ブリッジレポート
(3778:東証マザーズ) さくらインターネット 企業HP
田中 邦裕 社長
田中 邦裕 社長

【ブリッジレポート vol.1】2012年3月期業績レポート
取材概要「今後の同社の成長に深く関与する石狩データセンターは、既に説明した通り「世界標準のコストパフォーマンスと優れた柔軟性・拡張性」を強みとし・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年5月22日掲載
企業基本情報
企業名
さくらインターネット株式会社
社長
田中 邦裕
所在地
大阪市中央区南本町1-8-14 堺筋本町ビル
事業内容
東阪でデータセンター運営。業界大手。双日が連結子会社化狙いTOB実施、上場は維持方針
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 9,164 873 808 556
2011年3月 8,584 1,225 1,194 572
2010年3月 7,812 748 723 567
2009年3月 7,106 392 349 374
2008年3月 6,478 85 -25 -632
2007年3月 4,703 -271 -346 -493
2006年3月 2,758 210 197 105
2005年3月 1,930 133 132 70
株式情報(4/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
566円 8,677,536株 4,911百万円 22.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 0.9% 46.10〜57.62円 12.3〜9.8倍 315.60円 1.8倍
※株価は4/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
さくらインターネットの2012年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京(3:西新宿、東新宿、代官山)、大阪市(堂島)、石狩市(北海道)にデータセンターを展開し、ハウジング(コロケーション)サービス及びホスティングサービスを手掛けている。スタートアップビジネスから大規模サイトの運営まで幅広い用途に対応し、コストパフォーマンスに優れた汎用性の高いシンプルなサービスを特徴とする。主な顧客は、ITサービス事業者、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)、ブログやホームページを公開している個人等。
 
【事業概要】
ハウジングサービス(以下、サービスを略)とは顧客のサーバを同社のデータセンターで預かるサービスであり、同社は場所(スペース)の他、回線、電源等を提供する。一方、ホスティングは同社がサーバを運用し、サーバ環境をインターネット上で提供するサービスであり、12/3期の売上構成比は、ハウジングが32.8%、ホスティングが57.6%、及びこれら業務に付帯するサービスや「さくらのクラウド」等の新サービスを含むその他が9.6%。
 
 
ハウジングは、ラック(ラック単位でのスペースの貸し出し)、個室(ケージ)、オープンスペースといったバリエーションがあるが、同社はラック単位での貸し出しを行っている。一方、ホスティングは、物理サーバを貸し出す物理ホスティングと物理サーバ上に複数の仮想マシン(VM)を作成しVM単位でサービスを提供する仮想ホスティングに分かれ、物理ホスティングは1台の物理サーバを1顧客が占有する専用サーバ(サービス名「さくらの専用サーバ」)と1台の物理サーバを1顧客(同「さくらのマネージドサーバ」)もしくは複数の顧客で利用するレンタルサーバ(同「さくらのレンタルサーバ」)に分かれ、専用サーバはサーバの設定やソフトウェアのインストール等での自由度の高さを特徴とし、レンタルサーバは専用サーバに比べて制約はあるもののメンテナンス等を自社で行う必要がない。仮想ホスティングでは、仮想化技術を用いる事で、レンタルサーバ並みの安価な料金で専用サーバ並みの自由度の高さを実現。申し込みから数分で利用可能なVPS(同「さくらのVPS」)を提供している。
 
 
また、「さくらのクラウド」は新サービスであり、未だ事業規模が小さいため「その他」に売上区分されているが、本来、仮想ホスティングの一つで、同社はIaaS型クラウド(パブリッククラウド)を提供している。IaaS型クラウドは、VM単位でのサービスでは対応できない従量課金や柔軟なリソース増減が可能であり、一方、VM単位でのサービス(同社では「さくらのVPS」)は左記の対応ができないものの、IaaS型クラウドサービスに比べてコスト面でメリットがある。
 
