ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

プライム

ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.42

(7839:東証2部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.42】2015年9月期第2四半期業績レポート
取材概要「今期の欧州での販売は為替の急激な変動の影響を受けるが、子会社を中心にした販売ネットワークの整備が進んでおり(現在、売上の70%は子・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年5月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年9月 11,158 1,340 1,299 799
2012年9月 8,606 97 143 65
2011年9月 9,047 395 371 217
2010年9月 10,078 898 978 638
2009年9月 10,300 1,047 1,335 837
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
株式情報(5/13現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,933円 13,771,990株 26,621百万円 20.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
64.00円 3.3% 128.52円 15.0倍 674.59円 2.9倍
※株価は5/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績。
 
SHOEIの2015年9月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメット・メーカー。オートバイ用を中心に、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界約60ヵ国を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力を持つ。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。
 
経営方針  3つの世界一を実現
「世界一の品質」     … Made In Japanのグローバルブランド
「世界一のコスト競争力」 … ヘルメット業界唯一のトヨタ生産方式でコスト管理
「世界一の楽しい会社」  … お客様、株主の皆様、並びに従業員、役職員の満足度を追及
 
【事業内容】
二輪乗車用ヘルメットの売上高が約90%を占めている。高品質で高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県一関市)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、高い品質の維持と技術の流出防止を実現している。また、業界では唯一の「トヨタ生産方式」導入企業として、高い限界利益率と在庫回転率、及び優れた資産効率を誇る。
 
【欧州を中心に海外売上が75%】
世界60カ国に展開しており、14/9期の地域別売上高は、日本25%、欧州48%、北米19%、その他地域8%。最も売上構成比の大きい欧州は、ドイツ、フランス、イタリアの子会社3社と現地代理店によるネットワークでカバー。北米やその他地域は代理店経由で販売している。
決済通貨は、北米は米ドル建、その他地域は円建。
 
 
 
【トップシェアを支えるモノづくりへのこだわり 茨城及び岩手の国内2工場で全量を生産】
世界各国のライダーに称賛され、グローバルなブランドとして認知されているプレミアムヘルメット。優れた空力特性等、ヘルメットとしての高い機能性とファッション性に富んだ製作難度の高い形状。それでいて安全性が高く長時間走行でも疲れ難い。「使った人がいかに心地よいか」を追求する同社の“こだわり” が、トップシェアの原動力となっている。
 
 
人の命を守るヘルメットは、日本、欧州、北米と言った市場毎にそれぞれの安全規格がある。このため、同社では、茨城工場が主に国内製品、岩手工場が主に海外製品と、原則工場毎に仕向け先を一本化して生産性を上げている。
 
【沿革】
1954年、ポリエステル加工メーカーとして創業。59年3月に昭栄化工(株)として法人組織に改組すると共に、ポリエステルの加工技術を活かしヘルメット市場に参入した。翌60年1月に二輪乗車用ヘルメットの生産を開始し、68年7月にはアメリカに子会社を設立し海外展開を開始。87年7月には子会社を設立してフランスへも進出したが、国内でのバブル崩壊の余波を受け、92年5月に会社更生手続開始を申立。同年9月に三菱商事の商社マンだった山田勝氏(現会長)が管財人となり更生手続きを開始した(93年12月に更生計画が認可)。更生手続き中の94年3月に子会社を設立してドイツに進出する等、経営の立て直しが順調に進み、98年3月、会社更生計画認可から4年3ヶ月という短期間で会社更生手続を終結した。同年12月には社名を(株)SHOEIに変更。04年7月、JASDAQに株式を上場し、07年9月には、東証第2部に上場(JASDAQは上場廃止)した。現在、プレミアムヘルメットのグローバルカンパニーとして国内外で高い評価を受けている。
 
 
【中長期的安定成長と安定利益の実現に向けた基本方針】
(1)自分の会社は自分で守る
(2)Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)
(3)健全な財務内容の堅持
(4)投資の継続(新製品開発,コストダウン,品質向上,より確かな安全)
(5)世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指す
(6)新市場開拓と既存市場の深堀り
(7)利益の公平、公正な分配(50%配当性向,従業員への配分、会社への分配
   (内部留保))
 
