ブリッジレポート
(3778:東証マザーズ) さくらインターネット 企業HP
田中 邦裕 社長
田中 邦裕 社長

【ブリッジレポート vol.5】2014年3月期業績レポート
取材概要「同社のビジネスは、本来、固定費(先行投資)負担が重いものの、限界利益率の高い装置産業的なビジネスだ。また、契約を積み重ねる事で安定した収益・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年5月20日掲載
企業基本情報
企業名
さくらインターネット株式会社
社長
田中 邦裕
所在地
大阪市中央区南本町1-8-14 堺筋本町ビル
事業内容
東阪でデータセンター運営。業界大手。双日が連結子会社化狙いTOB実施、上場は維持方針
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 10,045 736 633 353
2013年3月 9,482 867 812 479
2012年3月 9,164 873 808 556
2011年3月 8,584 1,225 1,194 572
2010年3月 7,812 748 723 567
2009年3月 7,106 392 349 374
2008年3月 6,478 85 -25 -632
2007年3月 4,703 -271 -346 -493
2006年3月 2,758 210 197 105
2005年3月 1,930 133 132 70
株式情報(4/28現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
572円 8,677,489株 4,964百万円 10.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 0.9% 38.03円 15.0倍 401.53円 1.4倍
※株価は4/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
さくらインターネットの2014年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京(西新宿、東新宿、代官山:いずれもフロア単位の賃借)、大阪(堂島:フロア単位の賃借)、北海道(石狩:土地建物保有)の3エリアでデータセンターを運営し、サーバの設置スペースと電源やネットワーク回線等を提供するハウジングサービスとサーバ環境(コンピュータリソース)をインターネット上で提供するホスティングサービスを手掛けている。多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存するのに対して、同社はインフラを自社で保有する事で高収益を追求しており(価格競争力の源泉となる)、このインフラをハウジングサービスの提供にも活用する事で稼働率を上げ固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。
 
【事業概要】
事業は、コロケーションサービス(以下、サービスを略)、ホスティング、及びこれら業務に付帯するドメイン取得やサーバ構築コンサルティング等のその他サービスに分かれ、14/3期の売上構成比は、それぞれ29.9%、59.9%、10.2%。コロケーションはハウジング(ラック貸し:1つのラックを1顧客が占有)が中心だが、石狩データセンターにおいて大規模ユーザ向けにスペースを貸す大規模ハウジングも行っている。同センターではリモートハウジングも提供しており、物理作業の全てを同社が代行する事で遠隔地にあるハンデをカバーしている。一方、ホスティングは、物理サーバを貸し出す物理ホスティング(専用サーバとレンタルサーバの2つのサービスを提供)と、物理サーバ上に複数の仮想マシン(VM)を作成し、VM単位でサービスを提供する仮想ホスティング(クラウドとVPSの2つのサービスを提供)に分かれる。
 
 
物理ホスティングは1台の物理サーバを1顧客が占有する専用サーバ(「さくらの専用サーバ」)と1台の物理サーバを主に複数の顧客で利用するレンタルサーバに分かれる。専用サーバはサーバの設定や利用するソフトウェア等で自由度が高いのに対して、レンタルサーバは専用サーバと比べて制約があるものの、ユーザはメンテナンス等を行う必要がない。また、レンタルサーバは、個人利用の多い「さくらのレンタルサーバ」と中小企業・SOHO向けの「さくらのマネージドサーバ」に分かれる。
一方、仮想ホスティングは、仮想化技術を用いる事でレンタルサーバ並みの安価な料金で専用サーバ並みの自由度の高さを実現したVPS(バーチャル・プライベート・サーバ)サービス(同「さくらのVPS」)とIaaS型パブリッククラウド(同「さくらのクラウド」)に分かれる。「さくらのクラウド」は「さくらのVPS」では対応できない従量課金や柔軟なリソース増減が可能であり、一方、「さくらのVPS」は「さくらのクラウド」のような柔軟な対応はできないが、コスト面でメリットがある。尚、同社においては、「さくらのクラウド」は「さくらのVPS」に比べて投資負担は重いが、単価は高い。
 
【特徴と強み】
同社の特徴及び強みとして、国内有数規模のITインフラ基盤、開発から運用・サポートに至る一貫体制(全て自社で対応)、及び国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー、の3点を挙げる事ができる。
 
