ブリッジレポート
(2468) 株式会社フュートレック

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ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.27

(2468:東証マザーズ) フュートレック 企業HP
藤木 英幸 社長
藤木 英幸 社長

【ブリッジレポート vol.27】2014年3月期業績レポート
取材概要「各方面で音声認識を採用する動きが活発化している。ウェアラブル端末やロボット産業など、新たな製品においても音声認識技術は注目を集めて・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年7月15日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フュートレック
社長
藤木 英幸
所在地
大阪市淀川区西中島 6-1-1
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 2,421 431 465 273
2013年3月 3,165 896 901 491
2012年3月 2,562 501 502 261
2011年3月 2,085 482 485 284
2010年3月 1,996 530 540 315
2009年3月 1,777 404 415 221
2008年3月 1,598 264 277 159
2007年3月 1,253 249 256 162
2006年3月 1,443 173 165 99
2005年3月 1,059 69 79 33
2004年3月 907 9 6 -1
2003年3月 736 12 12 3
2002年3月 435 17 34 29
株式情報(7/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
538円 9,312,800株 5,010百万円 8.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0円 0.0% -34.9 - 355.49円 1.5倍
※株価は7/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
フュートレックの2014年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
スマートフォンに話しかけるだけで操作を行う事ができるスマートフォンアプリ「しゃべってカンタン操作」(NTTドコモ)や声で入力できる銀行向け業務日報ソリューション等、「多くのビジネスシーンで使える高い認識精度」、「幅広い品揃え」、及び「カスタマイズ可能な柔軟性」を強みとする音声認識技術を用いてソリューションを展開。NTTドコモの音声エージェントサービス「しゃべってコンシェル」は、同社の音声認識エンジンを使用してサービスが提供されている。
グループは、同社の他、音声認識コア技術の開発を担う(株)ATR-Trek、CRMソリューションやシステムソリューションを手掛けるイズ(株)、及びiPhoneを中心にしたスマートフォンやタブレット向けアプリ開発の(株)スーパーワンの連結子会社3社。NTTドコモ・グループが発行済株式の約6%を保有し、14/3期はNTTドコモ向けの売上高が全体の65.9%を占めた。
 
【事業内容】
事業は、ライセンス事業とライセンス以外の事業に分かれ、14/3期の売上構成比は前者が92.6%、後者が7.4%。また、前者は、音声認識・UIソリューション事業分野(同69.7%)、音源事業分野(同10.6%)、CRMソリューション事業分野(同12.3%)に分かれ、後者は基盤事業分野(同2.7%)及びカード事業分野(同4.7%)に分かれる。各事業の概要は次の通り。
 
 
フュートレックの音声認識関連技術は、3つの製品を中心として展開している。ひとつは音声認識で、ユーザーの声を認識する技術。次に、音声合成で、文章を機器に発話させる技術である。最後に、音声対話は機器と対話しながら操作できる技術である。
 
 
なお、音声認識・UIソリューション事業分野の収益は、技術や製品を提供する際、最初に受け取る許諾料「イニシャルフィー(初期許諾料)」、技術や製品を搭載するに当たり、周辺のシステム改変等を行う場合(実施毎)に受け取る実費用「カスタマイズ費用」、技術や製品を搭載した最終製品の生産や販売等に応じて、「1台当たり」、「1ダウンロード当たり」等の基準で受け取る継続許諾料「ランニングロイヤルティ」等からなる(ビジネス環境の変化等でこのビジネスモデルに収まらないものも増えている)。
 
 
2014年3月期決算
 
 
前年同期比23.5%の減収、51.8%の営業減益
2013年3月期において、売上高と利益に大きく貢献したNTTドコモ「しゃべってコンシェル」のカスタマイズ関連売上が大きく減少した。前期のこの売上はサービスインに伴う特需ともいえるもので、売上減少分をその他の案件でカバーしきれなかった。携帯電話以外の業界への音声認識技術の拡販においては、業務日報ソリューションや車・カーナビ業界など採用の事例はあるものの、収益化が想定規模にいたっていない。音源事業分野では、フィーチャーフォンの製造終了を見越し、一部機種において一括ライセンスを実施したことが影響している。
 
 
ライセンス(音声認識・UIソリューション事業分野、音源事業分野、CRMソリューション事業分野)
売上高は前年同期比23.8%減22億42百万円。このうち音声認識・UIソリューション事業分野の売上高は同25.7%減の16億87百万円。音声認識・UIソリューション事業分野では、前年のNTTドコモ向けの「しゃべってコンシェル」関連のカスタマイズ売上の減収をカバーしきれなかった。音源事業分野においては、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)の製造終了を見越して一部機種において一括ライセンスを実施したことで、売上高は同0.6%減の2億57百万円となった。ただし、計上済の機種においては、今後ロイヤルティは発生しない。CRMソリューション事業分野では、受託開発の売上が減少したことで売上高は同28.0%減の2億97百万円となった。
 
