ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

東証1部

ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.29

(4829:東証1部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.29】2014年5月期業績レポート
取材概要「フィーチャーフォンからスマートフォンへの市場の変化をとらえ業績を拡大させてきた同社だが、第1の成長ステージを経て第2の成長ステージに立った・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年7月30日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年5月 4,508 335 340 437
2013年5月 4,134 372 391 354
2012年5月 2,790 304 318 170
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(7/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
256円 37,700,000株 9,651百万円 10.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
3.00円 1.2% 9.28円 27.6倍 111.20円 2.3倍
※株価は7/14終値。
 
日本エンタープライズの2014年5月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。生活実用系や交通情報等のコンテンツを制作しスマートフォン等に配信するコンテンツサービス事業と、企業のコンテンツ制作・運営、システム構築、アフィリエイト広告、リバースオークションやIP-PBXソリューションといった業務(コスト削減)等のソリューション事業が2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、中国とインドでは国内コンテンツプロバイダの先頭を走る。
 
自社開発へのこだわり
配信するコンテンツを自社開発する事で「提供するコンテンツの権利を自社で保有(高い収益性を実現できる)」する同社独自のビジネスモデルをベースとし、携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売(独自に開発したリアルアフィリエイト)システムと連動させる事でコンテンツの拡販に成功している。
 
企業グループ 連結子会社7社、非連結子会社4社
グループは、広告事業を手掛ける(株)ダイブ、音楽事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、交通情報を中心にした情報提供の交通情報サービス(株)、Web/Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、中国事業の統括に加え、携帯電話販売店を手掛ける因特瑞思(北京)信息科技有限公司、モバイルコンテンツの企画・開発・配信の北京業主行網絡科技有限公司、IT系の教育事業を手掛ける瑞思創智(北京)信息科技有限公司の連結子会社7社、及び音声通信関連のソリューションを手掛ける(株)and One、ネイティブアプリを主としたモバイルコンテンツ事業を手掛ける(株)HighLab、モバイル向けコンテンツ配信やキャラクターライセンス事業の瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、インド現地法人NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社4社。
 
コンテンツの一例
『女性のリズム手帳』 女性にとって大切な生理日管理に特化したアプリ。生理サイクルの記録・管理をはじめ、妊娠しやすい期間・生理日・排卵日の予測など様々な情報やアドバイスを提供(App Store、Google Play)。
『Fivetalk』 お絵描き&グリーティングカードが送れるスマートフォン向けメッセージアプリ(App Store、Google Play)。
『ATIS交通情報』 高速道路及び一般道路の独自の交通情報や、乗換案内、運行・遅延情報の鉄道情報やその他、駐車場・フェリー・お天気等の便利な情報が満載。(dメニュー、auポータル、SoftBank、スゴ得コンテンツ、auスマートパス、Yahoo!プレミアム、フィーチャーフォン)
『レジャー&駐車場情報』 レジャーに役立つスポット情報プラスアルファの情報として、駐車場情報をより充実させたサイト!(dメニュー、auスマートパス、Yahoo!プレムミム)
 
 
成長戦略
 
コンテンツサービス事業において、月額(スマートフォン、以下SP)や定額制(SP)等のキャリア公式サイトでのサービスで収益基盤強化を図ると共に、「ネイティブアプリ」を中心に開発・拡充を図るゲーム分野、ツール分野、ヘルスケア(ライフスタイル)分野、コミュニティ(いずれもSP)分野を連携させる「コンテンツプラットフォーム」を展開していく。また、ソリューション事業においては、開発案件(スマートデバイス)の拡大、広告事業(アフィリエイトビジネス)の拡大、コスト削減(IP電話、リバースオークション)の拡大、及び協業(アライアンス型)モデルの拡大、といった4つの課題に取り組んでいく。
 
【コンテンツサービス事業】
月額課金によるアプリの提供や定額制などキャリア公式サイト経由でのサービスの拡大でスマートフォン向け売上高がセグメント売上高の65%を占めるまでに至っており、収益基盤強化の強化が着実に進んでいる。
 
