ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.11

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.11】2013年3月期上期業績レポート
取材概要「昨今の商社ビジネスはモノを右から左に流す流通機能だけでは成り立たず、ニーズの掘り起こしと自ら需要を創造する提案力が不可欠・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年11月20日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 57,790 883 840 531
2011年3月 55,762 899 842 500
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(11/1現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
330円 8,548,416株 2,821百万円 8.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 4.5% 58.49円 5.6倍 733.35円 0.4倍
*株価は11/1終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
プラマテルズの2013年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂関連商品の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料やコンパウンド(樹脂原料に添加剤を加え機能を強化したもの)をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売している。最終用途は、電子・電機・OA機器、玩具、住宅建材、自動車等。連結子会社10社 (国内2社、中国4社、香港1社、シンガポール1社、フィリピン1社、タイ1社)、持分法適用関連会社1社と共にグループを形成し、子会社で合成樹脂フィルターの製造・販売も手掛ける。総合商社の双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有している。
 
【沿革】
1951年3月、合成樹脂の販売を目的とした日本樹脂(有)として設立され、52年3月に株式会社に改組。61年3月にニチメン(株)の出資を受け、94年12月にはニチメン(株)が55.5%の支配株主となった。同社の強みである合成樹脂原料に関する「高い専門性」と「提案力」がニチメン(株)の広範な顧客資産と融合し業容が拡大。95年9月のニチメン樹脂販売(株)への商号変更を経て、2000年1月、プラマテルズ(株)に商号を変更。01年10月、JASDAQに株式を上場した(11年10月にJASDAQ上場10周年を、12年3月に設立60周年を、それぞれ迎えた)。

グループでの拡大戦略や積極的な海外展開も同社の特徴で、03年1月に香港に現地法人を、同年4月に上海に現地法人を、それぞれ設立。その後、シンガポールに拠点を開設し(04年3月に法人化)、04年10月に天津に現地法人、06年2月には東洋インキ製造(株)との合弁でベトナムにコンパウンド製造・販売会社を設立(出資比率20%)。更に09年には1月にシンセン、同年8月に大連、11年7月にフィリピンと子会社を相次いで設立し、アジア進出を進める日系企業への供給体制の充実を図っている。
また、グループに製造部門も有し、上記の合弁会社の他、98年11月に二次加工等の(株)富士松を100%子会社化し、更に03年9月にはフィルタレン(株)を設立して(株)化研より合成樹脂フィルターの営業権を取得し、同年10月よりメディカル向け等の合成樹脂フィルターの製造・販売を開始した。尚、コンパウンドとは、目的とする性能や機能を得るために、プラスチックのベース樹脂に強化材や添加剤を配合した成形材料のことである。
 
 
株式上場後の10年間(02/3期~12/3期)で連結売上高は387億円から577億円へ1.5倍に拡大した。

売上高の64%程度を占めるエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂は付加価値が高く、海外では成長が続いており、成熟しつつある国内でも需要は堅調。
 
【コアコンピタンス】
同社のコアコンピタンスは、(1)合成樹脂原料に関する高い専門性、(2)商社としてのネットワークを駆使した、メーカーを巻き込んでの提案力、及び(3)顧客との質の高いコミュニケーションが可能とする少量多品種即納体制、の3点。いずれも合成樹脂専門商社に不可欠な要素であり、同社は最もQCDに厳しい日本の優良企業との継続的取引の中で磨き上げてきた。高い専門性を背景にメーカーと一体となって提案営業を進める事でビジネスを広げ、少量多品種の即納対応及び顧客密着型の営業展開で顧客満足度を高めている。
 
 
【同社が扱う合成樹脂原料の特徴】
同社は、相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂の取扱が多い。エンジニアリング系樹脂とは、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等でOA・事務機器、光学機器(カメラ等)、精密部品(ギア等の機構部品)、及び電子部品(コントローラー等)等で使われおり、ポリスチレンやABS樹脂等のスチレン系樹脂は、家庭電器製品(エアコン、冷蔵庫等)、OA・事務機器(パソコン及び周辺機器、FAX等)、及び玩具等で使われている。
 
 
【市場動向と成長戦略】
(1)市場動向と成長戦略
同社が強みを有するエンジニアリング系樹脂市場は、成長著しいアジアにおいて5%以上の成長が続くとみられている。また、国内においても堅調に推移しており、概ね横ばいを維持している。

こうした中、販売先の海外展開に対応していく事で海外の成長力を取り込んでいく考え。もっとも、販売先は精密機器、医療機器、家電電子等の勝ち組企業が多く、いずれの販売先も国内外での生産バランスに配慮した経営を行っているため、国内も事業の拡大余地を残している。

このため、13/3期上期は、5月に弘前営業所を、8月に長崎出張所を、それぞれ開設した。弘前営業所の営業圏となる青森にはワールドワイドに展開する精密機器メーカー系の精密部品メーカーがあり、秋田には大手医療機器メーカーの生産拠点がある。また、長崎ではワールドワイドに展開する精密機器メーカーの工場が稼働した。
 
営業拠点
東京本社、大阪支社、名古屋支店、静岡支店、大分営業所、長崎出張所、弘前営業所。

国内子会社
株式会社 富士松(大阪府)
フィルタレン 株式会社
(埼玉県)

(同社資料より)
 
