ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.21
(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 |
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企業名 |
株式会社キリン堂 |
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会長 |
寺西 忠幸 |
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社長 |
寺西 豊彦 |
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所在地 |
大阪市淀川区宮原4-5-36 |
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決算期 |
2月 |
業種 |
小売業(商業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年2月 | 102,229 | 1,684 | 1,960 | 184 |
2011年2月 | 100,465 | 1,118 | 1,537 | 188 |
2010年2月 | 104,964 | 1,232 | 1,527 | -443 |
2009年2月 | 106,695 | 1,781 | 2,030 | 500 |
2008年2月 | 106,098 | 2,321 | 2,530 | 804 |
2007年2月 | 72,803 | 1,312 | 1,651 | 577 |
2006年2月 | 66,690 | 1,308 | 1,574 | 753 |
2005年2月 | 58,165 | 745 | 985 | 414 |
2004年2月 | 48,281 | 1,084 | 1,283 | 607 |
2003年2月 | 39,144 | 1,095 | 1,215 | 577 |
2002年2月 | 33,274 | 868 | 982 | 253 |
2001年2月 | 28,192 | 718 | 742 | 341 |
2000年2月 | 25,537 | 535 | 596 | 309 |
株式情報(4/12現在データ) |
(レポート作成日 4月12日) |
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今回のポイント |
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会社の特色 |
関西基盤のドラッグストアチェーン、関西ではトップクラス
小商圏に立地する地域密着型のドラッグストアをチェーン展開する。当社は関西を中心に北陸や四国、関東にも店舗展開をしている。ドラッグストアを主力に、調剤薬局にも力を入れている。2012年2月期末で、当社直営店が235店、FCが3店、ジェイドラッグが2店、ニッショードラッグが75店のグループ計315店を展開する。当社はこれまでM&Aを積極的に行っており、91年に調剤薬局チェーンのメディネットを買収(04年に吸収合併)、06年にはジェイドラッグ、ニッショードラッグを子会社化してきた。当社は、関西を基盤に成長、6,000~8,000世帯の小商圏でドミナント(立地上の強み)を築こうと力を入れ、関西では業界トップクラスとなっている。当社とニッショードラッグの違いは、当社が売場面積300坪の郊外大型店(スーパードラッグストアと名付けている)を主力としているのに対し、ニッショードラッグは売場面積150坪の比較的小型な店舗を住宅地に展開している点だ。さらにニッショードラッグは当社に比べ、雑貨等の売上構成比が高く、医薬品、健康食品、化粧品という粗利率の高い部門のウエイトが相対的に低い。ニッショードラッグでも医薬品、健康食品、化粧品部門の拡販に力を入れており、この8月にはキリン堂へ経営統合する予定だ。 健美舎は1973年に設立され、健康食品の企画・開発を手掛けてきた。現在は主に、当社のPB商品となる健康食品や化粧品等の企画・開発を手掛け、生産は外部にアウトソーシング(OEM)している。 寺西会長がリーダーシップを発揮、「顧客第一」への仕組み作りと社員教育にシフト
ドラッグストアの事業展開において、4年前までは売上志向の拡大戦略をとってきた。売上拡大のための商品戦略や売場戦略を強めすぎたため、顧客への本来のサービスという点では課題が蓄積した。さらにこの間、市場は変化し、ドラッグストア業界は成熟色を強めていった。顧客第一の質的サービスを基本とする当社にとって、創業者である寺西忠幸会長は売上拡大だけではこの局面を乗り切れないと判断し、以来事業の見直しに力を入れてきた。
