ブリッジレポート
(2925) 株式会社ピックルスコーポレーション

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ブリッジレポート:(2925)ピックルスコーポレーション vol.17

(2925:JASDAQ) ピックルスコーポレーション 企業HP
荻野 芳朗 社長
荻野 芳朗 社長

【ブリッジレポート vol.17】2012年2月期業績レポート
取材概要「同社グループは全国を網羅する営業・物流網を有するが、現在の売上はマーケットのボリューム以上に首都圏に集中しており、未だ非首都圏のマーケ・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年5月29日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピックルスコーポレーション
社長
荻野 芳朗
所在地
埼玉県所沢市くすのき台3-18-3
決算期
2月末日
業種
食料品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年2月 21,587 982 1,066 591
2011年2月 20,824 577 624 365
2010年2月 18,234 536 583 322
2009年2月 18,502 399 413 202
2008年2月 17,870 286 373 205
2007年2月 16,775 293 355 218
2006年2月 16,563 158 205 -37
2005年2月 18,186 74 146 144
2004年2月 18,038 268 285 99
2003年2月 18,047 101 98 36
2002年2月 16,542 548 514 230
2001年2月 16,895 302 287 266
株式情報(4/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
521円 6,394,705株 3,332百万円 9.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 2.3% 88.93円 5.9倍 982.00円 0.5倍
※株価は4/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピックルスコーポレーションの2012年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
浅漬・キムチ・惣菜の製造・販売及び漬物等の仕入販売を行なっている。「野菜の元気をお届けします」をスローガンに掲げ、コーポレートカラーの緑は新鮮感を表す。自社製品は、契約栽培によるトレーサビリティの確保された国産野菜(約70%が契約栽培)が中心で保存料・合成着色料は使用しない。また、製造現場では、工場内での温度管理の徹底や入室前の全従業員の服装・健康チェック、更にはISO9001、HACCPの取得や5S活動に取り組む等、「安全な食へのこだわり」は強い。連結子会社7社及び持分法適用会社4社と共に全国的な製造・販売ネットワークを構築。12/2期の品目別売上構成は、製品売上が63%(浅漬・キムチ48%、惣菜12%、ふる漬3%)、商品(漬物)売上が37%。
資本関係では、東海漬物(株)が株式の49.6%を保有するが、取引はわずかにふる漬等の仕入があるのみ(12/2期は仕入高全体の2.1%)。むしろ同社を語る上で忘れてならないのが、セブン&アイ・ホールディングス(3382)で、12/2期は同グループ向けの売上が全体の37.9%(11/2期は39.3%)を占めた。
 
<強み>
大ヒットしている「ご飯がススムキムチ シリーズ」や各種惣菜等、切れ目無く新商品を投入できる商品開発力と全国をカバーする営業・製造・物流ネットワークを強みとする。
 
 
(説明会資料より)
 
 
<沿革>
1977年2月、(株)東海デイリーとして愛知県で設立。同年12月にはセブンイレブンとの取引が始まり、その後、取引はイトーヨーカ堂、デニーズジャパン等、セブン&アイ・ホールディングスの主要企業へと拡大。93年9月、商号を(株)ピックルスコーポレーションに変更。2001年12月に株式を店頭登録(JASDAQ上場)した。
 
<漬物市場の動向と事業戦略>
(1)漬物市場の動向
漬物市場は約4,000億円(工業統計2011.02:野菜漬物製造業出荷額4,081億円、食品新聞2011.08:漬物品目別推定出荷額3,500億円)。古漬市場で漸減傾向が続いているものの、浅漬やキムチの市場は安定成長が続いている。ただ、後継者難による中小漬物メーカーの廃業等でピークの90年頃には2,400~2,500社あった全国漬物連合会(全漬連)の会員企業数が1,100社程度に減少しており、大手企業による寡占化が進みつつある。ただ、年商が100億円を超えているのは業界トップの同社を含めて4社に過ぎず、その4社の年商も200億円に満たない。製品開発力や営業力が不可欠ではあるものの、これら上位企業については寡占化による成長余地が大きいと言える。

また、弁当等も含めた惣菜産業の市場規模は8兆1,753億円(2010年)で、販売チャネル別の構成比では、同社の主要取引先である総合スーパーが12%、食料品スーパーが24%を占める。競合は、フジッコ、エバラ食品、ケンコーマヨネーズ、デリア食品、大堀、イニシオフーズ等で、いずれも300~500億円規模の年商を誇る。同社は、5年ほど前に惣菜事業を本格化し、順調に売上を伸ばしている。
 
