ブリッジレポート
(2660)

ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.25

(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 企業HP
寺西 忠幸 会長
寺西 忠幸 会長
寺西 豊彦 社長
寺西 豊彦 社長
【ブリッジレポート vol.25】2013年2月期業績レポート
取材概要「10/2期以降、新規出店を10店舗程度に抑え、利益率の改善に取り組んできた成果が現れてきた。具体的には、08/2期の23.2億円をピークに下降トレンド・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年4月30日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キリン堂
会長
寺西 忠幸
社長
寺西 豊彦
所在地
大阪市淀川区宮原4-5-36
決算期
2月
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年2月 102,229 1,684 1,960 184
2011年2月 100,465 1,118 1,537 188
2010年2月 104,964 1,232 1,527 -443
2009年2月 106,695 1,781 2,030 500
2008年2月 106,098 2,321 2,530 804
2007年2月 72,803 1,312 1,651 577
2006年2月 66,690 1,308 1,574 753
2005年2月 58,165 745 985 414
2004年2月 48,281 1,084 1,283 607
2003年2月 39,144 1,095 1,215 577
2002年2月 33,274 868 982 253
2001年2月 28,192 718 742 341
2000年2月 25,537 535 596 309
株式情報(4/8現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
699円 11,331,120株 7,920百万円 8.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 2.9% 69.72円 10.0倍 962.26円 0.7倍
※株価は4/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キリン堂の2013年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
関西圏を地盤とする中堅ドラッグストア。近畿2府5県(大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、三重)を中心に、香川、徳島、石川、及び1都3県においてドミナント戦略(特定地域内に集中出店することで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを向上させ競争優位に立つ戦略)を進めており、2013年2月15日現在、グループで323店舗(FC2店舗、海外1店舗を含む)を展開。グループで医薬品等の卸売事業や医療・介護コンサル等も手掛けている。グループは、ドラッグストアを展開する同社のほか、卸売事業や健康食品・医薬品の企画・販売を手掛ける(株)健美舎、医療・介護分野のコンサルティングやマネージメントを手掛ける(株)ソシオンヘルスケアマネージメント、輸出入とその関連業務を手掛ける「麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司」、及び12年9月に設立し中国常州市でドラッグストアを展開する「忠幸麒麟堂(常州)商貿有限公司」の連結子会社4社。
 
【中期3ヵ年計画】
キリン堂グループの基本方針「地域コミュニティの中核となるドラッグストアチェーンの確立」のもと、(1)既存店の活性化、(2)調剤事業の推進、及び(3)中長期の成長に向けた取り組み、の3点を骨子とし、中期3ヵ年計画(ローリング方式により毎期見直しを行っている)が進められており、16/2期の目標は売上高1,176億円(13/2期1,017億円)、経常利益39.1億円(同22.4億円)。
 
(1)顧客第一主義の店づくり(地域密着とライトカウンセリング重視の店づくり)
6,000世帯程度の小商圏に調剤薬局を併設したドラッグストアを展開し、固定客の育成を念頭に、未病に対する的確なカウンセリングを特色とする地域密着型の店づくりを進めていく。ポイントは、店舗作業の効率化とセルフサービス化(いずれもカウンセリングへの対応力向上につながる)、及び専門知識を持った人材の育成である。なお、未病とは、健康から病気に向かっている状態のことで、日本未病システム学会の定義では、①検査値に異常はないが自覚症状がある場合、②自覚症状はないが検査値に異常がある場合(自覚症状があり、検査値に異常がある場合は「病気」)。例えば、高血圧、高血脂症、肥満等が未病の範疇に入り、これらは日本人の全死因の6割を占める「三大生活習慣病(ガン・心臓病・脳卒中)」につながる。「未病対策」とは病気に向かうベクトルを健康方向に向け直すことで、カウンセリングによる顧客サポートで信頼関係を構築していく。
 