【沿革】
事業のスタートは、現在、社長を務める田中邦裕氏が舞鶴高専の4年生(18歳)の時にサーバインフラの提供ビジネスを開始するべく "sakura.ne.jp" というドメインの取得申請を行った1996年12月に遡る。ドメイン取得後に(共用)レンタルサーバサービス「さくらウェブ」の提供を開始し、翌97年6月には専用サーバサービスの提供を開始した。自らデータの置き場に困っていたため、「それなら自分でやってみよう」と言うのが起業の動機だったが、予想以上にニーズは多く、99年8月には さくらインターネット(株)として法人組織に改組。同年10月に大阪(大阪市中央区)と東京(京都豊島区)にデータセンターを開設し、ハウジングサービスを開始した。

2000年4月にはエス・アール・エス(株)、(有)インフォレストと合併し、商号をエスアールエス・さくらインターネット(株)へ変更。同年12月にエス・アール・エス(株)の代表取締役社長だった笹田亮氏が代表取締役社長兼CEOに就任した。04年7月には商号を さくらインターネット(株)へと変更し、ホスティングサービス(レンタルサーバサービス)の提供を開始。05年10月に東証マザーズに株式を上場した。東証マザーズ上場後もデータセンター事業が順調に拡大したものの、06年8月から開始したオンラインゲーム事業で苦戦(米Turbine社の「ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン ストームリーチ」と「The Lord of The Rings Online」の日本語版を運営)。オンラインゲーム事業とデータセンター事業との親和性の高さに着目したものだったが、07/3期、08/3期の2期間で11億円強の最終損失の計上を余儀なくされ債務超過に陥った。

このため、07年11月に田中邦裕氏が代表取締役社長に復帰し、再建に向けた取り組みを本格化した。幸い国内トップクラスの実績を有するデータセンター事業が好調だった事と田中邦裕氏のリーダーシップもあり、08年2月に双日(株)と資本提携し(持分法適用会社となる)、債務超過を解消。11年2月には双日(株)のTOBに賛同し資本関係を強化すると共に(連結子会社となる)、改めて業務提携契約を締結。同年11月にはクラウドコンピューティングに最適化した日本最大級の郊外型大規模データセンターを北海道石狩市に建設。現在、東京(3:西新宿、東新宿、代官山)、大阪(堂島)、石狩(北海道石狩市)の5か所にデータセンターを展開している。

尚、双日(株)が議決権の40.29%を保有し、また、第2位株主で議決権の10.75%を保有する(株)田中邦裕事務所が、双日(株)が決定した内容と同一の内容の議決権を行使する事に合意しているため、実質支配力基準により、双日(株)が同社の親会社となっている。また、双日(株)の村上宗久氏を取締役として、同社機械部門 産業情報部 部長 野村昌雄氏を社外取締役として、それぞれ招聘している(この他、双日グループから従業員数名を出向者として受け入れている)。
 
※12/3期及び13/3期は先行投資が利益を圧迫。有形固定資産の減価償却については、多くの同業者が定額法を採用しているが、データセンター事業はサーバなど陳腐化の早い固定資産が多いため同社は主に定率法(償却初期の負担が重い)を採用している。
 
【特徴と強み】
(1)特徴  コストパフォーマンスに優れ、大手法人顧客から個人まで幅広い顧客ニーズに対応
スタートアップビジネスから大規模サイトの運営まで幅広い用途に対応し、コストパフォーマンスに優れた汎用性の高いシンプルなサービスが同社の特徴。このため、一部の大手顧客への依存度が高い同業者の多くと異なり、同社は小口顧客の構成比が高く(売上高の約1/2)、リスク分散の進んだ収入構造となっている。ただ、バランスよく事業を成長させていくために大口顧客の開拓にも取り組む必要があるため、現在、エンタープライズ市場の開拓にも力を入れている。この一環として、双日グループと連携し、一般企業や官公庁等に対して積極的な営業活動を展開している。

尚、12年3月末現在のホスティングサービスの利用件数は35万件弱で、そのうちの80%以上をレンタルサーバの利用が占めている。また、顧客基盤の拡大と共に小口顧客向けの売上構成比が上昇しており、12/3期は月額料金10万円以下の顧客向け売上高が全体の43.2%を占めた(1,000万円以上:11%、500〜1,000万円:9.5%、100〜500万円:13.5%、50〜100万円:7.0%、10〜50万円:15.8%)。
 
(2)強み
同社の強みとして、国内有数規模のITインフラ基盤、開発から運用・サポートに至る一貫体制(全て自社で対応)、及び国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー、の3点を挙げる事ができる。
 
