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(2146:JASDAQ) UTホールディングス 企業HP
若山 陽一 社長
若山 陽一 社長

【ブリッジレポート vol.9】2012年3月期業績レポート
取材概要「2012年問題の顕在化で半導体業界以外でも「請負化」の流れが加速しており、同社の客層が広がっている。また、注目された労働者派遣法の改正も、・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年6月26日掲載
企業基本情報
企業名
UTホールディングス株式会社
社長
若山 陽一
所在地
東京都品川区東五反田1-11-15 電波ビル
事業内容
半導体向けの製造派遣・請負が中核、製造装置販売からライン移設業務に転換。設計開発事業も
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 24,106 1,453 1,379 880
2011年3月 20,227 1,442 1,309 766
2010年3月 18,056 290 182 -1,401
2009年3月 40,694 1,793 603 -10,861
2008年3月 51,787 4,200 3,473 1,203
株式情報(6/6現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
49,000円 212,545株 10,415百万円 30.9% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,600.00円 5.3% 6,869.13円 7.1倍 14,668.88円 3.3倍
※株価は6/6終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
構内作業(工場内作業)の請負や製造派遣を手掛ける製造アウトソーシングサービス大手。半導体向けサービスからスタートし、液晶・太陽電池・二次電池等へ展開。世界的なコスト競争にさらされている自動車関連や工業化が進む住宅関連でも顧客開拓が進んでいる。同社自身は純粋持株会社としてグループを統括し、実際のサービスは連結子会社6社が提供。デバイス設計(デザイン)等を手掛ける。
 
 
【事業内容】
事業はアウトソーシング事業と設計開発事業に分かれ、売上構成比は、前者が96.7%、後者が3.3%(12/3期)。
 
アウトソーシング事業
構内作業(工場内作業)の請負を中心に製造派遣を行っている。請負では、各工程の製造オペレーションから装置メンテナンスや保全業務までを一括して受託する。コスト削減だけで無く、構内作業全体のパフォーマンスも高めるため、取引先から高い評価を受けている。パナソニックグループ、ソニーグループ、ロームグループ、東芝グループ等を主要顧客とし、太陽電池、2次電池、LED、更には自動車関連や住宅関連等での顧客開拓も進んでいる
 
設計開発事業
ソフトウェアの受託開発、機械・電気・電子の設計開発事業の労働者派遣事業を手掛ける。
 
 
半導体製造装置事業の苦戦で10/3期にかけて業績が悪化した。
このため、10/3期に同事業を売却しアウトソーシング事業中心の事業構造へ転換。11/3期は業績がV字回復した。
 
【ビジネスモデルの4つの特徴】
同社グループのビジネスモデルには、専門特化、常用雇用、チームアプローチ(請負)、及び受注先行の採用モデル、という4つの特長がある。 半導体等の高度な分野に専門特化する事で高度な技術とノウハウの蓄積を図ると共に、常用雇用による安定した雇用環境を提供する事で社員の定着率を高め高品質なサービスを実現している。また、人材派遣ニーズにも対応しつつ、チームとして組織された専門技能者・技術者による請負を主体とする事で高い生産性を実現し顧客満足度を高めている。 一方、常用雇用とする事で同社は固定費負担のリスクを負うが、受注が確定してから採用活動を実施する事で稼働率100%を恒常化しリスクを回避している。
 
 
【事業環境と同社の強み】
一段のコストダウンニーズの高まりや2012年問題の顕在化を受けて、国内のモノづくりの現場で「請負化」の流れが加速している。また、注目された労働者派遣法の改正も、「製造派遣の3年間の期間制限」が残ったものの、製造派遣の禁止や登録型派遣の禁止が削除され、12年3月に成立した(同年10月施行)。逆に同法において「専ら派遣」の規制(グループ企業内派遣の8割規制)が強化された事は同社にとってビジネスチャンスになる。加えて、政府・与党が今国会中の成立を目指している改正労働契約法も、パートや契約社員など期間を定めて働く「有期雇用労働者」の契約期間が通算で5年を超える場合、労働者が希望すれば無期雇用に切り替える事を義務付けるものだけに、成立すれば同社が得意とする請負への流れを加速させよう。

こうした中、同社は、^堕蠅靴刃働力(離職率2%/月。同業大手は4〜8%/月)や顧客ニーズに柔軟に対応できる動員力に加え、最も難しい半導体分野での請負実績、及びだ鞍されたコンプライアンス体制を強みとして、外部労働力の活用ニーズの取り込みに成功している。
 
