ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.24

(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長
寺西 忠幸 会長
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長
【ブリッジレポート vol.24】2013年2月期第3四半期業績レポート
取材概要「同社の事業は季節性がある。具体的には、下期は、第3四半期(9-11月)に比べ第4四半期(12-2月)の売上が大きくなることに加え、利益におい・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年1月29日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
会長
寺西 忠幸
社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年2月 102,229 1,684 1,960 184
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(1/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
596円 11,131,120株 6,753百万円 1.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 3.4% 67.07円 8.9倍 901.71円 0.7倍
※株価は1/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
キリン堂の2013年2月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とするドラッグストア大手。近畿7県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重)を中心に、香川、徳島、石川、及び1都3県においてドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2012年11月15日現在、グループで322店舗(FC2店舗を含む)を展開。グループで医薬品等の卸売事業や医療・介護コンサル等も手掛けている。グループは、ドラッグストアを展開する同社のほか(8月に(株)ニッショードラッグを吸収合併)、卸売事業や健康食品・医薬品の企画・販売を手掛ける(株)健美舎、医療・介護分野のコンサルティングやマネージメントを手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメント、輸出入とその関連業務を手掛ける麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司の連結子会社4社、及び12年9月に設立し中国常州市でドラッグストアを展開する「忠幸麒麟堂(常州)商貿有限公司」。
 
【中期3ヵ年計画】
中期的な基本方針は、(1)顧客第一主義の店づくり、(2)収益性の改善、及び(3)中長期の成長に向けた取り組み、の3点。この基本方針の下で中期3ヵ年計画(ローリング方式により毎期見直しを行っている)が進められており、当面の目標は15/2期に売上高1,165億円(12/2期1,022億円)、経常利益35.2億円(同19.6億円)。
 
(1)顧客第一主義の店づくり
(地域密着とライトカウンセリング重視の店づくり)
6,000世帯程度の小商圏に調剤薬局を併設したドラッグストアを展開し、固定客の育成を念頭に、未病に対する的確なカウンセリングを特色とする地域密着型の店づくりを進めていく。ポイントは、店舗作業の効率化とセルフサービス化(いずれもカウンセリングへの対応力向上につながる)、及び専門知識を持った人材の育成である。なお、未病とは、健康から病気に向かっている状態のことで、日本未病システム学会の定義では、①検査値に異常はないが自覚症状がある場合、②自覚症状はないが検査値に異常がある場合(自覚症状があり、検査値に異常がある場合は「病気」)。例えば、高血圧、高血脂症、肥満等が未病の範疇に入り、これらは日本人の全死因の6割を占める「三大生活習慣病(ガン・心臓病・脳卒中)」につながる。「未病対策」とは病気に向かうベクトルを健康方向に向け直すことで、カウンセリングによる顧客サポートで信頼関係を構築していく。
 
(2)収益性の改善
収益性改善のためのポイントは、①業務システム改革によるコストコントロールの推進、②物流インフラ体制の整備、及び③PB商品の育成と開発、の3点を推進している。この一環として、13/2期に入り、グループの小売事業を(株)キリン堂に集約したほか、グループ5店舗で改装を、62店舗でタスクフォース主導によるレイアウト変更等の簡易改装を実施した。
 
(3)中長期の成長に向けた取り組み
調剤売上高の拡大(関連業務への進出)や海外(中国)事業のノウハウ確立に取り組むとともに、M&Aやアライアンスにも機動的に対応していく。調剤売上高については12/2期の68億円を15/2期には100億円に引き上げたい考えで、地域の調剤薬局の取り込みを図るほか(12年5月に(有)大賀薬局から調剤薬局3店舗を譲受)、大型調剤薬局の開設や(株)ソシオンヘルスケアマネージメントとの連携で医療モールの開設を推進する。
 