国内有数規模のITインフラ基盤
国内最大級の規模となるバックボーンネットワーク(ネットワークの基幹部分)は、日本国内の代表的なIX(複数のインターネットサービスプロバイダのネットワークや学術ネットワーク等を相互接続する接続ポイント)や数多くの大手ISP(インターネットサービスプロバイダー)と東京・大阪・北海道間で接続し、高い可用性(システムの壊れにくさ)と圧倒的なトラフィック配信能力を実現している。また、国内事業者では最大規模となる通信回線容量を確保し、対外接続の総計はデータセンター専業事業者としてトップクラスの284Gbps。各データセンター間もギガビット以上の大容量で接続されている。
 
開発から運用・サポートに至る一貫体制(自社運営のデータセンターとバリューチェーンの内製化)
既に説明した通り、多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存しているのに対して、同社はインフラを自社で保有し、かつ、このインフラをハウジングにも活用する事で稼働率を上げ、固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。また、多様なニーズに柔軟に対応するべく、自社で開発・運営・サポート体制を敷いている(サービス提供に係る全ての工程を自社内で手掛けている)。各データセンターは無停電電源装置とエンジン発電機を備え、災害発生時には電源供給も可能。セキュリティについては、カードキー認証による開錠システムが導入されている。この他、躯体構造では、震度6強の地震にも耐える制震・耐震・免震構造を採用しており、データセンターに求められるファシリティ能力も高次元でクリアしている。
 
リスク分散された国内トップクラスの顧客基盤とブランドバリュー
同社は、「高品質かつコストパフォーマンスに優れたサービスを提供する」と言う経営理念の下、日本のインターネット創成期から、コストパフォーマンスに優れた汎用性の高いシンプルなサービスの提供と、スタートアップビジネスから大規模サイトの運営まで幅広い用途に対応できるサービスラインナップの拡充に取り組んできた。このため、高品質かつ低コストのデータセンター事業者としてITエンジニアへの認知度は高く、個人から法人まで幅広い層で利用されている(一部の大手顧客への依存度が高い同業者の多くとは異なり、小口顧客の構成比が高く、リスク分散が進んでいる)。
 
【小口顧客の売上構成比が高く、特定の業種に依存しない顧客構成】
同社の顧客構成は下表の通り。「料金別顧客構成」(14年3月末現在)からは、一部の大手顧客に依存しない、リスク分散された顧客構成が見て取れる(月額料金100万円未満が全体の67.4%)。コストパフォーマンスを武器にスタートアップ段階にある顧客の取り込みが順調で、月額100万円未満の顧客が順調に伸びている。さくらブランドの浸透と顧客エンゲージメントの強化を目的に実施している自社イベントの開催や外部イベントへの出展等のPR活動も成果をあげているようだ。ただ、顧客がステップアップしていく段階で他社へ乗り換えるケースが少なくない。このため、付加価値の高いオプションサービスや、上位サービスに手間なくアップグレードできるサービス体制の構築に努めると共に、人員を増強してリテンションのための営業を強化している。
 
 
「月額料金100万円以上の業種別顧客数」を見ると、システム関係の顧客が多い。浮き沈みの大きいゲーム・アプリでは優良顧客を抱えているため、価格条件は厳しいが安定している。優れた柔軟性と拡張性に加え、都市型データセンターでは実現困難な低価格を実現した石狩データセンターの稼働(11年11月)で、同社のポテンシャルが各段に高まった事から、双日グループと連携して官公庁や自治体、エンタープライズ(一般企業)市場の開拓に力を入れている。
 
 
中期経営計画(13/3期〜15/3期)と進捗状況
 
「ITインフラ」、「テクノロジー」、「サービス」、「セールス」の4分野を強化する事で新たな競争優位の確立を目指す中期経営計画が進行中である。目標とする経営指標として、売上成長率(対前期比) 10%以上、売上総利益率 30%以上、経常利益率 10%以上、の3項目を挙げている。
 
 
尚、売上高及び利益の定量目標については、ハウジングや専用サーバの苦戦で計画値に届かなかった14/3期の実績を踏まえて修正した。15/3期の目標は、売上高104億50百万円以上(当初の目標は125億円以上)、経常利益5億50百万円以上(同12億50百万円以上)。売上高の持続的成長のための基盤づくりとコストの最適化に取り組み、16/3期以降の成長軌道への回帰に向けた足場固めを行う。
 
