ブリッジレポート
(7776:JASDAQ) セルシード 企業HP
長谷川 幸雄 社長
長谷川 幸雄 社長

【ブリッジレポート vol.7】2011年12月期業績レポート
取材概要「事業計画が1年程度後ろ倒しになった感がある。しかし、計画が後退した訳ではなく、前例の無い再生医療の分野であるだけに事前に織り込む事・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年3月13日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社セルシード
社長
長谷川 幸雄
所在地
東京都新宿区若松町33-8 アール・ビル新宿
事業内容
細胞シート再生医療を主体とするバイオ企業。東京女子医大・岡野教授の研究実用化目指す
決算期
12月末日
業種
精密機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年12月 86 -1,418 -1,358 -1,442
2010年12月 66 -1,204 -1,002 -1,009
2009年12月 87 -785 -788 -790
2008年12月 61 -778 -644 -650
2007年12月 40 -809 -614 -616
2006年12月 23 -672 -464 -470
2005年12月 34 -412 -336 -343
2004年12月 53 -257 -214 -215
株式情報(2/22現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
976円 5,446,174株 5,315百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - - - 97.55円 10.0倍
※株価は2/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
セルシードの2011年12月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(細胞をシート状に組織化したもの)」を用いて従来の治療では治癒できなかった疾患や障害を治す再生医療「細胞シート再生医療」の世界普及を目指している。事業は、温度応答性細胞培養器材及びその応用製品の開発・製造・販売を行う「再生医療支援事業」と各種用途向けに様々な種類の細胞シートを開発・製造・販売する「細胞シート再生医療事業」(売上計上は11/12期以降)に分かれる。
 
細胞シート再生医療事業
細胞シート再生医療医薬品(各種用途の「細胞シート」)及びその応用製品を販売する。現在、共同研究先と5つの再生医療医薬品パイプライン(新薬候補)の研究開発を進めている。
 
再生医療支援事業
細胞シート再生医療の基盤ツールである温度応答性細胞培養器材(世界で唯一当社が製造)及びその応用製品を開発・製造(多額の設備投資を必要とする一部の工程は外部委託)し、世界各国の大学・研究機関等に提供している。当事業は細胞シート再生医療事業の提携先開拓のための戦略的な意義をも有し、収益だけを目的とした事業ではない。
 
 
 
2011年12月期決算
 
 
1,358百万円の経常損失ながら、想定の範囲内
再生医療支援事業にかかる売上86百万円を計上。温度応答性細胞培養器材と海外商材の売上(仕入販売)が共に計画を上回った。一方、細胞シート再生医療事業は売上計上に至らなかったが、欧州角膜再生上皮シートが第2四半期(4-6月)に上市への最終段階(薬事審査)に入った他、その他の全てのパイプラインがヒト臨床段階に入った。
損益面では、経費節減で一定の成果をあげたものの(研究開発費を除く販管費:615百万円→579百万円)、研究開発費が前期の609百万円から867百万円に増加(欧州角膜再生上皮シート開発費用など約200百万円が次期に持ち越しとなったが)したため営業損失が拡大。補助金収入の減少で(226百万円→55百万円)営業外損益が悪化した他、決算処理に伴う減損損失72百万円など79百万円を特別損失に計上した(前期の特別損失は3百万円)。

尚、12月に業績予想を修正しており、売上・利益共に修正値に沿った着地となったが、第2四半期決算発表時の予想との比較では、細胞シート再生医療事業において見込んでいた角膜再生上皮シートの米国展開に伴うEmmaus Medical 社からの一時金150万米ドル(契約締結当時の為替レート換算で127百万円)の入金が12/12期以降にずれ込んだため売上が大きく下振れした。一方、損失が予想を下回ったのは、欧州での角膜再生上皮シート開発費用など約200百万円が次期に持ち越しとなったため。
 
 
(2)細胞シート再生医療事業の進捗状況
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11年5月31日に欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)宛に承認申請書類を提出し、6月7日にEMAより申請書類の受領確認が到着した。形式面での不備がない事が確認され、現在、EMAが申請書類の内容について審査を進めている。尚、欧州(EU)の薬事規制では、同社の角膜再生上皮シートのような再生医療医薬品など「先端医療医薬品(ATMP = Advanced Therapy Medicinal Product)」については、各国の審査当局ではなくEMA(本部:英国ロンドン) が薬事審査を行う。EMAの薬事審査を経て欧州委員会の販売承認を得た医薬品は、5億人以上の総人口を擁する欧州30ヶ国(=EU加盟27ヶ国+EEA/EFTA 加盟3ヶ国)での販売が認められる。
また、元武田薬品グループのオーストリア法人社長として実績を残したHelmut Hasibeder 氏をグループ欧州地域総責任者に任命した他、欧州販売・マーケティング体制に関する戦略的自由度の見直しに着手し、この一環として、Clonmel Healthcare Limited 社との販売提携を解消した。一方、フランスでの人道的使用(欧州主要各国の許可に基づくヒト患者への薬事承認前医薬品の提供)については、現地の規制強化を踏まえ一旦中止した(後述)。
 
