ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

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ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.38

(7839:東証2部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.38】2014年9月期第2四半期業績レポート
取材概要「通期の業績予想が据え置かれたが、足元の好調な販売に加え、新製品が高い評価を得ている事から先行きに特段の不安はない。日本では景況感の回復を・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年5月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年9月 11,158 1,340 1,299 799
2012年9月 8,606 97 143 65
2011年9月 9,047 395 371 217
2010年9月 10,078 898 978 638
2009年9月 10,300 1,047 1,335 837
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
株式情報(5/2現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,478円 13,772,032株 20,355百万円 10.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
45.00円 3.0% 90.76円 16.3倍 601,28円 2.5倍
※株価は5/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績。
 
SHOEIの2014年9月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメット・メーカー。オートバイ用を中心に、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界約60ヵ国を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力を持つ。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。
 
経営方針 3つの世界一を実現
「世界一の品質」     … Made In Japanのグローバルブランド
「世界一のコスト競争力」 … ヘルメット業界唯一のトヨタ生産方式でコスト管理
「世界一の楽しい会社」  … お客様、株主の皆様、並びに従業員、役職員の満足
              度を追及
 
【事業内容】
二輪乗車用ヘルメットの売上高が約90%を占めている。高品質で高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県一関市)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、高い品質の維持と技術の流出防止を実現している。また、業界では唯一の「トヨタ生産方式」導入企業として、高い限界利益率と在庫回転率、及び優れた資産効率を誇る。
 
 
【中長期的安定成長と安定利益の実現に向けた基本方針】
(1)自分の会社は自分で守る
(2)Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)
(3)健全な財務内容の堅持
(4)投資の継続(新製品開発,コストダウン,品質向上,より確かな安全)
(5)世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指す
(6)新市場開拓と既存市場の深堀り
(7)利益の公平、公正な分配(50%配当性向,従業員への配分、会社への分配
   (内部留保))
 
【トップシェアを支えるモノづくりへのこだわり 茨城及び岩手の国内2工場で全量を生産】
世界各国のライダーに称賛され、グローバルなブランドとして認知されているプレミアヘルメット。優れた空力特性等、ヘルメットとしての高い機能性とファッション性に富んだ製作難度の高い形状。それでいて安全性が高く長時間走行でも疲れ難い。「使った人がいかに心地よいか」を追求する同社の“こだわり” が、トップシェアの原動力となっている。
 
 
人の命を守るヘルメットは、日本、欧州、北米と言った市場毎にそれぞれの安全規格がある。
このため、同社では、茨城工場が主に国内製品、岩手工場が主に海外製品と、工場毎に仕向け先を一本化して生産性を上げている。
 
空力特性と静粛性
ヘルメットの空力性能の良し悪しは、高速走行時のライダーの首への負担に直接影響する。このため、同社は風による負担軽減を念頭に、大型風洞実験設備で繰り返し検証を重ね、より確実で実践的なエアロフォルムの形造に取り組んでいる(試作モデルを直接加工しながら数値を取り、時間をかけて少しずつディティールを変えて空力性能を変化させていく)。
また、ライダーの疲労と集中力低下の一因となる風切音対策も二重三重に施されている。例えば、新製品「Z-7」では、先ず密閉性を高めたシールドシステムで風切音の発生そのものを最小限に抑え、わずかに発生する風切音も、密着性を高めた内装システムが音の侵入を防止する。加えて、ヘルメット内部のイヤースペースに着脱可能なイヤーパッドを装備する事も可能だ。
 
 
加えて、風除けの「シールド」についても細かい配慮がなされている。「曇り止め」機能をつける場合、通常、「シールド」の内側に「曇り止め」の特殊シートを装着するため二重構造になり、ヘルメットに引っかかってしまう。しかし、同社製品はバネによってバイザーが自動的に前面に持ち上げられる構造(可変軸Wアクション機構)になっているため開閉がスムーズだ。
 
 
ファッション性と安全性
ファッション性に富んだ複雑な形状にすると、全体の強度が均一にならないため安全性を維持する事が難しくなる。しかし、同社製品は年間3,000回以上実施されるヘルメットの衝撃吸収試験を経て、複雑な形状でも全体の強度が均一になるよう成形されている。
 
 
ちなみに、ヘルメットの材料となるガラス繊維は(仕入先:日東紡績(株))、ガラスを溶かして加工した直径10ミクロンの繊維を束ねたもの。プラスチックよりも強度がある一方、整形がしやすい。ガラス繊維に熱硬化性樹脂を加え成形するヘルメットの原型ができる。

