ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.40

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.40】2014年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「通期予想に変更はなかったが、進捗率は、売上高が75.2%、営業利益が24.7%、経常利益が52.6%と、利益面での遅れが目立つ。ただ、この・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年3月18日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 38,424 -3,608 -3,465 -6,532
2012年3月 60,088 4,124 3,287 1,715
2011年3月 57,880 6,931 6,290 4,483
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(3/7現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
605円 30,810,278株 18,640百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 0.8% 32.46円 18.6倍 1,113.27円 0.5倍
※株価は3/7終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2014年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告いたします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
消耗品を含めた半導体・FPD製造装置部品、冷熱素子「サーモモジュール」を核とする電子デバイス、及び太陽電池関連製品等の製造・販売及び関連する各種技術サービスを手掛けている。

1980年、NASAのスペースプログラムから生まれた磁性流体を応用した真空技術製品や冷熱素子として用途が広がっているサーモモジュール等、独自技術を核にした企業として誕生。創業から30年余りにわたる様々な技術は、エレクトロニクス、自動車、次世代エネルギー等、様々な産業分野で応用されている。また、トランスナショナルカンパニーとして、日本、欧米、中国、アジアに展開し、それぞれの国・地域の強みを活かした経営も同社の特徴だ。
 
【事業セグメント】
事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の装置関連事業、サーモモジュールが中心の電子デバイス事業、及びシリコン結晶製造装置や装置に使われる坩堝等の太陽電池関連事業に分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ49.1%、11.9%、32.1%、及びソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等の報告セグメントに含まれないその他6.9%。尚、シリコン結晶製造装置には、装置関連事業の主力製品である真空シールが主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
 
 
装置関連事業
同社が最も力を入れている事業であり、エンジニアリングサービスをトータルに提供。装置部品、消耗品、スペアパーツの生産に加え、装置洗浄(中国でシェア50%)も手掛ける。主力製品で世界シェアNo.1の真空シールは、製造装置内部へのガスやチリ等の侵入を防ぎつつ回転運動を装置内部に伝える機能部品で、半導体、FPD、LED、太陽電池等の製造装置に不可欠。また、その内部には創業からのコア技術である磁性流体(磁石に反応する液体)シールが使われている。ただ、いずれの分野も設備投資の波が大きいため、比較的需要が安定した搬送用機器や精密ロボット等、一般産業分野向けの営業を強化しており、真空シールを組み込んだ真空チャンバーやゲートバルブの受託製造にも力を入れている。
一方、石英製品とセラミックス製品は共に半導体の製造工程に欠かせない消耗品。石英製品は半導体の製造工程に不可欠な高温作業に耐え、半導体を活性ガスとの化学変化から守る高純度のシリカガラス製品。同社はLEDメーカー向けで高いシェアを有する。太陽電池向けで高いシェアを有する石英坩堝(インゴットの引き上げに使われる)の技術を活かし、半導体向け高純度坩堝を育成中である。また、材料や加工技術を核とするセラミックス製品は国内外の半導体製造装置メーカーを顧客とし、半導体検査治具用マシナブルセラッミックスがフラッシュメモリ向けで伸びている。
この他、小口径用ウェーハ加工が月産30万枚規模に達する等、既に強固な事業基盤を有するディスクリート半導体用ウェーハ加工についても、更なる事業拡大を目指している。
 
電子デバイス事業
事業の核となっているのは対象物を瞬時に高い精度で温めたり、冷やしたりできる冷熱素子「サーモモジュール」である。サーモモジュールは自動車用温調シートを中心に、遺伝子検査装置、光通信、家電製品等、利用範囲は広い。高性能材料を使用した新製品の開発や自動化ラインの導入によるコスト削減と品質向上により新規の需要開拓や更なる用途拡大に取り組んでいる。また、釣り具のリール(リール内部の防水用途)や4Kテレビのスピーカー向け等で新たな用途開発が進んでいる磁性流体の販売も当セグメントに含まれる。
 
