ブリッジレポート
(4319) TAC株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(4319)TAC vol.13

(4319:東証1部) TAC 企業HP
斎藤 博明 社長
斎藤 博明 社長

【ブリッジレポート vol.13】2014年3月期業績レポート
取材概要「事業構造改革により大幅な増益を達成した訳だが、投資家の目は当然ながら、「整備された基盤をベースに次に展開をどう打つのか?」に移って・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年7月1日掲載
企業基本情報
企業名
TAC株式会社
社長
斎藤 博明
所在地
東京都千代田区三崎町3-2-18
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 20,526 1,034 1,299 816
2013年3月 20,999 136 377 977
2012年3月 22,578 -606 -530 -799
2011年3月 24,575 465 283 -244
2010年3月 23,991 623 442 40
2009年3月 21,092 1,330 1,352 669
2008年3月 20,741 1,069 1,230 443
2007年3月 20,553 1,173 1,333 742
2006年3月 19,828 421 631 249
2005年3月 19,669 459 558 81
2004年3月 19,542 988 943 470
株式情報(6/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
250円 18,503,932株 4,625百万円 21.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
1.00円 0.4% 33.24円 7.5倍 224.46円 1.1倍
※株価は6/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
TACの2014年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「資格の学校TAC」として、資格取得スクールを全国展開。社会人や大学生を対象に、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、司法試験、司法書士等の資格試験や公務員試験の受験指導を中心に、企業向けの研修事業や出版事業等も手掛ける。
 
 
【沿革】
1980年12月、資格試験の受験指導を目的として設立され、公認会計士講座、日商簿記検定講座、税理士試験講座を開講。2001年10月に株式を店頭登録。03年1月の東証2部上場を経て、04年3月に同1部に指定替えとなった。09年9月には司法試験、司法書士、弁理士、国家公務員Ⅰ種・外務専門職等の資格受験講座を展開していた(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から資格取得支援事業及び出版事業を譲受。これにより、会計分野に強みを有する同社の資格講座に法律系講座が加わると共に、公務員試験のフルラインナップ化も進んだ。2013年12月、小中高生向け通信教育事業を柱とする(株)増進会出版社と資本・業務提携契約を締結。
 
【強み】
(1)試験制度の変化や法令改正へのきめ細かい対応
同社は、会社設立間もない頃から講師陣が毎年テキストを改訂し、試験制度の変化や法令改正にきめ細かく対応することで他社との差別化を図り受講生の支持を得てきた。事業が200億円規模になると、毎年発生するテキスト改訂コストを吸収することが可能だが、新規参入を考える企業はもちろん、同社よりも事業規模の劣る同業者にとっても、テキストを毎年改訂することは大きな負担である(ノウハウの蓄積が進み高い生産性を実現していることも強みとなっている)。
 
(2)積極的な講座開発と充実したラインナップ
同社は大学生市場の開拓も含めて積極的に新しい分野(新講座の開設)にチャレンジすることで業界トップに上り詰め、業界初の株式上場を果たした。また、09年には、Wセミナーの資格取得支援事業を譲受し、従来手薄だった法律系講座や公務員試験のラインナップを拡充した。法律系講座及び公務員試験は、会計系3講座(公認会計士、税理士、簿記検定)と共に3本柱を形成し、マーケットの大きい3本柱を中心に多様な講座をラインナップしている。
 
(3)受講生中心主義の下でのサービスの先進性
サービスの先進性も同社の強みである。教育メディアや講師を受講生が自由に選択できるシステムを、資格取得学校市場で最初に導入したのは同社である。その背景にある受講生中心主義の経営姿勢は、テキストの品質と共に、「資格の学校TAC」のブランド醸成に一役買っている。
 
 
 
同社のROEは前々期、前期共に非常に高い水準にある。ただ、前々期は特別利益に移転補償金17億円が計上された影響がある。一方それが無くなった前期も21.9%と東証1部の平均を大きく上回る。
ただ、要因を見てみると、前々期の6.59から4.79へと低下はしているが有利子負債増等によるレバレッジが効いている事が高ROEの背景にある。今後は売上高利益率の向上も期待したい。
 
 
2014年3月期決算概要
 
売上高について
各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大きく異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。
 
