ブリッジレポート
(2435) 株式会社シダー

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ブリッジレポート:(2435)シダー vol.25

(2435:JASDAQ) シダー 企業HP
山崎 嘉忠 社長
山崎 嘉忠 社長

【ブリッジレポート vol.25】2014年3月期上期業績レポート
取材概要「13/3期は4月の介護報酬改定の影響や新規開設に伴う初期費用負担もあって大幅な経常減益となった。しかし、14/3期は前期から進めている介護・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年1月14日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社シダー
社長
山崎 嘉忠
所在地
北九州市小倉北区大畠 1-7-19
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 10,097 198 1 -13
2012年3月 9,614 421 430 224
2011年3月 8,746 225 295 158
2010年3月 8,332 408 419 237
2009年3月 7,075 149 100 46
2008年3月 5,921 56 42 16
2007年3月 4,519 -403 -406 -247
2006年3月 4,251 309 297 166
2005年3月 3,649 352 288 164
2004年3月 3,125 122 97 41
2003年3月 2,352 111 104 30
2002年3月 1,594 17 21 11
2001年3月 281 -20 -21 -14
株式情報(1/7現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
223円 11,475,914株 2,559百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
4.0円 1.8% 14.99円 14.9倍 125.84円 1.8倍
※株価は1/7終値。発行済株式数は、直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除し株式分割を反映。ROEは前期末実績。
 
シダーの2014年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
デイサービス及び有料老人ホーム「ラ・ナシカ」を中心とした介護サービスを、本社のある福岡県を中心に全国展開。リハビリテーションに重点を置き、より人間らしく生きるための生活支援を行う事を経営方針としており、総勢122名を数えるリハビリ職員の規模は介護サービス事業者の中では出色。
 
 
同社の介護事業の考え方
週1回のデイサービストレーニング(リハビリ)のみの活動だけでは、体を維持する又は改善するには足りないと考えている。日常生活の中で活動量を上げる為、仲間作りや趣味作り、自身で運動習慣を身につけてもらうためのサービスを提供する。
 
【事業セグメント】
事業は、同社の施設の来場者にサービスを提供するデイサービス事業、有料老人ホーム等の施設の入居者を対象にサービスを提供する施設サービス事業、及び利用者の自宅を訪問して日常生活訓練や機能訓練等を行うリハビリサービスや日常生活の手伝いを行うホームヘルパーサービス等の介護サービスを提供する在宅サービス事業に分かれる。13/3期の売上構成比は、それぞれ31.5%、60.8%、7.7%。2013年11月30日現在の拠点数は次の通り。
 
 
【沿革】
 
前身は医療機器の販売会社だった(株)福岡メディカル販売。2000年10月に社会医療法人池友会系列の医療機関でリハビリ業務に従事していた山崎嘉忠氏(現社長)等が中心となり(株)シダーに商号を変更し介護事業へ参入。01年1月にデイサービス施設4施設を開設した。デイサービス事業が順調に拡大し、05年3月にジャスダック証券取引所に上場、同年9月には有料老人ホーム事業(現在の、施設サービス事業)に参入した。
06/3期、07/3期と有料老人ホーム事業の先行投資(新施設の立ち上げ費用)が利益を圧迫したものの、08/3期以降は施設の累積効果(ストック効果による事業規模の拡大)で、新規開設負担を吸収して利益を増やせる体制が整った。11/3期は新卒40名の入社による人員の増加や新規開設施設の増加(3事業合計で10/3期:3施設→11/3期:5施設)、更には既存施設のリニューアルもあり利益が減少したものの、12/3期は既存施設の新規利用者獲得が順調に進んだ事に加え、施設オペレーションの効率化で増益に転じた。しかし、13/3期は12年に行われた介護保険法改定の影響を受けた。同社の場合は、デイサービス事業における介護報酬改定の影響が大きく減益となった。14/3期は、その影響を解消する1年となっている。
 
