ブリッジレポート
(3778:東証マザーズ) さくらインターネット 企業HP
田中 邦裕 社長
田中 邦裕 社長

【ブリッジレポート vol.3】2013年3月期業績レポート
取材概要「データセンター市場はモバイルデバイスやWebアプリケーションの普及を背景に引き続き安定した成長が見込まれ、特にVPSやクラウドの仮想ホスティ・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年5月28日掲載
企業基本情報
企業名
さくらインターネット株式会社
社長
田中 邦裕
所在地
大阪市中央区南本町1-8-14 堺筋本町ビル
事業内容
東阪でデータセンター運営。業界大手。双日が連結子会社化狙いTOB実施、上場は維持方針
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 9,164 873 808 556
2011年3月 8,584 1,225 1,194 572
2010年3月 7,812 748 723 567
2009年3月 7,106 392 349 374
2008年3月 6,478 85 -25 -632
2007年3月 4,703 -271 -346 -493
2006年3月 2,758 210 197 105
2005年3月 1,930 133 132 70
株式情報(4/26現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
708円 8,677,489株 6,144百万円 16.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 0.7% 57.62円 12.3倍 365.80円 1.9倍
※株価は4/26終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
さくらインターネットの2013年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京(西新宿、東新宿、代官山)、大阪(堂島)、北海道(石狩)の3エリアでデータセンターを運営し、サーバの設置スペースと電源やネットワーク回線等を提供するハウジングサービスとサーバ環境(コンピュータリソース)をインターネット上で提供するホスティングサービスを手掛けている。多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存するのに対して、同社はインフラを自社で保有する事で高収益を追求しており(価格競争力の源泉となる)、このインフラをハウジングサービスにも活用する事で稼働率を上げ固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。
 
【事業概要】
事業は、ハウジングサービス(以下、サービスを略)、ホスティング、及びこれら業務に付帯するドメイン取得やサーバ構築コンサルティング及びクラウド等のその他サービスに分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ32.8%、57.6%、9.6%。
同社のハウジングはラック貸し(1つのラックを1顧客が占有)が中心だが、石狩データセンターでは大規模利用向けにスペース貸しも行っている。また、石狩データセンターはリモートハウジングを提供しており、物理作業の全てを同社が代行する事で遠隔地にあるハンデをカバーしている(緊急時でもユーザが現地に赴く必要がない)。一方、ホスティングは、物理サーバを貸し出す物理ホスティング(専用サーバとレンタルサーバの2つのサービスを提供)と、物理サーバ上に複数の仮想マシン(VM)を作成し、VM単位でサービスを提供する仮想ホスティング(クラウドとVPSの2つのサービスを提供)に分かれる。
 
 
物理ホスティングは1台の物理サーバを1顧客が占有する専用サーバ(サービス名「さくらの専用サーバ」)と1台の物理サーバを複数の顧客で利用するレンタルサーバ(同「さくらのレンタルサーバ」等)に分かれ、専用サーバがサーバの設定や利用するソフトウェア等での自由度の高さを特徴とするのに対して、レンタルサーバは専用サーバに比べて制約はあるもののメンテナンス等を自社で行う必要がない。
 
一方、仮想ホスティングは、仮想化技術を用いる事でレンタルサーバ並みの安価な料金で専用サーバ並みの自由度の高さを実現したVPS(バーチャル・プライベート・サーバ)サービス(同「さくらのVPS」)とIaaS型パブリッククラウド(同「さくらのクラウド」)に分かれる。「さくらのクラウド」は「さくらのVPS」では対応できない従量課金や柔軟なリソース増減が可能であり、一方、「さくらのVPS」は「さくらのクラウド」のような柔軟な対応はできないが、コスト面でメリットがある。
 
