ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.20

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.20】2012年5月期第3四半期業績レポート
取材概要「原油価格等の不透明感はあるものの、20兆円を超える復興予算が動き出し内需が刺激され、また、米国経済の回復と過度な円高の修正で輸出にも明・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年4月24日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(4/3現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
11,270円 377,000株 4,249百万円 5.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
130.00円 1.2% 450.93円 25.0倍 7,711.90円 1.5倍
※株価は4/3終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
日本エンタープライズの2012年5月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、合言葉は「コンテンツで勝つ!」。音楽・ゲーム・デコメや生活実用系等のコンテンツを制作し携帯等に配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営、システム構築、アフィリエイト広告、更にはCDの制作・販売等を手掛けるソリューションが2本柱。
また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、高い成長が見込める中国とインドでの事業展開では国内コンテンツプロバイダーの中で先頭を走る。中国では2G、2.5G向けのゲームコンテンツ配信を手掛け、3Gの拡大を見据えた電子コミック配信サービスを育成中(中国の作家や出版業界との連携による携帯電話向け電子コミックの配信を既に開始)。インドでもスマートフォン・3G端末の普及を見据えた取り組みを進めており、11年12月に業務提携先のMAGNA社(インドのライフスタイルマガジンの大手出版社)が出版している雑誌の電子(iPadアプリケーション)配信を開始した。

グループは、モバイルコンテンツやインド進出企業の支援事業を手掛ける(株)ダイブ、レーベル事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、交通情報を中心にした情報提供とシステム開発の交通情報サービス(株)、因特瑞思(北京)信息科技有限公司、北京業主行網絡科技有限公司、瑞思創智(北京)信息科技有限公司の連結子会社6社と、Web・Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社3社。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトや、mixi、Mobage、GREEといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へ自社開発したコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリア等から受取っている。中国・インドをターゲットとした海外事業にも取り組んでいる。
 
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバネットワークの運用・監視・保守、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告(アフィリエイト広告:携帯電話販売代理店との協業による成功報酬型コンテンツ販売)、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
<新レーベル「日曜の夜に聴く音楽」をリリース
 -コンセプトは "ブルーマンデー症候群"をやっつけろ!->
子会社アットザラウンジ(株)は、自社レーベル@LOUNGE RECORDSより、CD「『日曜の夜に聴く音楽』を、3月7日にリリースした。昨今、学生でさえこの時間帯は鬱になると言う、社会人がもっとも嫌う時間帯"日曜の夜"。気を紛らわそうとTVをつけるとより日曜日感が…。全ての頑張る社会人へ捧げる「日曜の夜専用」CD!JAZZ~アンビエント~アコースティック~ポストロック、ジャンルの垣根を越え、日本人がくつろげる至極の12曲をコンパイル!日曜の夜はこのCDで、"ブルーマンデー症候群"をやっつけろ!(同社プレスリリースより)
 
 
2012年5月期第3四半期決算
 
 
前期比11.4%の増収、同0.7%の経常増益
売上高は前年同期比11.4%増の1,960百万円。交通情報等の提供を手掛ける交通情報サービス(株)の子会社化効果に加え、電子書籍総合販売サイト「ケータイ書店Booker's」(東京都書店商業組合との共同運営による)や海外での電子コミック事業の寄与でコンテンツサービス事業の売上が1,065百万円と同23.2%増加。ソリューション事業も、モバイルサイト構築・運営や広告サービスを提供してきた他、アットザラウンジ(株)が手掛けるレーベル事業(CD販売)の好調等で前年同期と同額の売上(894百万円)を確保した。
利益面では、CD販売や電子書籍事業の好調で、利益率の高い音楽、メール・カスタム、ゲーム等の売上構成比が低下したため売上総利益率がわずかに低下した他、スマートフォンユーザーの獲得に向けた積極的な広告宣伝費の投入で販管費が増加したものの増収効果で吸収。営業利益は198百万円と前年同期をわずかに上回った。助成金収入の減少等で営業外損益が悪化したものの、特別損益の改善や税金費用の減少で四半期純利益は127百万円と同17.7%増加した。
 