 
減収も、コスト削減効果により大幅な増益を達成
現金ベース売上高は前期同水準の200億43百万円。3月中旬まではやや弱い状況で推移していたが、3月後半から消費増税に対応した駆け込み申込みが著しく増加。3月単月での単体売上高は前年同月を5億73百万円上回り、そのうち個人向けは約4億6千万円となった。これら駆け込み申込み分は、ほとんどが翌15/3期売上となるため前受金繰入額として計上され、同95百万円減となった。一方、通年で現金ベース売上高が低調だったことから前受金戻入額は水準が低く、同5億58百万円の減少にとどまった。この結果、発生ベース売上高は同2.2%減少の205億26百万円となった。

2013年3月期下期から着手した構造改革を継続し、第3四半期までは削減額を維持。講師料、賃借料などを中心に売上原価は前期比5.9%の減少。販管費も同7.0%削減した。この結果、営業利益は10億34百万円と前期に比べ大幅に増加した。
投資有価証券の利息計上および運用益を計上した一方、支払利息、持分法による投資損失、為替差損もあったが、営業外損益は同2億65百万円のプラスとなり、経常利益も大幅に増加した。
固定資産除却損、スクールの賃借面積の一部減床による減損損失を計上したことに加え、前第3四半期累計期間に特別利益に計上していた移転補償金がなくなったため当期純利益は減益となった。
 
 
 
【個人教育事業】
現金ベース売上高は前期比1.7%減少の135億48百万円。
公務員講座(国家一般職・地方上級コース及び国家総合職・外務専門職コース)は堅調だったが、税理士講座、法律分野の各講座、中小企業診断士講座、社会保険労務士講座が不振だった。消費増税を前に、3月中旬以降、駆け込み申込みが顕在化し、第4四半期(1-3月)の現金ベース売上高は前年同期比11.9%増となったが、通期での現金ベース売上高は前年を下回った。
一方、コスト削減の実行により、講師料、教材制作のための外注費、賃借料等の営業費用は同10.2%減の131億27百万円となり、現金ベースの営業利益は4億21百万円の黒字となった(前年同期は8億48百万円の営業損失)。
発生ベースの売上高は同4.2%減少の136億63百万円、営業利益は536百万円(前年は357百万円の営業損失)と黒字転換した。
 
【法人研修事業】
現金ベース売上高は前期比4.7%増加の42億58百万円。
法人研修事業セグメント売上高の約6割を占める企業研修はアベノミクスによる景気回復を追い風に、前期比5.2%増と堅調に増加した。財務・会計系研修は横ばいだったが、経営・税務分野が同46.4%増となったほか、金融・不動産分野は、宅建(同3.5%増)、証券アナリスト(同9.5%増)、ビジネススクール(同6.4%増)、ヒューマンスキル(同3.0%増)などが好調だった。
また、情報処理研修も同3.8%増と前年を上回り、そのうち、CompTIA研修は特に好調で同11.7%増となった。一方、法律分野は同27.7%と不振だった。
専門学校に対するコンテンツ提供は同18.7%の増加。宅建・公務員・情報処理が好調だった。
大学内セミナーは公務員講座が好調で、同6.5%増となった。
一方、地方の専門学校ベースの提携校事業は、公務員講座が同7.9%と好調だったが、その他の簿記、税理士、会計士、司法書士、社労士などが軒並み低調で、同6.7%減と振るわなかった。人手不足、採算悪化から姫路校、盛岡高をそれぞれ2013年10月、2013年11月に閉校し、提携校数は15校となった。
この他、自治体等の委託訓練は同9.5%減、税務申告ソフト「魔法陣」事業は同9.9%減と低調だった。
営業費用は前年微増の30億26百万円となり、現金ベースの営業利益は同17.7%増加の12億32百万円と増収・増益となった。
発生ベースでは売上高42億39百万円(同2.5%増)、営業利益12億13百万円(同8.7%増)となった。
 
