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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.21

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.21】2015年6月期第1四半期業績レポート
取材概要「15/6期のスタートは上々だ。通期業績については、売上・利益共にボリュームの大きい下期いかんではあるが、主力の金融システムソリューション・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年11月18日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役社長
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年6月 6,558 145 183 86
2013年6月 5,870 -677 -587 -349
2012年6月 5,241 131 154 270
2011年6月 4,762 321 341 129
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(11/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
313円 26,340,000株 8,244百万円 1.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 1.6% 9.49円 33.0倍 169.00円 1.9倍
※株価は11/10終値。
 
インテリジェント ウェイブの2015年6月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムで国内シェアNo.1のソフトウエア開発会社。“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“システムを止めないためのノンストップ技術”、及び“高度なセキュリティ技術”を技術基盤とし、カード不正利用検知システムや証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する。営業面では、筆頭株主として議決権の50.61%を保有する大日本印刷(株)及びそのグループ企業との連携が強みとなっている。
グループは、同社の他、韓国で開発・販売を手掛ける連結子会社INTELLIGENT WAVE KOREA INC.及び持分法適用関連会社(株)ODNソリューションの2社。
 
【事業セグメント】
事業は、クレジットカードや証券等の金融業界やシステム開発会社を主な顧客として、ソフトウエア開発、自社製・他社製パッケージ及びハードウエアの販売、更には保守等を手掛ける「金融システムソリューション事業」と、業種・業界にとらわれず幅広く自社製・他社製パッケージを中心にしたソリューションを提供している「プロダクトソリューション事業」に分かれる。
 
 
金融システムソリューション事業
カード系と証券等の非カード系のビジネスに分かれ、カード系では、クレジットカード会社や銀行等の対外ネットワークへの接続で国内トップシェアを誇る「NET+1」(24時間無停止対応ソフトウエア)を用いたシステム構築を中心に、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」及び不正口座取引検知システム「ACE Plus for Bank」を用いた不正検知システム等を手掛けている。

「NET+1」を用いたシステムは、クレジットカードやデビットカード等の商品購入時の与信に応じた代金決済やキャッシュカードカードの残高確認等、24時間365日、いつでもカードが利用できるネットワーク環境を提供するもので、付加価値の高い専用ハードと自社開発のパッケージソフトからなり、大手クレジットカード会社のネットワークへの接続で70%のシェアを有する。また、「NET+1」は、銀行の店外CD/ATMや海外ATM等の外部ネットワーク接続や消費者金融の外部ネットワーク接続等でも使われている。
一方、不正検知システムは、偽造カード・盗難カード利用などクレジットカードの不正使用による被害の極小化や金融機関の振り込め詐欺・マネーロンダリングなど口座不正利用の検知を目的としており、こちらも豊富な実績を有する。
上記のビジネス(カードビジネスのフロント業務)は同社の強みの象徴であり、安定した経営基盤となっているが、高シェアゆえに成長余地が限られる。このため、同社はサービス(開発)領域の拡大に取り組んでおり、売上計上、仕訳、取引精算、ブランド管理、加盟店管理、帳票出力、業務運用管理、システムログ、更にはバックアップといったバックオフィス業務の受注を強化している。

非カード系では、“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“ノンストップ技術”、及ぶ“セキュリティ技術”を活かして、クレジットカード業界、証券業界(オンライン証券会社・機関投資家)、及び大日本印刷のグループ企業等のシステム開発を手掛けており、証券業界向けでは高速情報基盤システム(証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信するシステム)等で豊富な実績を有する。
 
