ブリッジレポート
(3034:東証1部) クオール 企業HP
中村 勝 社長
中村 勝 社長

【ブリッジレポート vol.25】2015年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「調剤事業は新規出店やM&Aによる展開が拡大しており、既存店も堅調。新業態店舗も、ビックカメラとの連携やJR西日本グループとの提携が成果・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年11月25日掲載
企業基本情報
企業名
クオール株式会社
社長
中村 勝
所在地
東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー37階
事業内容
調剤薬局チェーン大手。首都圏中心に全国に店舗展開。
決算期
3月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 100,966 2,105 2,208 777
2013年3月 76,783 2,812 2,829 1,349
2012年3月 66,201 3,308 3,238 1,560
2011年3月 60,915 2,804 2,807 1,137
2010年3月 56,305 2,031 2,032 828
2009年3月 49,010 1,526 1,506 653
2008年3月 38,002 1,314 1,298 547
2007年3月 24,827 937 875 403
2006年3月 21,701 779 763 333
2005年3月 20,193 611 580 74
2004年3月 18,500 28 10 -134
2003年3月 11,869 253 413 -33
2002年3月 8,107 5 153 68
株式情報(11/13現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
731円 32,772,300株 23,956百万円 5.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
18.00円 2.5% 51.87円 14.1倍 521.60円 1.4倍
※株価は11/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
クオールの2015年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
首都圏を中心に、調剤薬局を全国に展開。医療機関とのマンツーマン体制を基本とする事で調剤薬局間の無駄な顧客獲得競争を排除してきた。一方で、近年では面分業強化の観点から新業態店舗の開発にも取り組んでおり、現在、(株)ローソンとの資本業務提携による「コンビニエンスストア(以下、CVS:Convenience Store)併設型調剤薬局」(調剤薬局とコンビニエンスストアの融合)、家電販売大手の(株)ビックカメラとの連携による出店、更にはJR西日本グループとの業務提携による駅ナカ調剤薬局「駅クオール薬局」といったプロジェクトが進行中。また、子会社を通してCSO事業、治験事業などの関連事業も手掛ける。
事業は調剤事業と関連事業に分かれ、14/3期は調剤事業の売上が全体の90.4%を占めた。調剤事業はクオール(株)等が手掛ける調剤薬局の経営が中心だが、CVS併設型調剤薬局における物販の収益も含まれている。一方、関連事業は、アポプラスステーション(株)のCSO事業、クオールRD(株)の治験事業、メディカルクオール(株)の出版関連事業からなる。
 
【流通改革】
2014年3月、同社はアイセイ薬局やドラッグストアのココカラファイン等、調剤薬局・ドラッグストア16社と共に、医薬品卸会社へ医薬品の競争入札を行う医薬品調達機構を立ち上げた。医薬品調達機構は、医薬品を5つのカテゴリーに分け、このうち新薬創出加算品、特許品、及び長期収載品の3カテゴリーについて、カテゴリー別に事前に各社へ購入予定価格を通知、その価格に対して一般競争入札を行う。残りの後発医薬品、エッセンシャルドラッグ(その国の保険医療に最低限必要な医薬品)は従来通り、おのおの各取引先と交渉する。これまで同社はすべての医薬品を一括購入していたため、値引き率には限界があったが、15/3期より、先述の入札制度により、適正かつ公正な価格での交渉・妥結が可能となり、利益率の改善につながっている。15/3期分の医薬品についてはすでに妥結しており、今後は安定的な利益確保が可能になる。
 
【調剤市場の動向】
調剤薬局は全国に約5万5千件あり、コンビニエンスストアとほぼ同数。同社が創業した1992年には14%程度だった医薬分業比率は、現在、約70%にまで高まっている。また、調剤市場は年率3%〜8%の成長が続いており、市場規模は約7兆円だが、大手チェーン薬局の売上高は約7,000億円にとどまり、シェアは10%(クオール約1.5%)とマーケットリーダーが存在しない。しかし、医療費の抑制に取り組む国策の下で、薬価・調剤報酬の改定や消費税率の引き上げで中小薬局の経営は徐々に圧迫され、M&Aが活発化しており、今後、大手チェーン薬局の寡占が進んでいくとみられている(分業率が100%に達した場合の市場規模は推定で約10兆円超。大手チェーン薬局のシェアが過半を超えると予想されている)。
 