 
 
 
前年同期比13.3%の増収ながら、先行投資が負担となり同36.7%の経常減益
第3四半期から連結決算に取り込んだ交通情報サービス(株)が169百万円の増収要因となり、売上高は716百万円と前年同期比13.3%増加した。コンテンツサービス事業では、交通情報サービス(株)が147百万円の増収要因となった他、電子書籍総合販売サイト「ケータイ書店Booker's」やスマートフォンサイト「女性のキレイ・リズム」が寄与。一方、ソリューション事業では、システム開発等で交通情報サービス(株)の売上21百万円が上乗せされたものの、スマートフォンサイトの開発受託を手掛ける企業向けソリューションが検収の端境期となった他、広告(店頭アフィリエイト)もフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行で一時的に売上が減少した。尚、広告の売上減少は、期初からの累計で無料アプリの比率が上昇したためだが(件数は増加)、足元、無料から有料への移行が進んでおり、第4四半期(3-5月)以降の改善が見込まれる。
一方、利益面では、スマートフォンユーザーの獲得に向けた積極的な広告宣伝費の投入が負担となり、営業利益が58百万円と同37.0%減少した。
尚、交通情報サービス(株)を連結決算に取り込んだ事で、売上原価が62百万円、販管費が65百万円(うち広告宣伝費19百万円)、それぞれ増加した。また、ソリューション事業の減収は予想の範囲内であり、かつ一時的な現象。広告宣伝費の増加も計画に沿ったもので、第3四半期は大幅な営業減益となったが、回復過程にある業績が変調をきたしたわけではない。
 
 
 
第3四半期末の総資産は前期末比456百万円増の3,696百万円。借方では、ソリューション事業の回復で売上債権が増加した他、スマートフォン関連のシステム開発やM&Aで無形固定資産も増加。M&Aや余資運用の一環としての長期預金の預け入れに伴い、現預金が減少する一方、投資その他が増加した。貸方では、M&Aに伴う少数株主持分の増加で純資産が増加した。無借金経営で、かつ流動性に富んだ優れた財務体質も同社の強みであり、自己資本比率も80.2%と高い。
 
 
2012年5月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比19.4%の増収、同6.0%の経常増益
第4四半期(3-5月)は、交通情報サービス(株)の寄与やスマートフォン向けコンテンツの課金収入増でコンテンツサービス事業の売上が増加。ソリューション事業も企業向けソリューションと広告を中心に売上の高い伸びが見込まれる。利益面では、広告宣伝費が増加するものの、増収効果とコンテンツの内製化等によるコスト削減で吸収し、営業利益が同4.9%増加する見込み。配当は1株当たり130円の期末配当を予定。

通期予想に対する進捗率は、売上高69.3%、営業利益70.8%、経常利益70.9%、純利益74.8%。
 
 
(2)来季に向けての施策
①国内事業
コンテンツサービス事業  -スマートフォン向けビジネスの拡大・強化-
コンテンツサービス事業では、スマートフォン向けビジネスを拡大・強化する一方、フィーチャーフォン向けで選択と集中を進める。スマートフォン向けビジネスの拡大・強化では、①スマートフォン月額課金サイトの会員獲得、②携帯通信キャリアの施策対応、及び③アプリ・サイトの利用者拡大の3項目を挙げており、①スマートフォン月額課金サイトの会員獲得では、携帯電話販売代理店に対して成功報酬型コンテンツ販売(リアルアフィリエイト)プログラム(携帯電話販売代理店に契約件数に応じた手数料を支払う)である自社の広告事業「店頭アフィリエイト」を活用する。また、②携帯通信キャリアの施策対応では、既に実施している「auスマートパス」(後述)へのコンテンツの提供のように、携帯通信キャリアの施策にあわせたタッチポイントの拡大に取り組む。また、③アプリ・サイトの利用者拡大では、海外マーケットへの進出に向け、コンテンツの多言語化を図る他、生活実用系やツール系などジャンルを拡大し利用者獲得のための間口を広げる。また、コンテンツの機能拡充や品質向上にも継続的に取り組む。