プロダクトソリューション事業
「NET+1」や「ACE Plus」等で培ったネットワーク技術やセキュリティ技術をベースとした情報漏えい対策システム「CWAT(シーワット)」を中心に、イスラエルCHECKMARX社製Webアプリ脆弱性対策(ソースコード解析ツール)「CxSuite(シーエックススイート)」、ネットワークの脆弱性対策の米Nexantis社製「Secure Scout NX(セキュアスカウト)」及び米Sourcefire社製「RAPID7(ラピッドセブン)」、更にはゼロディ攻撃を防御するエンドポイント(端末)のセキュリティ対策ソリューション「TRAPS」をラインナップする事で、内からの情報漏えいと外からの攻撃の両面に対応したセキュリティソリューションを提供している。
この他、米国Citrix Systems製の仮想環境下での端末操作管理ツール「VeTracer(ヴィー・トレーサー)」、Webサイトの付加価値を高めると共にユーザーサポートのコスト低減に寄与する自社開発システム「Face(フェイス)コンシェル」等のソリューションも提供している。

※ 従来、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、セキュリティシステム業務、及びその他(新規事業)の4区分で収益の状況を開示していたが、適正に経営上の評価と意思決定を行うために、事業活動と組織体制の実態を考慮して、15/6期より報告セグメントの区分を変更した。
 
 
【沿革】
1984年12月、米国ノンストップコンピュータ・メーカーの日本法人 日本タンデムコンピューターズの社長等を務めた現会長の安達一彦氏が中心となり、コンピュータ機器の輸出入・販売、コンピュータソフトウェアの開発等を目的に設立された。当時のソフト開発会社はメーカーの下請けが多かったが、同社は自主独立を志向しパッケージソフトの開発を目指し、米国製の24時間稼動ノンストップコンピュータ向けパッケージソフトの開発に取り組んだ(24時間稼動ノンストップコンピュータに独自開発のパッケージソフトを組み込んで販売)。当時の日本において、24時間ノンストップでコンピュータが稼動しているのはクレジットカード業界のみであったため、自ずと同業界との関係が深くなったと言う。

転機となったのが89年の「NET+1」の開発。価格競争力や短納期といったパッケージソフトの持つ強みに加え、カスタマイズの容易さ等が評価され、大手クレジットカード会社や消費者金融等のノンバンクはもちろん、銀行等でも利用が広がった。「NET+1」の開発により、クレジットカード会社向けのパッケージソフト開発会社として認知され、クレジットカードビジネスの拡大に乗って業容を拡大、2001年6月に株式を店頭登録した(現在はJASDAQに上場)。

10年4月には大日本印刷(株)が同社株式の公開買付けを行い、議決権の過半を取得した(現在、大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有)。以後、大日本印刷グループ内での豊富な開発案件の取り込みに加え、大日本印刷(株)との連携による同グループの優良な顧客資産の掘り起こしに取り組んでおり、その成果も順調にあがっている。
 
 
2015年6月期第1四半期決算
 
 
前年同期比11.5%の増収、経常利益91百万円(前年同期は2億68百万円の損失)
売上高は前年同期比11.5%増の14億26百万円。主力の金融システムソリューション事業において、主要顧客であるクレジットカード各社の更新需要の取り込みが進んだ。営業利益は94百万円(前年同期は2億70百万円の損失)。前年同期は不採算案件の影響を受けたが、今期は開発が順調に進み売上総利益率が正常化。販管費は、人件費が増加したものの、採用費や広告宣伝費の減少で前年同期並みに留まった。また、第2四半期(10-12月)に売上計上を予定していた案件が第1四半期に前倒し計上された事で営業利益以下の各利益が上期予想を上回った。
 
 
金融システムソリューション事業 クレジットカード会社等にソフトウエア開発を中心としたソリューションを提供
売上高13億52百万円(前年同期比12.1%増)、営業利益3億79百万円(前年同期は22百万円の利益)。更新需要の取り込みでクレジットカード会社等の既存顧客向けが堅調に推移する中、ハードウエア販売や自社開発パッケージの売上が増加。前年同期の大型案件の反動で減収となったソフトエア開発も高水準の売上を維持した。
利益面では、不採算案件の影響が無くなった事(前年同期は2案件で2億33百万円の損失が発生)や利益率の高い自社開発パッケージの売上増に加え、売上が大きく伸びたハードウエア販売の利益率も高かった。
 