【調剤薬局の収益構造】
一般的には調剤薬局が処方箋を1枚処理した場合、処方箋単価の約25%が技術料で残り約75%が薬剤料として調剤薬局の収入となる。技術料は100%粗利となるが、薬剤料は医薬品の仕入原価を差し引いた残り(薬価差益)が粗利となる。
 
 
新業態事業及び関連事業の育成
 
質・量共に調剤薬局業界No.1を目指すと共にクオールグループの価値最大化を図るべく、“売上高3,000億円、営業利益240億円構想”が進められている。売上高3,000億円の内訳は、調剤事業が2,400億円、関連事業が600億円。調剤事業では、1,000店舗体制の構築を念頭にクオール薬局の新規出店やM&Aと共に異業種との連携にも取り組む。関連事業はCSO事業等を手掛けるアポプラスステーション(株)が中核を担う。一方、営業利益240億円の内訳は、両事業で120億円ずつ。トップラインの引き上げをコンセプトとする調剤事業は利益率5%を想定しており、調剤事業より収益力のある事業への投資をコンセプトとする関連事業は利益率20%を想定している。
 
(1)調剤事業
「処方箋は病院の近くで処理するもの」と言う固定観念が強いため、処方箋を受け取った患者が自ら薬局を選ぶ事はほとんどなく、病院等の近くの薬局(門前薬局)を利用するケースが一般的。このため、調剤薬局は大病院など大手医療機関の門前に店舗を構え、好立地を活かした店舗運営を志向してきた。これに対して、同社は多くの医療機関と1対1の密接な関係(処方元医療機関の医師との強固な信頼関係)を構築するマンツーマン薬局と共に、幅広く処方箋を応需する面対応の薬局も志向してきた。
2010年以降は面対応強化の一環として異業種との連携にも力を入れており、2010年ローソンと提携し調剤薬局を併設したコンビ二運営を行っている他、駅前の好立地に店舗展開し強い集客力を誇るビックカメラとの連携や、JR西日本グループとの提携による究極の好立地とも言える駅構内での店舗展開を進めている。
近年では利便性を重視して、自宅の近くや買い物のついで、或いは通勤・通学の途中で薬局を利用するケースが増えており、面対応戦略に追い風が吹いている。
 
LAWSON事業
利便性(コンビ二)と専門性(調剤薬局)を合わせ持った調剤薬局の実現に向け、2010年8月に(株)ローソンとのフランチャイジー契約の下、CVS併設型調剤薬局の1号店を出店し、2014年9月末現在、38店舗を展開している。15/3期からは「薬局とコンビニエンスストアの融合」をコンセプトとした第2世代店舗から、「ヘルスケアCVS」をコンセプトに、調剤薬局とコンビニエンスストアに加え、ドラッグストアの機能を有する第3世代店舗への進化に着手すると共に、出店戦略を収益重視に転換した。
 
 
15/3期第2四半期は、「ヘルスケアCVS」 1店舗と敷地面積の制約からドラッグストア機能を持たない通常店舗を1店舗出店する一方、収益重視の観点から1店舗を閉店した。「ヘルスケアCVS」は、現在5店舗あるが、既存店から業態転換した豊洲、高輪、板橋、荻窪の4店舗と新規出店(新横浜)1店舗。「ヘルスケアCVS」は、調剤機能の訴求力を高めるべく、これまで「LAWSON + クオール薬局」としていたサインをLAWSONとクオール薬局を明確に区分したサインに改めると共に、アイテム数を約3,000から約6,000に拡大した(業態転換した一部の店舗では、売上高が約50%増加したという)。
 
 
また、コスト削減策として、深夜にOTCニーズが低い店舗は薬局に販売を移管した他、全店舗でクオールカードが利用できるよう調剤システムも統一する。尚、15/3期通期の出店は10店舗を計画している(下期の業態転換は、深沢、三ツ境、城山、相模大野の4店舗を計画)。
 
ビックカメラとの連携
有楽町、新宿、名古屋、札幌のビックカメラ店内に出店している。ビックカメラ店舗への出店は、ターミナル駅に近い立地の良さとビックカメラの集客力による1日当たり数万人の集客が魅力。4店舗の月間処方箋応需医療機関数は現在約7,200に達しており、各店舗が面対応薬局として軌道化している。特に有楽町と新宿(ビックロ)の2店舗は月間の処方箋受付枚数が1,000枚を超える好調ぶりだ。ビックカメラ店舗への出店により、路面店舗でなくても認知度の向上により収益確保が可能な事も確認できた。
 
