ブリッジレポート
(2708) 株式会社久世

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ブリッジレポート:(2708)久世 vol.13

(2708:JASDAQ) 久世 企業HP
久世 健吉 社長
久世 健吉 社長

【ブリッジレポート vol.13】2015年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「消費税率の引き上げや天候不順による消費の不振が同社の取引先である飲食業各社の経営に影を投げかける中、同社は価格、配送フィー、店着時・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年12月16日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社久世
社長
久世 健吉
所在地
東京都豊島区東池袋2-29-7
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 62,268 41 238 100
2013年3月 56,060 544 697 367
2012年3月 51,053 380 408 173
2011年3月 46,774 230 342 80
2010年3月 42,666 271 394 123
2009年3月 42,181 225 334 171
2008年3月 42,540 283 443 240
2007年3月 42,847 402 507 262
2006年3月 41,491 336 390 246
2005年3月 39,087 255 297 126
株式情報(12/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
667円 3,878,979株 2,587百万円 2.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.8% - - 1,235.43円 0.5倍
※株価は12/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
久世の2015年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
外食産業や中食産業向けの食材卸を中心に、グループでソース、ブイヨン、スープ及び調理食品など食材の製造・販売も手掛けている。取扱品目は約30,000アイテムに上り、冷凍・常温品はもちろん生鮮品から消耗品等のノンフードまで幅広い。
グループは、同社の他、ソース・スープ類の製造・販売を手掛けるキスコフーズ(株)、ニュージーランドでソース類の製造を手掛けるキスコフーズインターナショナルリミテッド、生鮮野菜など農産品の仕入・販売を行う(株)久世フレッシュ・ワン、築地市場に基盤を持つ水産物仲卸大手の旭水産(株)、及び海外戦略の立案と情報収集の役割を担う久世(香港)有限公司の連結子会社5社、及び水産物売買業の豊洲フーズ(株)、中国での業務用食材卸売事業を描ける久華世(成都)商貿有限公司の非連結子会社2社。また、中京地区では6,000店の取引先を有する酒類販売大手(株)サカツコーポレーションと業務提携している(12年6月)。
 
 
【事業内容】
事業は、食材卸売事業、食材製造事業、及びグループ会社向けが大半を占める不動産賃貸事業に分かれ、14/3期の売上構成比(連結調整前)は、それぞれ、92.4%、7.4%、0.2%。また、販売チャンネル別(個別ベース)では、居酒屋・パブ29.2%、ディナーレストラン・ホテル・会館20.7%、惣菜・デリカ・娯楽施設・ケータリング14.8%、ファーストフード・ファミリーレストラン・カフェ35.3%。
 
食材卸売事業では、取扱が難しい生鮮品を含めた業務用食材全般に加え、割りばし、ナプキン、洗剤といった消耗品等のノンフードまでを幅広くカバーし、取扱品目は約30,000アイテムを数える。近年、プライベートブランド(PB)商品や生鮮三品の取扱いにも力を入れている。
一方、食材製造事業では、連結子会社キスコフーズ(株)が食品製造工場を有し、ソース、ブイヨン、スープ及び調理食品等の自社ブランド製品及びOEM製品の製造・販売を行っており、その子会社(久世の孫会社)キスコフーズ インターナショナル リミテッド(KISCO FOODS INTERNATIONAL LIMITED)が、ニュージーランド・クライストチャーチ市において、オリジナルのフォンドヴォー(仔牛骨、牛肉、野菜等を原料としたソース)やベシャメルソース(バターと小麦粉を原料としたホワイトソース)の製造を行っている。
 
【フードサービスソリューションカンパニーを標榜
   -運ぶ、つくる、考える。そして品質管理- 】
同社は 「頼れる食のパートナー」 として、品質管理に努めると共に、顧客へ様々な情報を提供し、顧客と共に、仕入・物流、店舗経営、商品開発等について考え、問題の解決に取り組んでいる。目指すところは、「運ぶ」、「つくる」、「考える」それぞれの機能を総合的に組み合わせ、より高い付加価値を生み出す提案営業重視の「フード・サービス・ソリューション・カンパニー」である。
 