 
【市場環境】
首都圏ではデータセンターの新設・増設ラッシュによりラック供給量が急増し(都内では12年の1年間で約1.1万ラック相当の延床面積が増加)、新規需要を一時的に上回った。加えて、新設されたデータセンターは、ハイスペックながら、価格競争力を有する。このため、サービス価格が大幅に下落している状態だが、東京23区内は大規模なデータセンターの新設が更に増える見込み。今後、老朽化する既存データセンターの統廃合が進むと見られている。
もっとも、BCP(事業継続計画)・DR(災害復旧)対策としての需要やクラウド需要は増加している。2011年の震災以降、データセンターを利用(外部施設の利用)する動きが広まり、これが東京のデータセンター需要につながっている。しかし、災害対策としては、IT資産の分散化が望ましく、総務省は首都圏外にサーバを移す企業に対して優遇税制を用意して支援している。このため、東京のサーバを、地方で受け入れられる環境を整備する事が、データセンター事業者の課題となっている。また、外部施設の利用や資産の分散化に際して、クラウドの利用が増えている事も昨今の特徴。調査会社IDC Japan では、13年に1,321億円だった国内のクラウドサービスが、17年には3,376億円に拡大するとみている。
 
【14/3期までの進捗状況】
ITインフラ データセンターの単位面積当たりの売上増と電力・通信コストの削減
石狩データセンター1号棟は満床に近い状態。このため、13年12月に2号棟でのサービスを開始した。2号棟の延べ床面積は1号棟と同じだが、ラック収容率・サーバ収容率を1号棟比で20%向上させ1棟当たりの収益性を高めた。また、石狩データセンターは、北海道の冷涼な外気を活用した外気冷房を採用する事で従来の空調に比べて40%消費電力が少ないが、電源ロスの少ない給電方式である直流給電方式の「HVDC給電システム」を導入する事で当初目標の約15%の電力削減を達成した。加えて、増加するデータ通信量に対応するべく回線帯域を拡大して単価の大幅削減も実現した。
 
テクノロジー 先進的なネットワーク技術の研究開発とデータセンターの省エネルギー化推進
新たなネットワーク技術の研究と実用化に向けた取り組みに着手した他、前述の通り次世代電源(直流電源)システムを商用環境で導入した。また、経済産業省の委託事業で、送電インフラとなる「高温超電導直流送電システム」構築のための技術研究組合に参画した(同社の他、住友電工、中部大学、千代田化工建設)。
 
サービス ワンストップで多様なサービスを利用できる環境の整備
サービスのプラットフォーム化の一環として、一部のサービス間接続を可能とし、更にコントロールパネルを統合するなど顧客の使い勝手を向上させた。各サービスにおいて、新プラン投入によるフルライン化と機能強化によるバリューアップを実現した。
 
 さくらのクラウド     : 時間課金導入
 さくらのレンタルサーバ  : サーバのリプレイス実施
 さくらのマネージドサーバ : 大容量プラン・高速プランに改定
 さくらの専用サーバ    : 高速処理プランの改定
 
セールス アウトバンドの営業強化とパートナーシップ制度の導入
ソリューション営業部隊による新規顧客の開拓、及び解約防止に向けた既存顧客のフォローアップ営業を強化した。また、顧客とのリレーションを強化するべく交流イベントを積極開催した他、販売機会を創出するべくパートナーシップ制度を導入した。
 
【今後の取り組み】
(1)課題と重点施策
課題は二つあり、一つは、高価格帯サービスの受注が低調に推移する中、大口解約の発生等で売上の伸びが鈍化している事。もう一つは、石狩データセンターの稼働スペース拡大やクラウド等の先行投資により、売上原価が継続的に上昇している事。前者については、サービスのプラットフォーム化推進、顧客ニーズの高い機能・サービスの提供、及びパートナーシップ強化による拡販、の3点を重点施策として掲げ、取り組みを進めている。また、後者については、プラットフォーム化を推進してサービスの企画・開発・運用を一気通貫にする事でコストの最適化と保有資産の有効活用(稼働率向上)につなげていく考え。
 
 
 
(2)プラットフォーム化とニーズの高い機能・サービスの提供
国内トップブランドとして認知されているVPS(ブランド名「さくらのVPS」)を入り口としたプラットフォーム化を進めていく考え。具体的には、「さくらのVPS」の吸引力を活かし顧客基盤の拡大を図り、顧客の成長段階に応じて、クラウド(同「さくらのクラウド」)、更には専用サーバ(同「さくらの専用サーバ」)やハウジング(同「リモートハウジング」)へ移行を促す事でリテンションを強化する。このため、上位サービスにストレスなく移行できる環境の整備や複数サービスをシームレスに活用できる環境の整備に取り組むと共に、新プランの投入や機能強化を継続的に実施していく。
 
「さくらのVPS」の新規サーバ需要の吸引力を活かし、顧客基盤を拡大 ⇒ 継続中
上位サービスにストレスなく移行できる環境の構築         ⇒ 一部完了
複数サービスをシームレスに活用できる環境の提供         ⇒ 継続中
新プランの投入や機能強化を継続的に実施             ⇒ 継続中
 