 
JR西日本グループとの提携
2012年8月、新業態の調剤薬局の確立による新たな顧客層及びマーケットの開拓を念頭に、駅構内店舗の企画・開発を手掛ける(株)ジェイアール西日本デイリーサービスネット(兵庫県尼崎市)と業務提携した。その提携の一環として、“駅の救急箱” をコンセプトに「駅クオール薬局JR大阪店」を2013年4月にオープンした。2014年9月にはJR新大阪駅構内に2号店となる「駅クオール薬局JR新大阪店」をオープンし、ビジネスマンや旅行客の利用でOTC販売だけでなく処方箋応需枚数も堅調に推移している。
尚、2014年11月29日には3号店がJR尼崎駅構内にオープンする予定だ。
 
 
(2)関連事業
調剤事業は2年に1回の薬価・調剤報酬の改定や消費税率の引き上げによる影響を避ける事ができない(調剤薬局は医療用医薬品の仕入段階で消費税を負担するが、調剤売上に消費税を転嫁できない)。こうしたリスクを吸収して継続的な成長を実現するべく、同社は関連事業を強化している。
 
※ 関連事業
2012年10月に子会社化したアポプラスステーション(株)が展開するCSO事業と人材サービス(看護師、薬剤師、登録販売者等の登録派遣)事業、クオールRD(株)の治験事業、及びメディカルクオール(株)の出版関連事業。

売上高3,000億円、営業利益240億円構想の下、関連事業の中核を担うのがアポプラスステーション(株)である。同社は、国内企業として初めてCSO事業に参入し、現在、CMRの派遣先製薬会社数は国内No.1。製薬会社各社は、長期収載品の落ち込みやジェネリック薬の拡大でコスト削減を迫られており、正社員MRからCMRへの切り替えを進めている。このためCMRの需要は拡大基調にあり、同社は“CMR1,000名体制”の早期確立を目指して(2014年9月末550名)、前倒しでCMRの採用を進めている。
また、医療従事者の派遣市場も拡大基調にあり、この分野に特化した人材サービス事業の見通しも明るい。薬剤師は国家試験の合格率低下等により、看護師は介護需要の増加等により、共に需給がひっ迫している。加えて、ドラッグストアの出店拡大で登録販売者の需要も増加している。

尚、アポプラスステーション(株)の15/3期第2四半期は、売上高が42億50百万円と前年同期比36.1%増加し、のれん償却額を上回る2億98百万円の営業利益を確保した。下期は来期を見据えた仕込み期間(先行投資)と位置付けてCMRの採用・教育に取り組む考えで、来16/3期は今期以上の売上と一段の営業利益率の改善を見込んでいる。CMRについては、2014年9月末の550名を2015年3月末までに600名に増員し、2016年3月末には700名体制を確立したい考え。
 
 
 
2015年3月期第2四半期決算
 
 
前年同期比13.5%の増収、同52.6%の営業増益
売上高は前年同期比13.5%増の556億21百万円。前期下期以降の新店及び新規取得子会社の寄与やLAWSON事業の好調で調剤事業の売上が同12.8%増加。CSO事業等を手掛けるアポプラスステーション(株)を牽引役に関連事業の売上も同20.3%増加した。

営業利益は同52.6%増の15億51百万円。調剤事業における新卒123名の入社及びM&Aによる人員増やアポプラスステーション(株)のCMR増員等で人件費が増加したものの、医薬品取引の透明性の確保と早期妥結による安定した収益確保にもつながる入札制度の実施、聖域なきコスト削減、LAWSON事業の収益改善(第三世代となるヘルスケアCVSによる店舗展開)、更には関連事業の収益拡大(CSO事業の収益力向上)等、取り組みが成果をあげつつある。

第2四半期末の従業員数は正社員3,472人(前期末3,301人)、臨時雇用者1,723人(同1,528人)。正社員に含まれる薬剤師1,535人(同1,431人)。

尚、前期までは医薬品の仕入価格交渉の妥結が第4四半期だったため、第3四半期までは想定した薬価差益を基に利益を算出していたが、流通改革に取り組んだ事で今期は第1四半期に医薬品仕入価格の交渉が妥結し、通期の価格は第2四半期に妥結した。
 
 
調剤事業
売上高501億03百万円(前年同期比12.8%増)、営業利益16億43百万円(同9.2%増)。積極的なM&AとLAWSON事業(前年同期比16.6%の増収)の好調で、薬剤師の増員等による人件費の増加を吸収した(第2四半期末の薬剤師数:1,481人⇒1,535人)。