未病、セルフメディケーションへのサービスを目指し、「楽・美・健・快」を追求
寺西会長は創業以来、人々が「未病」、つまり病気にならないように早めにサポートすることを経営理念としてきた。一人ひとり自らが健康に配慮して適切な対応をするというセルフメディケーションのためのサービスを心掛けてきた。それによって、生活を楽しく美しく健康で快適に過ごせるようにと「楽・美・健・快」を事業の基本としている。寺西会長の考えでは、未病(病気になる前の状態でいろいろ手を打つこと)と小商圏がキーワードである。その中で、単に規模を追及した成長志向ではない経営を目指そうとしている。それには社員の意識改革が必要であり、そのための社員教育に力を入れている。例えば、店頭での「ありがとう、助かったわ」という感謝の言葉が、社員の意識を変え、そこから新しい社会的価値が生まれる、と強調している。ビジネスモデル(企業価値創造の仕組み)を抜本的に変えようという試みである。 M&Aにも積極で、ニッショードラッグなどを子会社化
2006年12月にニッショードラッグを子会社化した。同じ関西を中心としながら当社よりも小さい店で住宅地に立地している。そのほかにもM&Aを手掛けているが、現状では一人当たり売上高という生産性指標でみると、やや人員が多い。これに対して、寺西会長は人員を意図的に削減するのではなく、人を活用して拡大均衡にもっていこうとしてきた。一方、関西地域での競合をみると、従来は当社グループが他社を引き離してトップであったが、2010年10月にアライドハーツ・ホールディングス(以下、アライド)が、ココカラファイングループに入った。共同持株会社であるココカラファインに属する旧アライドとセガミメディクスを合計すると当社グループに肉薄しており、現在、関西では、当社グループとココカラファインを中心としたトップ争いになっている。 市場成熟、業界再編の中で構造改革を推進
寺西会長はいかにお客様に向き合い、サービス向上に努めるかに力を入れており、そのための構造改革に取り組んでいる。さらにここ数年、顧客第一主義を徹底するため、主体性・当事者意識をもった従業員を育てる社内教育を行っている。構造改革では、店舗内の無駄な作業に時間を費やすのではなく、その時間を顧客への接客や説明に対応できるように作業改善を行うため、売場改装を進めている。この店舗作業改善をバックアップするのが新物流センターと、前期から導入が始まった需要予測型の自動発注システムだ。自動発注システムも1個売れたら1個発注するのではなく、予想販売数量を一括で発注することで補充頻度が下がるため、作業効率の改善が期待される。 現在、当社は小商圏に合った店作りで、繰り返し客に来てもらえるような仕組み作りを徹底しようとしている。月次売上をみると、既存店は2年間、ずっと前年割れを続けてきたが、前期から変化を見せている。売上も大事だが、それ以上にビジネスの仕組みを顧客に向け、付加価値を高めるようにした。それが進展をみせ、売上、利益の落ち込みにも歯止めがかかり、前2012年2月期の連結業績は大きく上向いた。 地域コミュニティの中核として存在感を高める
当社とニッショードラッグの展開地域は、大阪と兵庫を中心に関西に拡がっている。販売管理費の配賦の仕方にもよるが、粗利率の高い商品部門の売上構成ウエイトを高めることで、営業利益段階での利益貢献が大きくなると考えてよい。また、大阪府高槻市に新しい物流センターを開設し、2011年1月より本格稼動を始めている。これまでの門真市の物流センターは配送センター的な役割だけで、十分な在庫管理機能を持っていなかった。新センターは店舗の棚ごとの納品を可能にし、返品や回収にも対応できる。これによって、小商圏での店舗効率が大きく高まることになる。
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中期3ヵ年計画 |
カウンセリングを強みとしつつ、地域医療との連携強化を図る