 
2013年2月期第3四半期決算
 
(1)第3四半期(9-11月)連結業績
 
前年同期比0.4%の増収、同65.6%の経常増益
売上高は前年同期比0.4%増の246億45百万円。消費者の低価格志向や節約志向に加え、業種・業態を越えた競争の激化も相まって厳しい経営環境が続いたものの、利益率の高い調剤部門が伸びたほか、カウンセリングへの取り組みの成果で化粧品販売も堅調に推移した。新規出店はなく、退店1店舗。既存店売上高は同1.1%減少したものの(計画:0.8%増)、上期の同2.0%減(計画:0.9%減)に対して緩やかながら回復傾向を示している。
営業利益は同3.8倍の1億66百万円。利益率の高い調剤部門や化粧品部門の寄与に加え、連結子会社(株)ソシオンヘルスケアマネージメントが手掛ける在宅医療サポート&マネージメント事業が堅調に推移したこと、及び中国の連結子会社の業績改善等で売上総利益率が27.0%と同0.4ポイント改善。一方、販管費率は、人員増による人件費の増加を全般的なコストコントロールで吸収し同0.1ポイント減少した。
 
※営業政策の徹底や経営資源の再配置等による効率化を目的に、グループの小売事業を(株)キリン堂に集約した。具体的には、12年2月に連結子会社(株)ニッショードラッグが連結子会社(株)ジェイドラッグを吸収合併し、12年8月に同社が(株)ニッショードラッグを吸収合併した。
 
 
化粧品や調剤といった注力部門がけん引役となり売上が増加し、これら部門の売上構成比も上昇した。具体的には、化粧品はライトカウンセリングへの取り組みが成果を上げており、一般化粧品・制度化粧品ともに売上が増加。調剤売上高は処方箋取扱い店舗の増加に加え(前年同期末比6店舗増)、1店舗当たりの処方箋受付枚数(1,260枚/月・店)も増加した。一方、医薬品は、衛生・介護用品等が伸びたが、内服薬や外用薬の減少をカバーできず売上が減少。健康食品はサプリメントや健康茶が伸びたものの、自然食品が苦戦。育児用品はEDLP対応やチラシ訴求を図ったが、震災以降、好調が続いた反動もあり減少(前年同期は紙オムツやベビーフード等の好調が継続した)。雑貨等では、日用雑貨が増加したものの、一般食品や日配品が減少した。
 
 
経費コントロールの成果が各費目で現れている。事業拡大に伴う人員増で人件費が増加したものの、その他の費目が減少。販促費の削減(23百万円減)で販売費が前年同期比7.6%減少したほか、物流費(21百万円減)や業務委託手数料(36百万円減)を中心に営業費も減少。施設費では地代家賃(7百万円減)やリース料(20百万円減)等が減少した。
 
 
 
前年の震災特需の反動や春先の花粉飛散量の減少等による上期の苦戦が響き、減収となったものの、コストコントロールによる販管費の抑制で営業利益がわずかに増加した。また、営業外損益の悪化で経常利益は減少したものの、特別損失が減少したため前年同期は43百万円にとどまった四半期純利益が6億32百万円に拡大した。(前年同期は資産除去債務等で6億49百万円の特別損失を計上したが、今期の特別損失は退職給付制度終了損など1億74百万円にとどまった。)
 
※営業政策の徹底や経営資源の再配置等による効率化を目的に、グループの小売事業を(株)キリン堂に集約した。具体的には、12年2月に連結子会社(株)ニッショードラッグが連結子会社(株)ジェイドラッグを吸収合併し、12年8月に同社が(株)ニッショードラッグを吸収合併した。
 