 
(1)「コンテンツプラットフォーム」戦略
定額制サービス向けコンテンツの利用促進及び追加投入により、引き続きキャリア経由でのサービス拡大に取り組んでいくが、これと並行してスマートフォン向け「コンテンツプラットフォーム」を育成していく考え。
 
 
この一環として先ず強化するのは、ドアノックツールとして有効なゲーム分野だ。スマートフォン向けのアプリ(コンテンツ)は、ブラウザー上で利用するブラウザーアプリと、App StoreやGoogle Play等のマーケットからユーザーが各自の端末にダウンロードして利用するネイティブアプリに分かれ、スマートフォンの機能をフルに活用できる上、操作性、表現力、デザイン性等でも優れているため、ブラウザーアプリからネイティブアプリへのシフトが進んでいる。同社においては、ヘルスケアアプリ、メッセンジャーアプリ、コミュニティソーシャルアプリ等の開発・運営実績を有するが、ゲーム分野のネイティブアプリ化はこれからだ。
 
主力ネイティブアプリ
 
「女性のリズム手帳」は女性の心と体のサポートアプリ。一方、「Fivetalk」は“お絵描き&グリーティングカード送信”のスマートフォン向けメッセージアプリで、文字のやり取りだけでなく、様々な方法でコミュニケーションをとる事ができる斬新さが評価されている。また、コミュニティソーシャルアプリ「コミュカラ」は気の合う仲間とコミュ(グループ)をつくり、雑談・交流・写真のシェア・スケジュールの共有が仲間と簡単にできるマルチカレンダー・手帳アプリ。いずれも、App Store、Google Playでダウンロードできる。
 
ネイティブアプリを中心にしたモバイルコンテンツ事業の展開を目的に100%子会社(株)HighLabを設立
4月1日に設立した100%子会社(株)HighLabは、ネイティブアプリを中心としたモバイルコンテンツ事業を展開するための戦略子会社である。開発を強化するゲームとの連携を図り「コンテンツプラットフォーム」戦略を推進していく。尚、ネイティブアプリを主としたスマートフォンゲーム市場は13年の5,468億円から、16年には8,000億円超に成長すると予想されている(株式会社CyberZ/株式会社シード・プランニング共同調べ)。この他、収益性の高い自社コンテンツ資産の二次利用にも取り組んでいく考え。この一環として、インドネシア業界2位(契約件数7,000万件)の移動体通信事業者XL Axiata 社のアプリ取り放題サービス「AppSeru(アップセル)」にローカライズした自社アプリ(Woman's DIARY:女性のリズム手帳、A Walk in the Clouds:ぷかぷか散歩、A Space Odyssey:わくわく宇宙遊泳)の提供を開始した。また、LINEクリエーターズスタンプに提供している同社キャラクター「うたがめ」も順調に販売を伸ばしている。
 
(2)中国事業
電子書籍のビジネスモデル(人気小説を漫画化するビジネスモデル)の強化に取り組んでおり、「騰訊動漫」等の各種プラットフォームに配信している第一弾タイトル「九鼎記」は総閲覧数が既に2,000万を突破している。2月には第二弾タイトル「歩歩生蓮」の雑誌連載もスタートした。
今後は、中国でのコンテンツ提供に関する全国ライセンスを保有している強みを活かしたビジネスの育成にも取り組んでいく考え。その他、日本のゲームコンテンツを中国向けにローカライズして配信するサービスを開始した。
 
 
【ソリューション事業】
開発案件(スマートデバイスの受託開発)の拡大、広告事業(アフィリエイトビジネス)の拡大、コスト削減(IP電話、リバースオークション)の拡大、及び協業(アライアンス型)モデルの拡大、といった4つの課題に取り組んでいく。

このうち、開発案件については、足元の受注がスマートフォン関連をけん引役に堅調に推移しており、NTTドコモがiPhone5s/cを販売開始した影響で落ち込んだ広告事業についても、携帯電話販売会社との連携強化と新規の携帯電話販売会社の開拓に取り組んだ結果、V字回復を実現した。広告事業では、コンテンツプロバイダ(広告主)への営業強化(→広告単価向上)と携帯電話販売会社(協業企業)への販売支援(→継続率・獲得数向上)を推進。携帯電話販売会社に対しては、既存協業企業において既存店との連携強化及び取扱店舗数の拡大に注力すると共に、新規協業企業(新規取引先)の開拓に取り組んだ。
 