【沿革】
田中社長が学生時代の1996年12月に創業
事業のスタートは、現社長の田中邦裕氏がサーバインフラの提供ビジネスを開始するべく、“sakura.ne.jp”というドメインの取得申請を行った1996年12月。当時の田中氏は舞鶴工業高等専門学校(京都府舞鶴市)の4年生(18歳)。自らデータの置き場に困っていたため、「それなら自分でやってみよう」と言うのが起業の動機。ドメイン取得後にレンタルサーバサービスの提供を開始し、翌97年6月には専用サーバサービスの提供を開始した。99年8月には さくらインターネット(株)として法人組織に改組。同年10月に大阪(大阪市中央区)と東京(東京都豊島区)にデータセンターを開設し、ハウジングサービスを開始した。
 
2005年10月に東証マザーズ上場も、相乗効果を狙ったオンラインゲームの苦戦で08/3期に債務超過に
2000年4月、同業のエス・アール・エス(株)、(有)インフォレストと合併し、商号をエスアールエス・さくらインターネット(株)へ変更。同年12月にエス・アール・エス(株)の代表取締役社長だった笹田亮氏が代表取締役社長兼CEOに就任した。04年7月には商号を さくらインターネット(株)へ改めて変更し、05年10月に東証マザーズに株式を上場。東証マザーズ上場後もデータセンター事業が順調に拡大したものの、06年8月から開始したオンラインゲーム事業で苦戦(米Turbine社の「ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン ストームリーチ」と「The Lord of The Rings Online」の日本語版を運営)。オンラインゲーム事業はデータセンター事業との親和性の高さに着目したものだったが、07/3期(最終損益△4億93百万円)、08/3期(同△6億32百万円)の2期間で11億円強の最終損失を計上する原因となり、同社は債務超過に陥った。
 
再建に向け田中氏が社長に復帰。データセンター事業に経営資源を集中し11/3期にかけて業績はV字回復
このため、07年11月に田中氏が代表取締役社長に復帰し、再建に向けた取り組みを本格化した。幸い国内トップクラスの実績を有するデータセンター事業が好調だった事と田中氏のリーダーシップもあり、08年2月に双日(株)と資本提携し(持分法適用会社となる)、債務超過を解消。11年2月には双日(株)のTOBに賛同し資本関係を強化すると共に(連結子会社となる)、改めて業務提携契約を締結した。同年11月にはクラウドコンピューティングに最適化した日本最大級の郊外型大規模データセンターとして、石狩データセンター(北海道石狩市)が竣工。11/3期にかけて業績はV字回復。現在、東京(3:西新宿、東新宿、代官山)、大阪(堂島)、北海道(石狩)の5か所でデータセンターを運営している。
 
12/3期に増収・減益となったのは、更なる業容拡大に向けた先行投資負担が要因。石狩データセンター1号棟の立ち上げ(11年11月に稼働)や既存データセンターの設備強化等に伴う減価償却費や賃借料の増加が負担となった。続く13/3期は石狩データセンター1号棟の運用コストが通年計上されたものの、新規顧客の獲得が進み下期は増収・増益に転じた。14/3期は同センター2号棟の立ち上げに伴うコスト増を1号棟の稼働率向上に伴う限界利益の増加で吸収し、営業利益は同15.3%増加する見込み。
 
 
尚、筆頭株主の双日(株)が議決権の40.29%を保有し、第2位株主(議決権の12.93%を保有)の(株)田中邦裕事務所が、双日(株)が決定した内容と同一の内容の議決権を行使する事に合意しているため、実質支配力基準により双日(株)が同社の親会社となっている。また、双日(株)の村上宗久氏を取締役として、同社機械部門 産業情報部 部長 野村昌雄氏を社外取締役として、それぞれ招聘している(この他、双日グループから従業員数名を出向者として受け入れている)。
 
【特徴と強み】
同社の特徴及び強みとして、国内有数規模のITインフラ基盤、開発から運用・サポートに至る一貫体制(全て自社で対応)、及び国内トップクラスの顧客資産とブランドバリュー、の3点を挙げる事ができる。
 