【事業戦略 -地域のリハビリセンターを目指して-】
同社はデイサービスセンターや有料老人ホームにおいて近隣の一般・健康な高齢者向け健康教室等を開催し、地域の病院、ケアマネージャー、老人会等とネットワークを構築すると共に地域に溶け込む事で、施設の稼働率や入居率の向上を図っていく考え。また、このネットワークを活用して訪問介護ステーションやリハビリステーション(在宅サービス事業)とのシナジーも高めていく。
その成功例ともいえるのが山梨県甲府市での取組み。09年5月にラ・ナシカ甲府を開設、10年には甲府デイサービスを開設した。好評を得て、13年には甲府南デイサービスを開設することとなった。訪問看護ST準備室を甲府デイサービスセンター内に設置する計画もある。
尚、06年度の介護保険の改定の際に、「訪問看護計画において、理学療法士等の訪問が保健士又は看護師による訪問の回数を上回るような設定がなされることは適切ではない」との規制が盛り込まれたため、在宅リハビリには大きな逆風が吹いた。この影響で同社も在宅サービス事業の積極的な活動を控えたが、09年度の改定でこの規制が緩和されたため積極的に在宅リハビリのニーズに応える事が可能となった。
また、施設を集積させる事は3事業のシナジーを高めるだけでなく、理学士等の職員が地元で安定して働く事のできる環境作りにもつながる。
 
 
デイサービス施設では80人規模施設の大型デイサービス中心に展開している。トレーニングルーム・カラオケ・シアター・大浴場・マッサージ・喫煙ルームなど各個人にあった活動を楽しめるゆとりある空間造りが可能となる。
 
 
リハビリテーションに軸足を置いた施設運営が同社の特色。午前、午後にそれぞれ上級・中級・初心者にコース分けされた80分の個別リハビリテーションを行う。
 
施設サービスでは、1階フロアではスタッフがデイサービスと同等のサービスやリハビリテーションを提供、居室では自宅に居るのと同様に訪問リハビリ訪問看護・ヘルパーのサービスを提供する。10月31日現在の総居室数は1,813室、入居者数は1,557人。
 
 
【業界を取り巻く今後の動向】
通所介護サービスには機能訓練型、レスパイト型、認知症型、お泊り型等多様なサービスがある。こういった中、小規模事業所については、介護報酬単価が高く設定されており、参入事業所数の増加が顕著な状況。通所介護事業所が06年4月の19,075事業所から13年3月には35,453事業所へ83%増加したが、そのうち小規模型事業所については7,075事業所から17,963事業所へ153%増加した。小規模型通所介護の増加にあわせ、今後は地域との連携や運営の透明性確保の為「地域密着型通所介護」等へ移行される見通し(総量規制)。
また、要支援者の訪問介護、通所介護の総合事業(介護予防・生活支援サービス事業)への移行が見込まれる。
これらの法や制度改正は同社の業績に大きな影響を与えることはなさそうだが、引き続き市町村等と情報を共有していく。
 
 
【損保ジャパンとの資本・業務提携】
昨年9月20日に高齢社会戦略1号投資事業有限責任組合(出資者99.25%株式会社損害保険ジャパン)により公開買付けが行われた。同組合(実質損保ジャパン)はシダーの34%を保有する筆頭株主となる。損保ジャパンと業務提携を結び、損保ジャパンの数多くある支店や代理店を活用し、入居者や利用者を紹介するというメリットが生じることとなる。
 
 
2014年3月期上期決算
 
 
3.9%の増収、経常利益は黒字転換
売上高は前年同期比3.9%増の5,246百万円。主に昨年度に新規開設した施設で、新規利用者の獲得と充実したサービスを提供することで、施設稼働率の向上に努めた。利益面では効率的な施設運営と経費削減に取り組み利益率の改善に注力した。この結果、営業利益は前年同期比5倍を超える304百万円と大きく改善した。前年同期赤字であった経常損益、純損益は黒字転換した。
 