 
コスト削減ソリューションとして、子会社(株)and Oneの技術を活用した高品質なソフトフォンとスマートフォンの組み合わせによるコスト削減サービスを中小企業や小規模事業者に提供していく(内線電話として利用でき、電話帳機能を有する)。また、リバースオークションでは、見積徴収システム「Profair」を含めて、オークションの活性化を図るべく、バイヤーとサプライヤー双方への拡販に取り組んでいく。この他、コミュニケーションアプリ技術を活用したセキュアで信頼性の高い企業向け「メッセンジャーアプリ」の販売を本格化する。この「メッセンジャーアプリ」は、動画・画像付報告書、議事録自動まとめ、及びスケジュール共有等の機能を有し、クライアント毎にカスタマイズして提供していく考え。

一方、海外では、中国・上海エリアで展開している携帯電話販売店(チャイナテレコムショップ2店舗)の運営において、キャリアの販売施策変更の影響で収益が下振れした前14/5期の反省を踏まえ、キャリアの販売施策に左右されない収益構造の構築に取り組んでいる。具体的には、大口法人への外販営業、付属品販売の強化、及び徹底的なコスト削減を推進している他、効率的な人材配置(人件費の削減)に努めている。
 
 
 
2014年5月期決算
 
 
キャリア定額制サービスや店頭アフィリエイトでのコンテンツ販売をけん引役に前期比9.1%の増収
売上高は前期比9.1%増の45億08百万円。内訳は、コンテンツサービス事業が同15.3%増の24億69百万円、ソリューション事業が同2.4%増の20億39百万円。コンテンツサービス事業では、注力しているキャリア定額制サービスや店頭アフィリエイトでのコンテンツ販売の拡大で(会員増による月額課金の増加)、交通情報(同31.2%増の8億50百万円)、ライフスタイル(同22.7%増の4億59百万円)、電子書籍(同11.6%増の2億16百万円)、及びゲーム(同373.0%増の1億69百万円)の売上が増加。ソリューション事業では、一時的な要因で広告事業(店頭アフィリエイト)の売上が6億79百万円と同15.5%減少したものの、スマートフォン・タブレット関連の受託開発が堅調に推移したソリューション(同2.0%増の10億75百万円)や、前期の第4四半期に開始した中国での中国電信(チャイナテレコム)系携帯電話ショップ運営が期を通して寄与した海外(同136.6%増の2億73百万円)の売上が増加した。
 
積極的な広告宣伝費の投下や海外を含めた新規事業関連の先行投資が利益を圧迫
営業利益は同9.9%減の3億35百万円。キャリア定額制サービス、月額課金会員、更にはネイティブアプリの会員獲得に向けた積極的な広告宣伝費の投下(2億92百万円→5億15百万円)やソリューション事業における中国携帯ショップ関連(人件費60百万円、店舗関連20百万円)、更には新規事業のための人員確保及びソリューションの開発要員の増員等で販管費が18億57百万円と同21.7%増加。高収益なキャリア定額制サービス向けコンテンツの売上増で原価率が2.7ポイント改善し、売上総利益が同15.5%増加したものの、吸収できなかった。支払手数料の増加等で営業外費用も増加したが、投資有価証券売却益5億16百万円(前期は3億52百万円)を計上したため、当期純利益は4億37百万円と同23.1%増加した。
 
期初予想との比較
ソリューション事業において、キャリアの販売奨励金の一部休止等の影響で中国での携帯電話販売の台数が計画を下回った事、及びNTTドコモがiPhone5s/cを販売開始した影響で日本での広告事業(店頭アフィリエイト)の獲得件数が計画を下回った事が要因。
 
2月28日に東証1部指定。期末配当は記念配1円を含む3円
同社は、2月28日をもって、東証2部から1部指定となった。これを記念して1 株当たり1円の記念配当を実施する考えで、14/5期の期末配当は記念配1円を含む3円を予定している(株式分割考慮後で普通配は20銭の増配)。
 
