ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

プライム

ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.25

(7839:東証2部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.25】2011年9月期業績レポート
取材概要「11/9期は前期以上の生産調整を余儀なくされたものの、雇用維持を最優先とする基本方針の下、正規社員、非正規社員共に人員削減は一切行わなかった・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年12月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年9月 9,047 395 371 217
2010年9月 10,078 898 978 638
2009年9月 10,300 1,047 1,335 837
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
株式情報(12/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
509円 13,772,302株 7,010百万円 3.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
11.00円 2.2% 23.23円 21.9倍 471.92円 1.1倍
※株価は12/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
SHOEIの2011年9月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメットメーカー。オートバイ用を中心に、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界50カ国以上を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力により、右の3つの世界一を実現する事を経営方針に掲げている。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。
 
<事業内容>
二輪乗車用ヘルメット(以下、「プレミアムヘルメット」)の売上高が約90%を占めている。なかでも、高品質で高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県東磐井郡)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、より高い品質を維持すると共に技術の流出防止にも努めている。また、業界では唯一の「トヨタ生産方式」導入企業として、高い限界利益率と在庫回転率、及び優れた資産効率を誇る。
 
<中長期的安定成長と安定利益の実現に向けた基本方針>
・自分の会社は自分で守る
・Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)
・健全な財務内容の堅持
・投資の継続(新製品開発,コストダウン,品質向上,より確かな安全)
・世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指す
・新市場開拓と既存市場の深掘り
・利益の公平、公正な分配 (50%配当性向,従業員への配分、会社への分配(内部留保))
 
 
世界中のライダーに支持されてきたベストセラーモデル「XRシリーズ」の日本仕様モデル。
 
 
2011年9月期決算
 
 
前期比10.2%の減収、同62.1%の経常減益
売上高は前期比10.2%減の90.4億円。円高の影響に加え、南欧諸国のソブリン問題に端を発した欧州の景気減速や米国での消費回復の遅れで海外売上が減少。海外で先行投入した2モデルを国内市場に導入したことにより好調だった国内販売も東日本大震災(以下、大震災)による製造・物流の混乱や消費の落ち込みで売上が減少した。利益面では、売上の減少に加え、円高の影響や生産・物流面での大震災の影響もあり、営業利益が同56.0%減少。為替の影響(差益91百万円→差損22百万円)で営業外損益が悪化した他、会計基準の変更による資産除去債務の計上に伴う影響額(31百万円)や震災による損失(大震災後の操業停止及び復旧作業に関する固定費支出55百万円、地震保険適用外の補強工事支出11百万円等)など特別損失1.0億円を計上したため、当期純利益は2.1億円と同65.9%減少した。設備投資は3.3億円(前期は3.7億円)、減価償却費は4.5億円(同7.0億円)。
 
 
(2)地域別動向
 
国内売上は前期比2.5%減の21.0億円。海外で先行投入した2モデルの寄与で前期下期からの好調が続いていたが、大震災に伴う工場の操業停止や物流制限に加え、大震災後の消費の落ち込みもあり、下期は苦戦を強いられた。数量減と円高の影響で海外売上も69.3億円と同12.3%減少。このうち欧州は同11.4%減の44.4億円。南欧諸国のソブリン問題に端を発した景気減速で二輪車市場及び関連商品市場の低迷が続いた。また、雇用の改善が遅れている米国での売上も19.1億円と同14.1%減少。この他、船便の都合によるブラジル向けの出荷遅れ(次期へのずれ込み)等でその他地域の売上も減少した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産はほぼ前年同期と同水準(57百万円減)の80.9億円。借方では、海外子会社での在庫増でたな卸資産が増加する一方、現預金が減少。回収が進んだ売上債権も減少した。貸方では、仕入債務や純資産が増加する一方、未払法人税等が減少(178百万円→15百万円)した。
CFの面では、利益の減少やたな卸資産の増加等で営業CFが大幅に減少したものの、1.5億円のフリーCFを確保。配当の支払いで財務CFがマイナスとなったが、現金及び現金同等物の期末残高は31.4億円と前期末比58百万円の減少にとどまった。
 
