ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.42

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.42】2015年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「業績予想に変更はなかったものの、1Qの営業利益(5億90百万円)が上期予想(10億円)の半分を上回った。上期予想に対する売上高の進捗率も55%・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年9月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 44,745 798 1,262 1,391
2013年3月 38,424 -3,608 -3,465 -6,532
2012年3月 60,088 4,124 3,287 1,715
2011年3月 57,880 6,931 6,290 4,483
2010年3月 31,541 703 524 156
2009年3月 36,653 2,790 2,097 743
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(8/22現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
647円 30,810,278株 19,934百万円 4.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
8.00円 1.2% 22.72円 28.5倍 1,166.17円 0.6倍
※株価は8/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2015年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
消耗品を含めた半導体・FPD製造装置部品、冷熱素子「サーモモジュール」を核とする電子デバイス、太陽電池関連製品等の製造・販売、及び関連する各種技術サービスを手掛けている。
1980年、NASAのスペースプログラムから生まれた磁性流体を応用した真空技術製品や冷熱素子として用途が広がっているサーモモジュール等、独自技術を核にした企業として誕生。創業から30年余りにわたって培われてきた多様な技術は、エレクトロニクス、自動車、次世代エネルギー等、様々な産業分野で応用されている。また、トランスナショナルカンパニーとして、日本、欧米、中国、アジアに展開し、マーケティング、開発、製造、販売、そしてマネジメントと、それぞれの国・地域の強みを活かした経営も同社の特徴だ。
 
【事業セグメント】
事業は、半導体・FPD・LED等の製造装置に使われる真空シール、石英製品、セラミックス製品等の装置関連事業、サーモモジュールが中心の電子デバイス事業、及びシリコン結晶やPVウエーハ、結晶製造装置に使われる坩堝等の太陽電池関連事業に分かれ、14/3期の売上構成比は、それぞれ48.3%、14.8%、29.5%、及びソーブレード、装置部品洗浄、工作機械等の報告セグメントに含まれないその他7.4%。
 
 
 
装置関連事業
同社が最も力を入れている事業であり、エンジニアリング・サービスをトータルに提供。装置部品、消耗品、スペアパーツの生産に加え、装置洗浄(中国でシェア50%)も手掛ける。主力製品で世界シェアNo.1の真空シールは、製造装置内部へのガスやチリ等の侵入を防ぎつつ回転運動を装置内部に伝える機能部品で、半導体、FPD、LED、太陽電池等の製造装置に不可欠。その内部には創業からのコア技術である磁性流体(磁石に反応する液体)シールが使われている。ただ、いずれの分野も設備投資の波が大きいため、比較的需要が安定した搬送用機器や精密ロボット等、一般産業分野での営業を強化しており、真空シールを組み込んだ真空チャンバーやゲートバルブ等(共に真空関連の装置で使われる)の受託製造にも力を入れている。
一方、石英製品とセラミックス製品は共に半導体の製造工程に欠かせない消耗品。石英製品は半導体の製造工程に不可欠な高温作業に耐え、半導体を活性ガスとの化学変化から守る高純度のシリカガラス製品。同社はLEDメーカー向けで高いシェアを有する。太陽電池の製造プロセスで使われる石英坩堝(太陽電池関連事業)でも高いシェアを有し、この技術を活かして半導体向け高純度坩堝を育成中である。また、材料や加工技術を核とするセラミックス製品は国内外の半導体製造装置メーカーを顧客とし、半導体検査治具用マシナブルセラミックスがフラッシュメモリ向けで伸びている。
この他、ディスクリート半導体向けの小口径ウェーハ加工(インゴットのスライス)も月産30万枚規模に達しており、小口径ウェーハの加工分野で一定の存在感を有する。
 
電子デバイス事業
事業の核となっているのは対象物を瞬時に高い精度で温めたり、冷やしたりできる冷熱素子「サーモモジュール」である。サーモモジュールは自動車用温調シートを中心に、遺伝子検査装置、光通信、家電製品等、利用範囲は広い。高性能材料を使用した新製品の開発や自動化ラインの導入によるコスト削減と品質向上により新規の需要開拓や更なる用途拡大に取り組んでいる。また、釣り具のリール(リール内部の防水用途)や4Kテレビのスピーカー向け等で新たな用途開発が進んでいる磁性流体の販売も当セグメントに含まれる。
 