「運ぶ」  料理のプロの多様な要望に応える事の難しさ
同社においては「個店向け配送」と「チェーン店向け配送」の2通りがあり、「個店向け配送」は、幅広い品揃えで様々な業態(洋食、和食、中華、ホテル、居酒屋、バル、カフェ、病院、商業施設等)に対応し、自社の物流センターから配送。一方、「チェーン店向け配送」はチェーン店独自の品揃えに対応し、自社の物流センターと外部倉庫を利用した久世全国ネットワーク(KZN)の併用で、北海道から沖縄まで全国にチェーン展開している顧客に食材を届けている。
「運ぶ」(配送)は食材専門商社としての根幹に関わる業務だが、時間指定、配送頻度、納品場所等、料理のプロの多様な要望に応えつつ、しっかりと収益管理していく事は実に難しい。昨今の店舗運営は生産性の向上を迫られる一方、労務管理に対する指導が強化されているため、店着時間がピンポイントで指定される事が多く、これに対応しようとすると物流コストが跳ね上がる。このため、納入価格、物流フィー、店着時間を総合的に勘案して取引条件を決める必要があり、オペレーションの難易度があがっている。
 
 
「つくる」  商社の枠を超えた事業展開で収益力の強化と顧客満足度の向上を両立
厨房での手間やコスト削減を念頭に新しいメニューやプライベート(PB)商品を開発し、顧客のニーズに合った商品提供を行っている。
 
 
「考える」  情報提供で顧客のビジネスを側面から支援
「顧客ニーズ」、「メニュートレンド」、「メニューの差別化」等を基本に顧客ごとのオリジナルメニューの開発やムリ・ムダのない調理オペレーションの提案、更には同社の商品を使用したメニューレシピやトレンド情報の提供等、日々の顧客支援に加え、食材セミナー(毎月1回)やプロ向け展示会「Food Service Solution」(年2回)の定期開催で「食のヒントとなる情報」の発信も行っている。
 
「品質管理」  商品はもちろん、営業、物流、受発注等のサポート部門を含め、全ての業務で品質向上を推進
1981年に社内に品質管理部門を設け、取引先の品質に関する要望や問い合わせに対し、迅速に対応できる体制を構築しており、細菌検査、生産委託先工場の製造管理、商品規格書の作成・提供、物流センター、各営業拠点の衛生管理チェック等を実施している。また、2010年に「久世グループ品質方針」及びISO22000に基づいた久世グループの品質保証の仕組みである「久世クオス(久世QUALITY SYSTEM)」を策定し、新しい品質への取組みをスタート。13年4月には、キスコフーズ(株)が、同年8月には同社が、それぞれISO22000の認証を取得した。商品の品質だけでなく、営業、物流、受発注等のサポート部門を含め、全ての業務の品質の向上を推進し、お客様満足度No.1を目指している。
 
【2020年3月期 売上高1,000億円を目指して】
同社の推計では、国内の業務用食材市場は約4兆円で、同社のシェアは未だ1.3%に過ぎない(首都圏に限っても、約3.2%のシェアにとどまる)。成熟した国内業務用食材市場ではあるが、同社にとって広大な市場であり、「三大都市圏NO.1」と「お客様満足度NO.1」を目指す事で業容拡大を図っていく考え。
 
また、キスコフーズ インターナショナル リミテッド(ニュージーランド)製品の、東南アジア、中国、中近東等への展開(日本を経由せず直接輸出)や中国での業務用食材卸事業の育成で海外事業も拡大させ、創業85周年を迎える20/3期に売上高1,000億円の達成したい考え。目標達成に向けた基本戦略として、国内外での攻めの営業体制の確立、商品開発を軸とした戦略推進、及び1,000億企業への体制構築を挙げている。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
この数年、同社は売上の高い伸びを背景にした利益率と資産効率の改善で同業他社を上回るROEを実現してきたが、14/3期(13年度)は利益率の悪化でROEが低下した。仕入価格の上昇や労務費・燃料費の増加に加え、顧客ニーズへの対応に追われ採算管理が甘くなった事が原因だ。ただ、13年度は同業他社も利益率の悪化でROEが低下している事から、事業環境の悪化によるところも大きかったと思われる。
成長軌道への回帰に向け、現在、物流改革と顧客毎の採算管理の強化に取り組んでいる。この取り組みは1,000億企業への体制構築にもつながるもので、当面は前向きな踊り場が続く見込み。
 
 
 