国内有数規模のITインフラ基盤
国内最大級(注)の規模となるさくらインターネットのバックボーンネットワーク(ネットワークの基幹部分)は、日本国内の代表的なIX(複数のインターネットサービスプロバイダのネットワークや学術ネットワーク等を相互接続する接続ポイント)や数多くの大手ISP(インターネットサービスプロバイダー)と東京・大阪で接続を行い、高い可用性(システムの壊れにくさ)と圧倒的なトラフィック配信能力を実現している。また、国内事業者では最大規模となる通信回線容量を確保し、対外接続の総計はデータセンター専業事業者としてはトップクラスの244Gbps。東京、大阪、石狩の各データセンター間もギガビット以上大容量で接続されている。
 
開発から運用・サポートに至る一貫体制(自社運営のデータセンターとバリューチェーンの内製化)
既に説明した通り、多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存しているのに対して、同社はインフラを自社で保有し、かつ、このインフラをハウジングサービスにも活用する事で稼働率を上げ、固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。また、多様なニーズに柔軟に対応するべく、自社での開発・運営・サポート体制を敷いている(サービス提供に係る全ての工程を自社内で手掛ける事ができる)。各データセンターは無停電電源装置とエンジン発電機を備え、災害発生時には電源供給も可能。セキュリティについては、カードキー認証による開錠システムが導入されている。この他、躯体構造では、震度6強の地震にも耐える制震・耐震・免震構造を採用しており、データセンターに求められるファシリティ能力も高次元でクリアしている。
 
リスク分散された国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー
同社は、「高品質かつコストパフォーマンスに優れたサービスを提供する」と言う経営理念の下、日本のインターネット創成期から、コストパフォーマンスに優れた汎用性の高いシンプルなサービスの提供と、スタートアップビジネスから大規模サイトの運営まで幅広い用途への対応に取り組んできた。このため、高品質・低コストのデータセンター事業者としてITエンジニアへの認知度が高く、かつ、個人から法人まで幅広く利用されている(一部の大手顧客への依存度が高い同業者の多くとは異なり、小口顧客の構成比が高く、リスク分散が進んでいる)。
 
顧客構成
同社の顧客構成は下表の通り。「料金別顧客構成」からは、一部の大手顧客に依存しない、バランスのとれた顧客構成が見て取れる。また、月額10〜50万円の顧客が順調に伸びており、コストパフォーマンスを武器にスタートアップ段階にある顧客の取り込みが順調である事もわかる。ただ、スタートアップ段階にある顧客の取り込みが順調である一方、顧客がステップアップしていく段階で他社へ乗り換えるケースが少なくないようだ。このため、リテンション(retention:顧客維持)を念頭に営業強化に取り組んでいる。
 
一方、「月額料金100万円以上の業種別顧客数」を見ると、安定した需要が見込めるシステム関係の顧客が多く、足元の市場拡大は著しいが比較的浮き沈みの大きいゲーム・アプリの依存度はそれほど高くない事がわかる。
尚、優れた柔軟性と拡張性に加え、都市型データセンターでは実現困難な低価格を実現した石狩データセンターの稼働(11年11月)でポテンシャルが各段に高まった事を踏まえ、双日グループと連携して官公庁・自治体市場やエンタープライズ市場の開拓にも力を入れていく考え。
 
 
 
新中期経営計画(13/3期〜15/3期)と14/3期の施策
 
(1)市場動向
モバイルデバイスやWebアプリケーションの利用増、システムのクラウド化など企業のIT資産に対する意識の変化(ITアウトソーシングへの抵抗感低下)、更にはBCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)対策を含めたIT資産の冗長化需要等で、データセンター市場は引き続き拡大傾向にある。ただ、その一方で、IT投資コストの削減ニーズやデータセンターの供給増で価格競争が激化している。加えて、原油価格の上昇や原発事故を背景にした電気料金値上げ等によるコストアップ要因の発生もあり、データセンター事業者の収益環境は厳しさを増している。
 
尚、調査会社の調べによると、2012年の国内データセンターサービス市場は1兆3,454億円と前年比4.9%増加。東日本大震災を契機に大手企業を中心に本格化したBCP/DR対策、コスト削減を目的としたクラウドサービスの利用増加、クラウドサービスの浸透による中小企業への普及等が拡大要因であると言う。今後の成長要因としては、BCP/DR需要やクラウドサービスの拡大に加え、ハードウェアの高性能化に伴う高密度ニーズ拡大と顧客単価の上昇や仮想化の進展による運用の複雑化を背景とするアウトソーシングニーズ等を挙げており、2017年の市場規模を2012年比24.0%増の1兆6,685億円と予想している。
 