 
(2)四半期業績
 
第4四半期(3-5月)は、売上高12億31百万円(前四半期比9.0%増)、営業利益79百万円(同19.6%減)、経常利益81百万円(同23.3%減)、四半期純利益22百万円(同88.5%減)。広告事業(店頭アフィリエイト)のV字回復とソリューションの受託案件が拡大した事でソリューション事業の売上が前四半期比10.3%増加。コンテンツサービス事業はライフスタイルが減少したものの、キャリア定額制サービスを中心に交通情報・ゲームが増加した。利益面では、相対的に原価率の高いソリューション事業の売上が大きく伸びた事で原価率が上昇する中、コンテンツサービス事業での積極的な広告宣伝費の投下で販管費率も上昇した。
 
 
 
 
期末総資産は前期末に比べて4億72百万円増の55億41百万円。借方では、現預金が増加する一方、長期預金の払戻等で投資その他が減少。貸方では、純資産が増加。安定したフリー・キャッシュ・フローの黒字を背景に財務体質は良好。無借金経営で、自己資本比率も75.7%(前期末に比べて0.4ポイント改善)と高い水準を維持している。
 
 
税金費用(△95百万円→△3億81百万円)を含む運転資金の増加で営業CFが減少したものの、長期預金の払戻や投資有価証券の売却で投資CFが増加。6億06百万円のフリー・キャッシュ・フローを確保した。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記の各データは決算短信及び有価証券報告書のデータを基にしており、ROE、総資産回転率、及びレバレッジの算出に当たっては総資産及び自己資本の期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
東証発表の「決算短信集計」によると、東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の14/3期のROEは、金融を除く全産業8.65%(前期は4.99%)、製造業8.55%(同4.53%)、非製造業8.79%(同5.67%)。同社は市場平均を上回るROEを実現している。14/5期は投資有価証券売却益の計上等で売上高当期純利益率が改善すると共に、業容拡大やM&Aでレバレッジも上昇した。
 
 
2015年5月期業績予想
 
 
前期比15.6%の増収、同26.4%の経常増益
前期の第2四半期を底にV字回復した流れを引き継ぎ売上高が52億10百万円と前期比15.6%増加。キャリア定額制サービス、広告、及び受託開発等のソリューションが増収をけん引する。ゲームやツール系のネイティブアプリの開発及び販促強化に伴い営業費用が増加するものの(広告宣伝費は6億円を予定)、増収効果や中国での携帯電話販売事業の損益改善で吸収して営業利益が4億15百万円と同23.7%増加する見込み。
当期純利益が減少するのは、有価証券売却益の減少に加え、特別損益等を保守的に見ているため(14年6月9日に投資有価証券売却益3億31百万円が発生しており、第1四半期に特別利益として計上する予定)。
 
配当は普通配を1円増配の年3円を予定
配当は1株当たり3円の期末配当を予定している。記念配1円を落とし、普通配を1円増配する考えで、予想ベースの配当性向は32.3%となる見込み(前期実績は25.9%)。
尚、同社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして捉えており、業績の推移、キャッシュ・フロー、自己資本利益率、自己資本比率、今後の設備投資計画等を勘案の上、株主還元策を実施していく考え。また、利益配分については、将来の積極的な事業展開と経営環境の変化に備えた資金を確保すると共に、業績に応じ、かつ安定性も配慮した配当政策に取り組む方針。
 
 
今後の注目点
フィーチャーフォンからスマートフォンへの市場の変化をとらえ業績を拡大させてきた同社だが、第1の成長ステージを経て第2の成長ステージに立った感がある。14/5期決算は成長ステージが端境期にある事を示したものだ。具体的には、キャリア公式サイトの利用とアプリのスマートフォン対応による需要の取り込みで収益基盤を確立する事ができた。今後は、この収益基盤から得られるキャッシュ・フローを活かしてネイティブアプリを強化する事でキャリアを離れたビジネスを強化拡大させていく必要がある。開発を強化するゲームについては、大作主義ではなく、他の分野と連携しやすいライトゲームのラインナップ拡充が事業成否のポイントと考える。子会社(株)HighLabを中心にグループ体制の整備も進んでいる事から、コスト削減ソリューションや中国事業と共に15/5期の展開に期待したい。