太陽電池関連事業
2005年に太陽電池関連事業に参入し、シリコン結晶製造装置、石英坩堝等の消耗品、及びシリコン製品等の製造販売を手掛けてきた。現在は市場ニーズを踏まえて、太陽電池の基板となるシリコン結晶のインゴットとウェーハの受託生産や、インゴットとの製造時に使用される単結晶シリコン用坩堝や多結晶シリコン用角層坩堝(共に石英の加工技術がベースになっている)の製造・販売が中心。消耗品である坩堝については、多様なラインナップを揃えると共にカスタマイズにも対応し、高い市場シェアを有する。
 
【新たな取り組み】
環境や新エネルギーへの貢献を念頭に、これまでに培ってきた技術力、生産力、販売力を水平展開し様々な製品の研究開発に取り組んでいる。排出ガス対策技術として注目されているジェットバルブ、高純度単結晶シリコンインゴットの引き上げに不可欠な高純度坩堝、或いはサーモモジュールを利用した廃熱発電等の研究開発がその一例。いずれも、豊かな生活を実現するために必要な環境保全・省エネや技術革新につながるものであり、かつ、これまでに同社が蓄積してきた技術や現在の生産設備を活かせるものだ。
 
 
 
2014年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比8.3%の増収、2億47百万円の営業利益(前年同期は26億47百万円の損失)
売上高は前年同期比8.3%増の315億85百万円。シリコン結晶製造装置の苦戦や太陽電池用シリコン製品及び消耗品の価格が軟調に推移した太陽電池関連事業の売上が減少したものの、自動車温調シート向けを中心にサーモモジュールが伸びた電子デバイス事業の売上が同42.1%増加。製品全般に受注が回復傾向にある装置関連事業の売上も同9.6%増加した。

構造改革の進展で収益性も徐々に正常化しつつあり、営業損益は前年同期の26億47百万円の損失から2億47百万円の利益に転換。評価損等の一巡で原価率が5.5ポイント改善する中、貸倒引当金の減少もあり、販管費が同8.5%減少した。事業構造改革費用4億43百万円を営業外費用に計上したものの、為替差益10億67百万円を営業外収益に計上したため営業外損益が改善。投資有価証券売却益6億45百万円(平成25年7月)を特別利益に計上した事等で四半期純利益は5億60百万円となった。
 
 
装置関連事業 真空シール、石英製品、セラミックス製品、シリコンウェーハ加工等
売上高155億40百万円(前年同期比9.6%増)、セグメント利益1億41百万円(同33.1%減)。製品全般に受注が回復傾向にあり、第3四半期(10-12月)の3か月間では前年同期比14.5%の増収(上期は前年同期比7.1%の増収)。半導体投資の回復や中国進出企業からの受託生産等で真空シールが回復傾向にあり、石英製品やセラミックス製品は、価格面で厳しさが残るものの、スマートフォン用メモリやロジック系の設備稼働率の上昇で数量ベースで増加。シリコンウェーハ加工も総じて底堅く推移した。
 
太陽電池関連事業 シリコン結晶製造装置、シリコン製品、石英坩堝、角槽等
売上高90億44百万円(前年同期比6.6%減)、セグメント損失4億05百万円(前年同期は30億29百万円の損失)。新規のシリコン結晶製造装置の需要が無かったため売上が減少したものの、汎用装置やメンテナンス部品が底堅く推移。消耗品の石英坩堝や角槽も、価格への波及はこれからだが、需要は堅調。OEM(受託生産)に特化したシリコン製品は見込み客を中心に引き合いが増加した。利益面では、売上の減少に加え、たな卸資産評価損等の計上で第3四半期(10-12月)の落ち込みが一時的に大きくなった。
 
電子デバイス事業 サーモモジュール、磁性流体等
売上高46億89百万円(前年同期比42.1%増)、セグメント利益4億91百万円(同156.7%増)。米国での自動車販売の好調で主力の自動車温調シート向けサーモモジュールが伸長。この他、検査装置、バイオ関連機器向けが底堅く推移する中、美容家電、浄水器サーバー、エアコン向けなど民生分野が好調に推移した。また、需要旺盛なパワー半導体向けDCB(Direct Copper Bonded)基板の量産を開始した。

