ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.32

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.32】2012年3月期上期業績レポート
取材概要「11月30日に中国の中央銀行である中国人民銀行が預金準備率(市中銀行から預金の一定割合を強制的に預かる資金の比率)を12月5日から0.5%引き・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年12月13日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 57,880 6,931 6,290 4,483
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(12/2現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
800円 30,414,280株 24,331百万円 19.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 2.5% 93.16円 8.6倍 986.60円 0.8倍
※株価は12/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
フェローテックの2012年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
太陽電池用シリコン単結晶引上装置(台数ベースで世界NO.1)や消耗品である坩堝(世界NO.1)等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。いずれも目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。
グループは、同社の他、生産の中心を占める中国等の他、欧米、ロシア、台湾等に展開する連結子会社21社、持分法適用関連会社6社。
 
<事業セグメント>
事業は装置関連事業、電子デバイス事業、太陽電池関連事業に分かれ、11/3期の売上構成比は、それぞれ48%、12%、37%(この他、ソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等の報告セグメントに含まれない「その他」が3%)。近年、急速な伸びを示しているのが、製造装置や石英坩堝等の消耗品を手掛ける太陽電池関連事業である。太陽電池の材料となるシリコン結晶の製造装置には、同社の製品である真空シールが主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
<中期経営計画「Challenge 1000」>
同社グループでは、創業31年目を迎える12/3期を「第2の創業」と位置付け、太陽電池関連事業とLED関連事業を成長ドライバーとする中期経営計画「Challenge1000」(12/3期~14/3期)をスタートさせた。
 
「Challenge 1000」における具体的な施策
 
 
2012年3月期上期決算
 
 
前年同期比50.4%の増収、同65.8%の経常増益
シリコン結晶製造装置、坩堝、太陽電池用シリコン等の太陽電池関連事業が大きく伸びた他、装置関連や電子デバイスも堅調に推移し、売上高が357.3億円と前年同期比50.4%増加した。利益面では、太陽電池用シリコンの販売価格の下落や、これに伴うたな卸資産の評価減(3億円)の計上で売上総利益率が低下する中、売上の増加に伴う変動費の増加や新工場の立ち上げ及び子会社設立等で販管費が増加したものの、増収効果で吸収し営業利益が35.6億円と同58.9%増加。支払利息の増加やシンジケートローンの設定手数料等で営業外費用が増加した他、固定資産処分損0.7億円や任用契約一括償却損1.7億円など特別損失4.0億円を計上したものの、四半期純利益は19.6億円と同46.3%増加した。設備投資は42.9億円(前年同期20.9億円)、減価償却費は13.7億円(前年同期13.0億円)。為替レート(期中平均レート)は、米ドル81.78円(前年同期91.02円)、人民元12.52円(同13.34円)。
尚、上期の好決算は第1四半期(4-6月)の好調によるもので、第2四半期(7-9月)に入り、各セグメントで急速に減速感が強まった。第2四半期は増収・減益となったが、たな卸資産の評価減(3億円)やシリコン結晶製造装置の一部で発生した出荷延期(影響額:売上高13.5億円、営業利益4.2億円)が利益面で大きな打撃となった。
 
 
装置関連事業
売上高146.9億円(前年同期比13.0%増)、セグメント利益18.7億円(同37.1%増)。増収・増益となったものの、第2四半期に入り各製品の需要に一巡感が出てきた。
 
 
太陽電池関連事業
売上高166.5億円(前年同期比145.4%増)、セグメント利益9.8億円(同175.6%増)。大幅な増収・増益となったものの、第2四半期に入り、セル・モジュールの市場在庫のだぶつきを背景に、セル・モジュール、ウエーハ、インゴットの価格が急落したな卸資産評価損を計上。シリコン結晶製造装置の一部で発生した出荷延期も響いた。
 
 
電子デバイス事業
売上高32.2億円(前年同期比5.6%増)、セグメント利益5.2億円(同28.0%増)。主力の自動車温調シート向けサーモモジュールが、新興国での自動車販売の好調を背景に堅調に推移。この他、エアコン向けを中心に民生用が伸びた他、バイオ向けや光通信向け等の高機能製品も堅調に推移した。
 
 
業容の拡大に加え、公募増資(オーバーアロットメントに伴う第3者割当増資を含む)による資金調達を実施した事で上期末の総資産は770.5億円と前期末比155.6億円増加した。公募増資や借入などにより増加した現預金は、中国子会社の設備投資の原資となる。売上債権やたな卸資産も増加したが、これは業容の拡大によるもので、会社側は「回転月数は前者が2.9ヶ月、後者が2.2ヶ月であり、共に管理可能な範囲である」としている。自己資本比率は前期末比3.7ポイント改善の43.8%。
 
