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(7776:JASDAQ) セルシード 企業HP
橋本 せつ子 社長
橋本 せつ子 社長

【ブリッジレポート vol.16】2014年12月期上期業績レポート
取材概要「日本の再生医療は承認のためのハードルが高く、世界に比べて実用化が遅れていたが、2013年に実施された薬事法の改正や再生医療の安全性確保等に・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年9月2日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社セルシード
社長
橋本 せつ子
所在地
東京都新宿区原町3-61 桂ビル4F
事業内容
日本発の再生医療基盤技術に基づく、世界初の「細胞シート再生医療」の世界普及を推進
決算期
12月末日
業種
精密機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年12月 105 -534 -581 -584
2012年12月 75 -846 -842 -913
2011年12月 86 -1,418 -1,358 -1,442
2010年12月 66 -1,204 -1,002 -1,009
2009年12月 87 -785 -788 -790
2008年12月 61 -778 -644 -650
2007年12月 40 -809 -614 -616
2006年12月 23 -672 -464 -470
2005年12月 34 -412 -336 -343
2004年12月 53 -257 -214 -215
株式情報(8/26現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,122円 8,674,292株 9,733百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - - - 355.10円 3.2倍
※株価は8/26終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
セルシードの2014年12月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(細胞をシート状に組織化したもの)」を用いて従来の治療では治癒できなかった疾患や障害を治す再生医療「細胞シート再生医療」の世界普及を目指している。
事業は、細胞シート再生医療製品の研究開発と細胞シート製造及び加工技術の開発を行う細胞シート再生医療事業、細胞シートの培養器材である温度応答性細胞培養器材及びその周辺製品の研究開発・製造・販売を行う「再生医療支援事業」に分かれる。「再生医療支援事業」は細胞シート再生医療事業の提携先開拓のための戦略的な意義も有している。
 
【細胞シート工学と細胞シート再生医療】
「細胞シート工学」の基本原理は、温度応答性細胞培養器材を用いた細胞シートの培養と回収である。同社が開発した温度応答性細胞培養器材を使うと、増殖させた細胞を一枚のシート(細胞シート)として回収できる。「一枚のシートとして回収できる」という事は、「従来の技術では不可能だった自律的に機能する人口の生体組織として回収できる」と言い換える事ができる。

従来、増殖した細胞を回収する方法はトリプシン等のタンパク質加水分解酵素を使って細胞をバラバラの状態にして回収する方法しかなく(「細胞外マトリックス」という細胞同士を接着させる蛋白質が分解された状態で回収)、有機的に結合した組織を回収する事ができなかった。しかしバラバラの細胞は注射器等で患者の体内に注入しても患部定着率が悪かった(バラバラの細胞も接着蛋白質を分泌するため時間の経過と共に定着し細胞同士が結合するが、患部に定着するとは限らない)。これに対して、温度応答性細胞培養器材で増殖させると、細胞外マトリックスを保持したシート状の状態で回収できるため、患部定着率が高くその後の増殖が容易だ。
 
温度を下げると、温度応答性ポリマーの性質が変わり、細胞シートが剥離する。
従来、細胞の回収に際してトリプシン等のタンパク質加水分解酵素を用いていたが、タンパク質加水分解酵素は細胞間の結合因子や接着因子を破壊し、細胞に大きな傷害を与える。
 
(注)細胞外マトリクス
細胞の外に存在する超分子構造体。細胞外の空間を充填すると共に、骨格的役割や細胞間結合の足場的役割を担う他、細胞の増殖・分化も制御する。細胞を細胞として機能させるために不可欠な物質。
 
 
 
新経営体制の構築と今後の展開
 
(1)新経営体制の構築
先進的な法規制の整備、研究開発向け公的支援の拡充、更には再生医療国際標準化・規格化の推進等、日本再興戦略に掲げられた再生医療関連の施策が次々と具体化されている。同社はこうした再生医療産業化の機運を先取りして成長を加速させるべく新たな経営体制の構築に取り組む考えで、14年6月に事業化フェイズに強みを有する橋本せつ子氏が代表取締役社長に就任。前代表取締役社長の長谷川幸雄氏は取締役会長として橋本社長をサポートしていく考えだ。
 
代表取締役社長 橋本せつ子氏のプロフィール
橋本氏の専門分野は、生化学や分子生物学といった生物学。アメリカやドイツで研究に取り組んだ後、日本のドイツ資本やスウェーデン資本のバイオ企業に勤務。バイオテクノロジー産業における30年の業務経験を通して国内外に広がる幅広いネットワークを構築した。今後は、(株) セルシードの代表取締役社長として、30年にわたる業務経験とネットワークを活かしてサイエンスとビジネスの懸け橋となり、日本初の技術を世界に紹介していく事になる。
尚、橋本社長は、長谷川会長がファルマシアバイオテク(株)で研究開発部長をしていた時の同僚であり、当時はマーケティングを担当していた。また、「細胞シート工学」の開発者である東京女子医科大学の岡野光夫教授とスウェーデン・カロリンスカ研究所との共同研究の仲介を手掛ける等、(株)セルシード とも縁が深かった。
 
学歴
1979年  九州大学 理学部生物学科 博士課程修了
1986年  ドイツハイデルベルグ大学博士課程修了 分子生物学専攻
2010年  北陸先端科学技術大学院大学 前期博士課程修了(MOT)
 