また、別のIT専門調査会社によると、2013年以降、クラウドサービスが企業の基幹業務システムのサーバ運用にも浸透していくと見ており、2012年には933億円だった国内パブリッククラウドサービス市場が2017年には3,178億円に拡大すると予想している。尚、パブリッククラウドサービスはクラウドサービスと同義語で、対義語は企業等が社員など内部の利用者に提供するプライベートクラウド。
 
(2)新中期経営計画(13/3期〜15/3期)
現在進行中の新中期経営計画においては、「ITインフラ」、「テクノロジー」、「サービス」、「セールス」を強化し、新たな競争優位の確立を目指している。
 
 
これまでIT企業に強かった同社だが、新中期経営計画では、石狩データセンターの活用と双日(株)グループとの連携により、今後のデータセンター事業の本命と言われるエンタープライズ市場の開拓にも力を入れる。このため、サービス面で複数サービスをシームレスに管理できる環境の提供、信頼性とコストパフォーマンスの両立、更には顧客の多様な事業ステージやIT戦略に対応できるラインナップの構築に取り組むと共に、顧客層別のセールス手法を導入し、IT企業の深耕を図ると共に、エンタープライズ・ユーザの開拓を進めていく考え。
 
定量的目標
定量的目標は下表の通り。最終となる15/3期の目標として、売上高125億円〜、経常利益12.5億円〜を掲げている。また、この前提目標として、売上成長率10%以上、売上総利益率30%以上、売上高経常利益率10%以上の3項目を挙げている。
 
 
 
石狩データセンター2号棟の構内工事を開始
石狩データセンターは8棟の建設を予定しているが(用地は確保済み)、現在、建屋が完成しているのは1号棟と2号棟の2棟。このうち使用しているのは、1号棟のみで、2号棟は棟内工事を行っていなかった。2号棟は1号棟の稼働状況を見て棟内工事を開始する考えだったが、1号棟の収容余力が乏しくなってきたため、当初の想定よりも1年前倒しで工事を開始する事となった(1号棟は2年半程度での満杯を想定していた)。
ちなみに1号棟は500ラックの収容能力があるが、既に400ラックが通電しており(ホスティングと大規模ハウジング案件で各々200ラックの割り当て)、残る100ラックについては4月中の竣工に向けて工事が進行中。新たに通電する100ラックのうち、50ラックについては日商エレクトロニクス(株)と契約済みで5月から課金を開始する。
 
 
尚、石狩データセンターでは、北海道の冷涼な外気を活用した外気冷房の採用により40%の消費電力の削減に成功しているが、更なる消費電力の低減に向け、電源ロスを徹底的になくした給電方式である直流給電方式の「HVDC給電システム」を導入した(従来の交流による給電方式に比べて、500ラック当たり年間2,700万円の電力量削減につながる)。「直流給電」は、太陽光や燃料電池など直流との親和性の高いエネルギーソースの活用においても高い評価を得ている事から、今後の併用について検討を進めていく考え。この他、住友電工、中部大学、千代田化工建設と共に、経済産業省から「高温超電導直流送電システム」の実証実験も受託している。
 
(3)14/3期の施策
14/3期の施策として、「さくらのVPS」を入り口としたプラットフォーム化の推進、一般企業向けデータセンターサービスの提供、さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの向上、セールスの強化、拠点の特色を生かしたデータセンター運営の5点を挙げている。
 
「さくらのVPS」を入り口としたプラットフォーム化の推進
仮想ホスティング(ホスティングとクラウドの総称)の需要が伸びており、同社が提供する仮想ホスティングも件数を伸ばしている。このため、「さくらのVPS」を入り口としたプラットフォーム化を進めていく考え。具体的には、「さくらのVPS」の新規サーバ需要の吸引力を活かし顧客基盤の拡大を図り、顧客の成長段階に応じて、「さくらのクラウド」、更には「さくらの専用サーバ」や「リモートハウジング(ハウジング)」へ移行を促す事でリテンションを強化する。このため、上位サービスにストレスなく移行できる環境の整備や複数サービスをシームレスに活用できる環境の整備に取り組むと共に、新プランの投入や機能強化を継続的に実施していく。
 
