ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.21

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.21】2012年5月期業績レポート
取材概要「国内ではスマートフォンの普及が進んでいる。こういった中で、コンテンツサービス事業では同社は様々なコンテンツを様々なプラットフォームに・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年8月7日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年5月 2,790 304 318 170
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(7/20現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
8,600円 377,000株 3,242百万円 5.7% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
150.00円 1.8% 530.50円 16.2倍 8,132.79円 1.0倍
※株価は7/20終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本エンタープライズの2012年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、音楽・ゲーム・デコメや生活実用系等のコンテンツを制作し携帯等に配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営、システム構築、アフィリエイト広告、更にはCDの制作・販売等を手掛けるソリューションが2本柱。
また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、高い成長が見込める中国とインドでの事業展開では国内コンテンツプロバイダーの中で先頭を走る。中国では2G、2.5G向けのゲームコンテンツ配信を手掛け、3Gの拡大を見据えた電子コミック配信サービスを育成中(中国の作家や出版業界との連携による携帯電話向け電子コミックの配信を既に開始)。インドでもスマートフォン・3G端末の普及を見据えた取り組みを進めており、11年12月に業務提携先のMAGNA社(インドのライフスタイルマガジンの大手出版社)が出版している雑誌の電子(iPadアプリケーション)配信を開始した。

グループは、モバイルコンテンツやインド進出企業の支援事業を手掛ける(株)ダイブ、レーベル事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、交通情報を中心にした情報提供とシステム開発の交通情報サービス(株)、因特瑞思(北京)信息科技有限公司、北京業主行網絡科技有限公司、瑞思創智(北京)信息科技有限公司の連結子会社6社と、Web・Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社3社。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトや、mixi、Mobage、GREEといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へ自社開発したコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリア等から受取っている。中国・インドをターゲットとした海外事業にも取り組んでいる。
 
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバネットワークの運用・監視・保守、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告(アフィリエイト広告:携帯電話販売代理店との協業による成功報酬型コンテンツ販売)、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
 
2012年5月期決算
 
 
前期比17.7%の増収、同12.4%の経常増益
売上高は前期比17.7%増の27.9億円。コンテンツサービスではゲームや音楽が苦戦したものの、交通情報等の提供を手掛ける交通情報サービス(株)(以下、ATIS)の子会社化効果に加え、電子書籍総合販売サイト「ケータイ書店Booker's」(東京都書店商業組合との共同運営による)や女性のための健康サイトや海外事業が伸び、30.0%の増収。尚、ATISを除いた場合、売上高は24.3億円で同2.9%の増収であった。ソリューション事業では店頭アフィリエイト(広告)や物販が伸びて売上が12.5億円と同5.6%増加した。利益面では、コンテンツサーンビス事業では広告宣伝費の増加に伴う販管費増を増収で吸収してセグメント利益は4.9億円と同22.9%増加した。ソリューション事業ではアフィリエイトの増加が売上原価の増加要因になり、セグメント利益は3.1億円と同9.4%減少した。
 
 
 
新規連結もあり大幅増収・増益
第4四半期(3~5月)は、前年同期との比較では、コンテンツサービスではATISの新規連結効果で、ソリューションでは店頭アフィリエイトを中心に売上が大きく伸びた。営業利益は72百万円から105百万円に拡大した。第3四半期との比較でも増収増益となった。尚、12/5期3Q、4Qはスマートフォン会員強化のため広告宣伝費を多めに投入している。純利益では税金費用及び少数株主利益の増加により、減益となった。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
12/5期末の総資産は前期末比3.3億円増の35.7億円。ATISの株式追加取得により現預金が減少し、投資その他の資産が増加した。CFの面では、税負担が増加、利益の増加はあったものの営業CFは減少した。一方、投資CF定期預金の払戻による収入が大きくプラスとなった。フリーCFも11/5期のマイナスからプラスに転じている。配当金の支払いで財務CFはマイナスとなった。
 
 
 
2013年5月期業績予想
 
 
 
13/5期は12/5期比28.6%の増収、同5.3%の経常増益予想
13/5期は、コンテンツサービス事業ではスマートフォン普及の本格化に対応し、事業領域の拡大・拡張を図る。ソリューション事業ではプラットフォーム運営に参入、店頭アフィリエイトでスマートフォン向けを強化する。海外事業では中国でこれまでの電子コミックの配信等に加え、携帯ショップの展開も開始する。これらにより増収増益を計画する。配当は1株当たり12/5期から20円増配の150円を予定している。尚、同社業績は下期偏重の傾向があるため、今期より2Q累計期間の業績予想の記載を省略した。
 
(2)事業別の見通し
①国内事業
コンテンツサービス事業  -スマートフォン向けビジネスの拡大・強化-
MM総研では12年3月のスマートフォン契約数は25.2百万と推定しているが、15年3月には66.3百万に、契約比率は22.5%から55.8%に伸びる見通し。こういった中、コンテンツサービス事業では、スマートフォン向けビジネスを更に拡大・強化する。コンテンツのジャンルはこれまでの音楽、ゲームに加えて交通情報が加わった。また、Googleが運営する「Google Play Store」やAppleが運営する「App Store」等グローバルに展開している各プラットフォームへのアプリ対応の他、端末に依存しないブラウザ対応等、多面的複合的にサービスの提供を進める。既に実施している「auスマートパス」(後述)へのコンテンツの提供のように、携帯通信キャリアの施策にあわせたタッチポイントの拡大に取り組む。

