ブリッジレポート
(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.8】2012年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「今期のバルブ事業は、子会社が総じて好調だが、建設設備市場の低迷や不採算案件の影響でキッツ本体の苦戦が響いている。ただ、国内に・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年2月21日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
事業内容
バルブ国内首位。特に建築設備や石油化学向け強い。海外開拓に積極姿勢。伸銅品も国内上位
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(2/8現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
349円 109,223,223株 38,119百万円 5.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.50円 2.1% 25.63円 13.6倍 480.88円 0.7倍
※株価は2/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
キッツの2012年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブは、「水道メータ周り」、「ガスメータ周り」、「給湯器」等でよく目にするが、家庭だけでなく、あらゆる産業設備に使われており、同社は素材からの一貫生産を基本に、青銅、鋳鉄、ダクタイル、ステンレス鋼等を素材に数万種をラインナップしている。また、バルブの部材として使用される伸銅品の外販を行っている他、フィットネス事業やホテル事業等も手掛けている。東洋バルヴ(株)、(株)清水合金製作所など連結子会社31社と共にグループを形成しており、海外売上高比率は11/3月期現在で22.6%。バルブでは国内トップ。伸銅品では国内2位のポジションにある。
 
<事業セグメントの概要>
事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びその他に分かれ、11/3期の売上構成比は、それぞれ72%、19%、9%。
 
バルブ事業
キッツグループのコア事業であり、上下水道・給湯・ガス・空調等のライフラインや石油・化学・紙パ・半導体等の産業分野において、流体制御機器として重要な役割を担うバルブや継手を中心に、製造・販売している。
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を生産販売している。この黄銅棒は、バルブの部材を初め、水栓金具、ガス機器、家電等の部材として使用されている。
 
その他
総合スポーツクラブの経営(フィットネス事業)、ホテル・レストラン経営(ホテル事業)、及びガラス工芸品の販売を行っている。
 
 
 
 
2012年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比6.2%増収、同19.2%の経常減益
売上高は前年同期比6.2%増の827.6億円。東日本大震災(以下、震災)の影響でホテル事業やフィットネス事業の売上が減少したものの、北米や中国を中心にバルブ事業の売上が増加した他、銅価格の上昇で伸銅品事業の売上も増加した。
ただ、利益面では、製品価格が下落する中での銅価格の上昇や不採算の中東向け大型プラント物件の売上計上に加え、価格下落に対応した売価政策もあり、売上総利益が減少。一方、数量増に伴う人件費・物流費の増加等で販管費が増加したため、同19.8%の営業減益。受取配当金の増加と為替差損の減少で営業外損益が改善した他、資産除去債務が無くなり特別損失も減少(4.9億円→1.3億円)したものの、来期以降の法人税引き下げに対応した繰延税金資産の取り崩しで(会計上の)税負担が増加したため、四半期純利益は17.2億円と同27.2%減少した。

尚、為替レートは、1ドル=80.20円(前年同期実績89.02円、前期通期平均実績87.32、12/3期計画81.00円)、1ユーロ=113.56円(同116.63円、同115.06円、同113.00円)。電気銅建値は710,000円/トン(同712,000円、同738,000円/トン、同820,000円/トン)。
 
 
バルブ事業
売上高は前年同期比7.6%増の599.6億円。このうち国内売上は同3.3%増の406.0億円。半導体関連市場が減少したものの、水、食品・製紙、ガス等の市場で売上が増加した他、主力の建築設備市場も弱含みの推移ではあったが、震災直後の仮需(代理店の在庫積み増し)による流通の在庫調整もほぼ終わり、前年同期並みの売上を確保した。一方、海外売上は同17.7%増の193.5億円。石油精製・石油化学向けが回復した北米市場や成長が続く中国市場がけん引役となった。
ただ、製品市況が下落する中での原材料費上昇が響いた上、不採算の中東向け大型プラント物件の売上計上や円高の影響もあり、セグメント利益が51.4億円と同10.8%減少した。
 
伸銅品事業
トン数ベースでの需要は前年同期並みにとどまったものの、銅相場の上昇で製品価格も上昇したため売上高は155.4億円と前年同期比7.0%増加した。ただ、9月以降、伸銅品の需要が急減し、銅相場も急落したため(上期は78万円/トンだった電気銅建値が60万円/トン程度に急落)、第3四半期(10-12月)は21百万円の損失を計上。累計のセグメント利益は1.7億円と同62.5%減少した。
 
その他
震災の影響等で売上高が72.5億円と前年同期比5.0%減少したものの(フィットネス事業が同2.6億円の減収、ホテル事業が同1.1億円の減収)、節電や販促費の削減等でフィットネス事業の利益が増加(44百万円)した他、ホテル事業も小幅な減益(7百万円減)にとどまり、セグメント利益は4.0億円と同8.7%増加した。
 
 
第3四半期(10-12月)は、半導体関連市場の落ち込みでバルブ事業の売上が前四半期比2.2%減少(前年同期比1.8%増)。需要の減少と銅相場の下落で伸銅品事業の売上も同19.9%減少した(同9.5%減)。利益面では、売上の減少と採算の悪化で伸銅品事業が赤字となったが、原価低減効果と不採算の中東向け大型プラント物件の影響がピークアウトしたバルブ事業の利益が前期四半期比で大幅に増加した(前四半期比72.7%増、前年同期比10.4%減)。
 
