ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.29

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
伊藤 潤 社長
伊藤 潤 社長

【ブリッジレポート vol.29】2015年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「同社の15/3期中間決算は、前年同期比で売上高が9.8%の増加、経常利益が37.9%の増加と非常に好決算となった。既存事業であるASA COLOR LEDと・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年12月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
伊藤 潤
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 5,677 286 296 160
2013年3月 4,789 135 139 76
2012年3月 5,010 243 211 72
2011年3月 4,806 161 117 21
2010年3月 4,667 125 91 41
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(12/2現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,280円 4,547,620株 10,368百万円 5.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
8.00円 0.35% 39.58円 57.6倍 705.77円 3.23倍
※株価は12/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
 
 
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、14/3期の売上構成比は、それぞれ79.5%、20.5%。
今後は、RFIDタグ用ゴム製品、マイクロ流体デバイスなどの新製品の販売拡大が期待される。
 
・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。ASACOLOR LED は青色LEDに蛍光体を配合したキャップを被せたもの。各青色LEDに合わせて、キャップに配合する蛍光体の種類、量を調整することで、色調を均一にコントロールすることが可能。シリコーンゴムキャップ内の蛍光体を調合する事で多彩な色度を創りだす事ができ、カラーバリエーションは10,000色以上。
 
 
・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、採血用・薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用さる。 医療機器及び医療用具に用いられることから、各種法規に準拠し、素材の安全性や医療事故を防止する機能など、厳しい品質基準を満たした製品。
プレフィルドシリンンジ向けガスケットのイメージ
 
 
安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。
 
・マイクロ流体デバイス
今後、分子接着技術を応用したマイクロ流体デバイスの販売拡大を目指す。分子接着は、ゴムと金属・ゴムと樹脂・ゴムとセラミックス・ゴムとガラス・ゴム同士などを強固に接着する技術であり、接着面の表面処理と加熱加圧等により従来の接着工程のような高濃度の接着剤塗布や高温、高圧を必要とせず強固な接着力が得られる。
また、分子接着は、①高濃度の接着剤塗布を必要としない、②分子接着は、分子に近い膜であるためガラスや樹脂に転写した極微な溝を潰すことなく封止することができる、③プラスチックの熱融着と違い、被着体の融点以下の温度しかかけないため形状変更の恐れが少ない、④.難接着性のプラスチックとシリコーンゴムを接着することができるという特徴を持ち、電気泳動、化学反応、細胞培養、PCRなどで用いられる。
NECのポータブル型DNA解析装置向けに量産開始。ユーザーの要望を反映させて、さらに改善・進化を図る方針。
 
 
・RFIDタグ用ゴム製品
溶剤を使わずに接着させる“分子接着技術”を応用し、ICチップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のICタグを提供できる。

RFIDタグ用ゴム製品イメージ
 
 
 
新中期経営計画
 
新中期経営計画を策定するにあたり、独自の新製品開発による成長を描くため、中期3ヶ年の2回分である2020年を見据えたビジョン「AR-2020VISION」を制定。
AR-2020VISION
・技術革新を基盤に、新しい価値を創造し続ける企業になる。
・現在の仕事に慢心せず、常に変革を求め、経営環境の変化に応じ継続的に磨きをかける。
・人財こそが、事業運営の要とし、人材の育成を行う。
このビジョンの実現に向けて、最初のステージである15/3期~17/3期の新中期経営計画(V-1計画)を作成。
中期経営方針として、①既存事業の質・量の持続的成長、②新市場・新分野への事業展開、③2020年に向けた事業基盤の強化と整備と定め、最終年度である17/3期に数値目標である、売上高80億円、営業利益8億円の達成を目指す。
 
 
 
(1)今後の事業戦略
自動車分野
主力ASA COLOR LEDは、数量は増加するものの単価の下落が続き、現状規模の売上の前提。こうした環境下、新タイプによる材料費削減で利益率を改善させる。また、接点ラバー、Oリングなどの売上拡大を目指す。設備投資計画は、15/3~17/3期の3ヵ年累計で約10億円。
 