調剤売上高(薬剤料+技術料)は同13.4%増の445億32百万円。処方箋応需枚数は、M&A効果や既存店の寄与で同13.9%増加。一方、処方箋単価は、薬価改定の影響や積極的にジェネリックへの変更を進めた事で、既存店を中心に9,860円と前年同期に比べて45円減少した。

第2四半期末の店舗数は、直営店532店舗(前年同期末475店舗)、フランチャイズ店2店舗(同1店舗)の計534店舗(同476店舗)。新規出店11店舗(同26店舗)、M&Aによる取得9店舗(同28店舗)の計20店舗(同54店舗)を出店する一方、売店5店舗とCVS併設店1店舗の6店舗を閉店した(前年同期は譲渡も含め16店舗)。尚、2014年11月12日時点では530店舗(うちLAWSON事業 38店舗、ビックカメラ4店舗、JR西日本グループ2店舗)。関東圏の店舗が全体の52.3%を占めている。通期では収益性を重視しつつ41店舗を出店する計画。
 
 
※ 2014年9月末の加算店(18点加算店舗と22点加算店舗の合計)は全体の67.5%。同社はジェネリック医薬品への変更を積極的に進めており、期末80%を目指している。
 
関連事業
売上高55億18百万円(前年同期比20.3%増)、営業利益3億89百万円(同1,097.7%増)。CSO事業等を手掛けるアポプラスステーション(株)が売上・利益の両面で寄与。同社の第2四半期は、売上高が同36.1%増の42億50百万円、営業利益はのれん償却額を上回る2億98百万円(前年同期は29百万円の損失)。
 
 
新規出店とM&Aによる事業の拡大で第2四半期末の総資産は579億69百万円と前期末に比べて40億65百万円増加した。借方では、売上債権、たな卸資産、無形固定資産(のれんが19億20百万円増加)等が増加。貸方では、資金需要に対応するべく長期借入金を積み増した。この結果、自己資本比率は30.1%と前期末に比べて1.5ポイント低下した。
 
 
今期は売上債権の流動化を控えたが、税引前利益の増加と税金費用の減少で10億63百万円の営業CFを確保した。一方、投資CFは新規出店やM&Aの減少でマイナス幅が縮小した。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比11.7%の増収、同75.7%の営業増益
第2四半期の業績が上振れしたものの、通期業績予想に変更はなかった。下期はCSO事業の一段の業績拡大に向けCMRの採用・教育を中心に先行投資を上積みする考え。一方、調剤事業では引き続き聖域なきコスト削減やLAWSON事業の収益改善に取り組むと共に、ジェネリック医薬品への変更を推進する(期末までに全店舗の80%で後発医薬品調剤体制加算取得を目指している)。
収益性を重視するため通期の出店計画は41店舗(LAWSON事業10店舗)にとどまるが、M&Aには機動的に対応していく考え。

配当は1株当たり期末10円を予定(年18円)。
 
 
今後の注目点
調剤事業は新規出店やM&Aによる展開が拡大しており、既存店も堅調。新業態店舗も、ビックカメラとの連携やJR西日本グループとの提携が成果をあげている事に加え、LAWSON事業の収益改善も進んでいる。このため、下期はCSO事業の先行投資負担を吸収して増益ピッチが加速する見込みだ。また、前期までは医薬品価格交渉の妥結が第4四半期だったため、第3四半期までは想定した薬価差益を基に利益を算出していた。このため、交渉の結果によっては、前14/3期のように期末近くに業績予想を修正する必要が生じたが、流通改革の下、今期は第2四半期に通期の医薬品価格が決まったため、期末にかけての業績変動リスクがない。成長に向けた基盤整備が進む中、先行投資にも怠りない事から来16/3期の見通しも明るいと考える。

尚、厚生労働省が電子化の解禁を検討しており、2015年度をめどに省令を改正する考えだ。処方箋が電子化されると、処方箋の流れに変化が起こる可能性があり、同社にとって追い風となるだろう。紙媒体の処方箋の場合、患者は門前薬局を選択するケースが多いが(約80%が門前薬局に流れると言われている)、電子処方箋になると利便性重視の傾向が強まると思われ、コンビニエンスストア、家電量販店、駅構内、更にはドラッグストアなどの多様な処方箋応需チャネルを持つ同社の店舗展開が強みとなる。また、2014年10月末に100万人を突破したクオールカードの重要性が高まる事はもちろん、処方せん送信アプリも患者のさらなる利便性に寄与するものと思われる。
 
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