 
プロダクトソリューション事業 セキュリティを中心にしたパッケージソリューションを提供
売上高73百万円(前年同期比2.6%増)、営業損失91百万円(前年同期は1億19百万円の損失)。「Faceコンシェル」関連のソフトウエア開発が減少したものの、自社開発パッケージ(情報漏えい対策システム「CWAT」)や他社製パッケージ(イスラエルCHECKMARX社製ソースコード解析ツール「CxSuite」)の売上増でカバーした。製品別の売上内訳は、「Faceコンシェル」が3百万円(前年同期は19百万円)、「CWAT」及び「CxSuite」が70百万円(同52百万円)。経費節減の成果で営業損失の圧縮も進んだ。
 
 
 
(3)受注高及び受注残高(個別ベース)
 
良好な事業環境が続いており、第1四半期の受注高は14億81百万円と前年同期比24.2%増加。プロダクトソリューション事業の受注が97百万円と同微増にとどまったものの、金融システムソリューション事業の受注が13億84百万円と同26.2%増加した。一方、第1四半期末の受注残高は前年同期末比5.3%減の20億86百万円。開発が順調に進んだ金融システムソリューション事業の受注残が20億26百万円と同5.1%減少した事が要因だが(前年同期は不採算案件の対応に追われ、受注残の消化が遅れた)、水準自体は高く、14/3期第3四半期を底にした上昇トレンドが続いている。
 
 
第1四半期末の総資産は前期末に比べて55百万円増の56億95百万円。受注及び売上の増加に伴い売上債権・仕入債務が増加する一方、運転資金の増加で現預金が減少した。自己資本比率は77.3%と前期末に比べて1.6ポイント低下したが、高水準を維持。現預金が総資産の39%を占める等、優れた財務体質も同社の強みだ。
 
 
 
2015年6月期業績予想
 
(1)上期及び通期の業績に変更はなく、通期で前期比2.4%の減収、同118.6%の経常増益予想
第1四半期の利益が上期予想を上回ったものの、第2四半期に売上計上を予定していた案件が第1四半期に前倒し計上された事がその要因であるため、上期及び通期の業績予想を据え置いた。

上期予想は、売上高28億円(前年同期比8.4%減)、営業利益75百万円(前年同期は1億03百万円の損失)、経常利益80百万円(同88の損失)、純利益50百万円(同72百万円の損失)。
第2四半期(10-12月)に販売を開始するセキュリティ対策ソリューション「TRAPS」の寄与でプロダクトソリューション事業の売上が増加するものの、金融システムソリューション事業は、大型案件の売上計上や下期に予定していたハードウエア案件の前倒し計上で前年同期の売上が伸びた反動で減収となる見込み。ただ、同事業は、不採算案件の影響が無くなる事による利益率の正常化と経費節減で、減収ながら利益が増加。プロダクトソリューション事業も売上の増加で営業損失が減少する(△2億03百万円→△1億10百万円)。

下期予想は、売上高36億円(前年同期比2.8%増)、営業利益3億05百万円(同22.6%増)、経常利益3億20百万円(同17.2%増)、純利益2億円(同25.9%増)。
金融システムソリューション事業はハードウエア販売の減少で売上が減少するものの、利益率が改善。プロダクトソリューション事業は売上・利益共に増加する見込み。

通期予想は、売上高64億円(前年同期比2.4%減)、営業利益3億80百万円(同162.1%増)、経常利益4億円(同118.6%増)、純利益2億50百万円(同190.7%増)。配当は1株当たり5円の期末配当を予定している。
 
 
 
 
 
(2)セグメント別取り組み
金融システムソリューション事業
カード系ビジネスにおける開発領域の拡大策として取り組んできたバックオフィス業務の開発が軌道化してきた事に加え、決済手段の多様化に伴う開発需要や訪日観光客関連の開発需要等、時流に乗った開発需要の取り込みでも成果をあげている。
 