国内有数規模のITインフラ基盤
国内最大級(注)の規模となるさくらインターネットのバックボーンネットワーク(ネットワークの基幹部分)は、日本国内の代表的なIX(複数のインターネットサービスプロバイダのネットワークや学術ネットワーク等を相互接続する接続ポイント)や数多くの大手ISPと東京・大阪で接続を行い、高い可用性(システムの壊れにくさ)と圧倒的なトラフィック配信能力を実現。国内事業者では最大規模となる通信回線容量を確保し、対外接続の総計はデータセンター専業事業者としては最大となる244Gbps。東京、大阪、石狩の各データセンター間もギガビット以上で接続されている。

(注)インプレスビジネスメディア「インターネットデータセンター完全ガイド2011年夏号」(2011年6月30日発行)のインターネット回線総量ランキングで第1位。
 
開発から運用・サポートに至る一貫体制(自社運営のデータセンターとバリューチェーンの内製化)
多様なニーズへの柔軟な対応を可能にするため、自社での開発・運営・サポート体制を敷いている(サービス提供に係る全ての工程を自社内で手掛ける事ができる)。各データセンターは無停電電源装置とエンジン発電機を備え、災害発生時には電源供給も可能。セキュリティについては、カードキー認証による開錠システムが導入されている。
 
国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー
"高品質かつコストパフォーマンスに優れたサービスを提供する"を経営理念に掲げ、日本のインターネットの黎明期からサービスを提供しており、個人から法人まで幅広く利用されている。高品質・低コストのデータセンター事業者として高く評価されており、ホスティングサービスの利用件数は30万件を超え、ITエンジニアへの認知度も高い。
 
 
【市場動向と成長戦略】
(1)市場動向
モバイルデバイスの利用者やWebアプリケーションの流通量の急増に加え、企業のIT資産に対する意識の変化を背景にしたITアウトソーシングへ市場の拡大、更にBCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)対策を含めたIT資産の冗長化(システムが故障してもサービスを継続できるようにバックアップ用のシステムを用意しておく事)需要等で、データセンター市場は引き続き拡大傾向にある。

ただ、IT投資コストの削減ニーズやコスト競争力の強い海外事業者の登場等で価格競争が激化している事に加え、原油価格の上昇や原発事故を背景にした電気料金値上げ(東京・大阪)等によるコストアップ要因の発生もあり、データセンター事業者の収益環境は厳しさを増している。
 
(2)成長戦略
旧中期経営計画(10/3期〜12/3期)の成果で収益性や財務面での改善が進んだ同社だが、売上の伸びが鈍化しており、同計画において売上高が目標に届かなかった。都内データセンターの供給余力が乏しくなるにつれ、大口案件やハウジングサービスの獲得で苦戦が目立つようになってきた事が、その主たる要因であり、13/3期から始まる新中期経営計画(〜15/3期)では、11年11月に稼働した石狩データセンターの活用と親会社である双日(株)との連携の下、エンタープライズ・ユーザの開拓に取り組むことでテコ入れを図る考え。
 
石狩データセンターを活用したサービス展開
都市型データセンターでは実現困難な低価格、優れた柔軟性と拡張性、更にはグリーン調達への適合(冷涼な外気を活用した空調)が石狩データセンターの強みであり、同社がサーバやネットワークの設定、ディスク交換、メンテナンス等の物理作業を請負う事で遠隔地にあるハンデをカバーしていく。このサービスは、リモートハウジングと呼ばれるもので、ホスティング並みの利便性で、ハウジングを利用できる(石狩データセンターを都市型データセンターのように利用できる)。一般への提供は12年4月からだが、2月から大手ソーシャルゲーム・プロバイダーへのサービスが始まっている。
自社販売はもちろん、親会社である双日(株)との連携の下、エンタープライズ・ユーザを開拓していく考え。
 
大口顧客向けサポート体制の確立
小口顧客の多い同社はWeb等を活用した効率重視のサービス体制を敷いてきた。こうしたサポート体制はコストパフォーマンスを重視する小口顧客からは評価されてきたが、大口顧客からは必ずしも高い評価を得られなかった。このため、今後の大口顧客向けサポートについては、対面サポートを重視すると共に、サーバ周りに限らず、インターネット全般のソリューションにまで踏み込んだサービス体制を確立する事で(顧客事業の成長を支援)、顧客満足度を高めていく考え。
 
