ブリッジレポート
(3778:東証マザーズ) さくらインターネット 企業HP
田中 邦裕 社長
田中 邦裕 社長

【ブリッジレポート vol.4】2014年3月期上期業績レポート
取材概要「首都圏内はデータセンターの新設・増設が相次いでおり、同社の都内データセンターは想定以上に苦戦を強いられている。一方、石狩データ・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年11月26日掲載
企業基本情報
企業名
さくらインターネット株式会社
社長
田中 邦裕
所在地
大阪市中央区南本町1-8-14 堺筋本町ビル
事業内容
東阪でデータセンター運営。業界大手。双日が連結子会社化狙いTOB実施、上場は維持方針
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 9,482 867 812 479
2012年3月 9,164 873 808 556
2011年3月 8,584 1,225 1,194 572
2010年3月 7,812 748 723 567
2009年3月 7,106 392 349 374
2008年3月 6,478 85 -25 -632
2007年3月 4,703 -271 -346 -493
2006年3月 2,758 210 197 105
2005年3月 1,930 133 132 70
株式情報(10/28現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
608円 8,677,489株 5,276百万円 16.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 0.8% 57.62円 10.6倍 365.80円 1.7倍
※株価は10/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
さくらインターネットの2014年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京(西新宿、東新宿、代官山)、大阪(堂島)、北海道(石狩)の3エリアでデータセンターを運営し、サーバの設置スペースと電源やネットワーク回線等を提供するハウジングサービスとサーバ環境(コンピュータリソース)をインターネット上で提供するホスティングサービスを手掛けている。多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存するのに対して、同社はインフラを自社で保有する事で高収益を追求しており(価格競争力の源泉となる)、このインフラをハウジングサービスの提供にも活用する事で稼働率を上げ固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。
 
【事業概要】
事業は、ハウジングサービス(以下、サービスを略)、ホスティング、及びこれら業務に付帯するドメイン取得やサーバ構築コンサルティング等のその他サービスに分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ32.8%、58.2%、9.0%。同社のハウジングはラック貸し(1つのラックを1顧客が占有)が中心だが、石狩データセンターにおいて大規模ユーザ向けにスペース貸しも行っている。同センターではリモートハウジングも提供しており、物理作業の全てを同社が代行する事で遠隔地にあるハンデをカバーしている。一方、ホスティングは、物理サーバを貸し出す物理ホスティング(専用サーバとレンタルサーバの2つのサービスを提供)と、物理サーバ上に複数の仮想マシン(VM)を作成し、VM単位でサービスを提供する仮想ホスティング(クラウドとVPSの2つのサービスを提供)に分かれる。
 
 
物理ホスティングは1台の物理サーバを1顧客が占有する専用サーバ(「さくらの専用サーバ」)と1台の物理サーバを主に複数の顧客で利用するレンタルサーバに分かれる。専用サーバはサーバの設定や利用するソフトウェア等で自由度が高いのに対して、レンタルサーバは専用サーバと比べて制約があるものの、ユーザはメンテナンス等を行う必要がない。レンタルサーバは、個人利用の多い「さくらのレンタルサーバ」と中小企業・SOHO向けの「さくらのマネージドサーバ」に分かれる。
一方、仮想ホスティングは、仮想化技術を用いる事でレンタルサーバ並みの安価な料金で専用サーバ並みの自由度の高さを実現したVPS(バーチャル・プライベート・サーバ)サービス(同「さくらのVPS」)とIaaS型パブリッククラウド(同「さくらのクラウド」)に分かれる。「さくらのクラウド」は「さくらのVPS」では対応できない従量課金や柔軟なリソース増減が可能であり、一方、「さくらのVPS」は「さくらのクラウド」のような柔軟な対応はできないが、コスト面でメリットがある。尚、同社においては、「さくらのクラウド」は「さくらのVPS」と比べて投資負担は重いが、単価は高い。
 
【特徴と強み】
同社の特徴及び強みとして、国内有数規模のITインフラ基盤、開発から運用・サポートに至る一貫体制(全て自社で対応)、及び国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー、の3点を挙げる事ができる。
 