尚、「auスマートパス」とは、月額390円(税込)で、500本以上の人気アプリ取り放題、おトクなクーポンやポイントサービス、10GBの写真や動画のストレージ、更には充実したセキュリティとサポートサービスを受けることができるサービス。Android搭載のauスマートフォン向けに提供されている。
 
スマートフォン向けコンテンツの一例(スマートフォンでの利用者拡大に向け、生活実用系やツール系等を拡大・充実)
 
 
ソリューション事業
ソリューション事業では、企業向けソリューションにおいて、アプリやサイト等、引き合いが増えているスマートフォン向けコンテンツ制作への対応を進めると共に、アフィリエイト広告向けのシステム開発で培った技術を活かして携帯電話販売店の店舗運営支援に取り組む(業務効率化システムの開発と提供)。ソリューションコンテンツでは、シェアモデルのフィーチャーフォンサイトのスマートフォン対応を進める他、交通情報サービス(株)が持つ情報系コンテンツを活かしソリューションの幅を広げていく。この他、スマートフォン向けの店頭アフィリエイト(広告)、ECサイトによる販売及び楽曲制作によるCD販売(物販)も強化する。
尚、携帯通信キャリアのスマートフォン向けサービスの対応遅れもあり、一時期、スマートフォン向けでは無料アプリが増加し、店頭アフィリエイト全体の単価が低下したが、携帯通信キャリアによるスマートフォン向け新メニューの提供開始(第3四半期)以降、有料アプリ(課金会員)が増加しているため単価は上昇傾向にある。
 
 
②海外事業
海外事業のキーワードは「選択と集中」。中国では電子コミックに、インドでは電子雑誌に、それぞれ経営資源を集中している。
 
中国:電子コミック
中国においては、3Gの拡大を見据えて事業ドメインを電子コミックの配信サービスと位置付け、中国の大手国営総合出版社である「中国軽工業出版社」との業務提携や中国の漫画家と出版社の団体である「漫画家新媒体連盟」との協業によりコンテンツを確保し、中国子会社北京業主行網絡科技有限公司(日系企業としては唯一、中国での配信ライセンスを保有)を通して自社サイトや通信キャリア及びメーカー等のサイトに配信している。
中国では、事業の開始当初は感じられた漫画に対する抵抗感が薄れつつあり、実際、ユーザーも増加傾向にあると言う。ただ、日本のように通信キャリアによる課金制度が確立されていない上、海賊版等の横行もあり、いかにして確実に課金し収益につなげるかが課題となっている。
 
 
インド:電子雑誌
インドにおいては、スマートフォン・3G端末の普及を見据えた取り組みを進めており、この一環として、現地の出版大手MAGNA社と業務提携。同社が出版している映画関連雑誌「STARDUST」の電子書籍配信(iPadアプリケーション)を、11年12月20日に開始した。現在、プロモーションの強化と配信先プラットフォームの拡充(Google Play等)に取り組んでおり、取扱雑誌の拡大を図るべく雑誌社各社との関係強化にも力をいれている。
 
 
今後の注目点
原油価格等の不透明感はあるものの、20兆円を超える復興予算が動き出し内需が刺激され、また、米国経済の回復と過度な円高の修正で輸出にも明るい兆しが見えてきた。このため、大手証券会社が企業業績の見通しを上方修正する等、2013年度の見通しは明るく、リーマンショック以後、苦戦が続いていたモバイル向けのコンテンツ制作・運営やシステム構築等(ソリューション事業)が、いい意味で転機を迎えている。また、コンテンツサービスも、優良企業のM&Aや中国での電子書籍事業の軌道化、更にはスマートフォン向けコンテンツにおける課金会員の増加等、好材料が多い。特に、交通情報サービス(株)は、モバイルネットワーク時代の自動車の利便性向上に不可欠なサービスとして注目されているテレマティクスの一翼を担う企業だけに、中期的にはグループ価値の向上に大きく寄与するものと考える。早期のグループシナジーの顕在化が期待される。