 
デイサービス事業
売上高は前年同期比4.2%増の1,672百万円、セグメント利益は同120.3%増の247百万円。一部の事業所においては同業他社の参入等により、利用者数が計画を下回る状況となった。しかし、サービス提供時間について、介護報酬の改定を受けて従前は「5時間以上7時間未満」としていたものを、今期は「7時間以上9時間未満」を採用したことが功を奏した。より多くの利用者の要望に対応できるようサービスの内容と質の向上にも努めた。労務費を中心にコスト管理を徹底し大幅な利益改善となった。
 
施設サービス事業
売上高は前年同期比4.9%増の3,196百万円、セグメント利益は同51.8%増の360百万円。既存の有料老人ホームの入居者獲得に注力し、入居率の向上に努めた。9月30日現在の、新規施設を含む全ての居室数に対しての入居率は88.3%。初期費用がなくなったこともあり大幅な増益となった。
 
在宅サービス事業
売上高は前年同期比4.5%減の377百万円、セグメント損失は0百万円(前年同期は3百万円の損失)。利益率の改善のため人員配置や業務手順の見直し等、効率的な運営に取り組むことに注力した。
 
 
上期末の総資産は前期末比533百万円増の13,505百万円。負債については同407百万円増の12,061百万円となった。株主資本は同125百万円増加して1,444百万円となった。自己資本比率は前期末比0.5ポイント改善し10.7%となった。
 
 
上期末の現金及び現金同等物の残高は前期末比148百万円増加し、871百万円となった。営業CFは300百万円の収入となった。収入要因として、税金等調整前四半期純利益210百万円、減価償却費213百万円、支出要因として売上債権の増加額92百万円があった。投資CFは509百万円の支出となった。支出要因として有形固定資産の取得による支出461百万円、無形固定資産の取得による支出33百万円、預り保証金の返還による支出27百万円があり、収入要因としては預り保証金の受入による収入28百万円があった。財務CFは358百万円の収入となった。収入要因として短期借入れによる収入815百万円、長期借入れによる収入830百万円、支出要因として短期借入金の返済による支出935百万円、長期借入金の返済による支出316百万円、リース債務の返済による支出34百万円があった。
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比6.9%の増収、経常減益は大幅増の予想
通期予想に修正はなく売上高は前期比6.9%増、経常利益は前期の1百万円から312百万円へ大幅に増加する見通し。デイサービス事業では甲府市に2施設目となる甲府南デイサービスを11月1日にオープンした。施設サービス事業では有料老人ホームを10月1日に千葉県佐倉市に「ラ・ナシカ さくら」をオープンしたほか、来年1月にはさいたま市にもオープンする計画。コンプライアンスを重視した施設運営と内部管理体制の整備・強化を進めるとともに、社員の教育・研修に注力し、顧客満足度の向上に取り組む。新規開設した施設や既存施設の利用者獲得、デイサービスの時間区分の見直しにより増収を見込む。利益面では増収効果と効率的な経費コントロールにより大幅増益となる見通し。配当は5円の期末配当から4円の期末配当(12月31日を基準日として1株につき2株の割合をもって株式分割を行うため、実質8円)に修正した。
 
(2)今後の事業展開
施設サービスでは、さいたま市の「ラ・ナシカ さいたま」の他、静岡市、静岡県島田市、長野県松本市で14年の開設を計画する。15/3期、16/3期も3施設の開設を見込む。デイサービスでも今期中に1施設の他、15/3期、16/3期にも1施設の開設を計画する。
 
 
今後の注目点
13/3期は4月の介護報酬改定の影響や新規開設に伴う初期費用負担もあって大幅な経常減益となった。しかし、14/3期は前期から進めている介護報酬改定への対応が業績に反映しており、大幅増益を目指す通期予想の達成も見えてきた。毎年10億円程度の増収を視野に入れながらの事業展開が、今後も着実に進展すると思われる。気掛かりなのは、13/3期のように関係法令の改正や法解釈、或いは実務的な取扱いの変更といった、経営努力の及ばない要因の影響を受けることである。だが、同社は市町村等と情報共有することによって迅速な対応を図っていることも評価できるだろう。今般の増益はそれを示したものといえる。損保ジャパンとの提携の効果も徐々に収益貢献すると思われる。介護報酬改定の影響を受けた後のV字回復は、始まったばかりである。