 
 
2012年9月期業績予想
 
 
前期比5.0%の増収、同37.4%の経常増益予想
売上高は前期比5.0%増の95億円。日米欧市場の回復には未だ時間が必要と考えている事に加え、円高の影響も想定しているが、代理店販売を直接販売に切り替えたイタリアでの販売増が期待できる上、投入を予定しているシステムヘルメットの新製品「NEOTEC」の寄与も見込まれる。利益面では、売上原価及び販管費の削減効果に加え、欧州子会社の在庫圧縮も進み(未実現利益の減少→営業利益の増加)、営業利益が同34.0%増加する見込み。配当は1株当たり3円増配の11円を予定している。
尚、設備投資は新モデル開発のための金型投資を中心に3.8億円(前期は3.3億円)を計画しており、減価償却費は5.3億円(同4.5億円)を織り込んだ。為替レートの前提は下記の通りだが、上期売上見込み額の50%相当(5,900千米ドル、5,000千ユーロ)については、想定を上回る水準(1米ドル=78.93円、1ユーロ=110.66円)で為替予約を済ませている。
 
 
ヘルメット販売と相関性の高い二輪車販売が、フランス(前年月期比4.5%増)、ドイツ(同6.6%増)、米国(0.5%増、消耗品であるタイヤ販売も年初からプラスを維持)等で前年月期比プラスに転じており、二輪車市場の大きいイタリア(フランス10万台、ドイツ8万台に対して、14~15万台)では直販効果が見込める。オーストリアや期ずれ案件が寄与するブラジルでの販売増も見込まれ、数量ベースで3%程度の増加を想定している。
 
(2)12/9期の施策
①新製品「NEOTEC」の投入
欧米では2012年3月に、国内では5月に、新製品のシステムヘルメット「NEOTEC」の販売を開始する。「NEOTEC」は安全性や優れたベンチレーションに加え、高級感のあるステンレス仕上げでコンパクトかつ軽量。また、サンバイザーメーカーの協力も得て、高い遮音性(ノイズレス)を実現した。
 
システムヘルメット「NEOTEC」は11月に開催されたミラノでの国際ショー(EICMAショー)において、同業者からも高い評価を得た。
 
②イタリアでの直接販売
これまで代理店に依存していたイタリアでの販売を、9月に直接販売に切り替えた。イタリア子会社は、ドイツ子会社及びフランス子会社と共に欧州56カ国において新規市場の開拓と既存市場の深掘りに取り組んでいく。
 
 
 
今後の注目点
11/9期は前期以上の生産調整を余儀なくされたものの、雇用維持を最優先とする基本方針の下、正規社員、非正規社員共に人員削減は一切行わなかった。12/9期も日米欧3極に加え、新興国のマクロ経済の先行きにも不透明感が強いものの、イタリアでの直販効果に加え、二輪車販売が増加に転じた米国や、フランス、ドイツなど欧州主要国において事業環境の改善が期待できる。
一方中期的には、人材の育成に加え、商品力とマーケティング力、そしてそれによって築かれる顧客満足度の向上を原動力に収益を拡大させていく考え。マーケティング力の源泉は、ユーザーニーズをキャッチする力、ユーザーニーズを正確にものづくりに反映させる力、出来上がった商品をユーザーに伝える力、ユーザーに安心を与えるきめ細かいアフターサービス、そしてユーザーとの緊密な双方向の対話力。また、商品力は、ユーザーニーズの実現と、より高い安全性及びより高い品質の実現により高める事ができる、と言う。
上記方針の下、Made in Japanと雇用の維持を通して、ものづくりの伝承に取り組む同社には、日本人として期待するところ大である。