ブリッジレポート
(8912) 株式会社エリアクエスト

スタンダード

ブリッジレポート:(8912)エリアクエスト vol.16

(8912:東証2部) エリアクエスト 企業HP
清原 雅人 社長
清原 雅人 社長

【ブリッジレポート vol.16】2015年6月期第3四半期業績レポート
取材概要「好調な業績は契約積み上げ型のビジネスであるストック収入型ビジネスを原動力としているため、予定外の先行投資等を実施しない限り、同社の業績・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年5月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社エリアクエスト
社長
清原 雅人
所在地
東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 新宿アイランドタワー7階
決算期
6月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年6月 1,147 100 102 143
2013年6月 819 49 50 37
2012年6月 646 4 5 19
2011年6月 595 -45 -43 -50
2010年6月 735 12 14 3
2009年6月 879 -182 -179 -381
2008年6月 1,015 -311 -307 -556
2007年6月 1,530 -95 -94 -118
2006年6月 1,580 18 18 -139
2005年6月 2,091 240 236 189
株式情報(5/13現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
145円 22,500,000株 3,263百万円 25.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
1.00円 0.7% 6.55円 22.1倍 39.83円 3.6倍
※株価は5/13終値。
 
株式会社エリアクエストの2015年6月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の駅前商業地において、サブリースやビル管理・メンテナンス(清掃、設備保守、警備管理等)を中心に売買仲介や契約更新・契約管理等も手掛ける「ストック収入型ビジネス」と、テナント誘致等の「成功報酬型ビジネス」を展開。グループは、グループマネジメントが中心の同社の他、テナント誘致等を手掛ける(株)エリアクエスト店舗&オフィス、ビル管理等の(株)エリアクエスト不動産コンサルティングの連結子会社2社。「エリアクエスト」と言う社名には、「地域に根差して(エリア)、不動産の価値を追求する(クエスト)」と言う思いが込められている。
 
 
【沿革】
創業者である清原雅人氏(1991年4月、明治大学法学部卒業)が野村證券(株)を経て、1998年4月に友人と起業。2000年1月に独立してエリアリンク(株)を設立し、01年3月に社名を(株)エリアクエストに変更した。
 
2000年1月 会社設立テナント誘致事業開始
2003年2月 東京証券取引所マザーズ上場
2003年3月 ビル管理事業開始
2006年6月 赤字転落
2007年7月 更新及び契約管理事業開始
2011年5月 サブリース事業、パノラマクリーニング開始
2012年6月 黒字化
2014年11月 東京証券取引所2部上場
 
(1)会社設立からわずか3年で株式上場
データベースマーケティング重視の営業でテナント誘致事業を拡大させ、会社設立からわずか3年1か月で(03年2月)東証マザーズに株式を上場。不動産ファンドの資金流入で不動産業界が活況を呈する中、国道16号線内(東京、神奈川、千葉、埼玉)の商業施設にフォーカスした営業戦略が奏功し、上場後も順調に業績を拡大させ04/6期には経常利益が4億円を超えた。
 
(2)業績悪化を受けて収益構造改革を推進
しかし、その後は、欧米の不動産市況の減速、米国サブプライムローン問題の顕在化、そしてリーマン・ショックと続き、国内の景気や不動産市況が悪化し同社の業績を直撃。05/6期以降は業績が急速に悪化し、06/6期から4期連続の最終赤字を余儀なくされた。このため、コスト削減に取り組むと共に、不動産市況の影響を受けやすい成功報酬型ビジネスから、安定した収益が見込めるストック収入型ビジネスを中心とする売上構造改革に取り組み、安定成長が可能な収益構造への転換を図った。
 
(3)「パノラマクリーニング」の導入でストック収入型ビジネスが軌道化
当初はなかなか成果があがらなかった売上構造改革だが、持ち前の営業力に加え、11/6期下期に導入した「パノラマクリーニング」がビルオーナー等から高い評価を受け、ビル清掃を中心に契約が徐々に積み上がっていった。損益分岐点の引き下げ努力も実を結び、12/6期には通期の営業損益が黒字転換した。尚、「パノラマクリーニング」とは、清原社長が自ら作成したビル清掃業務の作業指示と結果報告システム。「パノラマスケッチ」に基づく丁寧な清掃作業と詳細な業務報告がビルオーナー等から高い評価を得ている。
 
