ブリッジレポート
(2183:東証マザーズ) リニカル 企業HP
秦野 和浩 社長
秦野 和浩 社長

【ブリッジレポート vol.13】2013年3月期上期業績レポート
取材概要「下期も各案件が順調に進めば、少なくとも2億円程度の利益の上乗せが可能と思われ、その場合、通期の営業利益及び経常利益は10億円を超える。ただ・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年12月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社リニカル
社長
秦野 和浩
所在地
大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル
事業内容
CRO(臨床試験受託業)が柱。供Ν形蟷邯海貌嘆宗CSO(医薬品営業受託業)を育成中
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 3,110 728 723 424
2011年3月 2,512 288 278 147
2010年3月 2,404 480 473 273
2009年3月 2,036 549 515 300
2008年3月 1,273 505 494 296
2007年3月 613 186 195 114
2006年3月 118 16 19 11
株式情報(11/9現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
710円 11,394,906株 8,090百万円 45.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
11.00円 1.5% 44.58円 15.9倍 111.92円 6.3倍
※株価は11/9終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
リニカルの2013年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
臨床試験(治験)や医薬品の市販後臨床試験等に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を手掛けており、第2の柱とするべくCSO(Contract Sales Organization:医薬品の営業・マーケティング受託)事業を育成中。
CRO事業では、治験の最も大切な段階である第II相試験(フェーズII)及び第III相試験(フェーズIII)における「モニタリング業務」に特化している事が特徴。また、統合失調症、うつ病、アルツハイマー等の中枢神経系(Central Nervous System :CNS)領域やがん領域といった難易度の高い領域に注力する事で他社との差別化を図っている(これに対して、生活習慣病等の領域は差別化が難しく受託競争が激しい)。
 
主な取引先は、武田薬品工業グループ、第一三共、エーザイ、大塚製薬、塩野義製薬等の国内主要製薬会社。
 
尚、第II相試験は安全性及び有効性・用法・用量を調べるために実施され、この結果を基に第III相試において、実際の治療に近い形での効果と安全性を確認する。
 
【CRO事業の業務内容】
事業セグメントは、主力のCRO事業と育成中のCSO事業に分かれ、12/3期の売上構成比は、それぞれ95.6%、4.4%。CRO事業は「モニタリング業務」に特化しており、これに付随する「品質管理業務」や「コンサルティング業務」も手掛ける。
 
モニタリング業務
治験が法令を遵守し計画・手順通り正確に行われているかを監視(モニタリング)する。この業務を行う者をCRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)と呼び、治験薬や実施計画書についての説明から治験データの回収までを手掛ける。
 
品質管理業務
CRAが医療機関から回収したデータについて、定められたチェックリスト等を用いて確認する。
 
コンサルティング業務
製薬会社に対して、新薬開発のスケジュール作成から治験企画、承認申請に至るまでのコンサルティングを行う業務。新薬開発をスムーズに進めるための技術的なサポートも行なっている。
 
 
【沿革】
2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で免疫抑制剤等の開発に携わってきたメンバー9名によって設立された。当初から、CNS領域やがん領域の育成に取り組み、会社設立後まもなく大塚製薬からCNS領域の案件を受注。その後、人材を補強し事業部として受注活動を強化した。また、がん領域も外資系製薬会社等でがん領域の医薬品開発を手掛けた人材等に恵まれ、足元、受注が拡大している。
06年1月には、SMO(治験施設支援機関)事業に進出するため同事業を手掛けるアウローラ(株)を子会社化したが、CRO事業への経営資源の集中を図るべく07年5月に全保有株式を売却。08年7月に、国内の製薬会社の米国進出支援を目的に米国カリフォルニア州に全額出資子会社LINICAL USA, INC.を設立。同年10月に東証マザーズに株式を上場した。
 
 
10/3期、11/3期は受託案件の中止で売上が伸び悩む中、CRAやQC(品質管理担当者)等の増員が負担となった。
しかし、12/3期は受注の好調と受託案件の順調な進捗で業績はV字回復。13/3期は2期連続の最高益更新へ。
 
【強みと市場環境】
CRO業界はリーマン・ショック後の市場縮小で淘汰・再編が進み企業数が減少した。現在、案件数が増加に転じ事業環境が回復基調にあるものの、CNS領域やがん領域等の難易度が高い領域での案件が中心のため残存者利益を享受できるのは同社を含めた一部の有力CROに限られている。受託余力が低下し人材獲得競争が激化している面はあるが、総じて事業環境は良好だ。
 
