、少子化に向かう中で、小売業はより地域密着型であることが求められる。地域密着型における各々の良さを追求していくことになる。成長というコンセプトではなく、改革の推進である。単なるボリュームの追求ではなく、新しい商品開発に力を入れていく。そこで互いの強みを活かすことができれば意義は大きいと考えている。
中国での店舗展開はしばらく様子を見ていく方針
現在、中国において外資系企業が医薬品販売許可を取得するのは非常に困難な状況だ。医薬品のないドラッグストアというのは、成立するとしても当社のノウハウは生きない。よって中国でのドラッグストア展開は暫く様子を見ることとした。当面は、日用雑貨の輸出入に力を入れて、タイミングをみる方針である。当初ドラッグストアを中国で展開したいと考えていた。中国でのビジネスは人がポイントだといわれており、中国の王氏と合弁会社(JV)「麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司」を設立した。合弁会社には王会長(董事長)自身が20%ほど出資している。有力者を入れて、事業展開のスピードと実をとろうという作戦であった。商品の品揃え、物流ネットワークなど課題はあるが、事業拡大の余地は大きい。中国には問屋がないので、商品のロジスティックス(物流)をどうするかを検討している。中国では医薬品の販売だけを行うのではなく、日常生活の便利性も提供できる日本のようなドラッグストアをいずれ展開したいと考えている。 在宅医療で独自展開…ソシオンとの協業
2010年8月、ソシオンを子会社化した。6,000~8,000世帯の小商圏に店舗を出すことによって独自のドラッグストアを成立させると同時に、ソシオンと共に、両社のノウハウを最大限に活かし、医療モールや在宅医療で地域コミュニティの核になろうとしている。ソシオンは医療機関や介護施設との結びつきが強く、さまざまなコンサルティング事業を手がけている。ソシオンの子会社化に当たっては、OPEパートナーズが出資していた株を5.9億円で取得した。ここからのれんが発生するが、当社ではのれんを10年で償却していく。ソシオンは、在宅医療サポートを手掛けている。関東で1,000人、関西で600人、中部で400人をサポートしており、2011年4月からは京都でも在宅サポートをスタートさせている。
新たな医療モールで先行
2011年10月、奈良のあやめ池に医療モール“メディカルコートあやめ池”がオープンした。“メディカルコートあやめ池”は、近鉄グループの駅前環境創造プロジェクト「近鉄あやめ池住宅地」の中枢を担う、医療・健康・福祉ゾーンの一画に誕生した医療モールである。医療モールは最終8つの診療所が開業する予定で、当社は調剤薬局を開局している。来夏には、近鉄あやめ池遊園地跡地に有料老人ホームができる予定で、当社は医療機関と連携し、在宅医療サービスの提供を開始することになる。また現在、複数の医療モール案件を有しており、来年以降も医療モール併設型調剤薬局をオープンする予定だ。いずれも当社の子会社となったソシオンがオルガナイズしているものである。 差別化になる…医療ネットワーク作り
こうした医療モールを手がけたいという企業は多いが、ドクターとの結びつきが強くないと中身の充実した施設(モール)とはならない。ソシオンはこの分野で独自のノウハウを有しており、強みを発揮している。こうしたモールができれば、調剤薬局が必要になり、日用生活必需品を取り扱うドラッグストアが担う役割も大きい。ソシオンと共に、在宅医療のネットワークを強化する。地域住民、患者とドクター、介護施設、調剤薬局を結びつけて、かかりつけの新しい仕組みを作ろうとしている。こうした試みが上手くいくと、当社の差別化戦略としては重大な意味をもってこよう。ソシオンは医療機関や患者の目線でサービスを提供することを考える。薬局、薬剤師とドクターを結び付けるのはもちろんだが、施設在宅も考える。施設とドクターを結びつけ、多面的な展開でサービスの質と効率を高め、ビジネスとして成立させることを考えている。ビジネスとして成り立たなければ、在宅医療といっても掛け声だけになってしまう。京都での介護付有料老人ホームでは、認知症の入居者への対応も考慮する。つまりその方々の物販に対するニーズに応えるということだ。在宅患者、施設サービス、ホームドクター、基幹病院、薬局薬剤師がうまく連携できるシステム作りが求められ、ソシオンはこれを担っていく。このシステム化ができると当社にとって、明確な差別化戦略となる。 |
当面の業績 |
前2011年2月期で業績は底入れ