中期3ヵ年計画は毎年ローリングしていくが、基本方針に変化はない。顧客第一主義の店作り、収益性の改善、中長期の成長に向けた取り組みである。とりわけ、カウンセリング販売の仕組み作り、PB商品の開発、調剤関連の売上拡大に力を入れていく。前2012年2月期(連結)の売上高経常利益率は1.9%であったが、3年後の2015年2月期には3.0%を目指している。2015年2月期(連結)で、売上高1,165億円、経常利益35億円、当期純利益12億円が目標である。出店も自社出店で年間10店以上を目指してしる。 寺西会長は、今後の経営方針として次のような基本観を持っている。ドラッグストアのM&Aを行ってきたが、人員は減らさずに新しい事業で吸収することを考えてきた。これからもそうである。調剤薬局を手掛けつつ、在宅介護ビジネスに入っていくには薬剤師をもっと鍛える必要がある。 基本は6,000世帯くらいの小商圏に調剤薬局を併設したドラッグストアを展開し、顧客には何回も来店してもらうような固定客化を図っていく。 一方で、子会社のソシオンヘルスケアマネージメント(以下、ソシオン)を活用する。ソシオンは病院のコンサルを本業とする。国の方針は医療費抑制の観点から療養病床を減らそうとしている。病気の治療は病院で行うが、療養は自宅で行ってもらい、それをサポートする仕組みを作っていくという方向である。リハビリのデイケアも必要であり、在宅支援を行うための「かかりつけ薬局」も必要である。こうした分野で、当社が得意とするところをビジネスにしていく。 ドラッグストアでは、セルフサービスを強化しつつ、未病に対してはカウンセリングに力を入れていく。未病とは、病気ではないけれどもすっきりと健康でもない状態をいう。ここに的確なカウンセリングをして、顧客の信頼を得ていこうとしている。顧客が何度も来店していただけるような販促にも力を入れていく。そのためには、店舗作業の改革を行う構造改革が必要であり、人材への専門性教育が必須である。 ドラッグストアという物販から顧客サービスを見るだけではなく、ドクターの視点から病院の困っていることもサポートする。同時に、未病で悩んでいる顧客にサービスするという観点から事業を再構築しようとしている。 小商圏のコミュニティをターゲットにする
寺西会長は日本の小売業は抜本的に変わる必要があり、ドラッグストア業界も今までの延長線では経営が続かない、と考えている。小商圏のコミュニティにお店が根付いて、繰り返し来てもらえるような仕組みを一段と強化する必要がある、と強く意識している。6,000世帯の人々に安心した生活を提供しようというのが基本である。小商圏でのドミナントを形成し、高齢化に対応して地域医療にも適応したサービスの仕組み作りを進めようとしている。厚生労働省の発表によると、がん患者(年152万人)に対し、認知症などの精神疾患患者は325万人に上るとされる。今後、在宅介護がますます必要になってくるだろう。関西でのドミナントを進め、子会社であるソシオンと協働で、医療モール併設型調剤薬局の開設や在宅介護支援を推進し、地域医療に貢献できる企業グループを目指そうとしている。
連結経常利益35億円、355店を目指す
今回の中期3ヵ年計画(連結)では、前期の経常利益19.6億円に対して、今期22.1億円、2年目29.5億円、3年目35.2億円を目指している。そのための施策の基本は、既存の事業で収益を上げていくことである。新たな布石としては、ソシオンとの協働による医療モール併設型調剤薬局や大型調剤薬局の開設、在宅介護支援などが注目される。中期3ヵ年計画(連結)では、新規自社出店を1年目11店、2年目12店、3年目17店を予定し、3年後には355店となる見通しである。この間、全社的な販管費はおさえて、粗利率の向上により経常利益の拡大に結び付けようとしている。当社グループは毎年3ヵ年の中期計画をローリングしてきた。09年度の時には2015年で売上高2,000億円、店舗は500店、売上高経常利益率3%という大きな計画を打ち出していたが、2010年度にはこうした中期計画を一旦取り下げた。 従来の売上拡大志向の事業展開ではなく、効率を高めるための内部固めに入ったのである。出店すれば売れるという考えではなく、地域で信頼される店舗作りにシフトする必要があった。チラシで安さを訴求するのではなく、接客の時間をいかに作っていくかに仕組みを変えようとしている。調剤薬局の処方せん取扱い店舗は、315店中47店である。既存店舗は調剤スペースを有しているので、クリニックの開業状況を見ながら、処方せん取扱い店舗数を増やしていく方針である。中期3ヵ年計画(連結)では、調剤売上高を現在の68億円から100億円にもっていくことを目標にしている。 また、当社グループのPB商品のウエイトは現在商品売上高(小売事業)の8.9%であるが、これを10%にまでもっていきたいと会社側では考えている。健康食品、化粧品、雑貨などでマーケティングを強化していく。 マツモトキヨシHDと連携し、PB商品を強化
