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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.19

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.19】2014年6月期第3四半期業績レポート
取材概要「カードビジネスのフロント業務の事業環境は良好だ。例えば、従来、提携カードを発行していたが、カード会社に依存し主体的に対応していなかった・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年5月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役社長
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年6月 5,870 -677 -587 -349
2012年6月 5,241 131 154 270
2011年6月 4,762 321 341 129
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(5/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
252円 26,340,000株 6,638百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 2.0% 3.42円 73.7倍 166.12円 1.5倍
※株価は5/13終値。
 
インテリジェント ウェイブの2014年6月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウエア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術基盤としており、証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、カード不正利用検知システムや内部情報漏洩対策システム等も手がける。大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有する筆頭株主。グループは、同社の他、韓国で開発・販売を手掛ける連結子会社INTELLIGENT WAVE KOREA INC.及び持分法適用関連会社(株)ODNソリューションの2社。
 
【事業内容】
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、セキュリティシステム業務、及び新規事業の収益が計上されているその他に分かれ、13/6期の売上構成比は、それぞれ54.5%、34.8%、8.6%、2.0%。この他、報告セグメントではないが、大日本印刷(株)との連携の下、自社製品と他社製品(パッケージ)を組み合わせたクロスソリューション事業にも力を入れている。
 
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、「NET+1」をベースにしたカード決済にかかるフロント業務のシステム構築を行っている。フロント業務のシステムとは、クレジットカード会社が加盟店や信用情報センターと接続するために必要なシステムであり、銀行(CD/ATM、海外ATM網等の対外系接続システムとの接続)や消費者金融等でも使われている。「NET+1」は付加価値の高い専用ハードと自社開発のパッケージソフトからなり、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を有する。また、「加盟店や決済代行会社等向けに初期投資の抑制とランニングコストの低減が可能なLinux 対応の「Linux NET+1」の提供も行っている。
 
システムソリューション業務
カードビジネスのフロント業務で培った“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“ノンストップ技術”、及ぶ“セキュリティ技術”を活かして、クレジットカード業界、証券業界(オンライン証券会社・機関投資家)、及び大日本印刷のグループ企業等のシステム開発を手掛けている。クレジットカード業界向けでは、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」といった同社独自の製品を有し、証券業界向けでは高速情報基盤システム(証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信するシステム)等で豊富な実績を有する。
 
セキュリティシステム業務
「NET+1」や「ACE Plus」等で培ったネットワーク技術やでセキュリティ技術をベースとしており、情報漏えい対策システム「CWAT(シーワット)」を中心に、仮想環境下での端末操作管理ツール「VeTracer(ヴィー・トレーサー)」等を中心に事業展開している。
 
その他(新規事業)
企業ウェブサイトの付加価値を高めると共にユーザーサポートのコスト低減に寄与する自社開発のナビゲーションツール「Face(フェイス)コンシェル」やイスラエルCHECKMARX社製ソースコード解析ツール「CxSuite(シーエックススイート)」によるソリューションを中心に事業展開しており、自社製品と他社製品(パッケージ)を組み合わせたクロスソリューション等も志向している。
 
 
2014年6月期第3四半期決算
 
 
前年同期比12.2%の増収、74百万円の経常利益
売上高は前年同期比12.2%増の50億37百万円。セキュリティシステム業務やその他(新規事業)において新規の案件取り込みが進まなかったものの、前年同期の大型案件の反動を吸収してカードビジネスのフロント業務をけん引役に売上が増加。前年同期にハードウエアや仕入商品売上でまとまった案件があった反動で売上が減少したシステムソリューション業務も、収益性の高いソフトウエア開発や自社開発パッケージの売上が増加した。

利益面では、前年同期に大型開発案件で9億80百万円の損失を計上したカードビジネスのフロント業務の損益改善等で、営業損益が前年同期の7億49百万円の損失から52百万円の利益に転じた。同業務の今期は、当該不採算案件にかかる修正作業等で第1四半期(7-9月)に2億33百万円の損失を計上したものの、不採算案件の影響がなくなった第2四半期(10-12月)以降、本来の収益性に戻りつつある。また、売上が減少したシステムソリューション業務も、収益性の高いソフトウエア開発や自社開発パッケージの売上増でセグメント利益が増加した。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
売上高34億43 百万円(前年同期比28.1%増)、セグメント利益6億00百万円(前年同期は2億74百万円の損失)。既存システムの更新や新たな顧客サービスの導入等、投資需要の回復でソフトウエア開発や自社パッケージの売上が増加した他、更新需要が予想以上に強くハードウエアも大きく伸びた。長期の安定収益源となる保守売上も順調に増加している。利益面では、第1四半期(7-9月)に、前期に納品した大型プロジェクトの稼働後の修正対応で1億40百万円、銀行関連のプロジェクトで93百万円、それぞれ損失が発生したが、第2四半期以降、本来の収益性に戻りつつある。
 
 
システムソリューション業務
売上高12億95百万円(前年同期比10.4%減)、セグメント利益2億17百万円(前年同期比73.6%増)。前年同期に証券系でまとまった規模の更新があったハードウエアや仕入パッケージを中心に売上が減少したものの、株式市場の活況で証券系の投資意欲が回復しつつあり、収益性の高いソフトウエア開発や自社開発パッケージの売上が増加した。
 
 
セキュリティシステム業務
売上高2億28百万円(前年同期比17.7%減)、セグメント損失1億13百万円(前年同期は22百万円の利益)。機能強化し収益性も高めた情報漏えい対策システム「CWAT(シーワット)」の新シリーズや想環境下での端末操作管理ツール「VeTracer(ヴィー・トレーサー)」の商談の遅れでソフトウエア開発や自社開発パッケージを中心に売上が減少する中、「VeTracer」の開発費の償却等が負担となった。
 