ライセンス以外(基盤事業分野、カード事業分野)
売上高は前年同期比19.8%減の1億79百万円。基盤事業分野では、カスタマイズ業務による収入の減少で売上高が65百万円と同39.2%減少した。また、カード事業分野の売上高は同1.9%減の1億13百万円となった。
 
 
2014年3月末の総資産は前期末比643百万円増の4,478百万円。長期借入金の実施500百万円に伴い現預金が増加した。またそれにより、自己資本比率は73.9%と前期末に比べて10.1ポイント悪化した。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比31.1%の減収、320百万円の経常赤字
利益率が高い音源事業分野、カード事業分野の売上減少により、上場以来始めての「減収減益、赤字、無配」を予想している。音源事業分野は、2014年3月期に一部機種において一括ロイヤルティを計上しているため、該当の機種において今後ロイヤルティは発生しない。カード事業分野では、大手予備校向けに行っているメモリーカードの書き込み受託業務において、大口の取引先との契約が終了することが要因となる。同社の主な事業である音声認識・UIソリューション事業分野では、音声認識技術の無料の流れにより、音声認識技術の提供だけでは事業の収益化が難しくなっていること、携帯電話以外の業界に向けた音声認識の収益が想定していた収益規模に未達となることも大きく影響している。
 
再成長に向けた経営方針
同社は、再成長に向けた経営方針「Re-Built」を掲げ、再成長に向けた今期からの2年間に、「音声認識事業の選択と集中」「新規事業の創出」「人事・労務改革の断行」「グループ各社のチャレンジを明確化」を行う。
新規事業の創出は「新しいビジネスの柱の構築」を目指し、「ユニーク」「スピーディ」をキーワードに海外企業との協業・アライアンスなどを推進する。事業領域としては、現在の音声認識技術の周辺ビジネスやそれ以外など、さまざまな方向性を探る。
また、日本の主要産業である自動車などの業界は輸出を前提に商品が作られており、音声認識技術の多言語化のニーズは高まっている。今後は日本語だけでなく、中国・東南アジアなどのアジア系言語への対応を加速させる。
すでに2014年3月期には優秀なエンジニアを確保しており、今後も継続して、海外とのアライアンスに対応できるグローバルな人材や、新ビジネスの事業化に伴う新たな人材を確保する方針。また、管理者層の中期的な育成プログラムの導入や人事諸制度の改定により、モチベーション向上とより能力を発揮しやすい環境を整えることで社員の育成と強化を図る。
 
 
フュートレック製品の他業界へのひろがり
音声認識を使った製品は増加しており、多くの場面において音声認識採用の取り組みが急激に進んでいる。同社の音声認識技術も、2014年3月期には、業務日報ソリューションをアドバンスクリエイト(2013年8月27日)、住友電工(2014年3月12日)、佐賀銀行(2014年3月26日)で導入された。カーナビ市場においては、パイオニアのカーナビに採用(2013年5月8日)、家電市場においても、パナソニック製エアコンの操作用アプリに採用された(2013年6月19日)。このほかにも、NTTドコモ「しゃぺってコンシェル」iPhone版に採用されている。
 
 
今後は、これまでのマーケティングデータを活かし、収益力の高い市場にターゲットを絞って集中的に営業活動を展開する。
第1のターゲットとなる市場は、自動車業界である。急速にネットワーク化が進む自動車業界において音声認識技術は「ハンズフリー・アイズフリー」の技術として注目されている。メーカー純正のカーナビゲーションへの搭載を当面の目標として、引き続き販促活動を行う。技術採用のためには、多言語対応や自動車特有のノイズ環境対策などが必要となるが、すでにパイオニアのカーナビに採用された実績があり、ノイズ環境などの対策は改良を重ねている。しかし、製品化サイクルが長い産業であり、中期的なアプローチが必要となる。

その他にも、富士通のクラウドサービスに同社の音声認識技術を組み合わせて、業務用途への拡販を目指している。業務用途での音声認識技術の利用について、業務用システムの大手である富士通との連携により、拡販を図る。さらに、従来からの主な市場である携帯電話業界においても、新たなランニングロイヤルティにつながる技術の提案を強化する。
 
 
今後の注目点
各方面で音声認識を採用する動きが活発化している。ウェアラブル端末やロボット産業など、新たな製品においても音声認識技術は注目を集めている。その一方で、他社との競争の激化や音声認識技術を無料で提供する流れから、営業力、製品力、技術力の強化はもちろんのこと、事業の収益化には戦略が必要となっている。
2015年3月期は、収益性の高い音源事業とカード事業が同時に縮小することもあり大幅な減収減益となる。ただ同社は数年前から音声認識の携帯電話業界以外の拡販に取り組んできた。その成果として14/3期において、既に現れたものもある。携帯業界よりも格段に市場規模の大きい非携帯電話業界向けが軌道に乗れば、潜在成長力を高める事ができる。取り組みの成果に期待したい。