当社はドラッグストア業界最大手のマツモトキヨシHDとPB商品の開発で連携をとることにした。資本提携や業務提携という強いものではない。当社の強みである健康食品をはじめ、PB商品の企画で顧客志向のものを量産できれば、コストを下げることができ、収益性は高まる。ここを狙っている。まずは互いにメリットのあるビジネスで一定の成果を上げることが先決で、そこがうまくいけば次の展開にも広がってこよう。マツモトキヨシHDとはPB商品の共同開発、相互供給を行うことで合意している。店舗の立地が両社でさほど競合せず、PB商品のバッティングも少ない。そこでまず既存のPB商品をやりとりして、その後に共同開発に入る考えである。PB商品を共同で開発し、そこで生産効果を出し、コストを下げて、顧客に提供しようとしている。300店規模(当社グループ)と、1,200店規模(マツモトキヨシHD)ではボリュームが違うからである。 マツモトキヨシHDとの連携は単純な規模の追求ではない
社会が高齢化、少子化に向かう中で、小売業はより地域密着型であることが求められる。地域密着型における各々の良さを追求していくことになる。成長というコンセプトではなく、改革の推進である。単なるボリュームの追求ではなく、新しい商品開発に力を入れていく。そこで互いの強みを活かすことができれば意義は大きいと考えている。
中国での店舗展開はしばらく様子を見ていく方針
現在、中国において外資系企業が医薬品販売許可を取得するのは非常に困難な状況だ。医薬品のないドラッグストアというのは、成立するとしても当社のノウハウは生きない。よって中国でのドラッグストア展開は暫く様子を見ることとした。当面は、2012年1月に設立した子会社「麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司」を通じて、日用雑貨の輸出入に力を入れて、タイミングをみる方針である。中国でのドラッグストア展開には、問屋機能が発達していないので、商品のギャザリングが十分ではなく、今のところは時期尚早である。この中国の子会社は事業活動を開始したので、前期より連結対象に入っている。
在宅支援で独自展開、ソシオンとの協業を活かす
2010年8月、ソシオンヘルスケアマネージメント(以下、ソシオン)を子会社化した。6,000~8,000世帯の小商圏に店舗を出すことによって地域密着型のドラッグストアチェーンを成立させると同時に、ソシオンと共に、両社のノウハウを最大限に活かし、医療モールや在宅支援で地域コミュニティの中核になろうとしている。ソシオンは医療機関や介護施設との結びつきが強く、さまざまなコンサルティング事業を手掛けてきた。ソシオンは、在宅医療サポートを手掛けている。関東で400人、関西で1,800人をサポートしている。
新たな医療モールで先行
2011年10月、奈良のあやめ池に医療モール"メディカルコートあやめ池"がオープンした。「メディカルコートあやめ池」は、近鉄グループの駅前環境創造プロジェクト「近鉄あやめ池住宅地」の中枢を担う、医療・健康・福祉ゾーンの一画に誕生した医療モールである。医療モールには5つの診療所が開業し、当社は調剤薬局を開局した。今夏には、近鉄あやめ池遊園地跡地に有料老人ホームができる予定で、当社は医療機関と連携し、在宅医療サービスの提供を開始することになる。また現在、複数の医療モール案件を有しており、今後も医療モール併設型調剤薬局をオープンする予定だ。いずれも当社の子会社となったソシオンがオルガナイズしているものである。 新百合ヶ丘総合病院がこの秋に本格スタートする。新宿から25分のところにあり、地域としては川崎市に入る。377床の総合病院で、総合南東地病院を運営する三成会が東京に進出してくる。ここに2つの大型調剤薬局を開局する予定だ。 介護事業はリハビリ型
ソシオンはコンサルティングとして、在宅支援に力を入れている。一般に病院の医師が在宅医療を行うには、今のしくみのままでは大きな負担がかかっていると考えるからである。そこで、新しい仕組みを作って、在宅支援サービスを本格的に普及させようと計画し、推進している。例えば、介護への参入では、機能訓練に軸足を置こうとしている。病院では緊急を要する急性期治療に重点が置かれており、何らかの機能回復を必要とする人は、デイサービスのサポートを求めるが、その役割を担う施設は少ない。 そこで、在宅患者を引き受けて機能訓練を行うスポーツクラブのような施設を東京の渋谷に作る計画だ。病院のそばにリハビリ施設を作り、そのそばに薬局も置くという考えである。このビジネスモデルが成り立つかどうかを需要の多い東京で実験して、それが上手くいけばキリン堂の本拠地である関西で展開するという方向である。 差別化になる医療ネットワーク作り