 
「所有」から「利用」へのIT 資産に対する意識の変化や急速に拡大するクラウドサービス需要への対応、更には東日本大震災以降のBCP/DR 需要の高まりも踏まえ、同社サービスに最適化した寒冷地立地の郊外型大規模データセンターを、北海道石狩市に建設した。
 
石狩データセンターでは、エンタープライズ・ユーザ向けのハウジンサービスや幅広いユーザ層を対象とするクラウドサービスを提供していく。
敷地面積は5ヘクタール(50,000平方メートル、約15,000坪)。現在、2棟体制だが、8棟まで増築が可能。
(いずれも同社資料より)
 
(3)新中期経営計画(13/3期〜15/3期)
13/3期から始まる新中期経営計画においては、「ITインフラ」、「テクノロジー」、「サービス」、「セールス」を強化し、新たな競争優位の確立を目指している。具体的な取り組み事項は次の通り。
 
 
これまでIT企業に強かった同社だが、新中期経営計画では、石狩データセンターの活用と双日(株)との連携により、今後のデータセンター事業の本命と言われるエンタープライズ・ユーザの開拓に力を入れる。このため、サービス面で複数サービスをシームレスに管理できる環境の提供、信頼性とコストパフォーマンスの両立、更には顧客の多様な事業ステージやIT戦略に対応できるラインナップの構築に取り組むと共に、顧客層別のセールス手法を導入し、IT企業の深耕を図ると共に、エンタープライズ・ユーザの開拓を進めていく考え。
 
 
定量的目標
最終となる15/3期の目標として、売上高125億円〜150億円、経常利益12.5億円〜15.5億円を掲げている(エンタープライズ・ユーザの案件は大型のものが多く、個別案件獲得のいかんで売上・利益が大きく振れるためレンジでの開示となった)。

向こう3カ年の定量的な目標は下記の通りだが、その前提目標として、売上成長率10%以上、売上総利益率30%以上、売上高経常利益率10%以上の3項目を挙げている。
 
 
 
2012年3月期決算
 
 
石狩データセンターの新設や既存センターの増強等の先行投資で減益決算ながら、予想を上回る着地
売上高は前期比6.8%増の91.6億円。新プランの投入や既存データサービスの機能強化が成果をあげた。レンタルサーバの売上が増加した他、前期半ば(10年9月)にサービスを開始したVPSも順調に伸びた。ただ、石狩データセンターの新設(11年11月稼働)や堂島データセンターの設備強化等に伴う減価償却費の増加や、前期に施設拡張した堂島データセンターの賃借料負担の増加等で売上総利益率が低下する一方、販管費率が上昇。営業利益は8.7億円と同28.7%減少した。支払利息の増加で営業外損益も悪化したが、特別損益の改善や税負担の減少で当期純利益は同2.8%の減少にとどまった。
特別損益の改善は、新株予約権戻入益(58百万円)の計上で特別利益が増加する一方、前期に発生した減損損失(60百万円)や資産除去債務(69百万円)の計上がなかった事で特別損失が減少したため。配当は1株当たり5円を予定している(11年10月に1株を200株に分割しており、実質的には前期の1,000円と同額)。
 
予想との比較
売上高は第3四半期(10-12月)決算発表時に修正した予想に沿った着地となったが、初期費用の高いサービスや大口案件の受注が伸び悩んだ事で期初予想(94億円)ほどには伸びなかった。ただ、節電対策が成果をあげ想定以上にエネルギーコストが抑制できた事やデータセンター事業の特徴であるストックビジネス効果が徐々に顕在化してきた事で営業利益は予想を上回った(期初予想7.4億円)
 
 
ハウジングサービス
売上高は前期比0.3%減の30.1億円。都内以外のデータセンターの貸し出しラック数は増加したものの、都内のラック供給余力が低下し、大口案件の受注が進まず、価格競争の影響を吸収できなかった。