【出版事業】
売上高は前期比0.9%増加の22億38百万円。
同セグメント売上の約8割を占めるTAC出版の刊行点数は前年の522点を下回る452点。W出版も前年より9点少ない160点と、刊行点数を絞り込んだが、書店向けの提案営業注力、直販サイト「サイバーブックストア」やアマゾンでの販売強化など、営業強化に力を入れた結果、前期に続き増収を維持することができた。
全面的にリニューアルした簿記検定対策の教科書が好調だったほか、FP分野においても定番の教科書が人気になったのに加え、行政書士関係の書籍も貢献した。簿記やFPでは、書籍購入者がその後講座に申し込むという流れも一部見られた。
一方、刊行点数や分野の絞り込みの一環で在庫の処分も進めたため、2億30百万円の廃棄損を含め、棚卸高の期首・期末差額で3億96百万円売上原価が増加した結果、営業利益は同40.6%減少の2億59百万円(同40.6%減)となった。
当事業では、前受金調整がないため現金ベースと発生ベースの売上高は一致する。
なお、2013年度のジュンク堂書店における出版社売上ランキングにおいて、39位のTAC出版(200百万円)と118位の早稲田経営出版(72百万円)を合算すると24位(273百万円)に相当するが、これは資格書籍専業の出版社としては有数の規模となる。
 
【人材事業】
売上高は前期比2.0%増加の4億30百万円。
子会社の(株)TACプロフェッションバンクが手掛ける人材事業は、堅調に推移している。
会計業界向けの夏の就職説明会には大手4大監査法人がすべて出展を決める等、環境は改善している。また、冬の税理士合格者中心の就職説明会も過去最高水準の出展社数を集め、活況だった。求人増加により人材紹介成約件数は前期に比べ3割増加した。同時にコスト削減も継続して進め、営業費用は同7.5%減少の332百万円となった結果、営業利益は同56.7%増の97百万円と大幅に増加した。
 
 
【マーケット概要】
当社が取り扱う資格の2013年の本試験申込者は2,606千人(前年比 -4.6%)と3年連続して減少した。試験別の傾向を見ると、会計士 同-4.6千人、税理士 同-3.1千人と会計系は減少が続いている。宅建は戻りが一服。司法試験 同-0.9千人、司法書士 同-1.9千人、行政書士 同-4.9千人と法律系も減少が続いている。一方、簿記は同-6.3千人とマイナスではあったが、下げ止まり感がでてきたようだ。公務員は総合・一般が1万人近く減少した一方、地方上級公務員は前年並みを維持している。

(以下、同社動向。原則発生ベースで記載。)
 
財務・会計分野
売上高は前年同期比13.0%減少の34億4百万円。
公認会計士試験については、新規株式公開件数の回復等を背景に大手4大監査法人は昨年から積極採用姿勢に転じ、本試験合格者はほぼ全員が採用されており、未就職者の問題は完全に終息したと会社側は考えている。同時に、合格率も前年の7.5%を上回る8.9%となり、公認会計士試験の受験環境は好転している。
そうした中ではあるが、同社の公認会計士講座は、新規学習者向けの入門コースは前年を上回り始めているものの、再受験者向けの上級コースは受験生の減少が顕著であり、十分な受講申込みを確保できない状況にあるため、公認会計士講座の売上高は前期比19.1%の減少となった。
簿記検定講座は、2級試験が難しくなっているため、その後の1級への進級や税理士講座へのステップアップを行う受講者が減少した。こうした落ち込みをカバーするため、3級及び2級については新規顧客獲得のためのキャンペーンを積極的に実施したことにより、受講申込みが増加し始めている。ただ、前半の不振が響き、簿記検定講座の売上高は同6.4%の減少となった。
 
経営・税務分野
売上高は前期比5.3%減の45億46百万円。
平成25年の税理士試験の受験申込者数は55,332名(前年比5.3%減)と漸減傾向が続いており、最終合格者数も905名と前年より18.0%減少した。こうした環境下、同社の講座申込みも夏の本試験後及び冬の合格発表後ともに減少が続き、税理士講座の売上高は同7.9%減少した。
中小企業診断士講座は前期の大量合格の反動で再受験者が減少したが、発生ベースでの売上高は同1.9%と増加した。(現金ベースでは3.4%の減少)
 
金融・不動産分野
売上高は前期比6.6%増の26億22百万円。
不動産鑑定士講座は、景気回復により不動産市場が活発化しつつあるものの、受験者市場にまで波及しておらず売上高は同9.9%の減少。一方、宅建主任者講座は堅調で売上高は同4.8%となった。
FP講座はリニューアルした出版物が好評で売上高は同9.7%の増加だった。書籍購入が講座申し込みに繋がるケースも増えている。証券アナリスト講座は、NISA(少額投資非課税制度)対応でコールセンター要員に証券外務員試験を受験させる証券会社や金融機関のニーズが高まり同10.4%の増加。また、ビジネススクール講座も企業研修が好調だった。このほか、最近開講したヒューマンスキル講座、建築士講座も順調な立ち上りとなっている。
 