太陽電池関連事業
2005年に太陽電池関連事業に参入し、シリコン結晶製造装置、石英坩堝等の消耗品、及びシリコン製品等の製造販売を手掛けてきた。現在は市場ニーズを踏まえて、太陽電池の基板となるシリコンインゴットとウェーハの受託生産や、インゴットとの製造時に使用される単結晶シリコン用坩堝や多結晶シリコン用角層坩堝(共に石英の加工技術がベースになっている)の製造・販売が中心。消耗品である坩堝については、多様なラインナップを揃えると共にカスタマイズにも対応し、高い市場シェアを有する。
 
【新たな取り組み】
中期的には、食料、水、エネルギー、コミュニケーション、医療といった市場拡大が見込まれる分野で、強みである真空技術や精密加工技術を活かしていく考え。医療分野では、CTスキャンやMRIで真空チャンバー、真空シール、真空パーツ等の需要があり、足元、中国メーカーとの商談が進んでいる。また、欧州の医療機器メーカーとの間で、サーモモジュールを使った医療機器向けパワー基板の商談も進んでいるようだ。
尚、長寿命と温度制御の正確さを強みに、同社は血液検査装置やDNAのPCR法増殖装置向けのサーモモジュールで90%以上のシェアを有する。
 
 
【ROE分析】
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
過去5期間、業績の変動でROEも大きく振れた。具体的には、主要3セグメントがそろって好調だった11/3期は売上・利益(売上高578億円、営業利益69億円)が過去最高を更新したが、12/3期第2四半期後半から太陽電池関連事業の各製品の需要が急減し、その後、製品価格にも波及した。また、半導体等の生産や設備投資がピークアウトしたのもこの頃だった。12/3期は第1四半期から第2四半期前半にかけての好調で下期の落ち込みをカバーできたが、13/3期は事業環境が一段と悪化し営業損益以下の各利益段階で損失を計上した(太陽電池関連の多額の在庫評価減を売上原価に計上した他、販管費や特別損失もリストラ費用で膨らんだ)。
この時期は太陽電池関連を中心に巨額の設備投資を実施した時期でもある。10/3期の投資キャッシュ・フロー(CF)は15億円のマイナスだったが、11/3期はマイナス幅が約3.5倍の44億円に拡大し、更に12/3期はマイナス幅が倍増し85億円弱のマイナス。この結果、13/3期は売上の減少と資産の増加で総資産回転率が0.55回に低下した。

12年11月から、事業構造改革に着手し、コアコンピタンスである真空技術や精密加工を用いたエンジニアリング・サービスの拡大に注力すると共に、採算性の観点から全ての事業を厳しく峻別し、不採算分野からは撤退する等、いわゆる“選択と集中”による経営の見直しを行った。この結果、14/3期は営業損益が8億円弱の黒字に転換。加えて、投資有価証券売却益13億60百万円など特別利益13億78百万円を計上したため当期純利益が営業利益を大幅に上回る14億円弱となった。ただ、総資産回転率は0.63回にとどまり、設備の過剰感は否めなかった。
 
 
過去20年間の売上高と総資産の推移をみてみると、00/3期から12/3期にかけて、売上高が79億円から600億円へ、総資産が179億円から725億円に拡大した。00/3期から12/3期までの平均営業CFは20.8億円と、営業利益の平均16.9億円を20%強上回る等、確かにキャッシュを稼ぐ力は強かったが、この間、フリーCFはほぼ一貫してマイナス。安定した営業CFを背景に強い資金調達力を有していた事もあるが、同社の経営は売上高の拡大ばかりに目が行き、資産効率やフリーCFの視点が欠けていたと言わざるを得ない。時には思い切った投資が必要だが、「身の丈に合った経営」を頭の片隅に置いておく必要もあっただろう。設備の過剰感解消には時間を要するものと思われるが、現在は“選択と集中”による経営の下、収益力の強化と共に有利子負債の圧縮による財務体質の改善や財務基盤の強化にも力を入れている。こうした取り組みの進捗と共に、ROEの改善が進むものと思われる。
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比48.1%の増収、営業利益5億90百万円(前年同期は58百万円の損失)
売上高は前年同期比48.1%増の141億29百万円。半導体等の生産及び設備投資の回復で装置関連事業の売上が同32.4%増加する中、太陽電池用シリコン製品のOEMの好調で太陽電池関連事業の売上が同79.0%増と伸長。自動車温調シート向けサーモモジュールを中心に電子デバイス事業の売上も同50.8%増加した。