尚、自由度の高いハウジングサービスに対するニーズを取り込むべく、世界標準のコスト競争力と優れた柔軟性・拡張性を持つ石狩データセンターを活用したリモートハウジングを開発した(都市型データセンターは地価を反映して利用料が高く、敷地面積も限られているため柔軟性・拡張性でも制約が多い)。新サービスは、石狩データセンターを都市型データセンターのように利用できるサービスで、従来のハウジング同様に機器の選択は自由だが、物理作業は同社が代行。外部回線の引き込みや同社ホスティングとの連携も可能で、最新のデータセンターを安価で利用できる。一般への提供は12年4月からだが、2月から大手ソーシャルゲーム・プロバイダーへのサービスが始まっている。
 
専用サーバサービス
売上高は前期比1.1%増の32.1億円。既存顧客向けの売上が増加したものの、VPSサービスやクラウドサービスとの競合が増え、新規受注が伸び悩んだため、わずかな売上の増加にとどまった。もっとも、2月に投入した新サービス「さくらの専用サーバ」が評価され、11/3期第4四半期をピークに減少傾向にあった専用サーバの利用件数が、2月下旬に増加に転じた。新サービスは物理サーバをクラウドのように利用できる一方、仮想化技術を用いた通常のクラウドに比べて性能やセキュリティの面で各段に勝る。また、従来価格のままでサービススペックを2倍以上に引き上げた他(最少プランの場合)、申し込みから最速10分で利用でき、台数制限なしで複数台構成が可能だ。
 
レンタルサーバサービス
売上高は前期比15.9%増の17.0億円。多様化・高度化する顧客ニーズに対応するべく投入した新プラン(「Atomプラン」の価格改定)の寄与や既存サービスの機能強化(データベース機能強化)の成果が表れた。
 
VPSサービス
売上高は872.2%増の3.5億円(前期は「その他サービス」に計上していたが、今期より区分計上)。シンプルかつ自由度の高いサーバ環境と優れたコストパフォーマンスが評価され、新規受注件数・売上共に順調に伸びている。 ただ、競争力のある他社サービスの登場等で競争が激化している事を踏まえて、3月末に高性能サーバを導入してサービスパフォーマンスの向上を図った(最少プランの場合、料金据置で従来プランの2倍以上のサーバスペックを提供)。サービス開始から1月を経過しない段階で3,000件以上の新規の申し込みがあり、また、最少プランの一つ上のプランの値下げを実施したところ最少プランから同プランへ移行する顧客が増え、サービス全体の単価アップにつながった。
 
その他サービス
売上高は前期比0.4%増の8.7億円。ハウジングサービスの新規受注減に伴い機材販売やレンタル、及びサーバ構築コンサルティングの売上が減少したものの、レンタルサーバサービスに連動するドメイン取得サービスの売上が増加した。
 
 
第4四半期(1-3月)は広告宣伝費の減少で第3四半期を上回る営業利益を計上
売上の面ではVPSが伸びた他、レンタルサーバも堅調に推移した。また売上が減少した専用サーバも2月末に投入した「さくらの専用サーバ」の寄与で、単月ベースでは回復基調にある。
利益面では、11年11月に稼働した石狩データセンターの減価償却費の増加(第3四半期は2か月分だったが、第4四半期は3か月分を計上)で売上総利益が減少したものの、石狩データセンター関連の広告宣伝活動がピークアウトした事で販管費が減少したため、営業利益は同18.4%増加した。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比13.3億円増の111.4億円。石狩データセンターの新設や堂島データセンターの設備強化が資産増加の要因であり、工事代金等に充当するべく借入金を積み増した他、リース債務も増加した。
CFの面では、上記の設備投資に加え、税金費用も増加(0.3億円→7.3億円)したため、フリーCFのマイナス幅が拡大した。ただ四半期ベースでは、石狩データセンター関連の支払が第3四半期にピークアウトしたため、第3四半期は14.5億円のマイナスだったフリーCFが第4四半期は1.9億円の黒字に転じた。
 
 
 