 
(2)事業戦略
連結売上高210億円強の同社の前には、4,000億円の漬物市場と2.9兆円の総合スーパー及び食料品スーパーの惣菜市場が広がる。同社はこの広大な市場を開拓するべく、製品開発、全国を網羅する物流・営業ネットワーク、及び販売促進を三位一体とする事業戦略を進め、既存取引先の深耕と新規取引先の開拓に取り組んでいる。
 
①製品開発
「ご飯がススムキムチ シリーズ」のラインナップの拡充に加え、新大久保キムチ、叙々苑ポギキムチ、更には輸入韓国キムチ等の投入で市場が拡大しているキムチの品揃えを強化している他、野菜をキーワードとした惣菜製品の拡充、「うどんのかけだれ」や「具入りの鍋つゆ」等の漬物以外の商品開発、更には他社とのコラボレーション製品の開発にも取り組んでおり、量販店、生協、コンビ二を通して多様な消費者ニーズに応えている。
 
②全国を網羅する物流・営業ネットワーク
上記の充実した製品ラインナップと全国をカバーする物流・営業ネットワークを強みに、全国的な店舗網を有する量販店や生協に対して提案営業を強化している他(特に惣菜売場は既存取引先でも開拓余地が大きい)、これまで手薄だった中国・四国地区及び九州地区の販売強化に取り組んでいる。また、「ご飯がススムキムチ シリーズ」等での知名度向上が、徐々にではあるがネット販売にも好影響を及ぼすようになってきた。
 
③販売促進
テレビ、ラジオ、電車の車内広告、駅や野球場での大型看板等、広告宣伝活動を実施している他、小売店への売り場提案や小売店との連携による試食販売、或いは食品メーカーとの販促コラボレーションによる認知度の向上と潜在需要の掘り起こしに取り組んでいる。
 
 
2012年2月期決算
 
 
前期比3.7%の増収、同70.9%の経常増益
利益貢献の少なかった青果物の取扱をやめたため売上全体では前期比3.7%の増加にとどまったものの、積極的に新製品を投入した惣菜や「ご飯がススムキムチ シリーズ」等の売上が増加した。利益面では、関西新工場の製造効率の改善 (子会社ピックルス関西の営業損益:△96百万円→101百万円)や上期の原料野菜の仕入価格安定、更には利益率の低い青果物の取扱がなくなった事もあり、売上総利益率が改善。人件費や広告宣伝費(TVCMによる)を中心にした販管費の増加を吸収して営業利益は9.8億円と同70.1%増加した。設備投資は3.1億円(前期は9.9億円)、減価償却費は3.7億円(同3.7億円)。尚、利益が予想を下回ったのは、厳冬による生育不良で第4四半期(12-2月)に野菜価格が上昇したため。
配当は1株当たり5円増配の15円を予定している。
 
 
 
製品売上高は前期比4.7%増の136.億4円、商品売上は同1.9%増の79.4億円。製品では、浅漬・キムチが103.7億円と前期比0.5%の増加。「ご飯がススムキムチ シリーズ」を中心にキムチが伸びたものの、消費低迷による浅漬の落ち込みが響き小幅な増加にとどまった。一方、惣菜は同29.0%増の26.0億円。新製品の積極的な投入で、浅漬やキムチで取引のある顧客への販売が伸びた他、新規取引先の開拓も進んだ。一方、商品売上の減少は、10年7月に取扱いを終了した青果物の売上が無くなったため(ピーク時には年間35億円程度の取扱い実績があった)。
販路別では、青果物の取扱いを終了したため外食・その他向けが減少したものの、浅漬・キムチや惣菜の拡販で既存取引先の深耕と新規取引先の開拓が進んだ量販店・問屋等向けやコンビニ向けの売上が増加した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
 
期末総資産は前期末比8.6億円増の132.8億円。CFの改善で現預金が増加した他、業容の拡大で売上債権及び仕入債務も増加。一方、CFの改善を反映して有利子負債が減少。自己資本比率は47.3%と1ポイント改善した。
 
 
利益の増加で営業CFが大幅に増加する一方、関西新工場関連の投資一巡で投資CFのマイナス幅が縮小したため、前期は05億円のマイナスだったフリーCFが9.6億円の黒字に転じた。借入金の返済や配当の支払いで財務CFがマイナスになったものの、現金及び現金同等物の期末残高は17.7億円と前期末比6.1億円増加した。
 
2012年2月期業績予想
 
 
前期比5.6%の増収、同6.8%の経常減益予想
売上高は前期比5.6%の228.0億円。積極的に新製品を投入するキムチや惣菜を中心に製品売上が149.3億円と同9.4%増加する見込み。ただ、①低温で3月、4月も野菜価格が高止まりしている事、②電気料金の引き上げ、③原油価格上昇による包装材料等の価格上昇、及び④広島工場関連の投資費用等を織り込んだ結果、営業利益は9.3億円と同5.3%の減益が見込まれる。配当は1株当たり12円を予定。
尚、設備投資は各工場での増産投資に伴う増改築や機械設備の更新等で7.3億円を予定しており、減価償却費は4.0億円を織り込んだ。来14/2期は広島工場関連を中心に設備投資が10億円に増加する見込みだが(減価償却費4.5億円)、広島工場関連の投資が一巡する15/2期は4.0億円に減少する(減価償却費4.0億円)。
 
