ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.9

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.9】2012年3月期業績レポート
取材概要「欧州債務危機の影響に加え、ここにきて米国景気の腰折れや中国等の新興国でも景気の減速が懸念されるようになってきた。こうした中で同社の業績予・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年6月26日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 57,790 883 840 531
2011年3月 55,762 899 842 500
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(5/25現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
336円 8,548,416株 2,872百万円 8.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 4.5% 58.49円 5.7倍 733.35円 0.5倍
※株価は5/25終値。
 
プラマテルズの会社概要及び2012年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂関連商品の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売しており、最終用途は電子・電機・OA機器、玩具、住宅建材、自動車等。連結子会社9社 (国内2社、中国4社、香港1社、シンガポール1社、フィリピン1社)、持分法適用関連会社1社とグループを形成し、子会社で合成樹脂フィルターの製造・販売も手掛ける。総合商社の双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有している。
 
【沿革】
1951年3月、合成樹脂の販売を目的とした日本樹脂(有)として設立され、52年3月に株式会社に改組。61年3月にニチメン(株)の出資を受け、94年12月にはニチメン(株)が55.5%の支配株主となった。同社の強みである合成樹脂原料に関する「高い専門性」と「提案力」がニチメン(株)の広範な顧客資産と融合し業容が拡大。95年9月のニチメン樹脂販売(株)への商号変更を経て、2000年1月、プラマテルズ(株)に商号を変更。01年10月、JASDAQに株式を上場した(11年3月にJASDAQ上場10周年を、同年10月に設立60周年を、それぞれ迎えた)。

グループでの拡大戦略や積極的な海外展開も同社の特徴で、03年1月に香港に現地法人を、同年4月に上海に現地法人を、それぞれ設立。その後、シンガポールに拠点を開設し(04年3月に法人化)、04年10月に天津に現地法人、06年2月には東洋インキ製造(株)との合弁でベトナムにコンパウンド製造・販売会社を設立(出資比率20%)。更に09年には1月に深?、同年8月に大連、11年7月にフィリピンと子会社を相次いで設立し、アジア進出を進める日系企業への供給体制の充実を図っている。
また、グループに製造部門も有し、上記の合弁会社の他、98年11月に成形加工や二次加工等の(株)富士松を100%子会社化し、更に03年9月にはフィルタレン(株)を設立して(株)化研より合成樹脂フィルターの営業権を取得し、同年10月よりメディカル向け等の合成樹脂フィルターの製造・販売を開始した。尚、コンパウンドとは、目的とする性能や機能を得るために、プラスチックのベース樹脂に強化材や添加剤を配合した合成樹脂。
 
 
株式上場後の10年間で連結売上高は387億円(上場した02/3期)から577億円(12/3期)へ1.5倍に拡大した。

売上高の75%程度を占めるエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂は付加価値が高く、海外では成長が続いており、成熟しつつある国内でも需要は堅調。
 
【同社が扱う合成樹脂原料の特徴】
同社は、相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂の取扱が多い。エンジニアリング系樹脂とは、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等でOA・事務機器、光学機器(カメラ等)、精密部品(ギア等の機構部品)、及び電子部品(コントローラー等)等で使われおり、ポリスチレンやABS樹脂等のスチレン系樹脂は、家庭電器製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫等)、OA・事務機器(パソコン及び周辺機器、FAX等)、及び玩具等で使われている。
 
 
【コアコンピタンス】
同社のコアコンピタンスは、(1)合成樹脂原料に関する高い専門性、(2)商社としてのネットワークを駆使した、メーカーを巻き込んでの提案力、及び(3)顧客との質の高いコミュニケーションが可能とする少量多品種即納体制、の3点。いずれも合成樹脂専門商社に不可欠な要素であり、同社は最もQCDに厳しい日本の優良企業との継続的取引の中で磨き上げてきた。高い専門性を背景にメーカーと一体となって提案営業を進める事でビジネスを広げ、少量多品種の即納対応で顧客満足度を高めている。
 