医療分野
プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットなどの拡大を図る。前期までに設備投資を行った分野であり、V-1計画では新製品の開発期間と位置付け、今後の成長に向けた要素技術の深堀を進める。設備投資計画は、15/3~17/3期の3ヵ年累計で約6億円。
 
ライフサイエンス分野
卓球ラケット用ラバーは、顧客の要求に着実に応えていく。マイクロ流体デバイスは同社の柱と位置付け拡大目指す。NEC向けのポータブル型DNA解析が14年10月から量産スタート。ユーザーの要望を反映させて、さらに改善・進化を図る。その他企業の複数案件も現在進行中であり、V-1計画内で量産スタートの予定。設備投資計画は、15/3~17/3期の3ヵ年累計で約8.5億円。
 
その他分野
主力RFIDタグ用ゴムは、コア技術の深堀りと新しい製品、新しい分野に挑戦する。
 
(2)海外展開
V-1計画内では、海外における新規の工場建設や販売会社の設立を考えていない。現地での採用、教育、朝日ラバーとの交流などにより、現地拠点の人材面の充実を図る。また、顧客にニーズに応え、子会社間の連携を強化して受注獲得を目指す。
 
 
 
2015年3月期第2四半期決算
 
 
前年同期比9.8%の増収、同.37.9%の経常増益
売上高は、前年同期比9.8%増の30億25百万円。売上面では、機能製品であるRFIDタグ用ゴム製品の海外向け販売が好調に推移した他、「ASA COLOR LED」及びスイッチ用ゴム製品等の自動車関連製品の海外向け販売が増加したことなどにより工業用ゴム事業で同10.6%増加した。また、プレフィルドシリンジ用ガスケット及び採血用・薬液混注用ゴム栓の販売が堅調に推移した医療・衛生用ゴム事業も同6.9%増加した。
営業利益は、前年同期比31.6%増の1億56百万円。セグメント利益は、売上増加による量産効果などにより工業用ゴム事業が同19.6%の増益、医療・衛生用ゴム事業が同145.1%の増益となった。売上総利益率は、25.5%と前年同期比0.5ポイント低下したものの、コストダウンの取り組みなどにより売上高対販管費率が同1.4ポイント低下した。経常利益は、営業外収益において為替差益が増加したことなどからたことから、同37.9の増益となった。
また、特別利益において福島県より交付されたマイクロ流体デバイスの生産設備購入に関する「ふくしま医療福祉機器開発事業費補助金」である補助金収入を58百万円計上したものの、当該補助金の交付が生産設備購入によるものであることから、該当する固定資産の取得価格から直接減額し、固定資産圧縮損として56百万円の特別損失を計上した。
 
 
 
 
 
ASA COLOR LEDは、消費増税の影響が下回り、国内自動車市場が堅調であったこと、また海外市場も好調であったことから15/3期の2Q累計期間は前年同期比2.5%増加。卓球ラケット用ラバーは、受注は堅調に推移しているものの、ユーザーの在庫調整により同12.0%減少。ディスポーザブル用ゴム製品は、プレフィルドシリンジ向けガスケットや採血用・薬液混注用ゴム栓の販売が好調に推移し同8.2%増加。また、RFIDタグ用ゴム製品は、海外市場向けに販売が拡大し同97.4%増加。
 
 
売上高は、RFIDタグ用ゴム製品とASA COLOR LEDやスイッチ用ゴム製品など自動車用ゴム製品の販売が好調に推移した。
 
 
ARI International Corpは、ほとんどが自動車向けゴム製品の販売であるが、採用車種の終息、新規受注の後ろ倒しなどで売上が減少し赤字となった。朝日橡膠(香港)有限公司は、香港 貿易拠点であるが、商流が直取引に変更となったため、売上・利益とも減少。一方、東莞朝日精密橡膠制品有限公司は、自動車向け製品とRFIDタグ用ゴム製品の受注増で増収増益となった
 