 
【新中期経営計画(12/3期〜16/3期)】
「半導体請負No.1」から、質・量ともに「日本一の請負会社」を目指す新中期経営計画(〜16/3期)が進行中である。 |亙における良質な雇用機会の創出、派遣・請負で働く人達のキャリアアップ機会の創出、及び製造業の横断的な雇用調整機能の3点を自社の社会的役割と認識し、この役割を果たすべく事業に取り組む事で、最終の16/3期に稼働人員20,000名体制(=取引先工場300工場×1工場当たり稼働人員70名)を確立し、売上高750億円、営業利益90億円、当期純利益49.1億円を達成したい考え。また、EPS成長率30%以上(5ヵ年の平均)及び配当性向30%以上をコミットメントしている。
 
 
(1)基本戦略
基本戦略として、\長4分野の強化、大規模請負力の強化、及び従業員のカスタマー化の3点を挙げており、\長4分野の強化では、重点領域の拡大を図る一方で、対象工場の絞込み(3,000工場→300工場)を行い、成長分野比率を40%以上に高める。大規模請負力の強化(1工場当たりの人数:50人→70人)では、派遣法改正による請負化の流れを捉え、製造請負でのシェアアップを図ると共にインハウスソリューションを拡大させる。また、従業員のカスタマー化では、安定した雇用環境を整備すると共にキャリアアップの機会拡大と充実した人事・報酬制度の導入により社員の定着率を高める他、採用ルートの強化にも取り組む。
 
\長4分野の強化と顧客工場内でのシェアアップ
半導体領域の市場規模は1,400億円で同社のシェアは10%。今後、半導体領域に加え、成長4分野(LED、太陽電池、2次電池、ディスプレイ)を中心としたエレクトロニクス分野に重点領域を広げ、11/3期実績ベースで13.5%だった成長分野比率を40%以上に引き上げる。尚、経済産業省が産業構造ビジョンで掲げる戦略5分野の中で、最も高い成長が見込まれるのが環境・エネルギー関連分野であり、雇用者数も高い伸びが見込まれている。
 
大規模請負力の強化
多くの外部労働力を活用し、複数社に派遣形態で発注している300工場に対象工場を絞込むと共に、これら工場内でのシェアアップを図る。具体的には、請負化の流れを取り込むと共に、新たに設置した生産本部のバックアップにより1工場当たりの人数を50名から70名へ引き上げる考え。ちなみに、同社は05/3期から10/3期にかけて1工場当たりの期末人数が21人から48人へ増加したが、これにより工場数に比例して増える管理コストの増加が抑制され、売上高販管費比率が16.8%から10.8%に改善した。このため、1工場当たりの期末人数を70人に引き上げる事で16/3期に売上高販管費比率が7.3%に低下すると試算している。
 
従業員のカスタマー化
新中期経営計画の売上高及び利益の目標を達成するためには、20,000人体制の構築が必須であり、人材の確保が課題となる。このため、安定した雇用環境を整備すると共に、キャリアアップの機会拡大と充実した人事・報酬制度の導入により、月次離職率の更なる引き下げを図る考え(2%→1%)。この一環として、紹介事業を推進やESOPの導入を計画している。尚、ESOP(Employee Stock Ownership Plan)とは、企業が従業員の報酬制度として導入する企業の拠出(損金扱い)による従業員への税制優遇自社株配分制度の事(野村證券Webサイトより)。同社のESOPでは、派遣・請負職場で働く従業員に、勤続に応じてポイントを付与し、累積したポイントに相当する同社株式を給付する。
 
 
2012年3月期決算
 
 
前期比19.2%の増収、同5.4%の経常増益
売上高は前期比19.2%増の241.0億円。2012年問題(注)に対応したアウトソーシング需要の取り込みが進んだ他、半導体分野の請負実績を踏まえた他分野への営業展開により自動車部品や建材等で新規顧客の開拓も進み、期末技術職社員稼動数が6,082名と前期末(5,346名)比736名増加した。 利益面では、半導体関連顧客の生産調整による退職関連費用(非稼働となった技術職社員の一部が依願退職した)の計上や自動車部品や建材等の特命顧客向けサービスにかかる先行投資で売上総利益率が低下。営業人員の増強や採用関連費用の増加で販管費も高い伸びを示し、営業利益は前期並みの14.5億円にとどまった。ただ、金融費用の減少(100百万円→72百万円)や持分法投資損失が無くなった事(前期は69百万円を計上)等で営業外損益が改善。税負担も減少し、当期純利益は8.8億円と同14.9%増加した。配当は1株当たり100円増配の期末2,500円を予定している。
 