法律分野
売上高は前期比10.9%減の20億26百万円。
予備試験受験者数が約12,600人を超えるなど、法科大学院よりも人気が出てきており、事業環境に明るい兆しも見えてきた司法試験においては、同社の「4A基礎講座」も初心者を中心に好評だったが、司法試験講座全体の規模縮小の影響を受け、売上高は同24.5%の大幅減少となった。
司法書士講座は、前期に出版部門が好調だった反動及び新規の個人申込みが低調に推移し、売上高は同10.9%減となった。
弁理士講座は、本試験合格者数が大幅に減少し難易度が上がり、新規・再受験者向けともに低調で同9.8%の減少。行政書士講座も低調で同6.7%の減少となったが、ビジネス法務は同7.2%増加と堅調だった。
 
公務員・労務分野
売上高は同7.6%増の53億52百万円。
社会保険労務士講座は、景気回復と共に本試験受験者数が前年比4.7%減少したことに加え、合格者数が同27.0%減少し、合格率も前年の7.0%から5.4%に低下するなど、非常に厳しい受験環境に変わったことにより、合格発表後の受講申込みが極端に落ち、売上高は同7.3%減少した。
一方、公務員講座は、景気回復により民間企業の就職状況が改善しているにも関わらず、国家一般職・地方上級コースは同16.5%増と好調だった。この国家一般職・地方上級コースは、前年に引き続き単独で同社講座のうちトップの売上となっている。
また、同社が推定市場規模約600億円と想定し、当面10%の市場シェア獲得を目指し、今後の注力分野と位置付けている教員試験対策講座は、本格開講し売上が立ち始めている。
 
情報・国際分野
売上高は同1.0%増の14億60百万円。
情報処理講座はほぼ前期並みの売上高だった。一方、CompTIA講座は同11.2%増と好調だった。米国公認会計士講座は、TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)講座、BATIC(国際会計検定)講座が順調だったが、売上高は同2.8%の減少となった。
 
その他
売上高(現金ベース売上高=発生ベース売上高)は同1.4%減少の11億14百万円。
人材子会社TACプロフェッションバンクが行う人材ビジネスについては、夏に開催する会計業界向け就職説明会関連の売上が好調だったこと、景気回復につれて他の人材派遣・人材紹介関係の売上高も伸びてきたことから、人材事業売上は同2.0%の増加となった。税務申告ソフト「魔法陣」の売上高は同9.9%減と不振だったことに加え、各拠点での受講申込みが低調なため、受付雑収入も同14.5%の減少となった。
 
 
個人受講者数は4年連続して減少したが減少幅が縮小したことに加え、法人受講者数が2006年3月期以降では9年連続して増加したことにより、3年連続で減少していた受講者数が増加に転じた。
個人・法人を合わせた講座別では、公務員講座が売上高に加え受講者数でもトップの講座となり、国家一般職・地方上級コースが前年比18.0%増、国家総合職・外務専門職コースが同9.1%増と牽引した。
また、公認会計士講座は同16.4%減、税理士講座も7.1%減となったが、簿記検定講座が同9.9%増と大幅増加に転じた。景気回復を受け、宅建主任者が同5.4%増、FPが同4.2%増、ビジネススクールが同19.8%増など、金融・不動産分野が受講者数を伸ばしたが、法律分野は司法試験が同50.5%の減少など低迷した。
法人受講者は、自治体等の委託訓練が同4.9%減、大学内セミナーが同12.8%減、提携校が同6.4%減となったが、通信型研修は同17.8%の増加となった。
 
 
固定資産は建物及び構築物、投資有価証券などの減少などで3億円減少したが、現預金、売上債権の増加などで流動資産が21億円増加し、総資産は18億22百万円増加。一方、有利子負債8億円増加等で負債は9億82百万円の増加。自己資本比率は22.3%と、前期末の19.7%から2.6ポイント上昇した。
 