(1)難易度が高く競争相手が少ないCNS領域やがん領域のモニタリング業務に強み
難易度が高く競争相手が少ないCNS領域やがん領域のモニタリング業務に強みを有する。例えば、CNS領域の疾患であるアルツハイマー病の場合、問診等による薬の有効性評価が難しく、一方、がん領域であれば、薬の副作用によるものか、がんの進行によるものか、安全性評価が難しいため、モニタリングでは高度な対応が必用とされる。この他、急性疾患や特定疾患(いわゆる難病)と呼ばれる領域も難易度が高い分野で、CNS領域やがん領域と共に新薬開発が活発だ(しかし、対応できるCROは限られる)。一方、生活習慣病の治験は患者の状態が比較的安定しており、有効性評価についても比較的容易であるため、難易度は低い。
 
 
新薬の開発トレンドは生活習慣病から治療満足度が低いCNS領域やがん領域にシフトしているが、上記の通り、CNS領域では有効性評価の標準化が難しく、がん領域では安全性情報の取り扱いが難しい。このため、これまでは製薬会社が社内で対応していたが、近年、こうした難易度の高い領域でもアウトソーシングされるケースが増えている。同社にとって、CNS領域は会社設立時からの注力分野であり、がん領域は2年前にアストラゼネカのイレッサ開発メンバーを迎え受注活動を本格化した。
 
 
(2)高い収益性
有効性確認や安全性確認といった臨床の現場での高い業務遂行力に加え、CRO業務全般での知識・技術水準の高さも同社の強みである。同社が手掛ける案件の逸脱率は非常に低く抑えられており、また、症例の組み入れやデータの回収期間を含め、全案件の8割程度は実施期間の短縮に成功している。同社は難易度の高い分野で高品質・短納期を実現しているため適正価格での受注が可能であり、スケールメリットのハンデを補って大手を凌ぐ利益率を実現している。
 
 
成長に向けての課題と取り組み
 
中長期的な成長に向けての課題として、(1)CROビジネスにおけるリニカルブランドの確立、(2)CROビジネスにおける優秀な人材の獲得・教育、及び(3)顧客ニーズ(がん/中枢、海外、CSO事業)への対応の3点を挙げている。
 
 
(1)CROビジネスにおけるリニカルブランドの確立
手掛ける案件の逸脱率が非常に低く、また、全案件の8割程度で実施期間の短縮に成功する等、高品質・短納期を実現しており、引き続き第響蟷邯魁第III相試験のモニタリング受託に特化して高品質・短納期(付加価値)を追及する事で、“リニカルブランド”を確立すると共に適正価格の浸透を図り高収益体質を維持していく考え。
 
 
(2)CROビジネスにおける優秀な人材の獲得・教育
現在、リーマン・ショック後に落ち込んだ案件数が増加に転じ受注単価も回復傾向にあるが、新薬開発が活発な領域は難易度が高いため、事業環境改善の恩恵を享受できるのは同社を含めた一部の有力CROに限られている。ただ、各社共に受託余力が不足気味で、同社もその例外ではない。このため、同社はCRA全体の20%を目途に新卒採用を進める事で確実に増員を図ると共に(新卒が全体の20%を超えると品質が低下するリスクがあると言う)、採用競争が激化している経験者も新卒と同程度の採用を目指している。12年11月現在、CRA165名体制だが、マネージャー及びQC(品質管理担当者)を含めた300名体制の早期確立を目指している(その他の部門を含めた総勢400名体制)。
 
 
(3)顧客ニーズ(CNS領域・がん領域、海外、CSO事業)への対応
CNS領域及びがん領域への対応
新薬開発が活発なCNS領域及びがん領域への対応を強化しており、着実に成果をあげている。具体的には、有効性評価の標準化が難しいCNS領域は会社設立以来の注力分野であり、経験豊富なマネージャーとCRAを配置してニーズに応えている。また、一般的に重篤な症例が対象となるため、安全性情報報告を中心に慎重かつ迅速な対応が求められるがん領域では、がん領域での経験が豊富なマネージャーと経験者を配置しノウハウと実績の蓄積を図ると共に、増加するニーズへの対応を進めている。
 
 
海外(グローバル開発)への対応
今後、CNSやがん領域等での拡大が予想される日本主導型の国際共同治験に対応するべく、日+亜・米・欧の3極での事業展開を進めていく。米国には08年7月15日にLINICAL USA, INC.(カリフォルニア州)を設立し、国内中堅製薬メーカーの海外進出支援に関するコンサルティング事業を開始した。米国で実施される治験のモニタリング業務を受託するべく、ワールドワイドで展開する準大手クラスの米国CRO9社と戦略的業務提携に向けてCDA契約(秘密保持契約書)を締結した。欧州では欧州CROに関する情報収集を行っており、アジアでは、顧客ニーズの強いAsian Studyのモニタリング受託に向けて、アジア人の採用を開始した。Global Studyのサポートからスタートするが、中期的にはAsian Studyのコアスタッフとして育成していく。また、早期にグローバル体制を確立するため、グローバルなM&Aへの対応も進めていく考え。
 