(2)収益性の改善
収益性改善のためのポイントは、①業務システム改革によるコストコントロールの推進、②物流インフラ体制の整備、及び③PB商品の育成と開発、の3点を推進している。この一環として、13/2期に入り、グループの小売事業を(株)キリン堂に集約したほか、グループ5店舗で改装を、74店舗でレイアウト変更等の簡易改装を実施した。
 
(3)中長期の成長に向けた取り組み
調剤売上高の拡大(関連業務への進出)や海外(中国)事業のノウハウ確立に取り組むとともに、M&Aやアライアンスにも機動的に対応していく。調剤売上高については13/2期の75億円を16/2期には100億円に引き上げたい考えで、地域の調剤薬局の取り込みを図るほか(12年5月に(有)大賀薬局から調剤薬局3店舗を譲受)、大型調剤薬局の開設や(株)ソシオンヘルスケアマネージメントとの連携で医療モールの開設を推進する。
 
 
事業環境と業界ポジション
 
(1)事業環境
市場規模 緩やかな市場拡大が続くドラッグストア市場
日本チェーンドラッグストア協会によると、2012年度のドラッグストア市場の見込み額は前年度比2.4%増の5兆9,408億円。日本経済が低迷する中、大手チェーンが力を入れる食料品の売り上げが伸び、2000年度の調査開始から12年連続で前年実績を上回った。(品目別では上記の通り、来店頻度を高めるために品ぞろえを拡充している食料品がけん引役となる一方、化粧品や医薬品が横ばいだったと言う)。
 
ドラッグストア市場は引き続き拡大が続く見込みで、みずほ銀行によると、2013年度の市場規模は6兆850億円。出店余地の低下等で伸び率が鈍化するものの、上位企業は出店や食品強化、販促努力等の取組みが奏功し、概ね増収・増益で着地するとみている。また、過度な食品取扱いは収益性を低下させる懸念があり、PB の強化など収益性を維持するための取組が肝要とも指摘している。
 
 
(2)業界ポジションと成長に向けた同社の取り組み
業界再編と09年6月の改正薬事法施行
薬事法の改正とその後の競争激化をにらみ、ドラッグストア業界では2010年にかけて再編が進んだ。具体的には、07年にドラッグストア最大手のマツモトキヨシが株式移転によりマツモトキヨシホールディングスに移行しグループの再編に着手した他、CFSコーポレーションがアインファーマシーズと経営統合を発表(その後、CFSコーポレーションは経営統合を撤回し、08年に「イオン・ウエルシア・ストアーズ」に参加した)。また、同年には、セガミメディクスとセイジョーが経営統合し、ココカラファインホールディングスが誕生した他、ウエルシア関東と高田薬局が経営統合しグローウェルホールディングス(現ウエルシアホールディングス)へ。スギ薬局がスギホールディングスに移行したのも08年である。09年にはマツモトキヨシホールディングスがローソンと業務提携し、10年にはイオンがCFSコーポレーションを子会社化した。
 
この間の09年6月に改正薬事法が施行され、薬剤師が常駐していなくてもリスクの低い大衆薬を販売する事が可能になった。このため、スーパー、コンビニ、家電量販店といった異業種の参入が本格化し競争が激化。ドラッグストア各社は調剤市場への展開や介護用品・在宅医療への取り組み、更には海外展開等、中長期的な観点からの戦略の策定と遂行が不可欠となっている。
 