(注)2012年問題
リーマンショック後に落ち込んだ生産が急回復した2009年以降、生産の現場で派遣労働者の再活用が始まったが、2012年は、2009年にスタートした労働者派遣契約が3年を経過し抵触日を迎える。抵触日を超えて派遣労働者や期間工を雇用する事は法律により禁じられているため、メーカー各社は派遣労働者や期間工を「自社雇用」するか「請負」に切り替えるかの選択を迫られる。
 
 
 
11/3期は、第1四半期(4-6月)、第2四半期(7-9月)と順調に売上・利益が伸びたものの、第3四半期(10-12月)に受注の増加に伴う先行投資負担から営業利益が前四半期比で減少し、第4四半期(1-3月)は東日本大震災の影響を受けた。12/3期は、東日本大震災の影響が残った第1四半期は苦戦したものの、第2四半期は順調に回復した。ただ、第3四半期は半導体関連顧客の解約の影響を受けて営業利益が減少。第4四半期は退職関連費用等を含めた解約の影響が一巡した事と2012年問題への対応需要の取り込みで稼働数が増加し大幅な増益となった。
 
 
期末総資産は前期末比7.6億円減の85.5億円。借方では、「ESOP:Employee Stock Ownership Plan(株式給付信託)」の導入に伴う長期前払費用の支払いや有利子負債の削減に伴い現預金が減少した他、役員に対する長期貸付金の回収や繰延税金資産の取り崩しで固定資産も減少した。一方、貸方では、短期から長期へシフトさせつつ、有利子負債を削減した(シンジケートローンを活用してリファイナンスを実施)。
 
 
CFの面では、事業拡大に伴う運転資金の増加や税金費用の増加(△46百万円→△207百万円)で営業CFが減少する中、「ESOP」の導入に伴う長期前払費用の支払いで投資CFのマイナス幅が拡大したためフリーCFが減少。有利子負債の削減で財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物の期末残高が22.4億円と前期末比10.7億円減少した。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比24.5%の増収、同75.4%の経常増益予想
過去最高(6,288名)に迫る稼働者数(6,082名)で新年度を迎えたが、新年度入りした4月は2012年対応案件の取り込みにより単月で取引先工場数が約120工場、稼働数が約1,000名増加した。この結果、取引先顧客数は350工場に達し(中期経営計画の目標である300工場を大きく超過)、稼働数も7,000名を超えた。

通期業績については、約7,000名の稼働数から得られる収益でほぼ達成できる見込みだが、足元、既存顧客との間で商談が進んでいるバックオーダーの着実な取り込みや良好な事業環境を活かした更なる顧客深耕で予想を上回る着地を目指している。配当は1株当たり100円増配の期末2,600円を予定している。
 
 
今後の注目点
2012年問題の顕在化で半導体業界以外でも「請負化」の流れが加速しており、同社の客層が広がっている。また、注目された労働者派遣法の改正も、「製造派遣の3年間の期間制限」が残ったものの、「製造派遣の禁止」や「登録型派遣禁止」が削除され成立した(10月施行)。逆に同法において規制が強化された「専ら派遣の事業規制(グループ企業内派遣の8割規制)」は、同社にとってビジネスチャンスになる可能性がある。加えて、政府・与党が今国会中の成立を目指している改正労働契約法も、パートや契約社員など期間を定めて働く「有期雇用労働者」の契約期間が通算で5年を超える場合、労働者が希望すれば無期雇用に切り替える事を義務付けるものだけに、法案が成立すれば、請負化の流れを加速させよう。4月単月で稼働数が1,000名増加する等、好調なスタートを切った13/3期は、上記の通り事業環境も良好なだけに、期初予想にそれだけ上積みできるかポイントとなる。

http://www.ut-h.co.jp/ir/pdf/20120516se.pdf
 
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昨年2月の会社説明会で若山社長のプレゼンを聞いて、派遣から請負への流れが強く頭に残り、太陽電池や半導体製造メーカーに特化した丸ごと請負という業態がまさに時流を得ていると認識して、高配当銘柄であることも動機付けとなり株主になった。東日本大震災やタイの洪水、欧州債務危機など世界的に景気の先行きに不透明感が強い中ではあるが、今後の業績推移を見守って行きたい。

投稿者 h.s : 2012年06月27日 18:44

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