ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.17

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
横山 林吉 社長
横山 林吉 社長

【ブリッジレポート vol.17】2012年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「円高や欧州の債務問題に加え、タイでの洪水の影響も見込まれ、12/3期下期は厳しい事業環境が予想される。しかし、中国子会社の生産が軌道化し・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年12月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
横山 林吉
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 4,806 161 117 21
2010年3月 4,667 125 91 41
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(12/15現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
248円 4,549,420株 1,128百万円 0.8% 500株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
8.00円 3.2% 18.24円 13.6倍 618.68円 0.4倍
※株価は12/15終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
朝日ラバーの2012年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明の他、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン材料の配合技術と調色技術に強みを有し、例えば、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事ができる。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)ファインラバー研究所、米国の販売会社ARI International Corp.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司の連結子会社4社からなる。
 
<事業内容と主要製品>
事業は、自動車の内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓等の医療・衛生用ゴム事業に分かれる。11/3期の売上構成比は、それぞれ、81.1%、18.9%。
 
<成長投資>
既存・基盤製品を原資に成長投資を行っており、薬剤を使わずゴムと素材を接着する表面改質技術によるRFID向けの半導体保護用シリコーンゴム製品やプリント配線基板に塗布する事で基板に実装されている白色LEDの光取り出し効率(95%の反射率)を高める事ができるレジスト材料「ASA COLOR RESIST INK」等の製品化に成功している。
 
 
 
2012年3月期上期決算
 
 
前年同期比1.3%の減収、同40.8%の経常減益
売上高は前年同期比1.3%の2,374百万円。新製品の寄与で医療・衛生用ゴム事業の売上が大きく伸びたものの、自動車メーカーの減産の影響を受けた工業用ゴム事業の落ち込みをカバーできなかった。利益面では、利益率の高い医療・衛生用ゴム事業の売上構成比が上昇したため、減収ながら売上総利益がわずかに増加したものの、子会社の増加や抑制していた人件費の復元等による販管費の増加を吸収できず営業利益が同36.5%減少した。設備投資は医療用ゴム製品関係の生産設備や環境改善投資等で75百万円、減価償却費の計上額は176百万円。

予想との比較では、東日本大震災(以下、震災)を機に売上が減少した自動車関連のゴム製品が7月以降回復に転じた他、医療用ゴム製品の新製品の売上が予想以上に伸び売上が上振れ。生産性の改善も進み、営業利益、経常利益が従来予想を大きく上回った。四半期純利益が予想を下回ったのは、災害による損失や固定資産除却損等を特別損失に計上したため。
 
 
第1四半期(4-6月)は、昨年9月に量産を開始した医療用ゴム製品の新製品(医療・衛生用ゴム事業)の売上が増加したものの、リーマン・ショック以降の落ち込みから回復基調にあった自動車関連(工業用ゴム事業)が、震災を機に急減した。第2四半期(7-9月)は、医療用ゴム製品が堅調に推移する中、自動車関連が回復。工場での原価低減も進み、売上総利益率も改善した。
 
(2)セグメント別動向
 
工業用ゴム事業
売上高は前年同期比11.7%減の1,774百万円、セグメント利益は同60.2%減の67百万円。在庫調整の完了と新機種の寄与でスポーツ用ゴム製品の売上が219百万円と同23.5%増加したものの、自動車メーカーの減産の影響でASA COLOR LED等の自動車関連製品の売上が減少した。尚、ASA COLOR LEDの売上は768百万円と同16.1%減少したが、受注の回復で第2四半期の売上(436百万円)は第1四半期の売上(332百万円)を上回った。
 
※ ASA COLOR LED
蛍光体を配合したシリコーンゴム製のキャップを青色LED に被せる事で10,000色以上の光のバリエーションを提供できる。スピードメーターやカーオーディオ等、自動車内装照明や特殊照明向け。
 
医療・衛生用ゴム事業
売上高は前年同期比51.2%増の599百万円、セグメント利益は同159.4%増の106百万円。点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品を扱っているが、この上期は、新規得意先向けの薬液充填済み注射器(プレフィルドシリンジ)用ガスケットが好調に推移した。
 
(3)個別及び子会社の動向
 
震災の影響による自動車関連製品の減少で売上が減少したものの、医療用ゴム製品の好調に加え、工場の歩留り改善や生産性の向上で売上総利益が増加。販管費の増加を吸収して営業利益が同22.1%増加した。
 
