ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.20

(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長兼社長
寺西 忠幸 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.20】2012年2月期第3四半期業績レポート
取材概要「第3四半期(9-11月)は天候要因等で既存店の客数が前年同期比で減少したものの、客単価の上昇でカバーし既存店売上高は堅調に推移した。同社が・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年1月31日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
代表取締役会長兼社長
寺西 忠幸
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(1/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
497円 11,331,205株 5,631百万円 1.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 4.0% 10.59円 46.9倍 888.00円 0.6倍
※株価は1/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2012年2月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。和歌山県を除く関西地域、徳島県、石川県においてドミナント戦略(特定地域内に集中出店する事で経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2011年11月15日現在、グループで315店舗(FC3店舗を含む)を展開。卸売事業として、連結子会社(株)健美舎が健康食品や医薬品の企画・販売を手掛けている。
グループは、同社のほか、ドラッグストア事業を手掛ける(株)ニッショードラッグ及び(株)ジェイドラッグ、医療・介護分野におけるコンサルティング&マネージメント活動を行う(株)ソシオンヘルスケアマネージメント、輸出入とその関連業務を手掛ける麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司、及び上記の(株)健美舎(いずれも連結子会社)。
 
<12/2期の重点施策>
既存店の活性化により前期の「減収増益」から「増収増益」への転換を図る考えで、重点施策として、①顧客数の増加、②構造改革の推進、③PB商品の育成とアイテム数の拡大、④医療提供施設としての機能強化を図るため、調剤に関わる関連業務への進出強化、の4点を挙げている。
 
①顧客数の増加
11/2期はEDLP(Every Day Low Price)戦略の一環としてのチラシ販促の削減でコストを抑えることができたものの、客数が減少し既存店売上高が減少した。12/2期はEDLPを軸に、チラシ・レジクーポン・DM・モバイル等を適宜組み合わせた販促でコストをコントロールしつつ、客数を増やし既存店売上高のプラス成長を目指す。
 
②構造改革の推進
セルフサービスを前提とする売場作り(顧客主義の視点での売場変革)を徹底することで店舗の作業量と作業種類を減らし、顧客の囲い込みと高付加価値商品の販売につながるライトカウンセリング(接客・相談)の時間を創出する。
 
③PB商品の育成とアイテム数の拡大
(株)マツモトキヨシホールディングスとの連携によるPB商品の相互供給で、同社の強みである未病関連のヘルス&ビューティケア商品(ライトカウンセリングが必要)に加え、比較的単価が安くセルフでの販売増が期待できるPB商品を拡充。
 
④医療提供施設としての機能強化を図るため、調剤に関わる関連業務への進出強化
子会社(株)ソシオンヘルスケアマネージメントと連携し、医療モールへの出店や在宅支援を強化するとともに、ドラッグストアでの物販とのシナジーを追求していく。また、将来的には、調剤や生活必需品の物販を手掛ける同社の強みと医療機関向けコンサルを手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメントの強みを活かし、在宅医療を通して地域コミュニティの中核としの機能を担っていきたい考え。
 
 
2012年2月期第3四半期決算
 
 
前年同期比2.4%の増収、同117.6%の経常増益
連結売上高は前年同期比2.4%増の760.8億円。春先の花粉症関連商品や東日本大震災(以下、震災)後に需要が急増した生活必需品等が寄与したほか、注力している調剤やプライベート・ブランド商品の売上も増加した。利益面では、利益率の高い医薬品・健康食品や調剤の寄与で売上総利益率が26.5%と0.7ポイント改善。売上の増加と相まって売上総利益が同5.4%増加し、チラシ販促の再開による販促費の増加や新物流センターの稼動費用等による販管費の増加を吸収。前年同期の利益水準が低かったこともあり、営業利益は同3.3倍に拡大した。四半期純利益が43百万円にとどまったのは、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額5.9億円を特別損失に計上したため(前年同期は、減損損失や店舗閉鎖損失引当金繰入額など4.1億円を特別損失に計上した)。なお、第2四半期(6-8月)に営業を開始した麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司を第3四半期(9-11月)より連結決算に取り込んだ。
 