 
その他(新規事業)
売上高70百万円(前年同期比7.9%減)、セグメント損失1億38百万円(前年同期は87百万円の損失)。自社開発製品でWebサイトの付加価値を高めるシステムツール「Face コンシェル」が13年12月に全日本空輸(株)のパソコン用及びモバイル用Webサイト(よくある質問ページ)で正式に稼働したが、これに次ぐ案件の取り込みが進まず、開発費の償却等で損失が増加した。
 
 
 
季節要因による振れがあるものの、カードビジネスのフロント業務を中心に受注は右肩上がりのトレンドが続いている。このため、第3四半期末の受注残高は19億円と潤沢で、14/6期の予想売上高65億円を達成するために必要な額を上回っている(第4四半期に15億円弱の売上を計上できれば通期の予想売上高は達成)。
 
 
第3四半期末の総資産は前期末に比べて1億34百万円減の56億20百万円。自己資本比率77.9%(前期末77.3%)。
 
 
2014年6月期業績予想
 
 
前期比10.7%の増収、経常利益1億90百万円(前期は5億87百万円の損失)
活発なカード関連の設備投資に加え、収益の改善で証券業界の投資意欲も改善傾向にある。これを受けて、カードビジネスのフロント業務とシステムソリューション業務においてソフトウエア開発や専用ハードウエアの販売が伸び、売上高が期初予想を上回る見込み。ただ、セキュリティシステム業務とその他(新規事業)業務で案件の取り込みが進まず、利益率の高い自社開発パッケージや関連するシステム開発の売上が予想を下回り利益面で大きな影響を受ける。

配当は1株当たり5円の期末配当を予定している。同社は、株主への利益還元を行う事を経営の最重要目標の一つとして位置付け、経営基盤の強化、積極的な事業展開、更には事業改革及び財務体質の強化を図りながら株主に安定的な利益還元を実施していく考え。尚、14年1月1日付けで1株を100株に分割すると共に、100株を1単元とする単元株制度に移行した。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
システム開発の上積みを目指す。システム更新やハードウエアの置き換えの他、ブランドプリペイドカードやモバイル端末決済等、新たな決済サービス提供のための投資が活発化しており、同社のビジネスチャンスが拡大している。また、前期に新たな事業領域として挑戦したバッチ系の精算システム(カード決済の基幹業務)の開発においても知識やノウハウの蓄積が進んだ事で広範囲に開発業務を受注できる体制が整った。加えて、前期に納入したシステムで品質改良作業が発生したためだが、プロジェクト支援を行う専門集団のPMO室を設置して、きめ細かく、かつ組織的に開発プロジェクトの管理ができる体制を整備した結果、開発案件の収益性も改善傾向にある。
尚、カードビジネスのフロント業務では、通期の予想セグメント利益(7億60百万円)が期初予想(8億円)を下回る見込みだが、期初予想には前期に納入した大型案件にかかる損失が織り込まれていなかった。前期納入案件の影響を除いた実質的な今期のセグメント利益は10億円弱になる見込み。
 
システムソリューション業務
システム開発と商品販売の上積みを目指す。前期の反動によるハードウエア販売や商品販売の減少で売上の減少が見込まれるものの、証券会社の収益の改善で証券系の投資が増えており、不正検知を中心にしたカード系も、これまでの会員の不正対応に加え、加盟店の不正対応に伴う開発案件が増えている。証券系では、超高速取引処理の確実性を確保するための製品群をシステム開発案件に組み込む等で他社にはない付加価値の高い提案活動で需要の掘り起こしを行っていく考え。
 
セキュリティシステム業務
情報漏えい対策システム「CWAT(シーワット)」と仮想環境下での端末操作管理ツール「VeTracer(ヴィー・トレーサー)」の単品販売だけでなく、両製品の組み合わせによる、実環境でのパソコン等の情報端末とバーチャル環境でのシンクライアントの両面からセキュリティを強化できるシステムや、ユーザニーズに応じたサービスを付加したシステムの提案等、複眼的な提案を強化していく(既に成約実績があり、第4四半期に1社の導入が予定されている)。
 
その他(新規事業)
製・商品の認知度向上と潜在顧客の掘り起こしに向け、セミナー等の開催を積極化している。「Face コンシェル」では大日本印刷(株)との提携によるソリューションセミナーの開催で具体的な商談が増えており、来期業績への貢献が期待されている。また、ソリューション強化の一環として販売拡大に取り組んでいるイスラエル社製マルウエア対策ツール「CxSuite(シーエックススイート)」では、Webサイト運営企業の担当者等を対象にした「Web脅威への上流対策」等、より専門性が高いセミナーを開催し、普及に向けたマーケティング活動を展開している。
 
 
 
今後の注目点
カードビジネスのフロント業務の事業環境は良好だ。例えば、従来、提携カードを発行していたが、カード会社に依存し主体的に対応していなかった企業が、自ら前面に出てカードサービスを強化するケースが増えており、またハウスカードを発行していた企業が、会員囲い込みに向けた利便性向上を念頭に国際ブランドと提携するケースも増えている。加えて、東京五輪の開催や訪日観光客の増加を目指す国策を受けて、外貨対 応等のインフラ整備も進められている。リアルタイム処理のフロント業務にとどまらず、バッチ処理の精算業務にも対応できる事が同社の強みである。
証券会社の収益回復やカード利用に伴う不正対応でシステムソリューション業務の見通しも明るい上、カードビジネスのフロント業務と同様に収益性の改善も進んでいる事から、来15/6期の連結業績は両業務をけん引役に増収・増益が期待できよう。その上で、セキュリティシステム業務と新規事業でどれだけ上積みができるか。4Q(4-6月)の取り組みと商談の進捗に期待したい。