 
前期あった移転補償金受取が無くなるなどで、営業CFのプラス幅は大幅に縮小。ただ、投資CFはプラスを維持したため、フリーCFも前期に続きプラスとなった。長期借入を増額し財務CFは大幅に増加し、キャッシュポジションも大きく上昇した。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
事業構造改革終了で、投資再開。「攻めに転じる1年」との位置づけ。
発生ベース売上高は前期比1.1%減少の203億円。会計士試験環境の好転、簿記講座の下げ止まり、堅調な地方公務員講座など明るい要因もあるものの、消費増税の駆け込み申込みが想定以上に増加したため、その反動減が消えるまで、相当程度の期間を要すると見込んでいる。
また、2013年3月期より着手した事業構造改革は奏功し、前期は大幅な利益改善を果たしたものの、今期はコスト削減効果が一巡する。ただ、継続的なコスト削減努力は緩めず、売上原価同3.9%減、単体ベースの講師料同2.2%減、教材費等の外注費同1.4%減、を計画している。一方で会社側は「攻めに転じる1年」と位置付けており、次の展開をにらんだ投資にも着手し、営業利益は微増を計画。配当は前期と同じく1.0円/株の予定。
 
(2)今期の取組み
主として以下3点に取り組む。
 
①コスト削減の継続的な取り組み
業務効率化・標準化の推進による外注費、人件費の抑制
講師料の見直し継続
スクール規模の最適化による賃借料削減
 
②売上高の維持・新たな売上の創出
建築士講座の更なる拡大
教員試験対策コースの本格開講
(株)増進会出版社との共同事業の推進
 
③新規事業の開拓
(株)オンラインスクールによる新たな顧客層の開拓・囲い込み
(株)プロフェッションネットワークによる実務家向けビジネスの拡大
 
特に「②売上高の維持・新たな売上の創出」に関しては、前回レポートで触れたように、これまではアプローチ先でなかった有力な教育学部を持つ大学に新たに営業する過程で、簿記、FPといった同社の既存講座についての引合いや売上も生まれ始めているということで、積極的な営業活動を展開していく考えだ。

また、(株)増進会出版社とのアライアンスについても、これも前回レポートにあるように、主として以下の様なメリットが生じると会社側は考えており、早期の共同事業実現を目指している。
 
*国家公務員講座における英語講座強化
平成27年度に実施する国家公務員採用総合職試験から、外部英語試験が活用されることとなった。(2013年12月人事院発表) 具体的には、TOEFL、TOEIC、IELTS、実用英語技能検定(英検)の4種類を活用し、これらの英語試験のスコア等を有する受験者には、最終合格者決定の際に、下記の様にスコア等に応じて、総得点に15点又は25点を加算するというもの。
 
 
TACの公務員講座において、増進会出版社の持つ優良な英語関連コンテンツを活用することで、受講生に対する公務員講座の訴求力を一段と強化する事が出来る。
 
*大学内セミナーのバリュエーション拡大
近年、未履修・学力不足の大学生の増加が問題になっており、こうした学生に対し高等学校教育課程での教科、特に数学について再教育を行う「リメディアル教育」に対する大学側のニーズ、必要性が高まっている。
TACでは以前から法人研修事業の一つとして大学内セミナーを手掛けてきたが、今後は増進会出版の保有する高校生を対象とした豊富なコンテンツを活用した「リメディアル教育」をラインアップとして強化することができる。
 
*資格取得のための啓蒙・啓発
資格取得は社会人、ビジネスマンとしての価値向上のための大きな武器であるということを、増進会出版のチャネルを用いて高校生の段階から啓蒙、啓発を行うことができる。
「プロフェッショナルな教育を通して、個人が成長し自立する支援をし、社会の発展に貢献する。」というTACの経営理念実現と同時に、将来的な顧客創造に繋がる。
 
(3)トピックス
◎TAC大連、パソナ上海と提携し、パソナ上海の「日本式簿記研修講座」に教材・講師を提供
子会社TAC大連(泰克現代教育(大連)有限公司)は、パソナ上海(保聖那人才服務(上海)有限公司)と提携し、パソナ上海が現地日系企業スタッフ向けに実施する「日本式簿記研修講座」に教材および講師等を提供することとなった。
 