また、海外では、顧客企業が生産拠点を東南アジアを含むアジア全体に広げている事を受けて、同社も中国沿海部から中国内陸部や東南アジアへと拠点展開を進めている。変化する顧客ニーズを確実に捉える事で事業の拡大を図る考え。
この一環として、11年7月にフィリピンに、12年7月にはタイ(バンコク)に、それぞれ子会社を設立した。
 
海外では、香港,中国(シンセン、上海、天津、大連)に現地法人5社及び1拠点(上海法人の合肥出張所)を有し、その他のアジア地域では、フィリピン及びタイ(バンコク)に現地法人を展開。
また、ベトナムには東洋インキ製造(株)と合弁のコンパウンド製造・販売会社を展開している。

(同社資料より)
 
(2)競合先
ライバルは、総合商社系列の専門商社や化学系専門商社であり、海外ではブローカー等だが、総合商社系列の専門商社は基本的に汎用品等の大きなロットでのビジネスを志向しており、同社のように提案営業による需要の掘り起こしや多品種少量の取引に積極的に対応する大手の専門商社は少ない。また、海外ではブローカー的な企業が取引に介在する事はあるが、こうしたきめ細かい営業を行う文化が無い。

取扱商品が我々最終消費者の目に触れる事がめったにないため、理解しにくい一面を持つ同社だが、国内外のライバルと比較すると、同社の存在感が際立ってくる。
 
 
 
2013年3月期上期決算
 
 
前年同期比0.9%の減収、同4.5%の経常減益
売上高は前年同期と同水準(前年同期比0.9%減)の282億83百万円。国内売上が193億76百万円と同8.2%減少したものの、上海や香港の子会社を中心に海外売上が89億07百万円と同21.1%伸びた。利益面では、減収による売上総利益の減少が響き、営業利益は4億32百万円と同3.8%減少したものの、経費節減で販管費の伸びを抑えた事で期初予想を2.9%上回った。
 
 
海外子会社の上期は1-6月であり(連結決算の上期は4-9月)、尖閣諸島問題の影響は受けておらず、大連の売上減少は生産拠点を国内に移管した取引先があったため。一方、国内売上の落ち込みは販売先の生産調整が主因。一部主要取引先の業績低迷もあり、特に関西圏での落ち込みが大きかったようだ。

尚、これまで在外子会社等の収益及び費用を円貨換算する際、在外子会社等の決算日の直物為替相場を用いて行っていたが、13/3期より期中平均為替相場を用いて円換算する事とした。決算短信表等の12/3期上期連結売上高(285億53百万円)は遡及修正したものだが、上記の12/3期上期売上高(284億63百万円)は従来の円貨換算基準によるもの。
 
 
海外での事業拡大や国内での拠点増設で旅費・交通費が増加したものの、全般には経費抑制が効いた。
 
 
上期末の総資産は前期末比2億45百万円減の243億16百万円。手元資金を必要とする期末を越えた事や第2四半期の売上が減少(前期の第2四半期は震災後の生産回復で例年以上に売上が増加)した事もあり、キャッシュポジションを落とし有利子負債の削減を進め財務の健全化を進めた(このため、現預金と有利子負債が両建で減少)。海外子会社の業容拡大で売上債権やたな卸資産が増加したものの、資産全体ではスリム化が進んだ結果、自己資本比率は26.3%と前期末比0.8ポイント改善した。
 
 
CFの面からも同様の事が読み取れる。第2四半期の売上の減少等による運転資金の減少で営業CFのマイナス幅が縮小したためフリーCFが改善。有利子負債の削減を進めたため財務CFがマイナスとなった。現金及び現金同等物の上期末残高は33億89百万円と前期末との比較では3億94百万円減少したものの、前年同期末との比較では18億25百万円の増加。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
業績予想に変更は無く、売上高は前期と同水準の580億円、経常利益8億円(同5.2%減)
上期はグループ全体の連携強化で需要の回復を着実に捉える事ができ、営業利益以下の各利益段階で期初予想を上回った。しかし、「欧州の財政危機を背景とした欧米経済の先行きへの懸念や、それに伴う中国をはじめとした新興国経済の減速に加え、円高の長期化など国内外の不安定要因により、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いている」として通期の業績予想を据え置いた。配当は上場10周年記念配2.5円を落とした1株当たり15円を予定している(上期末7円、期末8円)。
 
 
 
今後の注目点
昨今の商社ビジネスはモノを右から左に流す流通機能だけでは成り立たず、ニーズの掘り起こしと自ら需要を創造する提案力が不可欠となっている。同社はこの2点でライバルを凌駕しており、きめ細かい顧客フォローによって販売先から吸い上げたニーズをフィードバックする事で樹脂メーカーなど仕入先メーカーの新製品開発を支援し、この新製品をもって完成品メーカー等の販売先に提案営業を行っている。同社は派手さが無いため目立たないものの、理解を深めるとポテンシャルの高さに気が付く。
一方、目先の業績に目をやると、尖閣諸島問題の影響等が懸念されるが、海外子会社の下期は7-12月のため9月末で第3四半期を終えており、影響が出ても10-12月の3ヶ月間のみ。また、中国での日系メーカーの自動車販売の落ち込みが報道されているが、同社は自動車向けの売上比率が小さく影響は限定的と思われる。国内では年明け後の1-3月に不透明感が残るが、その一方で営業拠点開設効果等が業績予想に織り込まれていない上、復興需要に後押しされた建材需要の増加等も収益の下支え要因になると思われる。