こうした医療モールを手がけたいという企業は多いが、ドクターとの結びつきが強くないと中身の充実した施設(モール)とはならない。ソシオンはこの分野で独自のノウハウを有しており、強みを発揮している。こうしたモールができれば、調剤薬局が必要になり、日用生活必需品を取り扱うドラッグストアが担う役割も大きい。ソシオンと共に、在宅医療のネットワークを強化する。地域住民、患者とドクター、介護施設、調剤薬局を結び付けて、かかりつけの新しい仕組みを作ろうとしている。こうした試みが上手くいくと、当社の差別化戦略としては重大な意味をもってこよう。ソシオンは医療機関や患者の目線でサービスを提供することを考える。薬局、薬剤師とドクターを結び付けるのはもちろんだが、施設在宅も考える。施設とドクターを結びつけ、多面的な展開でサービスの質と効率を高め、ビジネスとして成立させることを考えている。ビジネスとして成り立たなければ、在宅医療といっても掛け声だけになってしまう。京都での介護付有料老人ホームでは、認知症の入居者への対応も考慮する。つまりその方々の物販に対するニーズに応えるということだ。在宅患者、施設サービス、ホームドクター、基幹病院、薬局薬剤師がうまく連携できるシステム作りが求められ、ソシオンはこれを担っていく。このシステム化ができると当社にとって、明確な差別化戦略となる。 |
当面の業績 |
2年前に業績は底入れ
ここ数年の業績をみると、売上は伸び悩み、経常利益はダウントレンドにあった。2年前からの業務の見直しで、売上志向ではなく、サービス向上にシフトしてきたことが、収益面では必ずしもプラスに働かなかった。しかし、2011年2月期は、減収ながら経常利益は横ばいをキープし、業績は底入れする局面に入った。2011年2月期(連結)は売上高1,004億円(前期比△4.3%)、経常利益15.3億円(同+0.7%)、当期純利益は1.8億円(黒字化)となった。売上高が減収となったのは、主力の当社で、既存店客数が同△5.4%、既存店客単価が同△0.8%となった影響が大きい。商品部門別では、花粉症やインフルエンザが、前年同期に比べて流行しなかったので医薬品部門が同△11.1%となった反面、調剤部門は同+5.1%となった。販管費ではチラシの削減など、コスト削減効果や営業の見直し効果もあり改善した。粗利率は商品部門別の売上構成の変化や値入改善で、同+0.1%アップとなった。当期純利益は黒字となったものの、減損が4.4億円ほど発生したことなどがマイナスとして響いた。 前2012年2月期(連結)の営業利益は大きく好転
2012年2月期(連結)は、売上高1,022億円(前年度比+1.8%)、営業利益16.8億円(同+50.5%)、経常利益19.6億円(同+27.5%)、当期純利益1.8億円(同△2.0%)となった。営業利益が大幅に改善したのは、粗利益の向上が寄与したからである。春先の花粉症関連商品の販売増や、震災の影響による生活必需品の需要増に加え、調剤部門や健康食品部門が好調であった。また、2010年8月に子会化したソシオンも粗利率改善に寄与した。経常利益に比べて、当期純利益が少ない要因は、資産除去債務費用△590百万円を含めて、特別損失が△755百万円ほど発生したことによる。資産除去債務は会計ルールの変更に伴い、店舗などの資産を除去する時に要する費用を見積もるもので、一時的に大きく発生する。 売上高の77%はドラッグストアのキリン堂(単体)が占める。ここの既存店売上高は前期比+0.9%と好調であった。主因は調剤薬局の伸びにあるが、大震災の影響による雑貨の伸びや花粉症関連商品が良かったことも寄与している。 全社の粗利率(売上総利益率)が26.8%へ、同+0.6ポイントほど上昇したが、これはキリン堂(単体)における調剤部門の伸びと、雑貨の値引きが減少したことによる。また、医療コンサルティングのソシオンの収益もプラスに寄与した。 販管費はほぼコントロールできている。対売上比で25.2%と同0.1ポイントほど上昇している。 出退店は、出店+8店、退店△4店で、2012年2月期末の店舗数は315店(+4店)となった。このうち、調剤薬局は併設も入れて、47店である。近鉄あやめ池住宅地に、ソシオンがマネジメントした医療モール「メディカルコートあやめ池」へ調剤薬局「北あやめ池店」を開局した。 構造改革は順調に進んでいる。これまで進めてきた構造改革の3本柱、①タスクフォース主導による売場改装、②新物流センターの稼働、③需要予測型自動発注システムの導入、は効果を発揮してきている。本来の顧客サービス向上がどこまで発揮されてくるかは、もう少し見定める必要があるが、期待はもてる。 今2013年2月期(連結)も増益を目指す
2013年2月期(連結)の新規出店は11店(上期6店、下期5店)を予定している。業績は売上高1,053億円(前期比+3.0%)、営業利益18.8億円(同+11.6%)、経常利益22.1億円(同+12.7%)、当期純利益7.6億円(同+311.3%)を見込んでいる。特別損失を7億円ほど見込んでいるが、うち減損を6億円と保守的に見積もっている。