CSO事業への対応
CSO(Contract Sales Organization:医薬品営業受託)事業と言うと一般的にはMRの派遣事業だが、同社は特定の疾患領域にフォーカスすると共にCRO事業で蓄積したノウハウを活用する事で、プロダクトマーケティング業務や市販後データの企画・収集業務の受託を拡大させていく考え(人材派遣サービスではなく、同社が主体となって業務を進める請負サービス)。12/3期は、プロダクトマーケティング業務でCNS領域の新規案件の受注に成功した。
 
 
 
2013年3月期上期決算
 
 
前年同期比24.8%の増収、同97.5%の経常増益
売上高は前年同期比24.8%増の17億23百万円。受託案件の中止が無く、受注残の消化が順調に進みCRO事業の売上が増加。医師主導臨床研究案件の受託でCSO事業の売上も増加した。
利益面では、CRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)の稼働率が高水準で推移した事で売上総利益率が47.9%と6.2ポイント改善。一方、継続的な経費節減の取り組みの成果で販管費は同2.9%減少し、営業利益は5億25百万円と同96.8%増加した。
 
 
CRO事業の売上高は前年同期比24.6%増の16億36百万円。受託プロジェクトが完了に向かっているため売上が減少した顧客もあるが、リピート受注や増員で既存顧客全体では売上が増加。前12/3期に開拓した田辺三菱製薬や塩野義製薬も寄与した。また、特定の疾患領域にフォーカスしてプロダクトマーケティング業務や市販後データの収集業務の受託を手掛けるCSO事業も医師主導臨床研究案件の受託に成功した事で売上が87百万円と同28.9%増加した。
 
 
既に説明した通り順調に受注残の消化が進んだものの、新たに中外製薬からの受注に成功した事もあり、直近(10月26日現在)の受注残は40億70百万円と過去最高水準に近い40億円超を確保している。尚、構成比は、CRO事業が39億03百万円で95.9%、CSO事業が1億67百万円で4.1%。
また、受注残を領域別にみると、がん領域が15億75百万円と受注残全体(40億70百万円)の38.7%を占め、CNS(中枢神経)領域も13億61百万円と33.4%を占めるに至り、注力分野が順調に伸びている事がわかる。それ以外の領域では9億64百万円(構成比23.7%)の受注残を確保しており、やはり難易度の高い潰瘍性大腸炎等の特定疾患や免疫炎症等の急性疾患が中心となっている。
 
 
上期末の総資産は前期末比82百万円増の22億37百万円。好調な業績に加え、売上債権の回収が進みCFが改善した事で現預金及び純資産が増加した。自己資本比率は同6.8ポイント改善の57.0%。
 
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比12.0%の増収、同17.3%の経常増益
上期の受注が計画を上回り、業績も上振れした。また、足元の打診案件も当初の予想を上回るペースで推移している模様。ただ、受注した案件が中止になると、2-3か月分の受託費は契約上確保できるものの、これを超える部分は受け取る事ができず、非稼働となったCRAのコストが利益を圧迫する。このため、「期末までに5ヶ月程度を残す現状での業績予想の修正は時期尚早」と言うのが同社の考え。精査が完了する第3四半期末以降、必要があれば改めて開示する予定である。
 
 
今後の注目点
下期も各案件が順調に進めば、少なくとも2億円程度の利益の上乗せが可能と思われ、その場合、通期の営業利益及び経常利益は10億円を超える。ただ、下期は、売上・利益の結果以上に、「受注残の消化を順調にこなした上で、どれだけ受注残高を積み上げる事ができるか」に注目したい。
中期的には「質を落とすこと無く、CRAの増員を計画通りに進める事ができるか」がポイントになる。治験の最も大切な段階である第II相試験及び第III相試験におけるモニタリング業務に特化する戦略が成果をあげており、成長分野であるCNS領域やがん領域において実績が順調に積み上がっている。同社に限らず人材の確保は容易ではないが、成果や実績を更なる成長につなげるためには避けて通れない。余談になるが、人材確保の面で有利に働くであろう東証一部上場が射程距離に入ってきた事にも注目したい(流通株式、時価総額、純資産、経常利益、株主数、売買高の全てにおいて、既に基準をクリアしている)。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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