パノラマスケッチ、項目指示書、抜き打ちチェック、月次報告書を特徴とする「パノラマクリーニング」
パノラマスケッチ
建物共用部全体のスケッチを作成し、清掃箇所を明記。これを利用する事により、オーナー、清掃員、同社が何処を清掃するかひと目で理解できる。
項目指示書
清掃箇所毎に作業項目(何処を、何曜日に作業するか)を設定し一覧化。
抜き打ちチェック
同社社員が不定期に清掃チェックを実施。チェック箇所を写真に撮り毎月提出。
月次報告書
パノラマスケッチ、項目指示書で明確にした清掃箇所について、抜き打ちチェック時に撮影した写真を添付して毎月、月次報告書を提出します。共用部の使用状況も報告。
 
(4)共用部分の不正使用や設備面でのトラブルにも迅速に対応しサービス領域を拡大
また、清掃にとどまらず、消防法上問題となる共用部分の不正使用等、ビルオーナー等の貸主共通の悩み事の解決や対応した事に加え、漏水を含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった設備面でのトラブル等に対しても、連絡を受ければ即時対応(問題が発生すれば、いち早く駆けつけ)で臨んだ事がビルオーナー等の更なる評価につながった。
 
 
(5)サブリース(転貸)が徐々に収益の柱に
献身的なサービスを通してビルオーナー等との信頼関係が強固なものとなっていったため、12/6期からは更に一歩踏み込んでサブリースの営業を強化した。サブリースにすると、ビルオーナー等の取り分は減るが、水回り、電気、空調、ガス、エレベーター等(躯体以外の設備)、設備の補修費用等は同社が負担するため、手間も費用もかからない。加えて、同社はテナント誘致力が強いため、優良なテナント(より高い賃料での入居が可能なテナント)付けが可能だ。
 
 
同社のサブリース事業の特徴は、ターゲットを1日の乗降客数が3万人以上の駅に絞り、その周辺の物件で1階部分に限定している事。サブリースは空室リスクを伴うが、同社は、人の流れが多い一等地(乗降客の多い駅周辺)に絞り込む事と、客付けで同社が強みを持つ小売業等に人気の1階部分に限定する事でリスクの顕在化確率を極小化している。解約が発生しても、概ね1カ月程度で次のテナントが決まっていると言う(テナントが解約する場合は、6か月前までに同社に連絡する必要がある)。
 
 
リノベーションサブリースで物件の取り込みを加速
地域特性や立地に応じて物件の用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりするリノベーションの提案を合わせ行っている事もサブリース物件の獲得につながっている。その際に必要となるリフォーム費用、或いは高熱水道関係の修繕や新たな敷設費用は同社が負担するため、オーナー等は初期投資をする事無く安定的に収益を売る事ができる。一方、同社は先行投資負担を織り込んだ収益性を試算した上で提案を行っているため、テナントが埋まれば先行投資を吸収して確実に利益を上げる事ができる。
 
 
(6)2014年11月、東京証券取引所2部市場に上場
それまでは足しげく通っても色よい返事をもらえなかったビルオーナーから依頼を受ける等、2部上場を機に案件が急増しており、2部上場のアナウンスメント効果は抜群で清原社長も驚くほど。また、人材採用の面でも、その効果は大きかった。これまで継続的に人員増強に取り組んできたが、応募自体が少なく採用が思うに任せなかった。しかし、昨年12月の募集は過去最高となる280名がエントリー。説明会申込者数は117名に達し、厳選に厳選を重ねて6名採用した(この他、4月に新卒2名が入社予定)。
また、将来的な新卒社員の獲得も念頭に置きつつ、CSR(社会貢献)の一環として、学生アルバイトの活用も始めた。もともとは、清原社長の母校である明治大学の熊本県人会との関係で始めたが、学生同士のネットワークを通して他大学の学生からの希望も増えたため採用を拡大した。現在、7~8名の学生アルバイトが在籍しており、パノラマクリーニングの抜き打ちチェックと月次報告書の作成を業務とし、社員が随時同行して監督・指導している。
 
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
東証発表の「決算短信集計」によると、13年度の東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の13年度のROEは、金融を除く全産業8.58%(前期は5.30%)、製造業8.47%(同4.78%)、非製造業8.74%(同6.04%)。同社は繰越損失の影響で税負担が軽い上、14/6期は特別利益の計上による利益の押し上げもあり、ROEが25.40%となったが、これら特殊要因を除外しても、10%以上のROEを確保でき計算だ。同社ビジネスの成否を左右するのは人材である。このため、大きな設備投資を必要としない一方で、限界利益率が高い。加えて、サブリースの拡大によるファイナンス効果(他人資本である長期預り保証金の獲得)で、業容拡大による資金需要の一部を賄う事ができる。このため、サブリースの拡大と連動してROEの改善が続いている。
 