売上高で業界第10位(上場企業が対象)
こうした中、同社は近畿2府5県を中心に、香川、徳島、石川、及び1都3県においてドミナント戦略を進めており、関西圏での売上シェアはトップクラス。全国ベースで見ても、株式を上場するドラッグストアの中で第10位の売上高を誇る。地域密着型の店づくりを念頭に、6,000世帯程度の小商圏での調剤薬局を併設したドラッグストア展開と固定客の育成に向けた「未病」に対するカウンセリングに力を入れている。13/2期にドラッグストア子会社を吸収してグループ再編が完了したばかりであり、販管費率の改善など未だ収益力強化の余地も大きく、店舗作業の効率化及びセルフサービス化(いずれもカウンセリングへの対応力向上につながる)や専門知識を持った人材の育成と共に、業務システム改革によるコストコントロールの推進や物流インフラの整備、更にはPB商品の育成と開発、といった取組みを進めている。また、中長期の成長に向けて、調剤事業の拡大や海外(中国)事業のノウハウ確立に取り組んでおり、M&Aやアライアンスにも機動的に対応していく考え。調剤事業については13/2期に75億円(12/2期68億円)だった調剤売上を16/2期には100億円に引き上げたい考えで、地域の調剤薬局の取り込みに加え、医療・介護分野のコンサルティングやマネージメントを手掛ける子会社(株)ソシオンヘルスケアマネージメントとの連携で大型調剤薬局の開設や医療モールの開設も推進していく。
 
 
マツモトキヨシホールディングス(3088)
ドラッグストア最大手。12社のグループ会社と共にドラッグストアや保険調剤薬局等をチェーン展開しており、M&Aや地域優良企業との資本・業務提携で全国展開を加速している。12年12月末現在のグループ総店舗数は1,341店舗。12/3期の小売事業の商品別内訳は、医薬品31%、化粧品37%、雑貨21%、食品11%。都市型店中心のため業界平均と比べて化粧品の比重が高い事も特徴。
 
サンドラッグ(9989)
ドラッグストア2位。首都圏中心に「サンドラッグ」等を展開。業界屈指のローコストオペレーションを特徴とし、売上高営業利益率は業界トップを上回る5.8%。子会社が、愛知、福島、九州、四国、中国等をカバーしており、調剤専門の薬局子会社も有する。12年12月末現在の店舗数は877店舗(ドラッグストア708店舗、ディスカウントストア169店舗)。12/3期の売上構成比は、医薬品23%、消耗雑貨13%、化粧品27%、ベビー用品2%、他35%。
 
スギホールディングス(7649)
調剤薬局併設型のドラッグストア「スギ薬局」を、中部を中心に関西、関東で展開。処方箋調剤から一般薬品・健康食品のカウンセリング販売、在宅医療サービスの提供など地域医療を総合的に担う"かかりつけ薬局"を目指しており、子会社が訪問看護・居宅介護支援事業を手掛ける。12/2期売上構成はファーマシー事業(調剤併設型ドラッグストア「スギ薬局」、在宅医療等)78%、ドラッグ事業(子会社によるドラッグストア展開)22%。12年11月末の店舗数は859店舗(ファーマシー事業707店舗、ドラッグ事業152店舗)。
 
ココカラファイン(3098)
セイジョー(東京・神奈川中心)とセガミメディクス(関西地方中心)との共同持株会社として設立され、その後、ジップドラッグ(中部地方中心)とライフォート(兵庫・大阪を中心に展開)が設立した両社の共同持株会社アライドハーツ・ホールディングスを吸収合併。12年12月末現在の店舗数は1,261店舗(セイジョー347店舗、セガミ392店舗、ジップ239店舗、ライフ175、その他108店舗。関東463店舗、東海北陸223店舗、関西354店舗)。12/3期の売上構成比は、ドラッグ・調剤事業88%(医薬品27%、化粧品25%、健康食品4%、日用生活商品17%、その他商品15%)、卸・介護他12%。
 
ツルハホールディングス(3391)
「ツルハドラッグ」(北海道・東北・関東・甲信地方中心)、「くすりの福太郎」(東京・千葉県中心)、「ドラッグストアウェルネス」(鳥取・島根県中心)を展開。筆頭株主(議決権の13%を保有)であるイオン(8267)を中心とするドラッグストア連合「ハピコム」に属し、M&Aとドミナント戦略による新規出店で東北・関東地方を中心に規模拡大に注力。13年2月15日現在の店舗数は1,060店舗(ドラッグストア1,044店舗[うち調剤薬局218]、FC11店舗、海外5店舗)。12/5期の売上高構成比は、商品99%(医薬品25%、化粧品19%、雑貨30%、育児用品4%、食品・健康食品・医療用具等のその他21%)、その他1%。
 