<背景>
上海に進出した現地日系企業においては、財務・経理系スタッフを育成する必要性が従来より高まっていた。
一方、日本の公益社団法人全国経理教育協会主催の簿記試験(全経簿記試験)が現地で2013 年から正式に開始されたこともあって、現地のスタッフの間で日本式簿記に対する関心が急速に高まり、また、就職環境の激化から、日系企業に就職を希望する学生においては、従来のような日本語能力だけでは就職が困難で、新たなスキルで差別化を図る必要も出てきている。
こうした環境下、パソナ上海が実施する「日本式簿記研修講座」にTAC大連が保有する教育コンテンツを提供することで、日本式簿記人材を迅速に育成し、日本企業や現地スタッフのニーズに早期に対応できると考えている。
 
<内容>
パソナ上海の同講座は、全経簿記3級程度、全4回(28時間)の講義で、受講費は1人当たり4,000元を予定している。
TAC大連が供給する教材は、日本のTACで使用している簿記教材(日本語版)を、日本語能力検定2級程度の受講生でも理解できるように中文主体で編集し直したもので、TAC大連によれば、このような試験対策教材はTAC大連が製作したもの以外、今まで中国には存在しないという。
また、この教材を用い既にTAC大連では2013年中に300名を超える人材を育成し、合格させた実績がある。
TAC大連は、今回のパソナ上海とのコンテンツに関する提携のほか、各地の有力日本語学校との提携も進めており、今年の教育目標を1,500人としている。
 
◎TAC出版の電子書籍をPHP研究所がKindleストアで配信開始
TAC出版は、株式会社PHP研究所(京都市南区・代表取締役社長清水卓智)とTAC出版の刊行物の電子書籍化を共同で行なうことに合意し、2014年4月25日よりKindleストア(Amazon)で販売を開始した。
順次、他の国内外の電子書籍配信プラットフォームでも配信される予定。

TAC出版は、「資格の学校TAC」として総合資格スクールを全国展開している個人教育事業の高いブランド力を背景に出版事業を展開しており、2014年3月末の稼働点数は945点(うち会計・税務関係書籍は265点)にのぼり、また、『ブラジルワールドカップ観戦ガイド完全版』のような、資格だけではない一般書(TACBOOK)にも注力しており、一般書で同269点と資格関係書籍に劣らず、電子書籍化可能なコンテンツを豊富に有している。
一方、PHP研究所は、約3,000点の電子書籍コンテンツを配信しており、業界内屈指のコンテンツホルダーとして電子書籍への積極的な取り組みを行っている。

こうした両社の強みを活かすべく TAC出版刊行の紙の書籍をPHP研究所の持つ制作・流通配信ノウハウを駆使して電子書籍化し、Kindleストアを始め、iBooks(Apple)、紀伊國屋書店ウェブストアなど、国内外の各電子書籍配信プラットフォームを通じて販売していく。

共同事業の第一弾として2014年4月25日よりKindleストアで配信開始するタイトルは下記の5つ。

●『モヤモヤOL みなみが教わった「自分を変える」プラットフォーム仕事術』
 (平野敦士カール[著])
●『経済ニュースの裏を読め!』(三橋貴明[著])
●『経済ニュースの裏を読め! 世界経済編』(三橋貴明[著])
●『コトラーのマーケティング理論が 2.5 時間でわかる本』(岡林秀明[著])
●『ビッグデータ実例でまるわかり!』(岡林秀明[著])

TAC出版とPHP研究所は、この共同事業を通じて、より多くの読者にTAC出版の電子書籍を配信できる体制・環境を整備するとともに、電子書籍市場の更なる活性化に取り組んでいく考えだ。
 
 
今後の注目点
事業構造改革により大幅な増益を達成した訳だが、投資家の目は当然ながら、「整備された基盤をベースに次に展開をどう打つのか?」に移っている。
その意味では、「今期の微減収・微増益という予想数値に期中どれだけ上積みができるのか?」に加えて、来期以降にかけてでもいいが、「新たな成長イメージを感じさせるための具体的な絵を投資家に示すことができるのか」?が、同社を見る上で最も重要な注目点となるだろう。
今年10月には教育訓練給付に関する新制度が発表されるという事ではあるが、まだしばらく先の話であり、(株)増進会出版社との共同事業等、攻めに転じる姿勢を期待したい。