ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

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ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.31

(4767:東証1部) テー・オー・ダブリュー 企業HP
川村 治 会長兼CEO
川村 治 会長兼CEO
江草 康二 社長兼COO
江草 康二 社長兼COO
【ブリッジレポート vol.31】2013年6月期第1四半期業績レポート
取材概要「13/6期の業績は、定量的には、期中受注・期中売上案件をどの程度上積みできるかがポイントであり、定性的には、今期の取り組みである①リソー・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年1月29日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社テー・オー・ダブリュー
会長兼CEO
川村 治
社長兼COO
江草 康二
所在地
東京都港区虎ノ門 4-3-13 神谷町セントラルプレイス
決算期
6月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年6月 14,033 1,112 1,126 597
2011年6月 10,570 378 377 131
2010年6月 12,575 671 670 357
2009年6月 14,210 1,401 1,392 876
2008年6月 14,397 1,362 1,343 729
2007年6月 13,070 1,051 1,041 551
2006年6月 12,341 781 784 423
2005年6月 10,705 771 782 465
2004年6月 9,638 781 765 466
2003年6月 9,441 1,103 1,073 537
2002年6月 8,600 940 920 462
2001年6月 7,555 756 730 371
2000年6月 5,995 556 537 238
株式情報(12/28現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
472円 11,397,085株 5,379百万円 11.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
28.00円 5.9% 40.62円 11.6倍 449.37円 1.1倍
※株価は12/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
テー・オー・ダブリューの2013年6月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
イベント・プロモーション業界のトップカンパニー。イベントの企画・制作・運営・演出、セールスプロモーション(SP)に関するグッズ・印刷物の制作及び付帯業務を手掛ける。実際のイベント現場では照明、音響、映像、舞台制作、モデル・コンパニオンや警備員の派遣、整理、撤収、清掃等様々な業務があるが、これらの専門業者を外注先とし、イベント全体をコントロールすることで主催者が来場者に伝えたいことを具現化することが重要な任務となる。プロモーションの場合も、印刷、グラフィックデザイン、事務局運営、OOH(交通広告や屋外広告など家庭以外の場所で接触するメディア広告の総称)、ウェブ制作等の業務があるが、これらをトータル的にコントロールし納品することが任務となる。

ただ、日本では大半のイベントが、イベント主催者(クライアント)からの発注を受けた大手広告代理店によって開催されている。このため、同社を含めた実際にイベントの企画・制作・運営を行う会社は、イベント主催者から直接受注するのではなく、大手広告代理店を介して受注するケースが多い。同社グループも例外ではなく、電通グループ、博報堂グループ、アサツーディ・ケイグループに対する売上高が、全体の72.7%(11/6期実績)を占めている。

また、イベントの企画・制作・運営は、小規模事業者が強みを持つ特定領域において各々対応しているのが実状だが、同社はグループ企業の強化・拡充とアライアンスにより、数少ない総合プロモーション会社として事業領域を拡大させている。マス広告からきめ細やかなプロモーションへとクライアントのニーズがシフトする中、総合的な企画力、制作力、営業力を兼ね揃えた同社の比較優位は、今後一段と高まっていくものと思われる。
 
 
※13/6期は江草新社長の下で新たなスタートを切る事もあり、保守的な業績予想となった。
 
 
成長戦略
 
(1)江草康二氏が代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任
7月1日付けで江草康二氏が代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任した(旧役職は常務取締役兼執行役員社長室長)。これまでに培ってきたTOWブランドの資産を活かしつつ、新世代の経営幹部と社員が新しいTOWの価値創造に取り組む事で更なる発展を目指すと共に、業界の発展にも寄与していきたい考え。

江草社長は、立教大学を卒業後、電通に入社。電通には24年間在籍し、営業職20年。07年に外資広告代理店 オグルヴィ&メーザー・ジャパンに転じ(取締役営業本部長)、10年に取締役社長室長として同社に入社した。
信条は“コミュニケーションの力は世の中を元気にし、人々を幸せにする力がある”。「独立系のトップ企業である“TOWが仕事も規模も存在感をさらに持つ”事で、プロモーション業界の“社会的認知と地位をもっと高められるよう”に力を尽くしたい」としている。
 
(2)基本方針
今後の方針として、「“P2P”ビジネス力の強化」と「リアルイベントを軸としたトータルプロモーション会社としての成長と成熟」の二つを挙げており、この二つを併行して強化していく。そのためには、会社として様々なプロモーション領域の武器を揃える事と社員それぞれが専門力を身に付ける事が必要であり、これにより、リアルイベントを軸として複数のプロモーション領域を組合せた(統合した)提案が可能になる。現在のところ、代理店の多様なプロモーションニーズにバランスよく対応できるプロダクションは存在しないが、同業他社も目指しているところであり、他社に先駆けてこの域に達する事が重要となる。
 