短期的な支払い能力を示す流動比率が497.9%(15/9期上期末。以下同じ)、長期的な財務の安全性を示す固定比率が20.8%、無借金経営で自己資本比率77.5%。(1)自分の会社は自分で守る、(3)健全な財務内容の堅持、が着実に実行されている事が貸借対照表からみてとれる。

また、茨城及び岩手の国内2工場で全量を生産する事で(2)Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)を実現し、(4)投資の継続(新製品開発、コストダウン、品質向上、より確かな安全)及び海外子会社と一体になって進める(6)新市場開拓と既存市場の深堀りにより、(5)世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指している。

尚、(4)投資の継続(新製品開発、コストダウン、品質向上、より確かな安全)については、長期にわたり安定した経営とその成果を実現する事を目的とした大型投資第2弾が15/9期にスタートした。06/9期から09/9期にかけて成長のための大型投資第1弾(大型風洞実験施設への投資が中心)に次ぐもので、5年間で総額40億円の投資を予定。15/9期の設備投資は10億38百万円を予定しているが、20億84百万円の営業キャッシュ・フローが見込まれており、大型の設備投資を吸収して10億46百万円のフリー・キャッシュ・フローを確保できる見込み。
尚、14/9期の投下資本利益率(ROIC:調達した資金でどれだけ効率的に利益を稼いだかを測る)は25.1%。
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
東証発表の「決算短信集計」によると、東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の14/3期のROEは、金融を除く全産業8.65%(前期は4.99%)、製造業8.55%(同4.53%)、非製造業8.79%(同5.67%)。6カ月のタイムラグがあるものの、同社の14/9期は上場企業の平均を大きく上回るROEを実現した。同社は、盤石な財務基盤を有するためレバレッジは低いが、付加価値の高いプレミアムヘルメット事業は限界利益率が高いため、売上の増加で利益率の改善が加速する。14/9期は売上の伸びが大きかった事に加え、円安効果もあり、売上高当期純利益率が大幅に改善した。また、総資産回転率もメーカーとしては高い方だ。
 
 
2015年9月期上期決算
 
 
前年同期比1.8%の増収、同17.1%の経常増益
売上高は前年同期比1.8%増の65億37百万円。国内市場が14億93百万円と同17.3%減少したものの、欧州及び北米をけん引役に海外市場が50億44百万円と同9.2%増加した。

利益面では、円安で欧州子会社(子会社の上期は14年7月~14年12月)の売上原価率が大幅に低下した他、北米向けの採算も改善し、売上総利益率が45.1%と4.5ポイント上昇。賃金アップに伴う人件費の増加や広告宣伝費等の増加等による販管費の増加を吸収して営業利益が15億94百万円と同17.1%増加した。為替予約に伴う為替差損が増加した(83百万円→95百万円)事に加え、訴訟損失引当金繰入額49百万円など54百万を特別損失に計上したが、四半期純利益は9億27百万円と同16.1%増加した。

上期の同社売上換算レートは、1USドル=118.80円(前年同期比+16.37円)、1ユーロ=139.24円(同△0.73円)。海外子会社換算レートは(2014年12月30日現在)、1USドル=120.55円(同+15.16円)、1ユーロ=146.54円(同+1.49円)。

期初予想との比較では、フランス子会社の販売及び国内向け販売が予想を上回った事と円安効果で売上及び各利益が上振れした。
 
 
国内市場は同17.3%減の14億93百万円。二輪車販売が堅調に推移し、二輪乗車用ヘルメットの市場流通も概ね順調だったが、同社は前期末の受注残が前々期末の実績を下回っていた(前々期比△1億64百万円)影響で第1四半期(10-12月)の売上が前年同期比減。第2四半期(1-3月)の売上も消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動で減少した。もっとも、良好な事業環境を反映して需要は想定していた以上に強く、販売は期初予想を上回った。