出退店及び既存店の状況
新規出店はスーパードラッグストア4店舗(大阪府2店舗、兵庫県1店舗、滋賀県1店舗)、小型店3店舗(兵庫県1店舗、神奈川県2店舗)の合計7店舗。一方、退店はスーパードラッグストア1店舗、小型店1店舗、FC店1店舗の合計3店舗。このほか、12年5月に(有)大賀薬局から調剤薬局3店舗を譲受した結果、第3四半期末のグループ店舗数は前期末比7店舗増の322店舗となった(前期末、前年同期末ともに店舗数は315店舗)。内訳は、スーパードラッグストア265店舗(うち調剤薬局併設28店舗)、小型店54店舗(うち調剤薬局20店舗、調剤薬局併設5店舗)、その他1店舗(うち調剤薬局併設1店舗)、FC2店舗。
一方、既存店については、活性化対策として、5店舗で改装を、62店舗(上期38店舗、第3四半期24店舗)でレイアウト変更等の簡易改装を、それぞれ実施。引き続きカウンセリング販売に取り組むとともに、店舗特性・顧客ニーズに合わせた販促手法の再構築にも取り組んだ。この結果、既存店売上高は前年同期比1.7%減と計画の0.4%減を下回ったものの、上期の既存店売上高が同2.0%減(計画:0.9%減)だったのに対して、第3四半期(9-11月)は同1.1%減(計画:0.8%増)と緩やかながら回復傾向を示している。
 
 
 
 
第3四半期末の総資産は前連結会計年度末比5億65百万円増の422億29百万円。店舗数の増加に加え、季節要因もあり棚卸資産が増加し、これに伴い一時的に有利子負債が増加した(期末の有利子負債は前期末比で減少する見込み)。自己資本比率は25.2%と同0.7ポイント上昇。
 
 
2013年2月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比3.0%の増収、同12.7%の経常増益
売上総利益率の改善傾向が続いていることや経費コントロールの結果、第3四半期(累計)の経常利益がほぼ計画ラインでの着地であったことから、通期業績予想に変更はなかった。既存店売上高が趨勢的に回復傾向にあること(隔月でDMを実施しているため、月毎の振れが大きいが)等から、第4四半期(12-2月)の既存店売上高は、期初計画の前年同期比2.2%増見込みから変更していない。スーパードラッグストア3店舗、海外1店舗の新規出店と、スーパードラッグストア1店舗、小型店3店舗の退店を予定している。
なお、通期の純利益が7億60百万円にとどまるのは、減損損失(6億円)等による特別損失7億円が織り込まれているため。
配当は1株当たり10円の期末配当を予定している(上期末配当と合わせて年間20円)。
 
 
 
通期の利益予想を達成するためには、売上総利益率の改善を図りつつ売上を増加させていく必要がある。このため、第4四半期(12-2月度)は不特定多数を対象にした販促ではなく(売上総利益率の低下要因になる)、ポイントカード会員にフォーカスした売価強化等に力を入れる。また、接客販売による重点商品の売上確保やPB商品の新規投入及び販売強化による値入率の改善にも取り組む。加えて、第3四半期の累計実績に示されている通り、引き続き販管費の計画内コントロールにも努める。
 
 
なお、PB商品については、これまでヘルス&ビューティ商品が中心だったが、この下期より、中国子会社を通じて雑貨の拡充をしており、先ずは袢纏(はんてん)、スリッパ、靴下等の衣料雑貨の導入を始めている。第3四半期末の品揃えは575SKU(SKU:商品識別の最小単位)と上期末の512SKUから大幅に拡充されている。
 
 
(3)中国事業の進捗
12年12月に中国でドラッグストア第1号店をオープンした(18日にプレオープンし、22日にグランドオープン)。また、中国でのドラッグストアの展開に当たってシナジーの期待できる璞優(上海)商貿有限公司の持分取得に向けた準備を進めている(13年1月の取得を予定)。
 
ドラッグストア第1号店のオープン
12年9月に設立した「忠幸麒麟堂(常州)商貿有限公司」を通じて、常州市最大の商業集積地(南大街)に近接する大型商業施設「吾悦国際広場」(12年12月18日プレオープン)内の地下1階に、中国での第1号店を出店した。同施設は"悦空間・悦生活"をコンセプトに、延べ床面積30万m2、地上6階、地下1階建ての大規模な商業集積ゾーンを形成しており、1日当たり5万人の集客が見込まれている。地下1階は食料品・生活用品・ファーストフードゾーンとなっており、同社の店舗は"生活便利ストア"をコンセプトに、化粧品・ベビー関連商品・日用品・食品を中心とした品揃えで運営していく(店舗面積369m2、営業時間10:00~22:00:年中無休)。
 