“P2P”ビジネス力の強化
“P2P”の「P」は、IT用語のPear 2 Pearではなく「People」。同社のビジネスは企業間取引のためB2Bだが、実際の発注が決まる現場においては、代理店の発注権者“個人”が発注先を決める場合がほとんど。もちろん、“ TOW ”の信用力が前提ではあるものの、現場ベースでは、同社の営業マン(People)と代理店の発注権者(People)、つまり人と人で発注が決まる。このため、同社の業績は、営業マン(People)が、どれだけ発注権者(People)の数を押さえるか、にかかっている。これまでに積み上げてきた顧客資産に新たな顧客資産を積み上げるべく、“P2P”ビジネス力を強化していく考え。
 
「リアルイベントを軸としたトータルプロモーション会社としての成長と成熟」
同社は前川村社長時代から「リアルイベントを軸としたトータルプロモーション会社」を指向していたが、この方針を継承すると共に施策のスピードアップを図る。代理店各社には、既に「統合プロモーション」、「統合ソリューション」、「統合プランニング」など“統合”という名称の部署が数多く存在している。これは広告主のニーズである“コミュニケーションの統合”に応えるもので、このニーズに応える事のできる高いレベルのプロダクションになる事が同社の目指すところである。
 
(3)対策
上記方針に沿った具体的な対策として、①リソースの強化、②領域の拡大と専門力&提案力の強化、及び③収益管理の強化、の3点を挙げている。
 
①リソースの強化
専門領域からの中途採用と人材育成によりリソースの強化を図ると共に、継続的な成長を念頭に新卒の定期採用を復活させる。
 
・専門領域からの中途採用
12年の採用では、PR会社プランナー、店頭マーケティング会社、Web制作会社ディレクター、更には中国人と、様々な領域で実勢を持つ人材が入社した。引き続き多様な領域でのリクルーティングを継続していく考え。
 
・人材育成の強化~働く仲間を育てることが全社員の仕事
P2P力を強化するには人材育成の強化が不可欠。このため、働く仲間を育てる事を全社員の仕事とし、先ずは社員個々が持っている営業力、提案力、専門力を伝承・教育をさせ、個人のスキルをチームや組織のスキルへ昇華させる(この一環として、人事考課に育成の姿勢や成果を強く反映させる)。また、現在、新しい階層別研修プログラムを策定中であり、スキルだけでなくWillも強化するべく合宿形式も導入する考え。
 
・新卒の定期採用の復活~継続的な成長
会社の継続的な成長を念頭に新卒定期採用を復活した。13年4月の新卒入社は10名程度を予定している。
 
②領域の拡大と専門力&提案力の強化
コンテンツビジネス開発に取り組むと共に、デジタルが絡んだプロモーションへの対応力強化、海外ネットワーク強化、及びSPグッズ品質管理の強化に取り組む。
 
・コンテンツビジネス開発
人気の携帯ソーシャルゲーム「戦国コレクション」のTV放送用アニメーションの制作委員会に参加し、プロモーション化権を獲得した。もっとも、投資事業的な意味合いではなく、ファン対象のイベントビジネスの開発や、コンテンツを活かし客層が重なる他社とのタイアッププロモーションに取り組み、コンテンツビジネスのノウハウの蓄積を図る事が目的(新たなビジネス領域の探求)。
 
・デジタル強化
デジタルが絡んだプロモーションの規模は未だ小さいものの、前期は1.5倍に拡大した。今後の成長が期待できる領域であり、また、現状でも、規模は小さいものの、大半のプロモーションがデジタル絡みの部分を有すると言う。このため、デジタルプロモーション施策に活用できる汎用性の高い演出装置や最新のデジタル販促ツールなど新技術・新コンテンツの開発を目的に、慶應大学 筧 准教授と共同研究開発&ワークショップ活動を進めている(12年12月の開発完了が目標)。
また、デジタルプロモーションの提案力向上を図るべく、プランナー全員に対して自社のデジタルプロモーション室へ3ヶ月間社内出向するローテーション人事を実施している他、全社員を対象に「デジタルリテラシー向上研修プログラム」を実施している(いずれも前12/6期に導入し、13/6期以降も継続していく考え)。

尚、筧 准教授は、2007年3月に東京大学 大学院学際情報学府 博士課程を修了し、11年4月に慶應義塾大学環境情報学部 准教授に就任。主な研究対象はインタラクティブメディア、メディアアート等で、現在、「リアルとデジタルを融合させた実世界情報環境をデザイン」をテーマに研究を行っている。
 