 
一般企業向けデータセンターサービスの提供
大規模な需要が見込める一般企業向けホスティング市場へ参入し、専用サーバやシステム構築の自由度の高さとホスティング並みの利便性を備えたリモートハウジングの販売拡大を図る考え。Windowsなど一般企業の情報システムで採用されているOSを搭載したプランを投入する事でサービスを強化すると共に、セールス面では、独自の販売チャネルを持つ企業との提携を模索していく。
 
さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの向上
さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの向上に向け、前期に実施した石狩データセンター見学ツアーのような同社主催のイベントを全国展開していくと共に、Webメディアを活用して技術情報を発信していく。尚、同社は、SNSにおいて国内トップクラスのファン数を獲得しており、この4月には、開発者向け技術情報サイト「さくらのナレッジ」をオープンした。
 
セールスの強化
リテンション強化を目的に、顧客接触回数の増加を図るべく営業リソースを強化すると共に、サービスサイトとセールスサイトをリニューアルする。
 
 
拠点の特色を生かしたデータセンター運営
収益性の高い既存データセンターの競争力を維持しつつ、成長余力が大きい石狩データセンターにリソースを集中する。
 
 
 
2013年3月期決算
 
 
前期比3.5%の増収、同0.5%の経常増益
売上高は前期比3.5%増の94億82百万円。上期に発生した大口解約の影響を下期の新規大口案件の稼働で吸収し、ハウジングの売上が同3.3%増加。ホスティングも、専用サーバの落ち込みをレンタルサーバやVPSの増加等で吸収して売上が同3.5%増加した。
尚、ホスティングでは、価格を改定した新プランの寄与とディスク容量の増強や処理性能向上など既存サービスの機能強化でレンタルサーバの売上が同13.6%増加した他、前期末に高性能サーバを導入してサービスパフォーマンスの向上を図ったVPSの売上も同89.6%増加。10月に課金を再開したクラウドも新規案件の取り込みが進んだ(クラウドを含むその他の売上が9億08百万円と同3.5%増加)。この他、解約の増加と解約対策としての初期費用無料プランの投入の影響で売上が同11.2%減少した専用サーバも、初期費用無料プランそのものは評価されており、利用件数は回復傾向にある。
 
利益面では、減価償却費の増加(12億63百万円→14億66百万円)等で売上総利益率がわずかに低下する一方、業容の拡大と石狩データセンターが通期で稼働した事等で人件費を中心に販管費が増加したが、増収効果でほぼ前期並みの営業利益を確保した。還付金加算や設備負担金収入の計上等で営業外損益が改善したものの、特別損益の悪化と税負担の増加で当期純利益は4億79百万円と同13.9%減少した。
 
 
 
石狩データセンターの稼働率向上に加え、10月以降、クラウドの課金を再開した事もあり、第3四半期(10-12月)以降、増収基調が定着してきた。第4四半期(1-3月)は、売上の増加による限界利益の増加で営業利益が大幅に増加。現金収入(利払い前・税前・償却前利益)の尺度となるEBITDA(=経常利益+支払利息+減価償却費)が四半期ベースで過去最高となった。
尚、第3四半期が前四半期比で増収ながら営業減益となったのは先行投資負担によるもの。具体的には、稼働スペースの拡張や提供サーバ台数の増加等による石狩データセンターの償却負担増、新サービス関連の仕入増加(フラッシュメモリを用いたストレージ「SSD」等)、更にはWebプロモーション強化等を挙げる事ができる。
 
 
 