 
パートナーシップの強化
セールスパートナー、ソリューションパートナー、及びプロダクトパートナーとのパートナーシップを強化する。これまで同社がリーチできなかった顧客へのサービス提供や、ニーズに応えきれなかった顧客へのサービス提供が可能になる。
 
 
(3)施策の推進体制強化
「売上高の持続的な成長」と「コストの最適化」と言う課題克服に向けた施策を推進するため、一部の組織を機能軸からサービス軸に変更した。これまでは、企画、開発、運用の3部門が独立していたが、専用サーバ、VPS・クラウドのインフラサービスを提供する「ITインフラサービス」とレンタルサービスやクラウドの上位サービスを提供する「インターネットサービス」の2部門を新設し、その管理下に企画、開発、運用部門を設置した。
 
 
 
2014年3月期決算
 
 
前期比5.9%の増収ながら、同22.0%の経常減益
売上高は前期比5.9%増の100億45百万円。自由度の高さと優れたコストパフォーマンスが評価され、VPS・クラウドが大きく伸びた他、ユーザの取り込みが進んだレンタルサーバも増加した。ただ、ハウジングや専用サーバの苦戦で期初予想(110億円)に届かなかったため、減価償却費及びリース料の増加(2億12百万円増)やエンジニア・営業員・販促スタッフの増員に伴う労務費及び人件費の増加(1億86百万円増)等による営業費用の増加(6億93百万円増)を吸収できず、営業利益が7億36百万円と同15.0%減少。金融費用や減損損失の増加等で当期純利益は3億53百万円と同26.2%減少した。
尚、減価償却費及びリース料の増加は、主に13年12月の石狩データセンター2号棟の稼働によるもの。必要な設備はリースで調達している。
 
 
 
ハウジングサービスは東京での大口案件の解約や大阪での稼働率低下が響き前期比3.5%の減収。旧サービスから新サービスへの移行期にある専用サーバも、大型案件の複数受注等で新サービスの売上が増加したものの、旧サービスの落ち込みをカバーできず同8.0%の減収。一方、自由度の高さと優れたコストパフォーマンスが評価され、VPS・クラウドの売上が同67.4%増と大きく伸びた他、プラン改定や機能強化に加え、初期費用無料キャンペーン効果の顕在化もあり、レンタルサーバの売上も同12.2%増加。この他、ハウジングサービスの新規顧客に対して大口の機器販売が発生した事やドメイン取得サービスの好調で、その他サービスが同20.3%増加した。
 
 
四半期ベースで緩やかな増収が続いていたが、「さくらのVPS」による新規サーバ需要の取り込みが進む中、サービスのプラットフォーム化の一環として一部のサービス間接続を可能にした事や、 コントロールパネルを統合するなど顧客の使い勝手を向上させた事、更には、新プラン投入によるフルライン化と機能強化によるバリューアップ等、取り組みの成果が徐々に現れてきた。
14/3期第3四半期(10-12月)の前四半期比大幅増収は大口の機器販売64百万円(一時的な要因)が発生したためだが(機器販売には利益を乗せていないため、営業利益は同減益)、第4四半期(1-3月)は一時的な要因(大口の機器販売)が無くなった影響をVPS・クラウドを中心にしたサービス売上で吸収して前四半期比増収。石狩データセンター2号棟にかかる減価償却費が第3四半期に比べて46百万円増加したものの、機器販売に係る原価が49百万円減少した事等で売上原価が同12百万円減少。広告宣伝費の減少(19百万円減)等で販管費も同30百万円減少したため、前四半期比で営業利益が47.4%増加した。
 
 
VPS・クラウドは前四半期比で二けた成長が続いている。第4四半期のサービス別動向は、ハウジングが都内データセンターでの解約(20百万円/月の契約が9月で終了)の影響を新規受注でカバーして、ほぼ第3四半期並みの売上を確保。専用サーバも旧サービスの解約の影響を新サービスで吸収。初期費用無料キャンペーン等でユーザの取り込が進む一方、解約に一巡感が出てきたレンタルサーバの売上も増加。一方、その他は、第3四半期に大口の機器販売があった反動で売上が減少した。
 
 
 
期末の総資産は前期末に比べて13億52百万円増の138億65百万円。石狩データセンターの第2号棟の稼働に加え、東京及び大阪の各データセンターにおいても設備強化とサービス機材の調達を行った結果、借方において建物及びリース資産が増加し、貸方においてリース債務が増加した(リース債務は、流動負債・固定負債の合計で20億26百万円増加)。
 