国内有数規模のITインフラ基盤
国内最大級の規模となるバックボーンネットワーク(ネットワークの基幹部分)は、日本国内の代表的なIX(複数のインターネットサービスプロバイダのネットワークや学術ネットワーク等を相互接続する接続ポイント)や数多くの大手ISP(インターネットサービスプロバイダー)と東京・大阪・北海道間で接続し、高い可用性(システムの壊れにくさ)と圧倒的なトラフィック配信能力を実現している。また、国内事業者では最大規模となる通信回線容量を確保し、対外接続の総計はデータセンター専業事業者としてトップクラスの284Gbps。各データセンター間もギガビット以上の大容量で接続されている。
 
開発から運用・サポートに至る一貫体制(自社運営のデータセンターとバリューチェーンの内製化)
既に説明した通り、多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存しているのに対して、同社はインフラを自社で保有し、かつ、このインフラをハウジングにも活用する事で稼働率を上げ、固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。また、多様なニーズに柔軟に対応するべく、自社で開発・運営・サポート体制を敷いている(サービス提供に係る全ての工程を自社内で手掛けている)。各データセンターは無停電電源装置とエンジン発電機を備え、災害発生時には電源供給も可能。セキュリティについては、カードキー認証による開錠システムが導入されている。この他、躯体構造では、震度6強の地震にも耐える制震・耐震・免震構造を採用しており、データセンターに求められるファシリティ能力も高次元でクリアしている。
 
リスク分散された国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー
同社は、「高品質かつコストパフォーマンスに優れたサービスを提供する」と言う経営理念の下、日本のインターネット創成期から、コストパフォーマンスに優れた汎用性の高いシンプルなサービスの提供と、スタートアップビジネスから大規模サイトの運営まで幅広い用途に対応できるサービスラインナップの拡充に取り組んできた。このため、高品質かつ低コストのデータセンター事業者としてITエンジニアへの認知度は高く、個人から法人まで幅広い層で利用されている(一部の大手顧客への依存度が高い同業者の多くとは異なり、小口顧客の構成比が高く、リスク分散が進んでいる)。
 
【顧客構成】
同社の顧客構成は下表の通り。「料金別顧客構成」(13年9月末現在)からは、一部の大手顧客に依存しない、リスク分散された顧客構成が見て取れる(月額料金100万円未満が全体の68%)。足元、月額100万円未満の顧客が順調に伸びており、コストパフォーマンスを武器にスタートアップ段階にある顧客の取り込みが順調であると言う。さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの強化を目的に実施している自社イベントの開催や外部イベントへの出展等のPR活動も成果をあげているようだ。ただ、スタートアップ段階にある顧客の取り込みで強さを発揮する一方で、顧客がステップアップしていく段階で他社へ乗り換えるケースが少なくない。このため、付加価値の高いオプションサービスや、上位サービスに手間なくアップグレードできるサービスの開発を進めている。
 
「月額料金100万円以上の業種別顧客数」を見ると、システム関係の顧客が多い。浮き沈みの大きいゲーム・アプリでは優良顧客を抱えており、価格条件は厳しいが安定している。優れた柔軟性と拡張性に加え、都市型データセンターでは実現困難な低価格を実現した石狩データセンターの稼働(11年11月)で、当社のポテンシャルが各段に高まった事から、双日グループと連携して官公庁や自治体、エンタープライズ市場の開拓にも力を入れている。
 
 
 
2014年3月期上期決算
 
 
14/3期第2四半期(7-9月)の売上高は前四半期比0.2%増の24億78百万円。大口解約のあったハウジングと専用サーバの売上は減少したが、レンタルサーバ、VPS・クラウドの増加で吸収した。営業利益は同14.8%減の1億75百万円。貸倒引当金繰入額の減少(24百万円)で販管費が同14百万円減少したものの、ホスティングサービスの機能強化に伴う設備投資で減価償却費が同16百万円増加する等、売上原価が同48百万円増加した。四半期純利益が70百万円と同33.8%減少したのは、代官山データセンターの一部フロアの解約に伴う減損損失の計上による。
 