尚、DCB基板とはアルミナセラミックス基板に銅回路版をDCB(Direct Copper Bond)法で接合した放熱用絶縁基板。また、DCB法とはセラミックス基板上に銅回路版を共晶反応によって接合する方法(同社Webサイトより)。DCB基板は、銅の持つ高熱伝導性・高電気導電性とセラミック基板による高絶縁性を兼ね備え、大電流に対応可能な高絶縁耐圧の基板として最適。また、セラミック基板に銅回路板を直接接合(DCB)するため、熱抵抗となる接合層がない事もDCB基板の特徴。同社におけるDCB法の技術開発の歴史は、サーモモジュールの開発と軌を一にする。
 
 
前年同期比24.8%の増収、88百万円の営業利益(前年同期は4億93百万円の損失)
受注の回復を反映して各セグメントの売上が伸び、電子デバイス事業の売上が前年同期比70.9%増加した他、装置関連事業、太陽電池関連事業も二桁の増収。太陽電池関連事業での棚卸資産評価損の計上等で営業利益は88百万円と第2四半期(2億17百万円)比で減益となったものの、13/3期第4四半期を底とする四半期ベースでの回復基調を維持した。
 
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末に比べて52億04百万円増の715億48百万円。借方では、円高修正による海外資産の評価額の上昇や除却及び評価減等で前期に大きく減少した反動で、たな卸資産が増加。円高修正や中国での設備投資等で固定資産も増加した。一方、貸方では、為替換算調整勘定を中心に純資産が増加。自己資本比率は47.9%と前期末に比べて3.0ポイント上昇した。

尚、キャッシュ・フローが潤沢な事もあり、有利子負債は188億47百万円と前期末に比べて4億77百万円の増加にとどまった。機動的な事業資金調達と流動性補完を目的に、14年2月末に20億円のシンジケート方式による短期コミットメントラインを設定している。
 
 
営業利益は2億47百万円にとどまったものの、キャッシュを稼ぐ力は強く、営業CFは約34億円を確保。上海子会社を中心に、杭州子会社、銀川子会社での設備投資や関係会社への貸し付け等による30億円強の投資CFのマイナスを吸収して、3億28百万円のフリーCFを確保した。
 
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
通期予想に変更はなく、売上高420億円(前期比9.3%増)、営業利益10億円(前期36億08百万円の損失)
売上高の前提は、装置関連事業223億05百万円(前期比18.2%増)、電子デバイス事業52億82百万円(同15.8%増)、太陽電池関連事業223億05百万円(同9.5%減)。シリコン結晶製造装置の苦戦と価格面での弱さから太陽電池関連事業で減収を見込むものの、受注が回復傾向にある装置関連事業の増収ピッチが期末にかけて加速。自動車温調シート向けサーモモジュールを中心に電子デバイス事業も好調を維持するとみている。

配当は1株当たり5円の期末配当を予定している。同社は将来の事業展開に備えた内部留保の充実で企業体質の強化を図りつつ、株主に対する安定的な利益還元を継続していく考え。
 
 
 
今後の注目点
通期予想に変更はなかったが、進捗率は、売上高が75.2%、営業利益が24.7%、経常利益が52.6%と、利益面での遅れが目立つ。ただ、この要因は第3四半期に太陽電池関連事業で計上した、たな卸資産評価損が要因と思われ、言い換えると、一過性のもの。落ち着きを取り戻しつつある太陽電池関連だが、必ずしも楽観できない状況である事を認識させられたものの、来期以降を見据えて資産の健全化を優先したマネジメントは評価できる。(株)インベストメントブリッジブリッジでは、第3四半期決算を踏まえて、通期の着地を売上高435億円、営業利益8億円程度と考える。しかし、第3四半期の利益の落ち込みが一過性であるとの考えから、来15/3期の業績を売上高470億円、営業利益14億円、経常利益10億円と予想する。