ファッション性の決め手ともなるグラフィックは、転写シートを絵付けする陶器の絵付け技術(印刷技術の一種)が使われている(転写シートの供給元は陶磁器メーカーの(株)ノリタケカンパニーリミテド)。薄さ1ミクロン以下の極薄のシートを丸いヘルメットに張り付けていくが、この技術は経験を積んだ職人のみが可能な「匠の技」だ。展示会等で見比べると、デザインの豊富さや単色ヘルメットのカラーバリエーションンにおいて、同社とライバルメーカーの差は大きい。好みは人それぞれだが、ファッション性という観点から評価すると、明らかに同社製品に軍配が上がる。

また、同社製品には、「GT-Air」等のようにインナーサンバイザーを搭載した製品があるが、サンバイザーは日本のサングラスメーカー山本光学(株)の「スワンズ(SWANS)」を採用している。「スワンズ」は、スポーツサングラスとして高いブランド力を有し、ゴルファーやマラソンランナー等に人気が高く、わずかなひずみもないため、長時間被っても目が疲れない。
 
 
 
2014年9月期上期決算
 
 
前年同期比39.4%の増収、同228.2%の経常増益
売上高は前年同期比39.4%増の64億24百万円。プレミアムヘルメットは日本や欧州の好調に加え、前期は円高修正に頼るところが大きかった米国市場も数量ベースで回復基調。欧州では、ドイツでの受注が1月・2月の2か月間で前年同期比1.5倍に拡大した他、イギリスや新モデルが牽引役となっているフランスの売上も増えている。また、リーマン・ショック後の落ち込みが特に大きかったスペイン(二輪車販売が、それまでの1/3に減少)が回復基調にあり、イタリアでも底打ち感が出てきた。

営業利益は同3.1倍の13億61百万円。生産数量の増加による工場稼働率の改善に加え、円高修正も追い風となり、原価率が59.4%と8.6ポイント改善。売上総利益が同76.9%増加する一方、販管費は変動費を中心に同19.8%の増加にとどまった。

為替の換算レートは、同社が1USドル=102.43円(13.14円の円安)、1ユーロ=139.97円(23.31円の円安)、海外子会社換算レート(2013年12月30日現在)が1USドル=105.39円(18.81円の円安)、1ユーロ=145.05円(30.34円の円安)。
 
 
 
 
国内外での販売回復を受けて在庫の積み増しを行ったため、上期末の総資産は102億03百万円と前期末に比べて7億96百万円増加した。自己資本比率は81.2%と前期末に比べて1.0ポイント改善。「自分の会社は自分で守る」と言う経営理念に沿って、高い流動性と無借金の健全経営が維持されている。いい意味で、メーカー的でないバランスシートだ。
 
 
2014年9月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更なく、前期比7.5%の増収、同53.9%の経常増益
売上高・利益共に期初の想定を上回って推移していると思われるが、国内での消費税率引き上げの影響が不透明である事や為替変動の影響を直接・間接受ける事等を踏まえて、ひとまず業績予想を据え置いた。
 
新製品「Z-7」が国内外で好評
2014年のバイクシーズンを前に新製品「Z-7」(地域によってブランドが異なり、欧州では「NXR」、北米では「RF-1200」)を投入した。「Z-7」はスポーツライディングを意識して、軽量コンパクトを重視。日本や北米に先立ち、「NXR」ブランドで販売を開始した欧州では、立ち上がりが予想以上に順調だ。
 
 
(2)配当は1株当たり16円増配の期末45円を予定
同社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題と位置付けており、配当性向を重視した「業績に対応した成果の配分」を行う事を基本方針としている。この方針の下、財務体質及び経営基盤強化のため株主資本の充実と並行して、連結配当性向50%を目処とした期末配当を実施していく考え(現在、利益配分を期末配当に一本化している)。
14/9期の利益配分は、期初公表において1株当たり16円増配の期末45円としている。
 
 
今後の注目点
通期の業績予想が据え置かれたが、足元の好調な販売に加え、新製品が高い評価を得ている事から先行きに特段の不安はない。日本では景況感の回復を追い風に二輪車市場が回復基調にあり、二輪車市場にようやく底打ち感が出てきた欧州では、長らく続いた不況で現地のヘルメット・メーカーが疲弊し、開発力と安定した財務基盤を有する同社が存在感を増しているようだ。また、北米は豪雪の影響がなくなった3月以降、労働市場の回復が鮮明で今後の個人消費の拡大が期待できる。
(株)インベストメントブリッジでは、通期の業績は上振れ余地が大きいと考えているが、「どの程度上振れするか」を正確に予想する事も難しい。このため、業績予想の据え置きは妥当な判断であり、期待を持って業績推移を見守りたい。