利益面では、太陽電池用シリコン製品等の製品価格の低迷で原価率が1.9ポイント悪化したものの、増収効果で営業費用の増加を吸収。前年同期は58百万円の損失だった営業損益が5億90百万円の利益に転じた。ただ、為替差損2億02百万円(前年同期は7億36百万円の為替差益)を計上した事で営業外損益が悪化。法人税等が税前利益を上回り、44百万円の四半期純損益となった。
 
 
(2)セグメント別動向
装置関連事業
売上高61億13百万円(前年同期比32.4%増)、営業利益4億28百万円(前年同期は9百万円の利益)。スマートフォン用メモリ及びロジックの生産増を受けて、石英製品やセラミックス製品など半導体の製造プロセスに使用されるマテリアル製品の売上が増加した他、半導体等の設備投資が動き出した事で各種製造装置に使われる真空シールも、受託製造を含めて回復基調。シリコンウエーハ加工も、小口径ウェーハが堅調に推移した。
 
太陽電池関連事業
売上高50億15百万円(前年同期比79.0%増)、営業損失1億09百万円(前年同期は1億69百万円の損失)。日本、中国、米国で太陽電池パネル導入量が増加したものの(数量増)、パネル価格は低迷が続いた。こうした事業環境を反映して、同社が力を入れている太陽電池用シリコン製品のOEM供給も数量が増加したものの販売単価の値戻しが進まなかった。この他、消耗品である石英坩堝や角槽が堅調に推移したが、シリコン結晶製造装置は新規受注がなく、メンテナンス部品の売上のみにとどまった。
 
電子デバイス事業
売上高は20億78百万円(前年同期比50.8%増)、営業利益2億84百万円(同132.2%増)。米国での好調な自動車販売により温調シートが搭載される高級車の増加で自動車温調シート向けサーモモジュールの売上が増加。その他の用途では、検査装置、バイオ関連機器向けが底堅く推移した他、民生分野向けも堅調に推移。パワー半導体用基板の売上も増加傾向にあるようだ。
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末に比べて13億87百万円(1.9%)減の733億36百万円。大きな変化はなかったが、有利子負債が減少する中で現預金が増加した。同社は収益力の強化と共に、無借金経営を目指す意気込みで財務体質の改善や財務基盤の強化にも取り組んでいる。未だ緒に就いたばかりであるが、こうした経営努力の跡が財務諸表に表れてきたようだ。自己資本比率は49.0%。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
業績予想に変更はなく、通期で前期比11.7%の増収、同125.5%の営業増益予想
売上高は前期比11.7%増の500億円。内訳は、装置関連事業が同3.1%増の223億円、太陽電池関連事業が同22.3%増の161億50百万円、電子デバイス事業が同14.2%増の75億50百万円。

利益面では、増収効果による設備稼働率の向上とコスト削減で営業利益が18億円と同125.5%増加する見込み(営業利益率:1.8%→3.6%)。経常利益及び当期純利益が減少するのは、為替差益や特別利益を見込んでいないため。設備投資は減価償却費の範囲内の30億円(同21.6%減)を計画しており(既存設備の有効活用につながる追加投資、受注が確定しており利益が見込める案件への投資、及び原価低減につながる投資等)、減価償却費は42億円(同6.7%増)を織り込んだ。
期中平均為替レートの前提は、1USドル=102円(14/3期:97.99円)、1人民元=16.5円(14/3期:15.96円~15.97円)。

配当は1株当たり2円増配の期末8円を予定している(配当性向35.2%)。
 
 
 
今後の注目点
業績予想に変更はなかったものの、1Qの営業利益(5億90百万円)が上期予想(10億円)の半分を上回った。上期予想に対する売上高の進捗率も55%を超えている。事業構造改革、コア技術を活かした事業展開、更には財務基盤の強化と言った取り組みが着実に進んでいる事に加え、需要も予想以上に強いようだ。ただ、製品全般に価格が弱含みであるように感じる。装置関連事業の利益率は物足りないし、太陽電池関連事業も売上が大きく伸びた割には損益の改善ペースが鈍い。この辺りが、同社がいま一つ強気になれない要因なのだろうか。