尚、「auスマートパス」とは、月額390円(税込)で、500本以上の人気アプリ取り放題、おトクなクーポンやポイントサービス、10GBの写真や動画のストレージ、更には充実したセキュリティとサポートサービスを受けることができるサービス。Android搭載のauスマートフォン向けに提供されている。
 
スマートフォン向けコンテンツの一例(スマートフォンでの利用者拡大に向け、生活実用系やツール系等を拡大・充実)
 
 
ソリューション事業
ソリューションでは、企業向けソリューションにおいて、アプリやサイト等、引き合いが増えているスマートフォン向けコンテンツ制作への対応を進めると共に、アフィリエイト広告向けのシステム開発で培った技術を活かして携帯電話販売店の店舗運営支援に取り組む(業務効率化システムの開発と提供)。子会社化した「(株)フォー・クオリア」と開発・運営機能の強化・統合を行い、グループ全体の開発の効率化も図る。ソリューションコンテンツでは、シェアモデルのフィーチャーフォンサイトのスマートフォン対応を進める他、ATISが持つ情報系コンテンツを活かしソリューションの幅を広げていく。この他、スマートフォン向けの店頭アフィリエイト(広告)、ECサイトによる販売及び楽曲制作によるCD販売(物販)も強化する。今夏からは「Ponta App Market」を開始する見通し。
尚、携帯通信キャリアのスマートフォン向けサービスの対応遅れもあり、一時期、スマートフォン向けでは無料アプリが増加し、店頭アフィリエイト全体の単価が低下したが、携帯通信キャリアによるスマートフォン向け新メニューの提供開始(前第3四半期)以降、有料アプリ(課金会員)が増加しているため単価は上昇傾向にある。
 
 
②海外事業
中国:電子コミックから携帯ショップの展開も
中国においては、3Gの拡大を見据えて事業ドメインを電子コミックの配信サービスと位置付け、中国の大手国営総合出版社である「中国軽工業出版社」との業務提携や中国の漫画家と出版社の団体である「漫画家新媒体連盟」との協業によりコンテンツを確保し、中国子会社北京業主行網絡科技有限公司(日系企業としては唯一、中国での配信ライセンスを保有)を通して自社サイトや通信キャリア及びメーカー等のサイトに配信している。
中国では、事業の開始当初は感じられた漫画に対する抵抗感が薄れつつあり、実際、ユーザーも増加傾向にあると言う。ただ、日本のように通信キャリアによる課金制度が確立されていない上、海賊版等の横行もあり、いかにして確実に課金し収益につなげるかが課題となっている。
また、ゲーム等コンテンツのジャンルも拡大する方向。
 
 
新規事業として中国電信(チャイナテレコム)の携帯ショップの展開を開始する予定。リアル店舗出店による新たな事業の創造を図る。日本式おもてなしや販売ノウハウを提供し、携帯通信業者との協業による店頭アフィリエイトも展開する。9月に新店舗がオープンする。また、8月の上海大型旗艦店のリニューアルオープン以後の運営を受注した。
 
インド:電子雑誌
インドにおいては、スマートフォン・3G端末の普及を見据えた取り組みを進めており、この一環として、現地の出版大手MAGNA社と業務提携。同社が出版している映画関連雑誌「STARDUST」の電子書籍配信(iPadアプリケーション)を、11年12月20日に開始した。現在、プロモーションの強化と配信先プラットフォームの拡充(Google Play等)に取り組んでおり、取扱雑誌の拡大を図るべく雑誌社各社との関係強化にも力をいれている。
 
 
今後の注目点
国内ではスマートフォンの普及が進んでいる。こういった中で、コンテンツサービス事業では同社は様々なコンテンツを様々なプラットフォームにより提供し、顧客の取り込みを図る。ソリューション事業では開発力はより強化されており、スマートフォンに対応した店頭アフィリエイトも拡大している。「auスマートパス」や「Ponta App Market」といった新規事業の貢献も楽しみなところ。スマートフォンへの対応を進めることで収益源は多様化されている。
海外事業は今期から中国の収益貢献が高まるだろう。コンテンツ提供では電子コミックの配信が拡大し、取引量の拡大、配信先の拡大、ユーザー数の拡大につなげる。携帯ショップも展開、通信事業者との協業による店頭アフィリエイトの貢献もあるだろう。潜在マーケットは日本と比較しても格段に大きく、今後の収益貢献が期待される。
国内外で事業領域は着実に広がっている中、先行投資負担もあり今期の利益率は低下する。しかし、これまでの諸施策については、今期はまず売上で発揮される。中長期的な収益成長力は高くなった印象がある。