ウエルシアホールディングス(3141)
傘下に、ウエルシア関東、高田薬局、寺島薬局、ウエルシア関西の4社を有する。調剤、深夜営業、カウンセリング化粧品取り扱いで差別化(調剤併設率63.1%、深夜営業店率74.3%、カウンセリング化粧品取扱店率92.1%)。筆頭株主イオンが議決権の29%を保有し、ドラッグストア連合「ハピコム」に属する。12年11月末現在の店舗数は825店舗(ウエルシア関東470店舗、高田薬局134店舗、寺島薬局138店舗、ウエルシア関西83店舗)。12/8期の売上構成比は、医薬品・衛生介護品・ベビー用品・健康食品24%、調剤10%、化粧品19%、家庭用雑貨14%、食品24%、他9%
 
カワチ薬品(2664)
栃木地盤。北関東、東北を中心に売場面積400~1000坪の郊外型メガ・ドラッグストアを中心に展開(同社の説明によると、ドラッグストア業界の平均売場面積は200坪)。「日常的な買い物の拠点」を念頭に、生鮮食品を除く一般食品や雑貨等の様々な日用必需品を揃え(特に食品比率が高い)。メガ・ドラッグストアへの調剤薬局併設も進めている。12年3月15日現在のドラッグストア店舗数は216店舗(うち調剤薬局併設型46店)。12/3期の売上高構成比は、医薬品17%、化粧品9%、雑貨29%、一般食品45%。
 
クリエイトSDホールディングス(3148)
神奈川県を中心に、関東、東海に展開。地域密着を重視し、小商圏ターゲットの郊外・住宅街立地の店舗を中心にドミナント戦略を推進。12年11月末現在の店舗数は440店舗(ドラッグストア368店舗、調剤専門薬局22店舗、調剤併設ドラッグストア50店舗)。子会社が有料老人ホーム・デイサービス事業を手掛け、介護付有料老人ホーム2施設、デイサービス施設26施設を運営。12/5期の事業別売上構成比はドラッグストア事業95%(医薬品18%、化粧品16%、食料品35%、日用雑貨品16%、その他7%)、調剤薬局事業4%、有料老人ホーム・デイサービス事業1%弱。
 
CFS コーポレーション(8229)
ドラッグストアの「ハックドラッグ」を神奈川・静岡・東京を中心に展開。筆頭株主であるイオン(8267)が発行済株式数の50%を保有し、ドラッグストア連合「ハピコム」に属する。12年11月20日末現在の店舗数は301店舗(うち調剤取扱店舗108店舗)。12/12期の売上構成比は、一般食料品14%、雑貨品30%、医薬品17%、調剤薬品12%、化粧品26%、他1%。
 
キリン堂(2660)
13年2月15日現在の店舗数は323店舗(うち調剤併設型33店舗、調剤薬局19店舗、FC1店舗、海外1店舗)。13/2期の売上構成比は、医薬品19%、健康食品4%、化粧品26%、育児用品3%、雑貨等40%、調剤8%、他0%。
 
 
08/2期にかけて関西圏でのシェアアップと年商1,000億円・250店舗体制を目標に、年20~30店舗の積極出店を行い、07/2期にはニッショードラッグを子会社化し過去最高益となった。
08/2期以降、M&A実施後の内部固めや不採算店の整理に着手。
10/2期以降は新規出店を10店舗程度に抑え、利益率の改善を最優先課題として取り組んだ。
今後、成長軌道への回帰に向け、基本方針である「地域コミュニティの中核となるドラッグストアチェーン」の確立に取り組んでいく考え。
 