 
 
(2)商品戦略及び営業戦略と広告宣伝活動
①商品戦略
本場韓国系のキムチの新製品やリッチな福神漬け「八幡屋謹製福神漬け-匠づくり」の投入に加え、サラダを含めた野菜系惣菜のラインナップ拡充を図る他、漬物・惣菜以外の商品の育成にも取り組む考え。
 
本場韓国系のキムチの新製品
新大久保キムチ
韓流ブーム再来の中、韓流の聖地として日々多くの人が訪れる「新大久保」(東京都新宿区)に着目。同社の社員が新大久保にある飲食店や韓国スーパーに通ってキムチを食べ歩き、"これぞ新大久保の味"と言えるキムチの味を開発した。
発酵をなだらかにして酸味を抑え、旨みが効きながらもすっきりとした味わい。クセが無く日本人にも食べやすい。
 
手づくり熟キムチ
3種類の魚介エキス(オキアミ塩辛、イカごろ、かつお魚醤)を使い、うま味が濃く、辛味とコクとのバランスが絶妙(荻野社長のお気に入りキムチ)。
 
輸入韓国キムチ
国産の白菜よりも水分が少なく、歯ごたえのある韓国産の白菜をしっかりと漬け込み、2種類の魚介や塩辛を使った特製ヤンニョムで味付けした。
 
八幡屋謹製福神漬け-匠づくり
国産野菜を使用し、手間ひまかけて仕込んだ昔ながらの福神漬(ほとんど手造り)。

三温糖とみりんの上品な甘さが、芳醇なしょうゆの風味をいっそう引き立てる。また、通常の福神漬と比べて、食感を楽しむことができるように野菜を大きめにカットしてあることも特徴。

保存料・着色料等、添加物は一切使用していない。福神漬けの価格は100円程度が相場だが、「匠づくり」は140円程度とちょっとリッチ(ビールで言えば、エビスビールといったところだ)。

この他、弁当や麺等の業務用商品の開発・提案にも取り組んでいく。また、同社のキムチを使った焼きそばやシチュー、キムチとツナやマーガリン等のコンビネーションによる各種のメニュー提案等にも取り組んでいる。
漬物・惣菜以外の製品としては、「肉炒めのたれ」、「鍋の具」、「うどんのかけだれ」等を投入しており、時間をかけて育成していく考え。
 
②営業戦略
全国をカバーする物流・営業ネットワークを強みに、全国的な店舗網を有する量販店や生協に対して提案営業を強化する(特に惣菜売場は既存取引先でも開拓余地が大きい)。また、これまで手薄だった中国・四国地区及び九州地区の販売強化にも取り組む。
 
 
 
(株)ピックルスコーポレーション関西は京都府大山崎町に本社を置き、浅漬、キムチ、惣菜の製造・販売、及び漬物の仕入・販売を行っている。営業エリアは、関西地区、中国・四国地区で、販売先は、スーパー、生協、外食産業等。11/2期は新工場の立ち上げで営業損失となったが、12/2期は新工場のオペレーションが軌道に乗り製造効率が改善した。
ただ、既にフル生産の状態にあり、13/2期は増産投資や中国・四国地区でのビジネス拡大に向け新工場(広島県府中市に建設予定)関連の投資が利益を圧迫する(現金ベースで14/2期がピーク)。新工場は、鉄骨造2階建(延床面積2,450m2、敷地面積4,800m2)で、総投資額は8億円を予定。13年3月の稼働を目指しており、14/2期の売上目標は9億円。
 
 
今後の注目点
同社グループは全国を網羅する営業・物流網を有するが、現在の売上はマーケットのボリューム以上に首都圏に集中しており、未だ非首都圏のマーケットの開拓及び深耕余地は大きいようだ。広島県府中市での新工場建設はこの一環で、14/2期以降は中国・四国地区での販売が加速し、その後は九州を開拓・深耕する。漬物や惣菜の市場は成熟しているものの、同社にとって4,000億円の漬物市場は広大であり、更に大きな市場規模を誇る惣菜市場での展開については緒に付いたばかり。漬物業界のリーディングカンパニーとして、サラダ感覚で食べられる浅漬、キムチ、惣菜等の商品を全国の食卓に届ける事で、業容の拡大と共に、現代人の野菜不足を補い、健全な食習慣の実践に貢献していく考えだ。