特別損失は前期で一巡へ
2010年2月期(連結)は、会計ルールの変更に伴うたな卸評価損の発生により当期純利益ベースで赤字となった。2011年2月期(連結)は店舗の減損のほか、退職給付改定損などが発生した。2012年2月期(連結)は、店舗の資産除却債務が発生した。これらによって、表面の税引き利益は低く抑えられているが、キャッシュフローベースでは必ずしもマイナスとはなっていない。2013年2月期(連結)も減損など一定の特別損失を見込んでいるが、前期までで大きな影響は一巡しており、当期からはかなり正常に戻ってこよう。 財務体質の改善に注力
2012年2月期(連結)は営業キャッシュ・フロー30.1億円に対して、投資キャッシュ・フロー10.0億円となり、フリーキャッシュフローが増え、現預金は10.3億円増となった。前述の医療モール併設型調剤薬局「北あやめ池店」の開発は、ソシオンがオルガナイズしているが、当社が投じた資金は調剤薬局の開局資金だけである。つまり医療モールの開発で、当社に大きな投資負担が発生することはほとんどない。今後の事業展開は、営業キャッシュ・フローの範囲内に納めることを基本にしており、余裕資金が発生すれば、できるだけ借入金の返済に回していく計画である。
今期の重点施策は5点
2013年2月期の重点施策は次の5点である。
(1)小売事業部門の経営統合
2012年2月16日付けで、ジェイドラッグをニッショードラッグに吸収合併したが、この8月にはニッショードラッグをキリン堂に吸収合併する。ニッショードラッグを傘下に入れて以来、5年を経て、事業の効率を図ってきた。キリン堂ブランドの浸透や人材の活用の弾力化等により、一層の営業推進を図る予定である。ニッショードラッグのM&Aを実施したのは2006年12月である。今回の経営の実質的統合まで5年かかっているが、その理由は、社員の価値観を1つにし、就業規則やその他規程などを統一するのに十分時間をかけたことと、経営統合に伴う税務面での対応でもデメリットが生じないようにしたためである。 (2)ライトカウンセリング販売
既存店の活性化に向けた構造改革の推進では、セルフサービス売場の徹底により、健康と美容の相談ができるライトカウンセリング販売体制づくりに力を入れている。売場改装では過去2年で150店ほど実施したが、当期は84店を計画している。2011年1月に本格稼働した新物流センターの活用、需要予測を自動発注システムの導入(前期115店導入済み)などによって、顧客に合ったセルフサービスで時間の余裕を作り、それをカウンセリング販売に当てるという考えである。カウンセリングに力を入れるという当社の方針は着実に浸透しつつあると、寺西会長はいう。キリン堂の近くに同業他社が進出してくると確かに食品などの売り上げには影響は出るが、当社の強みは効果を上げている。 (3)来店回数の増加による顧客の固定化
顧客をいかに引き付けるか。このカスタマー・リテンション(顧客の保持)に向けCRMを利用した固定客作りに力を入れている。リピート客の来店回数を増やすようにDMやクーポンなど活用するほか、チラシの内容や配布エリアを見直しながら新規顧客の獲得を目指している。
(4)PB商品の販売強化による粗利率の向上
前期はPB商品の粗利率が39.4%と1.7%ほど改善している。PB商品は小売事業売上高の8.9%を占めているが、これを一段と上げていく。キリン堂とマツモトキヨシHDとのPB商品の相互供品についても、マツモトキヨシHDから80アイテム導入、キリン堂から21アイテム(健康食品中心)供給というように次第に交流が広がっている。
(5)大型調剤薬局の開設
子会社ソシオンとの連携で、神奈川県の新百合ヶ丘に大型調剤薬局を2店出店する。新百合ヶ丘総合病院は、総合南東地病院が進出してくるもので、日本でも先端の病院経営システムが確立されている模様。
この他にも、(有)大賀薬局からすでに3店の調剤薬局を譲り受けており、調剤薬局を今期中に54店まで増やす予定である。また、在宅支援への取り組みでは、訪問服薬指導を行う薬局が既に10店になってきた。この中期3ヵ年計画では調剤薬局の連結売上高100億円を目指しているが、今期は前期比+8.4%の74億円を計画している。
安定配当志向・・・配当額重視
当社は、配当性向よりも配当額を重視して安定配当を行う方針である。多少業績が変動しても、配当額は安定して確保したいという考えである。過去を見ると、配当額は少しずつ増えてきており、直近3ヵ年は1株当たり年間20円の配当を実施、今期も年間20円を予定している。これで株主に還元していく方向にある。
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