 
都内データセンターで供給するハウジングの大口解約が響き、同サービスの売上は7億76百万円と前四半期比2.2%減少した。ホスティングでは、専用サーバの売上が6億56百万円と同3.4%減少。石狩データセンターで提供している「さくらの専用サーバ」の売上が同22百万円増加したものの、旧サービスや専用サーバPlatformの解約で同45百万円減少した事が響いた。石狩データセンターの好調で解約率は底打ちしたが、単価の低下が続いていると言う。一方、レンタルサーバの売上は5億37百万円と同3.9%増加。「さくらのレンタルサーバ」(同15百万円増)、「さくらのマネージドサーバ」(同4百万円増)共に売上が増加した。VPS・クラウドも、「さくらのVPS」(同14百万円増)、「さくらのクラウド」(同10百万円増)共に伸び、売上が2億86百万円と同9.9%増加。VPS・クラウドの月商は、第3四半期以降、1億円を超える見込み。
 
VPS・クラウドの強化に向けた取り組み
VPS・クラウドは、既存のサービスのみで、第3四半期以降、月商が1億円を超える見込みだが、9月から10月にかけてサービス内容を拡充した効果は、業績予想に織り込まれていない。具体的には、「さくらのVPS」のユーザが「さくらのクラウド」に手間なくアップグレードできるサービスの提供を開始した他、一般企業の需要を取り込むべく「さくらのクラウド」にWindows Server プランやサービス品質保証制度(SLA)を導入し、時間課金制度も取り入れた。
尚、ユーザのビジネスが成長すると、インフラのリソースを強化するため、VPSからクラウドに移行するが、その段階で他社サービスに乗り換えられてしまうケースが多かったと言う。クラウドのサービスプラン拡充やVPSからクラウドに手間なくアップグレードできるサービスの投入は、こうした傾向を踏まえたもの。また、VPS・クラウドに限った事ではないが、さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの強化を目的に、自社イベントの開催や外部イベントへの出展等のPR活動も続けている。
 
 
 
前年同期比6.0%の増収、同23.4%の経常減益
売上高は前年同期比6.0%増の49億52百万円。レンタルサーバ、VPS・クラウドは二桁成長だったが、大口解約の影響によるハウジングや専用サーバの落ち込みで期初予想には届かなかった。営業利益は同19.1%減の3億80百万円。石狩データセンターの設備拡張に伴う減価償却費の増加や、人材採用に伴う人件費の増加が利益を圧迫した。ただ、エンジニアの採用が進んだ事でエンジニアの同行営業が増え、足元の受注では人材採用効果が表れていると言う。
 
 
 
上期末の総資産は前期末比7億30百万円増の132億44百万円。借方では、データセンターの設備強化や機材調達に伴い、建物、リース資産、建設仮勘定等が増加。貸方では、設備投資に伴う一時的な支払増加に備え、短期借入金を積み増した。
 
設備投資の状況 石狩データセンター
石狩データセンターは、データセンター8棟分の敷地を有し、現在、2棟(1号棟、2号棟)が竣工している。1号棟は500ラックの収納が可能で、うち250ラック相当のスペースを大規模ハウジング案件として長期契約を結んでおり、残りの250ラックは同社ホスティングサービスの供給用として使用している。クラウド系サービスの増加で収益性の改善が進んでおり、想定よりも早い14/3期第1四半期に黒字化を達成した(オープンから1年5ヶ月)。9月末現在、供給スペースのラック稼働率は80.7%に達している。
一方、2号棟は1号棟と同じ床面積だが、機器の小型化と集積技術が向上し、収容効率が20%アップ。600ラックの収納が可能となった。現在、120ラック分を大口顧客の事務所として、360ラック分を倉庫として、それぞれ使用中。残り120ラック分について、13年11月末の稼働を目指して工事を進めている(投資額約14億円)。2号棟が稼働しても、石狩データセンター全体では黒字を確保できる見込みだ。
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比16.0%の増収、同0.9%の経常増益
会社側では、下期について、ハウジングに解約の影響が残るものの、ホスティングの新プランやオプション機能の追加等の効果で大きく伸びると見ている。増収効果に加え、代官山データセンターの一部フロアの解約等で収益性も改善する見込み。 通期では売上高が110億円と前期比16.0%増加。ハウジングが厳しいものの、レンタルサーバ及びVPS・クラウドは順調。減収が見込まれる専用サーバも、想定の範囲内で着地できそうだ。営業利益は同15.3%増の10億円。下期の収益性改善で前期並みの営業利益率を確保できると見ている。経常利益が同0.9%の増加にとどまるのは、金融費用の増加を織り込んだため。設備投資は、石狩データセンターで30億円、既存データセンターで20億円の計50億円を計画しており、減価償却費は18億50百万円と前期に比べて3億円程度増加する見込み。配当は1株当たり5円の期末配当を予定している。
 