職歴
1984年  ヘキストジャパン(株) 医薬総合研究所(ドイツの製薬企業)
1991年  ファルマシアバイオテク(株)(スウェーデンのバイオ企業)
1998年  ビアコア(株)(ファルマシアバイオテク(株)の日本法人)
2008年  (株)バイオビジネスブリッジ 設立 代表取締役社長 就任(現任)
2009年  スウェーデン大使館 投資部、科学技術部にてライフサイエンス担当
2014年  (株)セルシード 代表取締役社長就任
 
(2)今後の事業展開
セルシードのミッション
・再生医療を一日も早く実現する
・日本初のユニークな細胞シート工学技術を世界に発信する
・安全で品質の高い製品、サービスを提供し、医療の変革に貢献する
 
これまでのセルシードは、大学の基礎研究シーズを臨床開発につなげる研究支援会社だったが、新生セルシードは、収益を創出しながら、再生医療を実現する事業会社として展開していく。
 
外部環境と同社の戦略的方向性
再生医療の産業化を取り巻く環境は追い風を受けており、特に安倍政権下で法整備が進んだ日本は再生医療事業環境の活性化が顕著である。例えば、13年4月には再生医療の実用化を目指した再生医療推進法が成立し、同年11月には改正薬事法(いわゆる医薬品医療機器等法)と再生医療等安全性確保法が成立した。医薬品医療機器等法においては、医薬品や医療機器とは別に「再生医療等製品」が新たに定義され、その特性を踏まえた制度(例:条件及び期限付承認制度、いわゆる早期承認制度)が導入された。また、再生医療等安全性確保法において、再生医療を3つのカテゴリーに分類して安全性確保を図るリスク別安全性規制が導入された他、細胞加工業(特定細胞加工物の製造を外部委託できる仕組み)が新たに創設される事となった。

同社は、14年を「再生医療元年」と位置付けており、今後の方向性として、「長期的な技術革新の動向を見据えた戦略的な再生医療パイプラインの開発」と「戦略的な再生医療パイプラインとシナジーのある短期〜中期の収益源の開発」の2つの方向性を示している。
 
戦略的方向性
・長期的な技術革新の動向を見据えた戦略的な再生医療パイプラインの開発
・戦略的な再生医療パイプラインとシナジーのある短期〜中期の収益源の開発
 
新生セルシードの3つの施策
上記方向性の下で、継続的に進行する技術革新に対応しつつ、先行投資と事業採算を両立していく考え。具体的な施策として、器材事業の拡充、受託加工業への進出、及び再生医療パイプラインの戦略的順位付け、の3点を挙げている。

再生医療の産業化のポイントは、技術革新、法規制の整備、企業参入。産業化のプロセスを示せば、細胞シート工学・iPS細胞等の原料細胞技術や細胞シート工学等の加工技術、更には輸送など周辺技術といった基礎技術の確立 ⇒ 公的支援や企業参入によって関連市場が顕在化し始める等、基盤技術の標準化・規格化 ⇒ 法規制への取り込み ⇒ 生産自動化の研究開発等、生産の機械化・自動化 ⇒ 市場拡大、原価低減、性能向上による競争、となる。

基礎技術の確立に向けた取り組みが進み、基盤技術の標準化・規格化が動き出した事は器材事業にとってビジネスチャンスの到来であり、再生医療の産業化が法規制に取り込まれた事で受託加工の事業化も加速する。また、生産自動化の研究開発など日進月歩で進む技術革新動向と法規制運用動向の双方を勘案しつつ、再生医療パイプラインの戦略的順位付けを行っていく。
 
 
 
2014年12月期上期決算
 
 
細胞シートの受託加工業参入に向けた準備を開始
前年同期と同様に細胞シート再生医療事業の売上はなく、再生医療支援事業で34百万円の売上を計上した。売上が減少したのは、昨年度あった特注品の受注が、本年度は計上されなかったことなどが主因だ。しかし通期ではセグメント売上目標75百万円に変更はない。一方、細胞シート再生医療事業では、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の14年11月施行を見据え、細胞シートの受託加工業参入に向けた準備を開始した。

損益面では、売上の減少で売上総利益が減少する中、販管費が増加したため、前年同期は224百万円だった営業損失が316百万円に拡大した。販管費の内訳は、研究開発費98百万円(前年同期:87百万円)、その他227百万円(前年同期:152百万円)。補助金収入が減少したものの、為替差損がなかった事と支払手数料が減少した事で営業外損益が改善したため、経常損失は292百万円にとどまった。
 
 
 
上期末の総資産は3,783百万円と前期末に比べて998百万円増加した。14年1月に第11回新株予約権行使により860百万円を調達した事、及び14年3月に第1回無担保転換社債型新株予約権を発行して500百万円を調達した事で現預金と純資産が増加した。
尚、新経営体制下での資金調達戦略の練り直しに伴い、14年7月に第1回無担保転換社債型新株予約権を繰り上げ償還した。
 
 
今後の注目点
日本の再生医療は承認のためのハードルが高く、世界に比べて実用化が遅れていたが、2013年に実施された薬事法の改正や再生医療の安全性確保等に関する法律(再生医療新法)の成立で法制度の整備が進み環境が大きく変わった。同社は新経営体制を早期に構築する事でこのビジネスチャンスをとらえていく考え。今期決算が発表される15年2月には、収益を創出しながら、再生医療の実現を目指す新生セルシードとしての事業計画が示される予定だ。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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