ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.22

(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長
寺西 忠幸 会長
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長
【ブリッジレポート vol.22】2013年2月期第1四半期業績レポート
取材概要「コストコントロールが機能するなど収益性の面で取り組みの成果が表れており、売上のボリュームが増える第2四半期は、その効果がより顕著に表れ・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年7月31日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
会長
寺西 忠幸
社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年2月 102,229 1,684 1,960 184
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(7/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
543円 11,331,145株 6,152百万円 1.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 3.7% 67.07円 8.1倍 901.71円 0.6倍
※株価は7/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
キリン堂の2013年2月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。近畿7県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重)を中心に、香川、徳島、石川、及び1都3県においてドミナント戦略(特定地域内に集中出店する事で経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2012年5月15日現在、グループで320店舗(FC2店舗を含む)を展開。グループで医薬品等の卸売事業や医療・介護コンサル等も手掛けている。
グループは、ドラッグストアを展開する(株)ニッショードラッグ(8月に(株)キリン堂が吸収合併する予定)、卸売事業や健康食品・医薬品の企画・販売を手掛ける(株)健美舎、医療・介護分野のコンサルティングやマネージメントを手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメント、輸出入とその関連業務を手掛ける麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司の連結子会社4社。
 
【中期3ヵ年計画】
中期的な基本方針は、(1)顧客第一主義の店づくり、(2)収益性の改善、及び(3)中長期の成長に向けた取り組み、の3点。この基本方針の下で中期3ヵ年計画(ローリング方式により毎期見直しを行っている)が進められており、当面の目標は15/2期に売上高1,165億円(12/2期1,022億円)、経常利益35.2億円(同19.6億円)。
 
(1)顧客第一主義の店づくり(地域密着とライトカウンセリング重視の店づくり)
6,000世帯程度の小商圏に調剤薬局を併設したドラッグストアを展開し、固定客の育成を念頭に、未病に対する的確なカウンセリングを特色とする地域密着型の店づくりを進めていく。ポイントは、店舗作業の効率化とセルフサービス化(いずれもカウンセリングへの対応力向上につながる)、及び専門知識を持った人材の育成である。
なお、未病とは、健康から病気に向かっている状態のことで、日本未病システム学会の定義では、①検査値に異常はないが自覚症状がある場合、②自覚症状はないが検査値に異常がある場合(自覚症状があり、検査値に異常がある場合は「病気」)。例えば、高血圧、高血脂症、肥満等が未病の範疇に入り、これらは日本人の全死因の6割を占める「三大成人病(ガン・心臓病・脳卒中)」につながる。「未病対策」とは病気に向かうベクトルを健康方向に向け直すことで、カウンセリングによる顧客サポーで信頼関係を構築していく。
 
(2)収益性の改善
収益性改善のためのポイントは、①業務システム改革によるコストコントロールの推進、②物流インフラ体制の整備、及び③PB商品の育成と開発、の3点を推進している。この一環として、この2月に(株)ニッショードラッグが (株)ジェイドラッグを吸収合併したほか、13/2期に入り、グループ19店舗でタスクフォース主導によるレイアウト変更等の簡易改装を実施した。
 
(3)中長期の成長に向けた取り組み
調剤売上高の拡大(関連業務への進出)や海外(中国)事業のノウハウ確立に取り組むと共に、M&Aやアライアンスにも機動的に対応していく。調剤売上高については12/2期の68億円を15/2期に100億円に引き上げたい考えで、地域の調剤薬局の取り込みを図るほか(12年5月に(有)大賀薬局から調剤薬局3店舗を譲受)、大型調剤薬局の開設や(株)ソシオンヘルスケアマネージメントとの連携で医療モールの開設を推進する。
 
 
2013年2月期第1四半期決算
 
 
減収・減益ながら、ほぼ計画に沿った着地
連結売上高は前年同期比3.1%減の241.4億円。内訳は小売事業が同3.2%減の240.1億円、その他事業が同8.3%増の1.3億円。小売事業の減収は東日本大震災(以下、震災)後の特需の反動と花粉対策品の減少(花粉の飛散量が前年同期よりも少なかったこと)によるもの。一方、その他事業の増収は卸売事業の苦戦を医療コンサルティングを行う(株)ソシオンヘルスケアマネージメントがカバーした。
営業利益は同46.2%減の1.6億円。売上の減少による売上総利益の減少が主な要因。利益率の高い調剤部門の好調で小売事業の売上総利益率は改善。前年同期の反動(前年同期は震災後、商品供給に不安があったため販促を控えたことによるコスト減)で販促費が増加したものの、前期からの取り組みの成果である地代家賃費の削減等で販管費もわずかに減少した。四半期純利益は、前年同期に計上した資産除去債務会計基準適用に伴う特別損失がなくなったことから、3.6億円の黒字となった。
 