 
営業CFは利益の減少と税金費用の増加(△1億59百万円→△3億67百万円)等で前期に比べて減少したものの、17億40百万円を確保した。ただ、石狩データセンター2号棟関連の投資で投資CFのマイナス幅が拡大したため、フリーCFは17億30百万円のマイナス。必要資金を短期借入金の積み増しとセール・アンド・リースバックで賄った。
 
 
石狩データセンターの概況
石狩データセンターは、データセンター棟8棟分の敷地を有し、現在、2棟(1号棟、2号棟)が竣工している。1号棟は500ラックの収納が可能で、うち250ラック相当のスペースを大規模ハウジング案件として長期契約を結んでおり、残りの250ラックは同社のホスティング及びリモートハウジングの提供スペースとして使用している。営業開始は11年11月だが、ラック当たりの売上高が大きいクラウド系サービスの好調に加え、寒冷地にある強みでサーバの冷却コストを低く抑える事が出来る事や等、電力効率に優れる事もあり、1年半後の2013年4月に黒字に転換した。14年3月末現在、供給スペースのラック稼働率は89.3%に達している(データセンターとしては高い稼働率)。

一方、13年12月に稼働した2号棟は1号棟と同じ床面積だが、機器の小型化と集積技術の向上で600ラックと収容効率を20%向上させた。現在、ホスティング(120ラック)及びリモートハウジング(120ラック)の提供スペースとして240ラック分を確保しており、残り360ラック分を倉庫として使用中。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比4.0%の増収、同13.2%の経常減益予想
ITインフラのアウトソーシングに加え、BCP・DR需要の高まりやクラウド等の新たなサービスの浸透が追い風となるものの、首都圏データセンターの新設・増設ラッシュを背景とした価格競争の激化が引き続き予想される。このため、同社は売上高の持続的成長とコストの最適化を念頭に、収益性の高いホスティングサービスの強化、顧客ニーズの高い高付加価値サービスの企画・開発及びエンドユーザ数の拡大のためのパートナーとのセールスプロモーション強化等に取り組んでいく考え。

売上高は前期比4.0%増の104億50百万円。ハウジング等の見通しが慎重なものの、VPS・クラウドの好調が続く。ただ、前期の投資に伴う減価償却費・リース料及び労務費・人件費の増加に加え、料金引き上げに伴う電力費の増加やアウトバンドの営業活動強化に伴う広告宣伝費の増加等が負担となり、営業利益が6億90百万円と同6.4%減少する見込み。金融費用の増加で経常利益は5億50百万円と同13.2%の減少が見込まれる。

配当は前期と同額の1株当たり期末5円を予定している(予想配当性向13.1%)。
 
 
 
今後の注目点
同社のビジネスは、本来、固定費(先行投資)負担が重いものの、限界利益率の高い装置産業的なビジネスだ。また、契約を積み重ねる事で安定した収益が期待でき、かつ収益性も高まっていくストック型ビジネスでもある。こうした観点から改めで現状を見てみると、国内トップブランドとして認知されている「VPSサービス」によってスタートアップ企業等の取り込みが進んでおり、ストック型ビジネスの入り口は順調だが、高価格帯サービスの受注が低調に推移する中、大口解約の発生もあり、ストックの積み上がりが順調とは言えない。また、石狩データセンターの稼働スペース拡大やクラウドサービス等の先行投資で固定費が継続的に増加しているため、損益分岐点も継続的に上昇しており、限界利益の増加も十分に享受できていない。
これまでは、インバウンドの営業を基本とし、リテンションのためのフォロー等を行っていなかったため、VPSの顧客が事業拡大に伴いクラウド等へステップアップする際等、他社のサービスに乗り換える事が多かった。また、受注に先立ってスペースを確保する必要があるハウジングは大規模な先行投資が必要なため、継続的な売上原価の上昇要因になっていた。加えて、単にスペースを貸すだけでは、差別化や高付加価値化も難しかった。
しかし、サービスのプラットフォーム化が進めば、上位サービスへの移行が容易になり、また、サービス間接続も可能になるため、顧客のステップアップニーズを取り込みやすくなる。また、新プラン投入によるフルライン化と機能強化が進めば、バリューアップにつながる。更に、パートナーとWin・Winの関係を構築する事で営業力を強化でき、客層も広がる。施策として掲げている「サービスのプラットフォーム化推進」、「顧客ニーズの高い機能・サービスの提供」、及び「パートナーシップ強化による拡販」の進捗に期待したい。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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