 
中期3カ年計画
 
【基本方針】
「地域コミュニティの中核となるドラッグストアチェーン」という基本方針の下、関西地域における小商圏フォーマットでのドミナント深耕に取り組んでいく考え。ポイントとして、"「楽・美・健・快」のコンセプトに沿った顧客第一主義の店づくり"と"医療提供施設としての機能強化"を挙げており、前者においてセルフメディケーションを推進し「未病をテーマとした健康・美容の専門性」+「利便性」を追求すると共に、後者において調剤事業及び在宅支援に取り組む事で顧客とのアクセスを増やし関係性を深める事で来店につなげていく。
 
【中期3カ年計画】
中期3カ年計画の骨子として、①既存店の活性化、②調剤事業の推進、及び③中長期の成長に向けた取り組み、の3点を挙げている。①既存店の活性化では、セルフサービス売場を徹底しライトカウンセリングに軸足を置いた店舗運営を強化する。また、業務システムの改革によるコストコントロールとPB商品の強化で収益力向上にも努める。②調剤事業の推進では、調剤売上高の拡大と在宅支援を進めていく。一方、③中長期の成長に向けた取り組みでは、関西地域へのドミナント出店を継続すると共にM&Aやアライアンスにも対応していく考え。
数値計画は下の通り。売上高は15/2期以降は新規出店ペースを上げていく考えで、新店と調剤をベースに年度3~6%増での推移を想定。また、売上総利益については13/2期の実績(26.9%)をわずかに上回る27%での推移、販管費率については年度引き下げを計画し16/2期で24.2%を想定している。
 
 
 
(1)既存店の増収
ポイントカード会員化による顧客の囲い込みとCRMによる顧客に応じた販促等で来店回数の増加(客数の増加)を図り、既存店の売上を増加させていく考え。この一環として、13/2期は、店頭での声掛けやチラシ期間中のポイント付与等でポイントカード会員の獲得に取り組むと共に、CRMを活用したDMの実施やレシートクーポンの導入などポイントカード会員を軸とした販促を実施した。この結果、来店回数に課題を残したものの(前期に比べて0.12回減)、ポイントカード来店会員数の増加(前期比1.4%増)とポイントカード会員全体の客単価の上昇(同0.8%増)でポイントカード会員向けの売上が同2.1%増加した。
 
A会員群 来店回数 前期比0.25回減 客単価 前期比1.3%増 売上高 前期比2.6%増
B会員群 来店回数 前期比0.05回減 客単価 前期比1.9%減 売上高 前期比0.7%減
会員全体 来店回数 前期比0.12回減 客単価 前期比0.8%増 売上高 前期比2.1%増
 
14/2期は、既存店の売上増を念頭に、ポイントカード会員への販促施策の推進、買い物しやすい売り場づくり、及びライトカウンセリングの実施に取り組んでいく考え。
 
ポイントカード会員への販促施策の推進
A会員 :定期DMの実施(維持拡大施策の継続)
B会員 :レシートクーポンの実施等
(来店回数の増加による客数増)
新規会員 :チラシ期間中のキャンペーン実施やクーポン配布
(獲得と獲得後の再来店の動機付け強化)
 
買い物しやすい売り場づくり
棚割り・品揃えの見直し
セルフサービス売場の実現度アップ
 
(2)業務システムの構築
他社との比較で相対的に高い販管費率の引き下げ等を念頭に、11/2期以降、構造改革(フレームワークづくり)に取り組んできた。11年1月の新物流センターの本格稼働や237店舗での需要予測型自動発注システムの導入に加え、224店舗での売場改装の実施等、13/2期までに構造改革のフレームワークづくりが完了し、既に人時数の削減等で成果も上がっている。
この中期3ヵ年では、フレームワークを活用した作業改善による販管費率の引き下げを想定しており、14/2期はそのベースとなる業務システムの構築を行う考え。そのため、店舗作業の棚卸しと店舗作業割当の見直しや需要予測型自動発注システムの運用方法の確立等に取り組み、店舗オペレーションのマニュアルづくりを進めていく。
 