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欧州角膜再生上皮シート以外のパイプラインの研究開発も着実に進捗しており、角膜再生上皮シートの米国展開を含めた5つのパイプライン全てがヒト臨床段階に入った。
 
 
尚、軟骨再生シートは軟骨欠損や変形性関節症を適応症とし、患者自身の関節軟骨細胞や関節滑膜組織細胞を温度応答性細胞培養器材で培養して作製した細胞シート(軟骨再生シート)を患部に移植して軟骨表面を根本的に再生する事を目的とした再生医療医薬品パイプラインである。従来の治療法が軟骨欠損の治療のみを対象としているのに対して、同社の軟骨再生シートは軟骨欠損の治療に加え、変形性関節症も対象としている。
 
 
 
期末の総資産は前期末比1,355百万円減の743百万円。有価証券を現金化して運転資金に充当したため総資産が減少した。
 
(4)11/12期に取得した特許とその概要
同社事業に関わる主要プロセスは、"細胞の採取・分離"、"細胞シート工学による組織構築"、及び"移植治療"の3つのプロセスに分かれるが、11/12期は、"細胞の採取・分離"プロセスで必要となる新型器材「高密度細胞アレイ用基板」にかかる特許、"細胞シート工学による組織構築"プロセスにかかる特許6件(日本4件、欧州2件)、及び"移植治療"プロセスで必要となる細胞シート利用「癌組織モデル作製技術」(細胞シート利用評価システム)にかかる特許の計8件の特許を取得した。取得した特許の概要は次の通り。
 
 
尚、「移植用上皮系細胞の重層化培養方法」は食道再生上皮シートなどの作製方法に関するもので、代表的な患部組織の1つである上皮組織(皮膚、角膜上皮、食道上皮等)の治療に有用な特許。上皮組織の細胞を培養過程で重層化(細胞が縦方向に重なり厚みのある層を成している状態を作り出す事)させる事によって厚みのある細胞シート再生医療医薬品を作製する方法に関するもの。上皮組織の再生にはバラバラの細胞よりも重層化している細胞層を移植する方が効率が良いため、現在は他の細胞と一緒にして培養したり、培地(細胞培養に用いられる栄養分)の組成を特殊な条件に変更する等で重層化が図られているが、これらの方法は培養対象細胞以外の細胞(フィーダー細胞)や薬剤を加えなければならない点が問題となっている。一方、今回特許を取得した新規培養方法では、同社の温度応答性細胞培養器材技術を応用してその表面に温度応答性機能を持たせた膜を用いる事で、フィーダー細胞を使用する事なく上皮系細胞を従来通りの条件で培養しかつ重層化させた細胞シートとして回収する事ができる(共同研究先における食道再生上皮シートの臨床研究はこの方法を利用して実施されている)。

また、細胞シート利用「癌組織モデル作製技術」は、担癌動物を得る際に特定の領域に特定のサイズの癌細胞を作る技術である(意図した場所に、意図した大きさの癌細胞を作る事ができる)。
 
 
3ヵ年(2012年12月期〜2014年12月期)事業計画
 
 
12/12期から14/12期に至る計画及び目標は上記の通りで、同社では「12/12期計画は事業計画において費目毎に予測金額を積み上げた計画値であり、13/12期以降については、市場環境や事業規模の拡大見通し等を勘案した目標値としている。
 
 
再生医療支援事業
販促活動及び商品ラインアップの拡充等で売上高の増加に注力すると共に、引き続き新製品の研究開発を進める。
 
細胞シート再生医療事業
12/12期はEmmaus Medical 社から米国角膜再生上皮シート事業にかかる提携一時金を受領する予定である他、欧州で角膜再生上皮シートの人道的使用が始まる予定で、これに伴う提供対価の獲得が見込まれる。ただ、欧州角膜再生上皮シート事業に関しては、他の施設で進めている治験の中間データ(短期データ)を付与してデータを補強する必要が生じたため販売開始は13/12期になる見込み。この他、心筋再生パッチが今期中に治験に、食道生成シートが治験準備(13/12期に治験開始予定)に、それぞれ入る予定。歯周組織再生シート(14/12期に臨床研究が終了する予定)と軟骨再生シートについては臨床研究が続く。

13/12期については、心筋再生パッチの研究開発に伴う提携一時金の獲得や、(条件付)販売承認(条件付:例えば1年毎などの報告が必要)の取得による欧州での角膜再生上皮シート販売収入の獲得が見込まれる。14/12期の売上が減少するのは、提携一時金の獲得を見込んでいないため。