【販売先及び市場動向】
販売先業種はOA・事務機器と家電・電子が全体の51%(個別ベース、以下同じ)程度を占めており、次いで玩具・その他が25%程度。その他、建材10%程度、医療機器7%程度、自動車5%程度、容器・化粧品2%程度と、様々な業種に取引先が広がっている。

同社が強みを有するエンジニアリング樹脂市場は国内では概ね横ばいだが、アジアでは5%以上の伸びが予想されている。また、同社は、アジア、中国等の新興市場での販売を強化している他、新しい事業分野の開拓や省エネ・省資源の推進にも取り組んでおり、この一環として、「技術」、「コスト」、「消費地」を念頭に置いた最も合理的な世界最適生産体制の構築を進めている。
 
 
 
2012年3月期決算
 
(1)連結業績
 
前期比3.6%の増収、同0.2%の経常減益
売上高は前期比3.6%増の577.9億円。合成樹脂の基礎原料であるエチレンの11年度国内生産量は6,475千トンと前年度比7.5%減少したものの、同社においては、大連、上海、香港の中国子会社を中心に海外の主要得意先である電子・電機業界等向けが伸びた。
利益面では、原油高を背景にした仕入価格の上昇で売上原価(525.2億円)が同4.0%増と売上の伸びを上回り、売上総利益が減少。売上の増加に伴う運賃等の変動費の増加や海外拠点強化等に伴う人件費の増加を全社的な経費削減で吸収して販管費が減少したものの、営業利益は前期の実績をわずかに下回った。ただ、為替差損の減少(27百万円→13百万円)等で営業外損益が改善。投資有価証券売却益(48百万円)の増加等で特別損益も改善し、当期純利益は5.3億円と同6.0%増加した。
期末配当は1株当たり1円の増配とJASDFAQ上場10周年記念配当2.5円を加えた10.5円を予定している(1円増配した上期末配当と合わせて年17.5円)。

尚、予想との比較では、海外の好調に加え、国内も予想以上に底堅く売上が上振れ。原価率の上昇等は当初から織り込んでいたため、営業利益は6.4%予想を上回った。
 
 
 
(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
 
期末総資産は前期末比21.7億円増の245.6億円。期末が金融機関の休日(土曜日)だった事や前期の第4四半期の売上が東日本大震災の影響で落ち込んだ事もあり、売上債権、仕入債務が両建てで増加。年度末の資金需要に備え、短期借入金を中心に有利子負債を積み増した。自己資本比率は25.5%。
 
 
資金効率の改善で営業CFが増加する中、投資有価証券の売却増等で投資CFも改善したため、前期は7.8億円だったフリーCFが11.0億円に増加。有利子負債を積み増しした事で財務CFも黒字となり、現金及び現金同等物の期末残高37.8億円と同14.8億円増加した。
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比0.4%の増収、同4.9%の経常減益予想
「欧州債務危機の影響や新興国の景気減速で先行きの不透明感が増している」として慎重な予想となったが、円高の影響や仕入価格の上昇等を織り込んだ上で営業利益は前期比0.4%の減少にとどまる見込み。営業外損益の悪化は、受取配当金や持分法投資利益の減少を想定したため。特別利益を見込んでいない事もあり、当期純利益は5億円と同5.9%減少する見込み。
配当は記念配を落とした1株当たり15円を予定している(上期末7円、期末8円)。
 
今後の注目点
欧州債務危機の影響に加え、ここにきて米国景気の腰折れや中国等の新興国でも景気の減速が懸念されるようになってきた。こうした中で同社の業績予想が慎重なものになるのも止むを得ない事だが、前12/3期の業績に示されたように、新興国の素材メーカーでは追従する事が難しいエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂といった高付加価値品を中心に、アジアに展開する日系の製品や部品メーカー等との取引が拡大している。もちろん商品の優位性だけでなく、「高い専門性を背景にメーカーと一体となって提案営業を進める事でビジネスを広げ、少量多品種の即納対応で顧客満足度を高める」と言うソフト面での強みも好調な海外事業の背景にある。強みとする提案営業による需要の掘り起こしが進めば、今期も売上・利益の上振れが期待できよう。