第4四半期は全てのサービスが前四半期比で(3Q比)増収となり、課題だった増収基調への回帰に道筋を付けた。石狩データセンターはBCP(事業継続計画)/DR(災害復旧)対策の観点から評価されており、大規模ハウジング案件が本格稼働(3Q比30百万円の増収要因)。専用サーバも、旧プランの解約(同35百万円の減収要因)や初期費用無料プラン(新プラン)の導入で前年同期比では減収ながら、新プランの受注が好調(同37百万円の売上押し上げ要因)で売上の減少に歯止めがかかってきた。レンタルサーバは価格を改定した新プランの寄与に加え、既存サービスもデータベース機能の強化が評価されている。VPS、クラウドは共に好調。VPSは石狩データセンターを利用した案件の売上が同14百万円増加。クラウドは課金再開と新規獲得で同11百万円の増収(上記の他、諸々14百万円の増収要因があった)。
 
 
期末利用件数では、仮想化技術を用いる事でレンタルサーバ並みの安価な料金で専用サーバ並みの自由度の高さを実現したVPSの伸びが大きく、ディスク容量の増強や処理性能向上等の継続的な機能強化と上位プランの投入によりレンタルサーバも年間3万件前後のペースで伸びている。また、減少傾向にあった専用サーバにも底打ち感が出てきた。客単価の面では、初期費用無料プランの導入で、専用サーバとVPSの客単価が低下したものの、レンタルサーバは上昇が続いている。
 
 
期末総資産は前期末比13億72百万円増の125億13百万円。業容の拡大とCFの改善で流動資産、流動負債、純資産が増加。各データセンターの設備増強や機材調達による有形リース資産の増加及び新サービスの提供に必要な基幹システムの開発で固定資産も増加した。有利子負債も増加したが、これはリース債務の増加によるもので、長短借入金についてはCFの改善を受けて6億円強圧縮。自己資本比率は25.4%と同0.8ポイント改善した。
 
 
CFの面では、販売収入の増加や法人税等の支払額減少(7億32百万円→1億59百万円)により、営業CFが増加。設備投資がピークアウトした事で投資CFのマイナス幅も縮小し、前期は23億20百万円のマイナスだったフリーCFが7億17百万円の黒字に転じた。長短借入金の返済を進めたため、財務CFがマイナスになったものの、現金及び現金同等物期末残高は22億99百万円と前期末比2億16百万円増加した。
 
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比16.0%の増収、同0.9%の経常増益
売上高は前期比16.0%増の110億円。13/3期第4四半期の受注動向から石狩データセンター1号棟の高い稼働状況が見込まれる他、期中に稼働を開始する2号棟の寄与も見込まれ、売上は高い伸びを示す。サービス別では、ハウジングと足元も引き続き好調なレンタルサーバの売上が共に2億円強増加する見込みで、VPSで5億円強、クラウドで3億円程度の増収を見込んでいる。
 
利益面では、石狩データセンター2号棟の立ち上げに伴うコスト増を1号棟の稼働率向上による限界利益の増加で吸収して営業利益が同15.3%増加する見込み。金融費用の増加等で営業外損益が悪化するものの、特別損益の改善により当期純利益は5億円と同4.4%増加する見込み。
 
設備投資は、石狩データセンターで30億円、既存データセンターで20億円の計50億円を計画しており、減価償却費は18億50百万円と同3億円程度増加する見込み。石狩データセンターは、期中に1号棟の全ゾーンが通電する他、2号棟の構内工事の完了・稼働が予定されている。
 
 
今後の注目点
データセンター市場はモバイルデバイスやWebアプリケーションの普及を背景に引き続き安定した成長が見込まれ、特にVPSやクラウドの仮想ホスティングは高い成長が期待されている。こうした中、同社は、「クラウドサービスメニュー等の整備」、「地方型データセンターの活用」、更には「災害関連メニューの整備」といったデータセンター事業者が成功するために必要とされる課題を全てクリアしており、「さくらのクラウド」の売上増や1年前倒しで2号棟の構内工事に着手した石狩データセンターの好調に反映されている。この結果、売上高は過去最高の更新が続いているが、先行投資負担等で利益ベースでは足踏みが続いていた。しかし、14/3期は二桁の営業利益に転じ、来15/3期は利益ベースでも過去最高の更新が見込まれる。
 
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