 
14年9月末の総資産は14年3月末比2億14百万円増の86億71百万円。資産面では売上債権が、負債・純資産面では長期借入金と利益剰余金が主な増加要因。
 
 
CFの面から見ると、前年同期と比較で、売上債権の増加額が減少し営業CFの黒字が拡大したものの、フリーCFは引き続き赤字となった。また、長期借入金の増加により、財務CFの黒字が拡大した。
15/3第2四半期の設備投資は2億43百万円円(14/3第2四半期1億円)、減価償却費は1億98百万円(同1億84百万円)。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比6.6%の増収、同1.3%の経常増益予想
自動車分野向けゴム製品とRFIDタグ用ゴム製品の海外向け販売の好調を受けて、15/3期の会社予想は、11月10日に上方修正された。8月8日の修正に対し、売上高は57億円から60億50百万円へ、同じく営業利益は2億60百万円から3億円へ修正された。
売上面では、引き続きRFIDタグ用ゴム製品の販売拡大を見込んでいるものの、自動車分野向けは第3四半期以降、在庫調整等の影響で受注の上昇傾向が減速すると予想している。セグメント別では、工業用ゴム事業が同8.8%の増収、医療・衛生用ゴム事業が同2.2%減収の会社計画。
利益面では、新製品の先行投資による減価償却費の負担増などを織り込んでいる。売上総利益率は、0.8ポイント悪化の25.8%、売上高対販管費率は、0.8ポイント改善の20.8%の会社前提。この結果、営業利益は、前期比4.8%増益の3億円となる見込み。
設備投資の計画は、自動車分野(2億万円)、医療分野(80百万円)、ライフサイエンス分野(2億50百万円)、その他分野(30百万円)の約5億60百万円(14/3期5億75百万円)、減価償却費は4億20百万円(同3億83百万円)を計画。設備投資は、ASA COLOR LEDの利益率改善に伴う投資やマイクロ流体デバイスの量産ラインの導入などが主なもの。
1株当たりの配当も、14/3期と同額の年間8円(上期末3円、期末5円)の計画から変更なし。
 
 
 
 
今後の注目点
同社の15/3期中間決算は、前年同期比で売上高が9.8%の増加、経常利益が37.9%の増加と非常に好決算となった。既存事業であるASA COLOR LEDとプレフィルドシリンジ用ガスケット及び採血用・薬液混注用ゴム栓などの販売が堅調に推移する中、今後の成長ドライバーと期待されるRFIDタグ用ゴム製品の販売が急拡大したことがその背景にある。株式会社矢野経済研究所の2013年8月8日の調査によると、今後のRFIDシステムの市場は、UHF帯での新周波数帯移行特需やアパレル業界などの新たな用途での導入活発化、設備投資減税の実施、RFIDタグの低価格化などを背景として、持続的な成長に向かい、RFIDシステム国内市場の2012年度から2017年度までの年平均成長率(CAGR)は8.1%で推移し、2017年度の同国内市場規模は983億8,400万円(メーカー出荷金額ベース)まで成長すると予測している。RFIDタグは、製造、物流、小売、サービス、交通などのさまざま分野で、また個体識別、トレーサビリティ、環境への対応といった業務用途で重要な役割を担っており、今後の成長が期待されている。こうした環境下、同社のRFIDタグ用ゴム製品は、溶剤を使わずに接着させる“分子接着技術”を応用し、ICチップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のICタグが提供できることから、販売が拡大している。市場拡大の恩恵を享受し、成長を加速していけるのか、RFIDタグ用ゴム製品の今後の販売動向が注目される。
また、同社の今後の事業拡大向けてその成功が不可欠であろうマイクロ流体デバイスは、14年10月からNEC向けのポータブル型DNA解析装置の量産が開始した。NEC以外の複数案件も進行中であり、引き続き本格的な量産と新規採用の動きに注目していきたい。