 
利益の増加に加え、前年同期に比べて売上債権の回収が進む一方、仕入債務が増加したため営業CFが大幅に増加したが、中国子会社の増産投資や自動化投資、更には子会社の設立等、積極的に投資を行った結果、フリーCFは22.4億円のマイナス。公募増資による資金調達や短期借入金の積み増し等で財務CFが黒字となり、現金及び現金同等物の上期末残高は134.3億円と前期末比61.2億円増加した。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比8.8%の増収ながら、同33.2%の経常減益予想
下期は装置関連事業及び電子デバイス事業で大幅な減収・減益が見込まれる他、受注残の消化で相対的に売上の落ち込みが小さい太陽電池関連事業も、太陽電池用シリコン(セル・モジュール、ウエーハ、インゴット)の価格下落で大幅な減益見込み。
通期では、売上の減少による装置関連事業及び電子デバイス事業の限界利益の減少に加え、増収が見込まれる太陽電池関連事業も価格下落等で採算が悪化。一方、子会社の増加や積極的な設備投資に伴う減価償却費の増加等で販管費が増加するため、営業利益が52.0億円と同25.0%減少する見込み。設備投資は70億円(前期は50.3億円)を予定しており、減価償却費は33.5億円(同26.5億円)を織り込んだ。為替レートの前提は、1ドル=75円(前期は83.8円)、1人民元=12円(同12.5円)。配当は1株当たり20円の期末配当を予定している。
尚、期初予想との比較では、足下の半導体市場や太陽電池市場の動向を踏まえて売上予想を下方修正。外注の内政化等による製造原価の低減や販管費の削減を織り込んだものの、売価の低下等によるによる売上総利益率の見直しもあり、営業利益予想も下方修正した。営業外損益の悪化は、急激な円高による為替差損の増加を織り込んだため。
 
 
装置関連事業
売上高253.6億円(前期比8.4%減)、セグメント利益25.0億円(同19.3%減)。最終製品の需要減少を受けて、各種製造装置の投資意欲が後退。製造プロセスに使用される消耗品等の需要も減少する見込み。製品別の足元の状況及び下期の見通しと取り組みは次の通り。
 
 
太陽電池事業
売上高301.1億円(前期比42.4%増)、セグメント利益19.0億円(同23.2%減)。欧州市場での太陽電池パネルの在庫調整の遅れから部材である太陽電池セルや同ウエーハの価格下落が続いており、シリコン結晶製造装置、消耗品・材料共に減少する見込み。価格下落も響く。このため、シリコン結晶製造装置では短納期対応に加え、コスト削減や装置の心臓部にあたるホットゾーンの改良による生産性改善(引上げ速度の向上)等、ユーザーニーズに即した製品を投入すると共に中国以外の海外市場への営業を強化する。また、部材コストの削減、経費削減、在庫削減、更には人員削減を進め収益力の強化にも努める。製品別の足元の状況及び下期の見通しと取り組みは次の通り。
 
製品別の状況と取り組み
 
電子デバイス事業
売上高52.8億円(前期比23.7%減)、セグメント利益6.0億円(同48.5%減)。医療・バイオ機器・半導体・光学向けが堅調に推移する見込みだが、自動車温調シート向けサーモモジュールはモデルチェンジによる一時的な在庫調整が見込まれる(民生用は、季節要因で上期比減収)。この他、光通信向けは市場低迷が続くものの、ハイエンド製品の販売強化によるシェアアップが見込まれる。
価格競争力強化に向け自動化ラインを拡充すると共に、レアメタル(テルル)の減量品の開発・投入により、レアメタルの価格上昇の影響を吸収し収益性の改善に努める。一方、販売面では、光通信向けでハイエンド製品の販売を強化する他、パワーデバイス用基板の品質を改善し拡販を図る。
 
 
 
今後の注目点
11月30日に中国の中央銀行である中国人民銀行が預金準備率(市中銀行から預金の一定割合を強制的に預かる資金の比率)を12月5日から0.5%引き下げると発表した。預金準備率の引き下げは08年12月以来で、欧州債務危機をきっかけにした世界経済の減速懸念を踏まえ、金融引き締めを続けていた中国が緩和へと舵を切った。これにより中国の銀行は貸出量を増やす事が可能になるため、市中に出回る資金の量が増えて景気を下支えする効果が期待できる。もちろん、これだけで事業環境が改善する訳ではないが、シリコン結晶製造装置の一部案件で発生した納期延期等、同社のビジネスにも金融引締めの影響が出始めていただけに(特に5月以降、その影響が感じられたと言う)、中国政府の金融政策変更は同社にとっても朗報だ。
足下、極めて深刻な状況であり、向こう1年程度は苦戦を覚悟する必要がありそうだが、夜明け前が最も暗いもの。太陽電池関連事業では、来年3月頃にはシリコン結晶製造装置の受注に明るさが見えてくる、との見方があり、また、中国の金融政策につても、市場には、預金準備率の更なる引き下げを予想する声がある。
手掛ける事業がいずれも成長産業の一端を担うものであり、グローバルなポジショニングを確立している事が同社の強み。ここ数ヵ月の間に、装置関連事業で10%程度、太陽電池関連事業で40%程度のコストダウンが進んでおり(人員を1,500名削減し、来期以降になるが、月間で5,000万円程度のコスト削減効果が期待できる)。また、買替需要を取り込むべく開発されたシリコン単結晶製造装置の新製品は、他社製品の1.3倍の引上げ速度を誇り、歩留まりも20%程度優れる一方、消費電力は20%少ないと言う。
収益力強化へ向けた施策の進捗と、半導体・FPD関連及び太陽電池関連の設備投資や生産動向等、外部環境に注目したい。