 
出退店及び既存店の状況
キリン堂が3店舗(大阪府2店舗・兵庫県1店舗)の新規出店を行ったほか、12年5月に(有)大賀薬局から調剤薬局3店舗を譲受。退店はキリン堂のFCが1店舗。この結果、第1四半期末の店舗数はキリン堂243店舗(FC2店舗を含む)、(株)ニッショードラッグ77店舗(2月に吸収合併した(株)ジェイドラッグの2店舗を含む)の合計320店舗(前期末比5店舗増)。この他、(株)ニッショードラッグが2店舗の改装を実施したほか、キリン堂が15店舗、(株)ニッショードラッグが4店舗の合計19店舗において、タスクフォース主導によるレイアウト変更等の簡易改装を実施した。
 
 
既存店売上高は前年同期比4.3%減少した(計画は同2.0%減)。調剤部門の好調もあり単価が同2.5%上昇したものの、前年同期の震災特需の反動等で客数が同6.7%減少した。なお、4月度の客単価が同10.4%上昇、5月度の既存店売上高が同12.6%減少と月度により指数の触れ幅が大きくなっている。これは、月間販促実施内容の違いによるものだ。前年同期5月度に実施した10%オフのDM販促を当期は4月度に実施した結果、4月度は集客効果は小さかったが、客単価の上昇につながり、5月度は既存店売上高の減少につながった。
 
 
医薬品の減少は花粉症関連商品の減少によるもので、健康食品(健康菓子)、育児用品(紙オムツ、ベビーフード等)、雑貨(一般食品、紙類、電池)等の減少は震災特需の反動による。健康食品では、花粉症関連のサプリメントも減少した。化粧品は、トイレタリーが増加したものの、一般化粧品・制度化粧品が減少した。
一方、調剤売上高の増加は処方取扱店舗の増加(3店舗増の50店舗)と1店舗当たりの処方せん受付枚数の増加による。
 
 
販売費の増加は、前年同期は震災後の商品供給に不安があったため販促(チラシ)を控えた反動。当期は通常通りの販促を実施ししたため、販促費が48百万円増加した。人件費の増加は報酬及び給料手当の増加(38百万円増)による。
一方、営業費は物流費(41百万円減)、業務委託手数料(32百万円減)、及び寄付金(21百万円減)の減少等による。業務委託手数料の減少は前年同期は家賃引き下げ交渉のコンサルを利用したため。この効果で地代家賃費(施設費に含まれる)が40百万円減少した。この他の施設費減少要因は、リース料(16百万円減)、減価償却費(14百万円減)等による。
 
 
新規出店等で流動資産や固定資産が増加。運転資金の増加への対応も含め有利子負債を積み増した。自己資本比率は前期末比0.1ポイント改善の24.6%。
 
 
2013年2月期業績予想
 
第1四半期は売上高及び営業利益がわずかに下振れしたものの、経常利益及び当期純利益は上振れした。ほぼ計画線での着地であり、第2四半期(6-8月度)も順調なスタートを切ったようだ。新規出店についても、下期に予定していた1店舗の開設が上期に前倒しになる可能性はあるものの、通期で14店舗の計画に沿って進んでいる模様。
通期で前期比3.0%の増収、同12.7%の経常増益を見込んでおり、配当は1株当たり年20円を予定している(上期末10円、期末10円)。
なお、5月11日付で常務取締役営業本部長だった寺西豊彦氏が代表取締役社長に就任し(主に営業部門を統括)、代表取締役会長兼社長だった寺西忠幸氏は会長職(代表取締役会長)に専念する事となった(主に海外部門やM&Aを統括)。また、営業政策の一層の徹底や経営資源の再配置等を図り効率化を進めるべく、兵庫県・大阪府・京都府を中心に店舗展開をしている(株)ニッショードラッグを8月16日付で吸収合併する予定。
 
 
 
 
今後の注目点
コストコントロールが機能するなど収益性の面で取り組みの成果が表れており、売上のボリュームが増える第2四半期は、その効果がより顕著に表れるものと考える。また、調剤の影響を多分に受けている面もあるのだろうが、固定客づくりの進捗度を測る指標のひとつである客単価が堅調に推移していることも第1四半期決算のポイントだ。引き続き上記の点に注目すると共に、若干遅れ気味の感がある集客面での成果にも注目していきたい。