(3)PB商品の育成と開発
PB商品の品揃えは13/2期末で548SKU(SKU:商品の最小管理単位)に及ぶ。14/2期はHBC(健康食品、化粧品、雑貨等)を中心にPB商品のリニューアルと新規開発に取り組むと共に、値入率の良い雑貨等の開発輸入にも力を入れる考え。
 
 
(4)調剤売上高の拡大
調剤売上高の拡大を図ると共に医療提供施設としての機能強化に向け、在宅支援を推進する。調剤売上高の拡大については、調剤併設と大型調剤薬局の開局を進めていく考えで、14/2期は各々1店舗の開設が既に決まっている。また、在宅支援については、訪問服薬指導で実績を上げており、13/2期は11店舗で訪問服薬指導を行った。14/2期もこの取り組みを継続する事で浸透を図る。
 
 
(5)関西地域への11店舗の出店
14/2期は11店舗の新規出店と3店舗の退店を計画しており、期末店舗数が330店舗となる見込み。また、これに伴う設備投資は17億27百万円を予定しており、22億円程度と予想される営業CFの範囲に収まる見込み。
 
 
2013年2月期決算
 
 
減収ながら売上総利益率の改善と経費コントロールにより営業増益
売上高は前期比0.5%減の1,017億61百万円。花粉症関連商品の苦戦や東日本大震災(以下、震災)後の特需の反動等を調剤売上の増加でほぼ吸収。トイレタリーの好調や販売体制の強化が進んだ制度化粧品等の寄与で化粧品も堅調に推移した。
利益面では、売上構成比の良化で売上総利益率が改善する一方、コスト削減に向けた取り組みの成果で営業費及び施設費を中心に販管費が減少。営業利益は19億24百万円と同14.3%増加した。減損損失4億78百万円や退職給付制度終了損1億13百万円(子会社を吸収合併した事に伴い発生した移行差額)など特別損失6億18百万円を計上したものの、吸収合併した(株)ジェイドラッグの累積損失の関係等で税負担が減少したため当期純利益は8億82百万円と同4.8倍に拡大した。
 
 
出退店及び既存店の状況 新規出店11店舗(国内10店舗、海外1店舗)、退店6店舗、譲受3店舗
(株)キリン堂が、スーパードラッグストア7店舗(大阪府2店舗、京都府1店舗、兵庫県1店舗、奈良県2店舗、滋賀県1店舗)、小型店3店舗(兵庫県1店舗、神奈川県2店舗)の計10店舗の新規出店を行う一方、スーパードラッグストア1店舗、小型店4店舗、FC店1店舗の計6店舗の退店を実施。この他、12年5月に(有)大賀薬局から調剤薬局3店舗を譲受した。吸収合併した(株)ニッショードラッグ店舗75店舗、(株)ジェイドラッグ店舗2店舗を含め、期末店舗数は322店舗と前期末比7店舗増加した(うち処方箋取扱い店舗は前期末比5店舗増の52店舗)。この他、9月に中国江蘇省常州市に設立した現地法人「忠幸麒麟堂(常州)商貿有限公司」が、12年12月に常州市最大の商業集積地に近接する大型商業施設「吾悦国際広場内」に第1号店をオープンした。
 
 
既存店は前期比1.8%の減収。客単価が同2.4%増加したものの、客数の減少(同4.2%減)が響いた。このうち上期は前年同期の震災の反動で客数が大きく減少する一方、客単価が増加。既存店対策として、79店舗で改装(うち74店舗は簡易改装)を実施すると共に、店舗特性に応じた販促やポイントカード会員を軸とした販促を実施した(CRMを活用したDMの実施やレシートクーポンの導入)。チラシによる特売等に頼らない販促に力を入れた事で、震災の影響がなくなった下期も前年同期を上回る客単価を維持する事ができた。
 