 
中期事業計画
 
 
サブリースをけん引役に業容を拡大させていく考えで、当面の目標として18/6期に売上高19億61百万円、経常利益4億49百万円を掲げている。具体的には、パノラマクリーニングとトラブルに対してリーズナブルな価格で迅速に対応できる強みを生かしてメンテナンス物件を獲得し、これをサブリースにつなげ、ストック収入型ビジネスを拡大させていく。一方、成功報酬型ビジネスについては立て直しに取り組むものの、数値計画は慎重なものにとどめている。
 
 
14/6期のサブリース新規獲得件数は過去2期間の累計獲得件数を上回る実績を上げ、売上高の約1/2、同売上総利益の1/3以上を稼ぎ出した。1件当たりの規模も拡大しており、中期事業計画の18/6期末までに300件規模に拡大させたい考え。
 
 
2015年6月期第3四半期決算
 
 
前年同期比30.4%の増収、同87.6%の経常増益
サブリースを中心にした契約の積み上げ効果でストック収入型ビジネスの売上が伸び、連結売上高が10億92百万円と前年同期比30.4%増加した。利益面では、ストック収入型ビジネスが一定規模に達した事で、売上構成比の変化に伴い低下傾向にあった売上総利益率に底打ち感が出てきた。人員増強に伴い、人件費を中心に販管費が増加したものの、売上の増加で吸収して営業利益が1億41百万円と前年同期比96.5%増加。四半期純利益が減少したのは、投資有価証券売却益(前年同期は84百万円を計上)が減少したため。
 
 
 
15/6期第3四半期(1-3月)も売上高が順調に増加した。第2四半期(10-12月)との比較で経常利益が減少したのは、6名を中途採用した事で人件費を中心販管費が増加したため。この4月には新卒2名が入社し、来期業績の一段の拡大に向け課題だった人員の増強も進んでいる。
 
 
第3四半期末の総資産は前期末に比べて5億24百万円増の17億85百万円。サブリース物件の増加に伴い、借方において有家固定資産(初期投資に伴うもの)や敷金・保証金が増加し、貸方において長期預かり保証金が増加。資金需要に対応するべく、短期借入金を積み増しした。自己資本比率は50.2%(前期末:47.3%)。
 
 
2015年6月期業績予想
 
 
期末通期業績予想に変更はなく、前期比24.7%の増収、同80.2%の経常増益予想
ストック収入型ビジネスにおいてスケールメリットが顕在化しつつあり、利益の上振れ余地は大きいが、利益の上振れ分は人材投資等の先行投資に充当する考え。もっとも、営業利益・経常利益は先行投資負担を吸収して前期比80%を超える高い伸びが見込まれる(当期純利益が減少するのは、前期は投資有価証券売却益84百万円等を特別利益に計上したため)。
 
07/6期以来の復配へ!1株当たり1円の期末配当を予定
同社は08/6期以降、無配が続いたが、売上の構造改革に取り組んだ結果、業績及び財務体質の改善が進み、今後の安定成長が見込める体制が整った。このため復配の目途が立ったと判断し、15/6期の配当予想を修正。1株当たり1円の期末配当を実施する予定とした(15年9月下旬開催予定の第16回定時株主総会の決議をもって正式に決定)。繰越欠損を解消する事が復配の前提となるが、資本剰余金の処分により解消する予定。このため、上記の定時株主総会に「剰余金の処分の件」を付議する。

尚、同社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、将来の事業拡大と経営体質強化に向けた設備投資等の成長投資に必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当の継続を基本方針としている。
 
 
今後の注目点
好調な業績は契約積み上げ型のビジネスであるストック収入型ビジネスを原動力としているため、予定外の先行投資等を実施しない限り、同社の業績予想が下振れする可能性は低い。加えて、今期に獲得されたサブリース物件の大半は、本格的な収益寄与が来16/6期以降となるため、来期の業績拡大も担保されていると考える事ができる。
12/6期以降、同社は確実に業績予想を達成しており、中計事業計画に示した見通しを上回る業績を残してきた。18/6期に過去最高となる4億50百万円の営業利益を目指す同社だが、手持ち案件の順調な増加に加え、これまで成長のネックになっていた人材の増強が進んでいる事から、清原社長は1年前倒しでの計画達成を目指しているようだ。今回決定した8期ぶりの復配も、来期以降の業績に対する自信の表れと考えていいだろう。清原社長は、年2回開催されるブリッジサロン(個人投資家向け説明会)において、早期復配への思いを熱く語っていたが、我々が想定していたよりも早く、その公約を果たしてくれた。同社の益々の発展に期待したい。