尚、人道的使用とは、欧州主要各国の許可に基づくヒト患者への薬事承認前医薬品の提供であり、有償で提供する事が可能である。
 
 
同社は11/12期よりフランスにおいて角膜再生上皮シートの人道的使用に伴う有償提供を開始する予定だったが、フランスで複数の薬害問題が発生したため、現地の規制当局の組織改編や規制強化が実施された。、従って、フランス以外のEU加盟国で人道的使用が可能な地域で人道的使用を検討していくことにした。
 
(3)当面の財務戦略
11/12期は、投資有価証券を現金化する事で必要な資金を確保したが、新株予約権を活用した資金調達枠(野村エクイティライン1,000百万円、残額900百万円)を設定する等、12/12期以降の資金手当てのための施策も講じた。

12/12期は、上記の野村エクイティラインの活用に加え、Emmaus Medical社からの提携一時金(2本計1,000万米ドル)の受領を予定している。13/12期は、心筋再生パッチの共同研究開発にかかる提携一時金(500百万円)が見込まれており、この他、更なる提携の拡大や公的補助金・助成金の獲得で資金の積み増しを図る考え。
上記のうち、確定もしくはほぼ確定している野村エクイティライン、Emmaus Medical社からの提携一時金、及び心筋再生パッチの共同研究開発にかかる提携一時金に、現在の手元資金を加えると約2,800百万円となり、13/12期にかけての資金を賄う事が可能で、14/12期分についても大半は手当が済んでいると考える事ができる。
 
 
11/12期決算及び今後の事業計画のポイント
 
11/12期決算及び今後の事業計画におけるポイントは、人道的使用に関する計画の修正、欧州角膜再生シートの収益化の遅れ(薬事許認可取得の遅れ)、及び角膜再生上皮シートの米国展開にかかる提携一時金の受取の遅れ、の3点。

人道的使用に関する計画の修正については既に説明したとおりで、フランスの国内事情によるもの。新しい事業を手掛ける場合、こうした不測の事態は珍しい事ではない。事業計画に多くを織り込んでいなかったため現状では影響は軽微で、また、角膜再生上皮シートに問題があった訳ではなく、事業機会が無くなった訳でもない。

欧州角膜再生上皮シートの収益化の遅れ(薬事許認可取得の遅れ)については、「再現性」が焦点となっているようだ。簡単に言うと、「角膜再生上皮シートの治験は、リヨン国立病院において眼科の権威が実施したものだが(だから治験が順調に進んだ)、他の施設でも同様の結果を得られるのか」という見方もできる。薬事許認可の審査は、書類提出後に当局から質問を受け、同社(申請者)がこれに回答していく事で審査が進められるが、同社は当局からの質問を受けて、当局が「再現性」について疑問を持っていると感じたようだ。このため、多施設で治験を実施し、この結果を質問の回答に添付したい考え(少ない施設で治験を行うと症例数の確保に時間を要するが、多施設で行えば、1施設の症例数が少なくて済むため短期間でデータを集める事ができる)。ただ、質問に対する回答を受けるまで審査が止まるため、回答に時間を要すれば、当初の見通しよりも審査期間が長くなる。要するに、方向性が変わった訳ではなく、前例の無い再生医療の分野であるだけに当局も慎重であり、予想以上に生みの苦しみが大きいと言う事。

角膜再生上皮シートの米国展開にかかる提携一時金の受取の遅れについても特に問題があった訳ではない。Emmaus Medical 社への技術移転と欧州での薬事申請書類の対価として、先ず150万ドルを受け取る予定であったが、米国での薬事申請に必要となる動物への移植実験のデータ等も加える必要が生じた。このデータを用意するために一時金の受け取りが遅れたが、既に動物への移植実験が終了しているため(モデル動物の作製が完了し、現在観察中)、早い時期に支払いを受ける見込み。また、残りの850万ドルについても、製造拠点に関する事項など事業開始に必要な情報交換が必要となるため若干遅れるものの、今12/12期中に受領できる見込み(12/12期の計画には織り込まれていない)。

この他、心筋再生パッチの研究開発に伴う提携一時金についても、現時点では受領時期が確定している訳ではない。
 
 
今後の注目点
事業計画が1年程度後ろ倒しになった感がある。しかし、計画が後退した訳ではなく、前例の無い再生医療の分野であるだけに事前に織り込む事ができなかった作業が発生したと言う事。今後も新たな作業が増えるかもしれないが、それ自体、細胞シートを用いた再生医療が事業化に向けて着実に進んでいる事の証左であろう。角膜再生上皮シートの薬事許認可取得に向けた取り組みの成果とその他のパイプラインの研究開発の進捗に注目していきたい。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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