強みと課題
 
 
上記グラフの棒グラフは同社の売上高の推移を示しており、折れ線グラフは、日本フードサービス協会(JFS)発表の飲食店(食堂・レストラン、そば・うどん、すし、その他)売上高と飲料主体部門(喫茶・酒場等、料亭・バー等)売上高の合計額(暦年)の推移を示している。JFS飲食店・飲料部門売上高がリーマン・ショック後に大きく落ち込み、未だに07年(グラフでは08/3)の実績を下回っているのに対して、同社はリーマン・ショック後の不況下にもかかわらず、新規の顧客開拓と既存顧客の深耕で売上を継続的に伸ばしてきた。
 
ただ、急激な取引先の拡大で物流面に軋みが出てきた。売上高1,000億円を目指す上での足場固めも必要な事から、同社は、ここ2年程度をお踊り場と位置付け、取引先別(個社別)採算管理の見直しと物流改革を進めている。波状的な円安による継続的な仕入価格の上昇が重なり、当面は利益圧迫局面が続くものの、更なる成長のために避けて通れない節目を迎えていると言える。
 
(1)業界No.1の営業力!厳しい事業環境下で高い売上成長を実現
20/3期に売上高1,000億円を達成するにあたって、そのプロセスとして3年毎の「C&G(challenge and Grow for The Good Company)中期経営計画」が策定され、10/3期に「第一次C&G(Change and Grow for The Good Company)経営計画」(~12/3期)がスタートし、現在、「第2次C&G(challenge and Grow for The Good Company)中期経営計画(13/3期~15/3期)」が進行中である。
 
売上急拡大の起点となったのが、「第一次C&G経営計画」であり、11/3期までの2年間、久世社長をプロジェクトオーナーとしたタスクフォースの指導の下、全社をあげて、年次目標・月次目標・週次目標と目標の明確化、期限管理の徹底、更には短期間でのPDCAマネジメントに取り組んだ結果、意識と行動に変化が生まれた。質の向上を踏まえて、12/3期には、海老名営業所(12年2月)、墨田営業所(同3月)、目黒営業所(同3月)を開設して首都圏の営業ネットワークを拡充(量の拡大)。質の向上と量の拡大で、リーマン・ショック後の景気低迷下にもかかわらず、10/3期(09年度)から14/3期にかけて売上高が1.48倍に拡大し、売上高が伸び悩んだ同業他社を圧倒した。
 
 
(2)顕在化した課題と課題への取り組み -久世社長への取材内容を要約-
ただ、14/3期は、売上高が前期比11.1%増加したものの、営業利益が前13/3期の5億44百万円から41百万円に急減した。物流費の膨張が利益を圧迫した事に加え、円安や原料高による仕入価格の上昇が響いたためだ。課題解決に向けた取り組みである「採算性を重視した攻めの営業」と「物流の採算改善と精度向上」について、12月2日、久世社長にお話を伺った。
 
 
「採算性を重視した攻めの営業」では、配送効率の良い顧客や収益性の高い顧客との取引拡大(インストアシェアアップ)や物流を意識した新規開拓等に取り組む一方、価格、物流フィー、店着時間等で顧客別交渉を開始した。昨今、ピンポイントで店着時間を指定してくる顧客が増えているが、指定される時間帯が重なる事が多い上、遠隔地の店舗もあり、希望通り配送しようとすると、ルート配送とは別に赤帽や宅急便等の臨時便を恒常的に利用せざるを得なくなり、物流コストが跳ね上がる。このため、価格、物流フィー、店着時間等を総合的に勘案して、顧客ごとに取引条件の見直しを行い、交渉を現在進めている。また、コストアップはPB商品にも及んでおり、15/3期は当初40アイテムを計画していた新商品の投入を10アイテムに減らし、既存商品のコストダウンやブラッシュアップに力を入れている。
 