 
処方箋取扱い店舗の増加と1店舗当たりの処方箋受付枚数の増加で売上総利益率の高い調剤売上高が増加した他、トイレタリーの好調や販売体制の強化が進んだ制度化粧品の寄与で化粧品も堅調に推移した。一方、医薬品は、衛生介護用品が増加したものの、花粉症関連商品が低迷した他、内服薬や外用薬も減少。健康食品は、健康茶が増加したものの、花粉症関連商品が低迷した他、自然食品も全般に苦戦。震災後の特需の反動もあった。また、育児用品はEDLPやチラシ訴求を図ったものの、震災後の特需の反動を吸収できなかった。この他、雑貨等では、日用雑貨が増加したものの、震災後の特需の反動による一般食品や日配品の減少をカバーできなかった。
 
 
販管費は全科目で計画を下回り、前期比1.0%減少した。販売費の増加は販売促進費の増加(30百万円増)によるもので(前期は商品供給に不安があった震災後に販促を控えた)、人件費の増加は人員増に伴う報酬及び給料手当の増加(同2億65百万円増加)によるもの。一方、営業費は、店舗の増加で水道光熱費が増加(同23百万円増)したものの、新物流センター(KRDC)がより効率的に稼動できる取り組みを実施したことで物流費が減少(同1億15百万円減)した他、家賃引き下げ交渉のコンサル料の一巡等で業務委託手数料も減少(同1億25百万円減)。施設費にもコスト削減努力の成果が現れた。
 
 
期末総資産は前期末比7億03百万円減の409億60百万円。フリーCFを有利子負債の削減に充てた事が総資産減少の主な要因。きめ細かい在庫コントロールにより、店舗数が増加する中で棚卸資産がわずかに減少した事も注目点。バランスシートのスリム化が進み、自己資本比率は26.6%と同2.1ポイント改善した。
 
 
営業CFは19億51百万円。税金費用の増加(△5億95百万円→△14億53百万円)等で減少したものの、新規出店等の設備投資を賄うには十分な金額。9億92百万円のフリーCFを確保し、有利子負債の削減を進めた。
 
2014年2月期業績予想
 
 
前期比3.1%の増収、同15.5%の経常増益
売上高は前期比3.1%増の1,049億円。既存店は同1.5%の増収を見込んでおり、11店舗の新規出店と3店舗の退店を織り込んだ。営業利益は同15.9%増の22億30百万円。ヘルス&ビューティケア商品やPB強化で売上総利益率が27.1%と0.2ポイント改善する見込みで、販管費は前期並みの販管費率を想定している。当期純利益が減少するのは、退店や改装に伴う特別損失を見込んでいる事に加え、前期の一時的な法人税等の減少要因がなくなり税負担も増加するためである。
 
尚、足元、花粉症関連の需要取り込みが進んでおり、3月は全店売上高が前年同月比4.6%増加し既存店売上高も同2.7%増加(上期前提0.9%増)。14/2期は順調なスタートを切ったようだ。
 
 
既存店売上高 :上期  前年同期比0.9%増  下期 同2.1%増
新規出店   :上期        2店舗  下期   9店舗
退店     :上期        3店舗  下期   -  
 
 
今後の注目点
10/2期以降、新規出店を10店舗程度に抑え、利益率の改善に取り組んできた成果が現れてきた。具体的には、08/2期の23.2億円をピークに下降トレンドをたどっていた営業利益が、11/2期の11.1億円を底に増加に転じ、14/2期は過去最高益の更新が視野に入る。関西圏の深耕による基盤強化と上位企業を追撃する体制が整いつつあるようだ。
利益率を落とさずに売上を伸ばす事が今後の課題となるが、同社は、売上を伸ばしやすいが利益率が低下する食品等には頼らず、物件を厳選したうえでの新規出店と、ポイントカード会員にフォーカスしたマーケティングの強化やお客様が買い物しやすい売場づくりやライトカウンセリングの実施などにより売上を伸ばしていく。また、事業規模の拡大だけでなく、フレームワークを活かした業務システム改革による一段の生産性向上により収益性の改善も図っていく考え。