ここ数年の業績をみると、売上は伸び悩み、経常利益はダウントレンドにあった。2年前からの業務の見直しで、売上志向ではなく、サービス向上にシフトしてきたことが、収益面では必ずしもプラスに働かなかった。しかし、2011年2月期は、減収ながら経常利益は横ばいをキープし、業績は底入れする局面に入った。2011年2月期(連結)は売上高1,004億円(前期比△4.3%)、経常利益15.3億円(同+0.7%)、税引き利益は1.8億円(黒字化)となった。売上高が減収となったのは、主力の当社で、既存店客数が同△5.4%、既存店客単価が同△0.8%となった影響が大きい。商品部門別では、花粉症やインフルエンザが、前年同期に比べて流行しなかったので医薬品部門が同△11.1%となった反面、調剤部門は同+5.1%となった。販管費ではチラシの削減など、コスト削減効果や営業の見直し効果もあり改善した。粗利率は品目別の売上構成の変化や値入改善で、同+0.1%アップとなった。当期純利益は黒字となったものの、減損が4.4億円ほど発生したことなどがマイナスとして響いた。 2012年2月期の2Q累計(8月中間)は好調
連結売上高は前年同期比+2.9%となったが、その主な要因は、当社、ニッショードラッグの既存店売上伸長率がプラス転換(当社が同+1.7%、ニッショードラッグが同+2.3%)したことにある。春先の花粉症関連商品の販売増や、震災の影響による生活必需品の需要増に加えて、調剤部門や健康食品部門も好調であった。また、連結売上総利益率は同1.0ポイントアップし、26.5%となった。花粉症関連薬の販売増、値引きコントロール、調剤のウェイトアップ、新たに連結に入ったソシオン社も寄与した。
重点施策は着実に進捗
構造改革は順調に進んでいる。タスクフォース主導による売場の改装を順次進めており、上期は38店の改装を実施、需要予測型自動発注システムも28店で先行テストを導入し、その結果発注回数は前年同期に比べて△26.9%となった。下期は115店に導入を拡げる。これが進めば在庫の減少にも結びつくはずである。また上期のPB商品の販売実績は、当社8.6%、ニッショードラッグ9.3%と、いずれも前年同期比プラスとなった。さらにマツモトキヨシHDとのPB商品に関する進捗は、相互供給を2Qより開始し、値入改善効果もあらわれている。調剤取扱い店舗数は上期で46店と変化はなかったが、下期は医療モール併設型の大型調剤薬局「北あやめ池店」が10月にオープンしている。
慎重な見方をとって、通期の予想は変えていない
会社側では、上期の業績が大幅上方修正になったにもかかわらず、通期の予想は変えていない。下期の経営環境が不透明であることなどを勘案し、保守的な見方をとっているが増額修正の公算もあろう。
今2012年2月期は20%経常増益を確保へ
2012年2月期は売上高1,041億円(前期比+3.6%)、経常利益18.5億円(同+20.3%)、当期純利益1.2億円(同△36.3%)を見込んでいる。当期純利益が少ないのは、会計上の資産除却債務など、特別損失11億円の発生を織り込んでいるためだ。資産除去債務は会計ルールの変更に伴い、店舗などの資産を除去する時に要する費用を見積もるもので、一時的に大きく発生する。今期は、上期に5店、下期に6店ほど出店を計画している。退店は上期2店、下期に4店ほどあるので、2012年2月期末には純増7店の318店になる見通しである。そのうち1店は、ソシオンが開発をリードする医療モールへの出店である。今期の既存店売上高伸長率は、当社が前期比+2.1%、ニッショードラッグが同+0.1%、を前提とする。 前期まで進めてきた構造改革の3本柱、①タスクフォース主導による売場改装、②新物流センターの稼働、③需要予測型自動発注システムの導入、が効果を発揮してくるからである。本来の顧客サービス向上がどこまで発揮されてくるかは、もう少し見定める必要があるが、今期の業績には期待がもてる。 特別損失は今期で一巡
2010年2月期は、会計ルールの変更に伴うたな卸し評価損の発生により当期純利益ベースで赤字となった。2011年2月期は店舗の減損のほか、退職給付改定損などが発生した。今2012年2月期は、店舗資産の除却債務が発生した。これらによって、表面の税引き利益は低く抑えられているが、キャッシュフローベースでは必ずしもマイナスとはなっていない。こうした大きな影響は今期で一巡するものとみられるので、来期からは正常に戻ってこよう。
財務体質の改善に注力
この2Qはフリーキャッシュフローが増えて現預金が24億円ほど増えた。前述の医療モール併設型調剤薬局「北あやめ池店」の開発は、ソシオンがオルガナイズしているが、資金を投ずるのは当社が調剤薬局を開局するための資金だけである。つまり医療モールの開発で、当社に大きな投資負担が発生することはない。今後の事業展開は、営業キャッシュフローの範囲内に納めることを基本にしており、余裕資金が発生すれば、できるだけ借入金の返済に回していく計画である。
安定配当志向…配当額重視
当社は、配当性向よりも配当額を重視して安定配当を行う方針である。多少業績が変動しても、配当額は安定して確保したいという考えである。過去を見ると、配当額は少しずつ増えてきており、直近3カ年は1株当たり年間20円の配当を実施、今期も年間20円を予定している。これで株主に還元していく方向にある。
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