(4)中期経営計画(10/3期〜12/3期)の振り返り
同社は、最終の12/3期に売上高100億円、経常利益10億円の達成を目指す中期経営計画(10/3期〜)に取り組んできた。初期費用収入の大きいサービスや大口案件の新規受注が伸び悩んだ事で売上高(91.6億円)は目標に達しなかったが、初期費用収入は小さいが、収益性の高いサービスの販売が進んだ事とデータセンター統廃合の前倒し等で経常利益目標は11/3期(11.9億円)に1年前倒しで達成した。このため、12/3期は中期経営計画の目標だった経常利益10億円に捉われる事なく、13/3期以降を見据えた大規模投資を実施した。また、上記の定量目標と並行して、エンタープライズ市場への進出、先進的なインターネット技術の情報発信、仮想ホスティングサービスの開発と提供、更には国内最大級の郊外型データセンターの建設といった課題にも取り組み、一定の成果をあげた。
 
エンタープライズ市場への進出
双日グループと連携し、一般企業や官公庁等に積極的な営業活動を展開。12/3期は売上高1.7億円を計上し、期末の顧客数は30社。
 
仮想ホスティングサービスの開発と提供
サービス開発に特化した組織(開発部)を創設し、仮想ホスティングを開発。10年9月にサービスを開始したVPSは、順調に事業が拡大している(12/3期売上高3.5億円、期末時点の利用件数2.7万件)。
 
先進的なインターネット技術の情報発信
インターネットに関する技術を研究する専門組織として「さくらインターネット研究所」を創設し、研究成果を発信・公表する事で自社ブランドをアピールした。尚、同研究所創設以降の実績は、外部講演56本、メディアへの寄稿18本、学会等での発表論文2本。
 
国内最大級の郊外型データセンターの建設
本町(大阪府)、池袋(東京都)を閉鎖する一方、北海道石狩市にて11年11月より運用を開始。最新の設備や技術の導入に加え、地域特性も活かす事で、コスト面で圧倒的な比較優位を確立した。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
経常利益6.8億円から8.2億円を予想
大口案件の受注動向でハウジングが大きく振れる可能性がある事等から、業績予想をレンジで開示した。石狩データセンターをけん引役に売上の増加が見込まれるものの、同データセンター及び前期に設備を増強した堂島データセンターにかかる償却負担(2億円増)や通信費(1.1億円増)など諸経費の増加が見込まれる他、東京電力管内における電力費の増加(2億円増)及び更新に伴う基幹システムの減価償却費の増加(0.7億円増)等を織り込んだ。
尚、IaaS型クラウドサービス「さくらのクラウド」は、石狩データセンターの稼働(11年11月)と共にサービスを開始したが、基幹のストレージシステムに障害が発生し、サーバダウンやアクセス障害等でパフォーマンスが低下したため3月に課金を停止した。現在は無償で提供しており、新たなストレージシステムの構築を進めている。第1四半期中の解決を目指している。
 
 
 
今後の注目点
今後の同社の成長に深く関与する石狩データセンターは、既に説明した通り「世界標準のコストパフォーマンスと優れた柔軟性・拡張性」を強みとしている。具体的には、都内のデータセンターに比べて電気代が4割安く(冷涼な外気を利用した空調システムは同じ電力使用量で2倍以上の熱量を冷やす事ができる)、土地代含めたトータルでは約5割安。現在、電力効率に優れた給電システムの実証実験を進めており、このシステムが稼働すれば、更に1〜2割電気代を下げる事ができる。また、柔軟性・拡張性の面では、都内のデータセンターに比べて2倍以上の給電能力を有し(概ね一般家庭1万軒分に相当する3万キロワットの電力設備を備える)、構造の面では3〜4倍の重量に耐え事ができる。
結論として、同じ料金で1.5〜2倍のサーバ設置が可能であり、総面積5ヘクタールの敷地は追加スペースの制約を心配する必要がない(現在、2棟体制だが、8棟まで増築が可能)。

このように設備の充実が図られたため、今後の課題は新規顧客の開拓だ。自社販売と共に双日(株)との連携の下に取り組むエンタープライズ・ユーザの開拓に注目したい。石狩データセンターのサービスと双日グループの上位レイヤサービスを組み合わせた販売や、双日グループが販売するデータセンターサービスのITインフラ基盤としての石狩データセンターの活用等、多様なプランが考えられる。また、震災の影響や電力の安定供給への不安から、データセンターを東京や大阪に置く事に対して、ややネガティブなイメージが広がりつつある事も追い風となろう。
尚、日商エレクトロニクス(株)が、昨年10月から11月にかけて堂島データセンターの利用を開始しており、今夏には石狩データセンターの利用を開始する予定。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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