開発領域の拡大
同社はカード系ビジネスにおいて、クレジットカード会社や銀行等の対外ネットワークへの接続(ネットワーク接続、オーソリゼーション、不正検知といったフロント業務)でNo.1シェアを有するが、高シェアゆえにフロント業務の拡大余地は限られる。このため、売上計上、仕訳、取引精算、ブランド管理、加盟店管理、帳票出力、業務運用管理、システムログ、更にはバックアップといったバックオフィス業務の案件の取り込みに力を入れてきた。資本関係にある大日本印刷グループとの連携効果もあり、受注は順調に進んだが、バックオフィス業務の取り込みで案件規模が大型化する中、プロジェクト管理等のノウハウが不足していたため不採算案件が発生し、12/6期から14/6期にかけては利益確保で苦戦を強いられた。しかし、開発ノウハウの蓄積や大型案件に対応した管理体制の整備が進んだ事で、バックオフィス業務を含む大規模案件でも安定的に利益が出せるようになってきた。今後は、フロント業務の強み活かし、関連するバックオフィス業務を取り込む事で収益拡大を加速していく考え。
また、カード系ビジネスではないが、資本関係にある大日本印刷グループが新たに提供を開始した多様なデバイスに対応するSaaS型サービスにおいて、同社は開発と運用支援の役割を担っている。今後の収益下支え要因として期待される。
 
ビジネスチャンスの取り込み
決済手段の多様化では、銀行によるVISAデビットカードシステムの構築や小売・通信事業者によるプリペイドカードの導入等の案件獲得に成功している他、スマートフォン等を使ったカード決済の広がりで、決済代行会社を中心に需要が増えている加盟店管理システムでも実績をあげている(同社は、カード利用時の不正検知で豊富な実績を有するが、この技術は加盟店管理にも応用できる)。

訪日観光客関連では、国内ATMの海外カード対応や海外ネットワークとの接続での実績が評価され、ネット銀行案件として、海外カードを使った国内ATMでの邦貨引き出し対応の受注に成功している。今後、地銀やコンビニATMでも同様の対応が進むとみられており、同社にとってビジネスチャンスである。
 
プロダクトソリューション事業
第2四半期から米Palo Alto Networks製「TRAPS」の販売を開始する。「TRAPS」はマルウエアの活動を阻止して、ゼロディ攻撃からエンドポイント(端末)を守るキュリティ対策ソリューション。ウイルス対策ソフトはウイルスのパターンファイルを更新する事で新しいウイルスに対応するが、パターンファイルが更新される前に感染してしまうリスクがある(ゼロディ攻撃)。しかし、「TRAPS」をインストールしておけば、感染してもウイルスの活動が阻止されるため、ウイルスに対応したパターンファイルの更新前に感染しても被害を防ぐ事ができる(パターンファイルを更新した後にウイルスソフトがウイルスを駆除する)。「TRAPS」の日本語版の発売は15年4月だが、同社は14年10月のグローバル販売の開始と共に英語版の販売を開始しており(代理店契約は大日本印刷が締結)、15/6期第2四半期以降の業績寄与が見込まれている。

尚、情報漏えい対策システム「CWAT」、イスラエルCHECKMARX社製Webアプリ脆弱性対策(ソースコード解析ツール)「CxSuite(シーエックススイート)」、ネットワークの脆弱性対策の米Nexantis社製「Secure Scout NX(セキュアスカウト)」及び米国RAPID7(ラピッドセブン)社製製品、更にはPolo Alto Networks社「TRAPS」をラインナップする事で、「内からの情報漏えい」と「外からの攻撃」の両面に対応できる体制が整った。
 
 
今後の注目点
15/6期のスタートは上々だ。通期業績については、売上・利益共にボリュームの大きい下期いかんではあるが、主力の金融システムソリューション事業においてプロジェクト管理が安定してきたため下振れの不安は少ない。通期で減収となる事に物足りなさを感じるが、振れの大きいハードウエア販売が5.6億円強減少する事が要因で、ソフトウエア開発、自社開発パッケージ、及び保守は増加する見込み。
一方、プロダクトソリューション事業は、「内からの情報漏えい」と「外からの攻撃」の両面からセキュリティソリューションの体制が整った。旧セキュリティ業務では閉塞感を感じるようなところもあったが、今回取り扱いを開始した「TRAPS」など興味深い商品が多く、商品間のシナジーによる事業の拡大が期待される。