・海外ネットワーク強化
増加しつつあるクライアント・代理店の海外プロモーションニーズに対応するべく、「TOWイベント・プロダクション・ネットワーク(EPN) アジア」の開発に着手した。既存の韓国、上海、シンガポールとのネットワークに加え、中国、インド、台湾、オーストラリアの現地イベントプロダクション計22社とネットワークを構築し、今後の海外案件ニーズへの対応力を高める(海外案件の実績は11/6期1億円、12/6期1.6億円)。
 
・SPグッズ品質管理の強化
SPグッズ品質管理を強化するべく、品質管理・総合検査サービス会社である日本ラボテック(株)(代表者:羽賀 威一郎)と業務提携した。日本ラボテック(株)の豊富な経験と知識を活用して品質管理を強化する事で、グッズ案件の受注拡大を図る考え。また、本年9月には社内に専任の品質管理責任者を配置する。

尚、日本ラボテック(株)は09年7月設立。11/12期の売上高は2億円で従業員数20名。衣類品検査、生活用品検査、食品検査、雑貨・履物ペット用品検査、店舗衛生検査、コンサルティング、及び商品開発支援等を手掛けている。
 
③収益管理の強化
制作管理チームを本部毎の担当制とし原価管理の責任意識を強く持たせる事で、今期の利益率(個別)の約1ポイント改善を目指す。また、最新の相場情報を共有しチーム毎に収益力の底上げを図るべく、「新・協力機関単価表」を作成し全社員へ配付した。
常に原価管理の重要性を社員と幹部に厳しく言い続ける事と、安くても品質保障できる協力会社の選定ノウハウをチーム間・先輩後輩間で共有する事を指導し続ける事が重要であると言う。
 
 
2013年6月期第1四半期決算
 
 
前年同期比18.9%増収、同40.8%の経常増益
売上高は前年同期比18.9%増の31億08百万円。大手広告代理店の4-6月期は震災の反動増もあり、前年同期比で堅調に推移したものの、7-9月期は景気の先行き不透明感から広告需要に減速感が見え始めた。同社グループの事業領域であるプロモーション領域も同じ様な傾向のようだが、昨夏は震災の影響で中止となったイベントが多かった事もあり、この第1四半期は広報を中心に文化スポーツなどイベント関連の売上が大きく伸びた他、セールスプロモーション(SP)も販促の売上が増加した。
利益面では、付加価値の高い広報関連を中心にイベントの売上が増加した事で売上総利益率が14.3%と0.6ポイント改善。人件費等を中心に販管費がわずかに増加したものの、営業利益は2億54百万円と同43.0%増加。つれて経常利益、四半期純利益も高い伸びを示した。
 
 
 
法人税や配当の支払い等で、第1四半期末の総資産は88億19百万円と前期末比5億70百万円減少した。科目別では、借方において現預金や繰延税金資産(投資その他)等が減少し、貸方において未払法人税や純資産等が減少。この結果、自己資本比率は58.1%と同2.8ポイント改善した。
 
 
2013年6月期業績予想
 
(1)13/6期の前提
今期は期初の受注残高が前期を上回っていたものの、特殊要因の一巡による大型案件の減少で期中受注・期中制作高が減少するとみており、上期予想は売上高が前年同期比4.0%減の65億57百万円、経常利益が同23.8%減の4億29百万円、通期予想は売上高が前期比9.2%減の126億50百万円、経常利益は収益管理の強化により同15.9%減の8億31百万円。
配当は1株当たり年28円を予定(上期末14円、下期末14円)。
 
 
 
個別ベースの予想売上高120億80百万円は受注残高(A/B/松の合計:49億55百万円)と受注確度の高い案件のうち今期売上計上が可能な案件(71億25百万円)の合計額であり、売上高の下振れリスクは少ない。竹/梅案件(今期予想56億97百万円)を、どれだけ上積みできるかが今期業績のポイント。
 
 
今後の注目点
13/6期の業績は、定量的には、期中受注・期中売上案件をどの程度上積みできるかがポイントであり、定性的には、今期の取り組みである①リソースの強化、②領域の拡大と専門力&提案力の強化、及び③収益管理の強化、の進捗。これら3項目については、今期の業績に限らず、中期的な成長力にもかかわるものだけに、その進捗が注目される。尚、上期の業績予想に対する進捗率は、売上高が47.4%(前年同期は実績ベースで38.3%)、経常利益が59.9%(同32.5%)。四半期ベースの予想は開示していないが、順調なスタートを切ったものと思われる。