「物流の採算改善と精度向上」では、庫内作業、配送、顧客別対策の3つの観点から取り組みを進めている。庫内作業では、発注業務の時間短縮と精度向上及び在庫金額の圧縮を目的に、主要DC(ディストリビューションセンター)に「新発注システム」を導入し、最大40%の業務工数の削減を達成した。また、ピッキング精度の向上と時間短縮につながる「ボイスピッキング」を横浜DCに試験導入し、効果を確認しつつ、システムの浸透を図っている。「ボイスピッキング」は入荷オペレーションと出荷オペレーションのそれぞれで導入するが、先行して導入した入荷オペレーションでは2名の人員削減に成功。出荷オペレーションは実践を通しての検証作業が進行中だ。
配送では、自社配送において、輸配送管理システム(一部の配送車輌にGPS機能を搭載し、配送状況の可視化を実現)や配車最適化システム(合理的な配送コース組による効率化)を導入し、配送の効率化を進めている。また、ドライバーの管理、採算性を考えた配送コースの実現、臨時配送の定期配送コースへの組み込み等の施策を進めている。
配送業務においては、「効率化」と共に、「誤配の撲滅」と「時間管理」も喫緊の課題である。いずれも、庫内作業を含めた作業員の意識改革がポイントになるが、4月には配送車両2,550台中149台あった出発時間の15分遅れが、9月には2,660台中22台に減少する等、意識改革が進んでいる事を示す事例が増えている。昨今、ドライバーの労務管理に対する行政当局の指導が厳しくなっているが、「誤配の撲滅」と「時限管理」の徹底はドライバーの負担軽減にもつながる。
顧客別対策については、物流フィーや店着時間等で顧客別交渉を進めており、状況によっては顧客の選別も進めていく考え。
 
 
 
2015年3月期上期決算
 
 
前年同期比10.1%の増収、経常損失1億76百万円(前年同期は1億81百万円の利益)
売上高は前年同期比10.1%増の335億92百万円。天候不順により外食産業が苦戦する中、既存顧客との取引拡大や新規顧客の開拓が想定以上に進んだ事で期初予想を上回る売上を確保。新規顧客は、約1,500店舗を開拓し、12億円の売上を計上した。
 
一方、前年同期に54百万円の利益を確保した営業損益は2億70百万円の損失。原材料高に伴い仕入価格が上昇したものの、代替商品の提案が成果をあげた事に加え、価格改定交渉も徐々に進展。この結果、原価率の上昇が0.2ポイントの上昇にとどまり、売上総利益が同9.3%増加したが、運賃(5億06百万円増)や人件費(86百万円増)を中心にした販管費の増加を吸収できなかった。
尚、運賃は売上の増加に伴い増加するが、この上期は遠隔地への配送の増加による配送効率の悪化の影響も大きかった。また、人件費の増加は人員の増加によるもの。
予想との比較では、物流効率の改善等では一定の成果をあげたものの、遠隔地配送や納品時間等での対顧客折衝に時間を要しているため想定したほどには損益が改善しなかった。
 
 
 
 
(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
事業拡大により上期末の総資産は207億05百万円と前期末に比べて17億03百万円増加し、自己資本比率は22.4%。CFの面では、運転資金の減少で、前年同期は5億71百万円のマイナスだったフリーCFが9億37百万円の黒字に転じた。
 
 
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前年同期比10.0%の増収ながら、1億75百万円の経常損失(前年同期は2億38百万円の利益)
上期決算を反映すると共に、収益改善策が途上にある事を踏まえて通期業績予想を下方修正した。この結果、通期では3億50百万円の営業損失が見込まれるが、下期に限れば、営業損失が80百万円に縮小する見込み。庫内作業、配送管理、配車最適化等の成果が徐々に顕在化してくる事に加え、価格、物流フィー、店着時間等、顧客別の交渉が第4四半期(1-3月)にかけて本格化する。加えて、PB商品も、新たに投入するアイテム数を絞り込み、既存商品のコスト競争力の強化を優先する。このため、当初、51億円(14/3期:47億円)を見込んでいた売上が、49億50百万円程度にとどまりそうだが、収益性の改善が進む見込み。
配当は期初発表の1株当たり期末12円を維持する考え。
 
(2)上期のレビューと今後の施策
同社は、15/3期の取り組み方針として、①採算性を重視した攻めの営業、②物流の採算改善と精度向上、③すべての業務の品質向上、④海外事業展開の促進、及び⑤グループ力の強化、の5項目を掲げている。既に説明したように、①採算性を重視した攻めの営業については顧客別の交渉が第4四半期(1-3月)にかけて本格化し、②物流の採算改善と精度向上については、下期以降、その成果が徐々に顕在化してくる見込み。③すべての業務の品質向上、④海外事業展開の促進、及び⑤グループ力の強化における取り組みと進捗状況は下記の通り。
③すべての業務の品質向上では、ISO22000の水準維持と更なる向上を図る。具体的には、品質管理部と営業部門との連携を強化して、顧客への調理上・保管上の品質留意点や食品表示等の情報提供を行うと共に品質検査体制を強化する。尚、同社グループは、2010年に「久世グループ品質方針」及びISO22000に基づいた久世グループの品質保証の仕組みである「久世クオス(久世QUALITY SYSTEM)」を策定し、新しい品質への取組みをスタートさせている。「お客様満足度No.1」の達成に向け、商品の品質だけでなく、営業、物流、受発注などサポート部門を含め、全ての業務で品質向上を推進している。
 