(2)事業環境と同社の取り組み
事業環境
首都圏は23区内を中心にデータセンターの新設が相次いでいる(首都圏データセンターの「2013年問題」として需給悪化懸念となっていた)。これを受けてユーザが新しいデータセンターへ移設するケースが増えており、解約された既存のデータセンターはユーザ獲得に向け値下げを余儀なくされている。ただ、その一方で、11年の東日本大震災以降、BCP・DR(事業継続計画・災害対策)の観点から、IT資産を保有から利用に切り替える企業が増えており、通信レスポンスに優れた首都圏データセンターの需要は増加している。
 
同社の取り組み
下期以降の取り組みとして、競争が激化している都内データセンターのサービス見直し、ホスティングサービスの強化、及びセールスプロモーションの強化の3点を挙げている。
 
都内データセンター(全てフロア賃貸)のサービス見直し
需給環境に応じ拠点の供給サービスをコントロールしていく考え。大口解約により、ハウジングを提供している代官山データセンターの一部フロアを解約した(13年9月)。一方、設備は古いが収益性の高い東新宿データセンターは、ハウジングに加え、専用サーバ(旧)、レンタルサーバ、VPS(13年10月からサービス開始)を提供している。ハウジングの減少を、他のサービスでカバーして収益性を高めていく考えで、通信レスポンスを重視する需要層を取り込むべく、新たなホスティングサービスの提供を、西・東新宿データセンターで企画中。
 
ホスティングサービスの強化
上期末に非IT企業のインフラ需要を取り込むべくWindowsユーザ向けの新プランを投入したが、今後もVPS・クラウドの競争力強化に向け、新プラン投入とオプション機能の追加を継続的に実施していく。Windowsユーザ向けの新プランは、現在、「さくらの専用サーバ」と「さくらのクラウド」で提供しており、「さくらのVPS」については提供準備を進めている(当期中に提供予定)。
また、新規顧客数の増加と顧客単価の引き上げを念頭に、「さくらのVPS」におけるハイエンドプランの投入とセキュリティ関連サービスの追加、更には「さくらのVPS」と「さくらのクラウド」のプラットフォーム化(「さくらのVPS」から「さくらのクラウド」へのステップアップを促進する)を企画・開発中である。
 
セールスプロモーションの強化
顧客の課題解決及び提案強化により大規模ユーザの取り込みを図るべく、IT技術者の同行営業を増やしている(顧客が抱える様々な課題の解決策を面談の際にタイムリーに提案)。また、小口ユーザの取り込みに向け、IT技術者が集まるイベントや勉強会への参加、或いは同社サービスに関するセミナーの開催等、IT技術者とユーザの接点機会の拡大に取組んでいる。
 
 
今後の注目点
首都圏内はデータセンターの新設・増設が相次いでおり、同社の都内データセンターは想定以上に苦戦を強いられている。一方、石狩データセンターは、BCP・DR(事業継続計画・災害対策)の観点からの需要とクラウドの浸透により、ホスティングの好調を維持している。同社の上期実績を期初予想と比較すると、都内データセンターの想定以上の苦戦で売上が予想を下回ったものの、増収効果で石狩データセンターの収益改善が想定以上に進み、営業利益は予想を上回った。
同社は、都内データセンターにおいて、通信レスポンスを維持しつつIT資産の保有から利用へとシフトするユーザニーズを取り込むと共に、DRの面で優位性を有する石狩データセンターをアピールしていく考え(総務省は首都圏外にサーバを移す企業に対して優遇税制を適用している)。また、サポート、運用保守の代行、セキュリティ診断等、付加価値の高いオプションサービスの提供を強化する事で客単価を引き上げ、全社的な収益力の底上げも図っていく。下期は若干ハードルが高いようにも感じるが、取り組みの成果に期待したい。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。
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