第3四半期末店舗数は前年同期比1店舗増の315店舗
第3四半期末(11年11月15日)現在のグループ店舗数は315店舗(FC3店舗を含む)。新規出店は、キリン堂がスーパードラッグストア6店舗(大阪府1店舗・兵庫県2店舗・滋賀県1店舗・徳島県2店舗)、小型店2店舗(1店舗は医療モール併設型の調剤薬局・北あやめ池店:奈良県奈良市)の合計8店舗。一方、退店は4店舗で、キリン堂が2店舗、ニッショードラッグが2店舗(いずれもスーパードラッグストア)。このほか、既存店の活性化対策として、ニッショードラッグが10店舗の改装を実施したほか、キリン堂51店舗、ニッショードラッグ11店舗の計62店舗でタスクフォース主導によるレイアウト変更等の簡易改装を行った。
 
既存店は第3四半期累計期間を通して堅調に推移
第3四半期累計の既存店売上高(前年同期比)は、キリン堂が1.6%増(客数0.6%増、客単価1.0%増)、ニッショードラッグが0.9%増(0.7%減、1.6%増)。このうち、キリン堂については、花粉症関連商品の販売増や震災後の特需で春先から初夏にかけて客数が増加し既存店の売上が堅調に推移したものの、夏以降は、台風・大雨の影響や残暑による季節商材の苦戦で客数が減少した。ただ、客数が減少した夏以降は、ライトカウンセリングによる販売効果で客単価が上昇し、客数減少の影響を吸収。この結果、既存店売上高は第3四半期累計期間を通して堅調に推移した。
 
 
 
コストコントロールの徹底で販管費が計画通り推移
台風や大雨の影響に加え、残暑による季節商材の苦戦もあり、売上の伸びが鈍化したものの、調剤売上が伸びたほか、ライトカウンセリングによる販売効果で、健康食品、化粧品、雑貨等、PB商品を含めて売上が増加した。利益面では、売上構成の良化に加え、値入率の改善もあり売上総利益率が改善。人件費やチラシ販促の実施に伴い販促費が増加したほか、麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司の商品調達開始に伴う先行投資費用も発生したが、これらを吸収して43百万円の営業利益を確保した。出退店は、出店3店舗、退店2店舗。
なお、コストコントロールの徹底等で販管費は計画を0.4%下回り、販管費率は26.4%となった。また、同社グループにおいて、第2・第4四半期にリベート計上が行われるため、第1・第3四半期は、例年、利益水準が低くなる。
 
 
 
1店舗当たりの処方箋受付枚数の増加で調剤売上が大きく伸びたほか、PB商品を中心に健康食品の売上も増加。男性化粧品やオーラルケア商品等のトイレタリーが堅調に推移した化粧品の売上も増加した。一方、医薬品は禁煙補助剤が減少(前年同期はタバコ増税を前に特需が発生)したほか、気温が平年よりも高めに推移したため感冒薬やドリンク剤等が伸び悩んだ。
 
 
販売費の増加は、前年同期は実施しなかったチラシ販促の再開に伴う販売促進費の増加(86百万円)によるもので、このほか、賞与引当金繰入額(84百万円増)や教育費(15百万円)の増加で人件費も増加した。一方、業務委託手数料(43百万円増)が増加したものの、水道光熱費(42百万円減)や備品消耗品費(45百万円減)の減少で営業費用が減少したほか、地代家賃(46百万円)やリース料(17百万円)の減少で施設費が減少した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比10.3億円増の419.4億円。借方では、CFの改善で現預金が増加したほか、来13/2期新規出店予定(神奈川県川崎市)に伴う土地取得で固定資産が増加。一方、貸方では、純資産が増加した。CFの面では、利益の増加と資金効率の改善で営業CFが大幅に増加。一方、投資CFは、設備投資関連の支払いが増加したものの、M&Aに伴う支払いが減少し、前年同期並みのマイナスにとどまったため、前年同期は1.7億円だったフリーCFが12.6億円に増加した。有利子負債の削減を進めたことや配当の支払いで財務CFはマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は55.1億円と前期末比7.7億円増加した。
 