(3)会社別動向
主力のバルブ事業については、海外も含めて子会社の業績が総じて堅調に推移したものの、市況の変動や不採算案件の発生で同社個別の利益が落ち込んだ。

個別業績は、売上高411.0億円(前年同期比8.8%増)、経常利益13.5億円(同39.8%減)。半導体関連市場が減少したものの、水、食品・製紙、ガス等の市場で売上が増加した他、主力の建築設備市場も前年同期並みの売上を確保した。ただ、原材料の上昇や価格下落の影響で採算の悪化、不採算の中東向け大型プラント物件の売上計上、及び円高影響等で営業利益は8.7億円と同52.5%減少した。

子会社については、建築・水市場において、東洋バルヴ、清水合金製作所の売上が増加した他、日本を含めたアジア地域向けを中心とするキッツタイも円高の影響を吸収して増収。利益面では、稼働率の改善で清水合金製作所の損益が改善した他、キッツタイの利益も増加したものの、価格低下で東洋バルヴの利益が落ち込んだ。

エネルギー市場及びプラント向けを多く手がける海外子会社は、台湾北澤の利益が減少した他、石油関連の鋳鋼バルブを手掛ける北澤閥門も苦戦したが、ステンレスバルブを手掛ける北澤精密機械の売上・利益が増加。独PERRIN社も、北米市場や中国市場において現地のグループ企業を通して特殊バルブの売上が増加し、損益が大幅に改善。石油関連を中心にした需要回復と独PERRIN社製品の取り扱い拡大でキッツアメリカの利益も大幅に増加した。

この他、夏以降の苦戦で半導体関連市場に製品を供給しているキッツエスシーティーが減収・減益。伸銅品事業を手掛けるキッツメタルワークスについては伸銅品事業において、また、フィットネス事業のキッツウェルネス及びホテル事業のホテル紅やについては、その他において説明した通り。
 
 
第3四半期末の総資産は前期末比49.4億円減の951.9億円。総資産減少の主な要因は社債の償還(60億円)によるもので、これに伴い現預金と有利子負債が大きく減少。一方、タイの洪水被害を踏まえた在庫の積み増しや年度末需要に備えた清水合金の在庫積み増しなどでたな卸資産が増加した。
 
 
定期預金の引き出し等で投資CFのマイナス幅が縮小(設備投資関連の支払いは増加)したものの、在庫の積み増しに伴う運転資金の増加や税金費用の増加(12.7億円→21.8億円)で営業CFが減少したため、前年同期は18.5億円の黒字だったフリーCFが8.8億円のマイナスとなった。社債の償還で財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は72.6億円と前期末比54.4億円減少した。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前年同期比6.8%の減収、同24.3%の経常減益予想
前年同期との比較では、製品価格の下落と原材料高でバルブ事業、伸銅品事業共に減収・減益が見込まれる。ただ、第3四半期(10-12月)との比較では、0.6%の減収ながら、経常利益が6.0%増加する見込み。不採算案件の影響一巡でバルブ事業の利益率が改善する他、伸銅品事業の損益改善(セグメント利益:△21百万円→126百万円)も見込まれ、営業利益が20.2%増加する見込み。
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比2.8%の増収、同20.7%の経常減益
セグメント別では、バルブ事業が同5.1%の増収ながら、同9.1%の減益見込み。伸銅品事業は同1.1%の減収、同52.5%の減益が見込まれる。1株当たり4円の期末配当を予定している(上期末配当と合わせて年7.5円)。
 
 
 
(3)プロジェクト統括部の新設によるプロジェクト管理の徹底
重点市場である石油精製、石油化学、ガス処理等の大型プロジェクト物件市場での競争力と収益力の強化を図るべく、11年12月に役員直轄によるプロジェクト統括部を新設した。プロジェクト統括部は、営業部門、エンジニアリング部門(設計、技術、品質保証)、及び管理部門(購買・生産管理)の3部門からなる大型プロジェクト物件の専門組織。エンジニアリング部門が関与する事で見積もりの精度をあげると共に、管理部門が採算管理を徹底する。当初は60人体制でスタートするが、状況に応じて、順次、人員を増強していく考え。尚、プロジェクト統括部の新設に伴い、営業本部プロジェクト営業部の業務をプロジェクト統括部に移管し同部を廃止した。
 
 
今後の注目点
今期のバルブ事業は、子会社が総じて好調だが、建設設備市場の低迷や不採算案件の影響でキッツ本体の苦戦が響いている。ただ、国内においては、震災後の仮需で積み上がった流通在庫の整理が進んでおり、期末にかけて一段の需給改善が見込まれる。また、海外においては、北米の回復に加え、北米やアジア等で現地のグループ企業による独PERRIN社の特殊バルブ(高温高圧等の過酷な条件での使用に適するメタルシートボールバルブ等)販売が軌道に乗ってきた。この他、プロジェクト統括部の新設で、これまで収益の足を引っ張るケースが多かったプロジェクト関連のビジネスにメスが入った事も注目される。銅や為替等の相場リスクは不可避だが、来期の業績を考える上で好材料が増えてきた事は確かだ。
 
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