璞優(上海)商貿有限公司の持分取得
中国・上海市に拠点を置き化粧品・美容雑貨・食品等の卸及び小売業を営む璞優(上海)商貿有限公司(以下、璞優商貿有限公司)の持分19.18%を、13年1月に璞優商貿有限公司の親会社であるBEAUNET CORPORATION LTD(中華人民共和国香港特別行政区、以下BEAUNET)から取得する予定。また、(株)キリン堂で代表取締役会長を務める寺西忠幸氏も持分25.58%の持分を取得する予定であり(関係政府機関の批准が必要)、(株)キリン堂グループで44.76%の持分を取得することとなる(この結果、璞優商貿有限公司は(株)キリン堂の持分法適用会社となる)。ドラッグストア(中国では規制により医薬品の販売ができない)の展開に当たっては、日本の化粧品の品揃えが不可欠であり、璞優商貿有限公司の化粧品の小売りのノウハウの導入等、相互にシナジー効果が見込める事から、今回の持分取得となった。また、PB 商品の共同開発や(株)キリン堂商品のEコマースを通じた中国市場への展開に向けた事業パートナーとして、璞優商貿有限公司の親会社であるBEAUNETへの出資も検討していくことで合意している。

なお、BEAUNETは、一般消費者(B to C)を対象とした美容(コスメ)・美髪(ヘアー)・美甲(ネイル)・美体(フィットネス)等の美容関連情報の提供や美容美髪産業の企業間取引に関する情報の提供を目的に日本の大手商社やポータルサイト運営会社等の出資の下で06 年1 月に香港に設立された持株会社。現在、傘下の企業を通して事業を展開している。
 
璞優(上海)商貿有限公司の概要(2012年9月30日現在)
名称 :璞優(上海)商貿有限公司
(Beaunet Retail & Wholesale Commerce Corporation Ltd)
代表者 :北野 貴宗 所在地 :上海市長寧区延安西路2299号 11B69室
設立 :2011年9月5日 資本金 :850万香港ドル
事業内容 :貿易業務、化粧品
・美容雑貨・食品等の卸
・小売り
株主構成 :BEAUNET CORPORATION LTD 100%
 
BEAUNET CORPORATION LTDの概要(2012年9月30日現在)
名称 :BEAUNET CORPORATION LTD
代表者 :北野 貴宗 所在地 :1001 Admiralty Centre Tower 1,
18 Harcourt Road Hong Kong
設立 :2006年1月25日 資本金 :34,105,758.00 香港ドル
事業内容 :中国におけるITモバイルを活用した美容ポータルサイトの運営支援、Eコマース運営、及び小売業(百貨店)・卸業(コンビニエンス・ストア等)を営む子会社の統括
 
※ 現在、(株)キリン堂との人的関係及び資本関係は無い
 
 
今後の注目点
同社の事業は季節性がある。具体的には、下期は、第3四半期(9-11月)に比べ第4四半期(12-2月)の売上が大きくなることに加え、利益においても例年、2月(決算期末)は販売達成リベートが計上されるため(13/2期は薬価改定に伴う仕入価格調整等もある)利益率が高くなる傾向にある。実際、前期は第3四半期(9-11月)が売上高245億52百万円、営業利益43百万円だったのに対して、第4四半期は売上高261億45百万円、営業利益8億56百万円。今13/2期の通期業績を考えた場合、第3四半期までの業績との比較で、第4四半期はハードルが高いように感じるが、前期の第4四半期の実績と、第2四半期以降の売上高・営業利益が前年同期を上回っている今期の実績を考えると(第1四半期は前年同期の東日本大震災後の特需の反動で減収・減益)、ある程度納得がいく。単価を落とすことなく来店客数を増やし既存店の売上を伸ばすことができれば、今期の業績予想の達成だけでなく、来期の見通しも明るくなってくる。