 
 
2012年2月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比3.6%の増収、同20.3%の経常増益予想
当初、11店舗の新規出店を計画していたが工事の遅れで8店舗にとどまる見込みで、第4四半期(12-2月)の新規出店は計画していない。また、第4四半期の既存店売上高の前提は、キリン堂が前年同期比1.4%増、ニッショードラッグが同3.2%減。配当は1株当たり10円の期末配当を予定している(中間配当と合わせて年20円)。
 
(2)施策の進捗状況
構造改革の推進
タスクフォース主導による売場の簡易改装を62店舗で実施したほか(上期38店舗、第3四半期24店舗、前11/2期通期58店舗)、需要予測型自動発注システムをキリン堂115店舗に導入した(第3四半末時点の累計導入店舗数)。
 
プライベート・ブランド商品の動向
第3四半期(累計)までのPB比率は、キリン堂が8.6%(前年同期に比べて0.1ポイント上昇)、ニッショードラッグが9.1%(同0.3ポイント上昇)と共に上昇した。また、(株)マツモトキヨシホールディングスとのPB商品の連携(相互供給)では、導入が77アイテム、供給が健康食品を中心に19アイテムとなった。
 
(株)ソシオンヘルスケアマネージメントと共に地域医療への貢献
施設在宅や医療モールへの出店で成果を上げたほか、神奈川県川崎市で優良な出店案件を獲得した。施設在宅では、11年4月より京都の府立医大前店が、介護付有料老人ホームにおいて、薬のデリバリーと服薬指導、及び同施設内での物販(週に1度)を開始した。また、医療モールへの出店では、11年10月に近鉄あやめ池住宅地の地域医療を担うメディカルモール「メディカルコートあやめ池」内に調剤薬局「北あやめ池店」を開局した。この他、神奈川県川崎市で南東北病院系列の大型総合病院(川崎市麻生区で小児科や産婦人科の病床を持つ唯一の総合病院:2012年夏オープン予定)前に調剤併設型ドラッグストアの出店が決まった(来13/2期オープン予定)。

上記のほか、同社の薬剤師による「未病啓発セミナー(産経新聞との共催による読者向けセミナー)」や店頭における「健康フェア」の開催、更には一般紙に連載された未病の広告記事の監修を務める等、未病をテーマとしたセルフメディケーションの推進に取り組んだ。
 
 
今後の注目点
第3四半期(9-11月)は天候要因等で既存店の客数が前年同期比で減少したものの、客単価の上昇でカバーし既存店売上高は堅調に推移した。同社が注力しているライトカウンセリングの浸透と固定客作りが進んでいるものと思われる(3か月間だけで判断するのは早計かもしれないが)。店舗年齢が進むと、店舗の商圏内に同業他社が増える等で客数の減少が避けられないが、その場合でも、ライトカウンセリングが浸透し固定客作りが進んでいれば、高付加価値商品の販売等による客単価の引き上げで売上高を維持できるというのが同社の考えだ。このほか、第3四半期決算において、調剤や在宅関連が進捗していること、さらには(株)マツモトキヨシホールディングスとのPB商品の相互供給が順調に立ち上がったこと等が確認できた。

なお、通期業績は概ね会社予想に沿った着地になると思われるが、いくつか不確定要素が含まれている。具体的には、売上の面で新規出店が期初の計画よりも3店舗少ない(工事の遅れによる)ことによる下振れ要因があるほか、利益面では麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司の創業赤字が織り込まれていない。実際、第3四半期(累計)の売上は新規出店の計画未達もあり、期初予想を1.6%下回った。ただ、その一方で、調剤及びPB商品が堅調に推移したことやコストコントロールの徹底で営業利益が17.1%、経常利益が30.3%、それぞれ期初予想を上回った。