 
新製品の開発を担う(株)ファインラバー研究所は減収ながら、販管費の削減が進み経常利益が増加。米国の販売会社ARIは、震災以降のメイン車種の大幅な減産を受け減収・減益。香港子会社は材料加工工場の閉鎖に伴う現状復旧費用の計上が負担となり増収ながら経常損失。1月から稼働を開始した東莞子会社も、震災後の自動車減産の影響を受けた上、主力製品の量産開始の遅れもあり、利益計上に至らなかった(夏以降は、受注回復に加え、量産も軌道化)。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比346百万円減の7,348百万円。有利子負債の削減を進めた事で現預金が減少した他、売上の減少等で売上債権・仕入債務が減少した。CFの面では、運転資金の減少で営業CFが前年同期の21百万円から344百万円に増加する一方、余資運用よりも有利子負債の削減を優先した事と設備投資関連の支払いの減少で投資CFのマイナス幅が縮小した結果、前年同期は536百万円のマイナスだったフリーCFが122百万円の黒字に転じた。フリーCFを上回る有利子負債の削減を進めたため、財務CFがマイナスとなり、現金及び現金同等物の上期末残高は938百万円と前期末比204百万円減少した。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比0.3%の増収、同20.1%の経常増益予想
売上高は前期比0.3%増の4,820百万円。LED照明向けの透明シリコーン応用製品(工業用ゴム事業)で計画外の受注があった事、及び中国子会社の予想以上の業績回復を踏まえ売上予想を上方修正。利益面では、工場の生産性向上による歩留り改善や原価低減活動の効果、更には海外の子会社の収益回復を織り込んだ。一方、当期純利益については、災害による損失や固定資産除却損等の特別損失の計上を踏まえて下方修正した。
下期の設備投資はASA COLOR LENS新設備100百万円、RFIDタグ新製品設備50百万円、及び電池関連等で約285百万円を予定しており、通期で約360百万円(11/3期は633百万円)。減価償却費は374百万円(360百万円)を織り込んだ。
配当は1株当たり5円(2円増配)の期末配当を予定(上期末配当3円と合わせて年8円)。
 
 
工業用ゴム事業の売上は前期比6.6%減の3,640百万円。下期もスポーツ用ゴム製品の好調が続く見込みだが、第2四半期以降、顕著な回復傾向を示していた自動車関連製品に、年明け以降、タイの洪水の影響が表れてくる。一方、医療・衛生用ゴム事業は自社開発医療用ゴム製品を中心に売上が1,180百万円と同30.0%増加する見込み。
 
(2)第10次三ヵ年中期経営計画(12/3期~14/3期)
12/3期を初年度とし、「“新しい価値”を提供する真の中堅企業へ」をビジョンとする3ヵ年の中期経営計画が進行中である。中期経営計画では、「照明関連事業」、「医療関連事業」、及び「機能製品関連事業」を重点事業としており、併せて、海外ビジネスの強化拡大に取り組む考え。最終年度となる14/3期の数値目標として、売上高62億円、営業利益4億円、経常利益3億円の達成を挙げている。
 
①照明関連事業    14/3期売上目標27億円
色と光のコントロール技術を更に進化させて新規需要を創造する事で14/3期に売上高27億円を目指す(11/3期22億円)。ターゲット市場を、自動車市場(車載インテリア)、LED照明市場、及び同社自らが創造する新照明市場とし、開発技術の強化(設計・光学・工法)に加え、シート形成工法の取得や蛍光体改質技術の開発に取り組んでいく。
 
②医療関連事業    14/3期売上目標12億円
表面改質技術と素材変性技術を追求し、14/3期に売上高12億円を目指す(11/3期8億円)。高度なコーティング技術や配合技術を活かす事ができ、かつ需要も増えているディスポーザブル医療機器市場をターゲット市場とし、第二福島工場増築エリア案件の早期量産化や薬剤に応じた低毒性・低摺動ガスケットの実現に取り組むと共に、次のステップに向け製造設備の充実も図る考え。重点戦略製品として、プレフィルドシリンジガスケット、ニードルレス機器、メディカルシリコーン関連を挙げている。
 
③機能製品関連事業  14/3期売上目標23億円
アジア展開を進め、技術力で差別化を図る事で14/3期に売上高23億円を目指す(11/3期18億円)。ターゲット市場を自動車関連及び情報通信関連とし、福島工場生産品(接点ラバー、Oリング等)の再編や接着複合製品の量産化を進めると共に、表面改質や素材変性技術の進化と応用による新規需要の創造にも取り組む。重点戦略製品として、卓球ラケット用ラバー、微小圧コントロールバルブ(電池用ゴム)、RFIDタグを挙げている。
 
④海外ビジネスの強化拡大
現在5%の海外売上比率を14/3期を目途に10%に引き上げたい考え(金額ベースでは5億円→12億円)。重点施策として、成長する海外市場での収益拡大(北米・中国市場での自動車関連製品及び照明関連製品)、及び海外でさらに事業展開できる基礎づくりを挙げており、具体的には、昨年7月に設立した中国広東省の東莞朝日精密橡膠制品有限公司への機能製品の生産移管を進める他、北米、中国への照明関連事業の展開を早める。また、12年3月に中国上海市に販売会社を設立する予定している他、アセアン地域の販売会社開設に向けた調査も検討中。一方、米国ではARIの人員増強を図る他、欧州での市場調査を予定している。
 
 
 
今後の注目点
円高や欧州の債務問題に加え、タイでの洪水の影響も見込まれ、12/3期下期は厳しい事業環境が予想される。しかし、中国子会社の生産が軌道化してきた事で、国内での雇用と高品質なモノづくりを維持しつつ、アジアを中心にした海外の成長を取り込む体制が整ってきた。ゴムをはじめとしたソフトマテリアルを軸に事業展開している同社は、「市場が求める機能を材料から作り込む」という点でオリジナルの要素を持つ企業であり、「独自性を有し、しかも市場が求めるニーズを形にした製品を供給し続ける事ができる」という強みを有するが、第10次三ヵ年中期経営計画はその強みを具現化するものであり、かつ成長軌道への回帰に向けた礎となる。同計画の進捗に注目したい。