一方、海外市場は同9.2%増の50億44百万円。このうち主力の欧州市場は同11.2%増の30億08百万円。日本からの現地代理店(Distributor)向け販売、欧州子会社の現地販売共に増加した。現地Distributor向けは、ウクライナ問題でEUからの経済制裁を受け、景気が悪化しているロシアが大幅に減少したものの、イギリス、スペイン等が堅調に推移。欧州子会社の現地販売では、販売数量の増加でフランス子会社の売上が大幅に増加した。
北米市場は、販売数量がわずかに減少したものの、円安効果で売上高は16億73百万円と同18.0%増加。その他の地域は同26.7%減の3憶62百万円。アジア向けが堅調に推移したものの、主要仕向け先であるオーストラリアがDistributorの在庫調整で減少した事が響いた。
 
 
 
上期末の総資産は、たな卸資産を中心に119億80百万円と前期末に比べて5億02百万円増加した。
 
(3)バイクシーズンに向け投入した新製品 「HORNET ADV(日・欧)/ HORNET X2(北米)」、「J-FORCE IV」
欧州、北米、及び日本の世界3極で販売するSport Utility Helmet「HORNET ADV(ホーネット エーディーブイ)/ HORNET X2(ホーネット エックス 2)」と日本にフォーカスしたプレミアムオープンフェイス「J-FORCE(ジェイ フォース)」シリーズの新製品「J-FORCE IV」。「HORNET ADV」は1月から欧州・北米向けの出荷を開始しており(発売は3月)、日本での販売は4月から。一方、「J-FORCE IV」は1月に販売を開始している。
 
「HORNET ADV/ HORNET X2」は、“クロスカントリーでの走行を可能にする力強さと機能性”、“オンロードを軽快に走る美しさと快適性”、という従来であれば相反するコンセプトを融合した同社にとって新たなカテゴリーのヘルメット。同社は、このカテゴリーのヘルメットを「シーンを選ばないスポーティな走り」を追求したSport Utility Helmet(SUH:スポーツライディング用多目的ヘルメット)と定義している。
(同社Webサイトより)
 
日本での限定販売となる「J-FORCE IV」はプレミアムオープンフェイス「J-FORCE」シリーズの新製品。高速域で更にその真価が発揮される先進の空力性能と涼しさを極めたベンチレーションシステム、エッジの効いたフォルム、そしてSHOEIの安全性・快適性の追求と細部にまでこだわったデザインを融合した。
(同社Webサイトより)
 
 
 
2015年9月期業績予想
 
 
通期予想は前期比1.2%の増収、同5.1%の経常増益
下期は売上高70億32百万円(前年同期比0.7%増)、経常利益12億83百万円(同6.2%減)となる見込み。急激なユーロ安(期末想定レートは1ユーロ=128.00円と上期末比△11.24 円)で欧州での売上が減少し、利益率も低下する。一方、国内は想定以上に販売が好調。北米は販売数量が下振れする見通しだが、円安効果で売上が増加する。

通期予想は売上高135億70百万円(前期比1.2%増)、経常利益27億80百万円(同5.1%増)。国内及び北米の売上見通しを上方修正する一方、欧州及びその他地域の見通しを引き下げた。利益面では、下期の欧州でのユーロ安が響き営業利益は28億50百万円と同3.1%の増加にとどまる見込み。また、為替予約に伴う為替差損63百万円を織り込んだ(14/9期は1億17百万円。期初予想には織り込んでいなかった)。

1株当たり配当は、1株当たり当期純利益(128円52銭)の50%相当額である64円を予定(前期実績及び期初予想は60円)。
 
 
 
今後の注目点
今期の欧州での販売は為替の急激な変動の影響を受けるが、子会社を中心にした販売ネットワークの整備が進んでおり(現在、売上の70%は子会社経由による販売)、販売力は年々向上している。デフレ懸念が残り、景気の足元がおぼつかない中での販売好調は注目に値する。また、期初の想定を上回る販売が続く国内は、市場を2分するライバルメーカーとの資金力、開発力の差が顕著に広がっており、今後、一段のシェアアップが期待できよう。一方、北米は販売力強化が課題である。現在、代理店1社に頼っており、販売力の強化が不可欠だが、既存代理店との契約上、一朝一夕には解決できない。ただ、それだけに中長期的なポテンシャルは大きいと言える。