④海外事業展開の促進では、ニュージーランドでの製造事業及び中国での食材卸売事業の基盤固めを図る。このうち、ニュージーランドでの製造事業では、キスコフーズインターナショナルが、東南アジアへの販路拡大と中国への直接販売でフォンドヴォーとベシャメルソースの拡大を図る。また、新製品の開発に継続的に取り組む他、新規設備導入も機動的に行い、安定的・効率的な生産体制の構築にも努める。
一方、中国での食材卸売事業では、久華世(成都)において、創業4期目を迎える来期の黒字化が見えてきた。急速に食の多様化が進む中国成都において、品揃えを強化して西洋食市場の開拓を加速する考えで、14年6月には潜在顧客の掘り起こしを兼ねてキャッシュアンドキャリー店舗をオープンした。店舗は現金取引による事業拡大はもちろんだが、ショールームとしての役割も担っている(取引の開始に先立って商品の確認を希望する店舗が多いため)。また、デザート関係強化の一環として、ベーカリー市場へも参入した。
 
⑤グループ力の強化では、2014年4月1日に久世グループの新戦力(新鮮力)として、水産物仲卸会社 旭水産を100%子会社化した。卸のフルライン化に向けた取り組みの一環であり、久世との相互顧客紹介による取引先間口の拡大(取引先店舗数が22.0%増加)、情報共有と共同配送等による青果事業を手掛ける久世フレッシュ・ワンとのコラボレーション、及び輸出による販路拡大(ASEAN諸国、米国)等の効果が期待できる。現在、旭水産は鮮魚専門の輸出業者を通してシンガポールや米国に鮮魚を輸出しており、上期の実績は30百万円で、下期は45百万円を見込んでいる(ASEAN諸国の高級和食店で使われる鮮魚は日本からの輸出に依存していると言う)。また、豊洲への市場移転も鮮魚関連ビジネスの活性化につながるはずだ。
 
この他の子会社では、スープ&ソースのソリューションカンパニーを標榜するキスコフーズが顧客ニーズに応じた商品開発に取り組んでおり、この上期は消費者の健康志向にマッチした野菜だけのポタージュスープ3種を発表した。引き続き商品力の強化と既存顧客との関係強化に努めると共に、子会社キスコフーズインターナショナルとのグループシナジーを追求していく考え。
一方、特徴ある鮮度の良い商品を扱う元気な「八百屋」を目指す久世フレッシュ・ワンは、久世墨田(営業所)との連携により、銀座・日本橋・台場地区の新規開拓と既存顧客のシェアアップに取り組んでおり、大口ユーザー獲得に向けた案件が進行中。また、千葉県の生産農家との連携による"千葉野菜"の商品開拓と販売強化や、鮮魚事業(旭水産)との得意先情報共有と共同配送にも取り組んでいる。
 
 
今後の注目点
消費税率の引き上げや天候不順による消費の不振が同社の取引先である飲食業各社の経営に影を投げかける中、同社は価格、配送フィー、店着時間の交渉を進めていかなければならず、しかも、波状的で動き出すと一気に進む円安による仕入価格上昇が交渉を難しくしている。このため、顧客との交渉が長引く可能性もあるが、事業拡大の過程では避けて通れない節目が必ずあり、同社にとっては1,000億企業への体制構築にもつながるものだ。
上期は損失計上を余儀なくされたが、営業CF は10億円を超え、9億円超のフリーCFを確保した。また、同社の財務内容は健全で、短期的な支払い能力を示す「流動比率」は114%と安全とされる100%を上回っており、長期的な財務の安定性を示す「固定比率」も116%とまずまず。下期は季節要因で上期よりも損益が改善しやすいため単純比較はできないが、確実に損失を減少させる事で施策が進捗している事を示したいところだ。第4四半期にかけて本格化するに顧客別交渉の行方が注目される。

「目指すのは、“三大都市圏No.1”、“お客様満足度No.1”企業を実現する事である。そのためにも、国内外において攻めの営業体制を確立し、商品開発を軸とした戦略を推進していく。そして、2020年には連結売上高1,000 億円を達成する事を目指し、万全な体制を構築していく」。久世社長の決意の言葉で本レポートを締めくくりたい。