ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.20

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.20】2015年3月期業績レポート
取材概要「当面の厳しい事業環境を踏まえて、16/3期の業績予想は慎重なものとなった。しかし、下期以降の事業環境には明るい話題が多い。海外では、中国・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年6月2日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 57,037 798 780 490
2014年3月 59,568 833 803 279
2013年3月 55,610 817 783 420
2012年3月 57,790 883 840 531
2011年3月 55,762 899 842 500
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(4/30現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
464円 8,548,367株 3,966百万円 6.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
16.00円 3.4% 57.32円 8.1倍 998.75円 0.5倍
※株価は4/30終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
プラマテルズの2015年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂(プラスチック)の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料やコンパウンド(樹脂原料に添加剤を加え機能を強化した成形材料)をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売している。最終用途は、電子・電機・OA事務機器、玩具、住宅建材、自動車等。連結子会社11社、持分法適用関連会社1社(コンパウンド工場への出資)等と共にグループを形成し、子会社が合成樹脂製品の製造・販売も手掛ける。また、総合商社の双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有している。尚、同社は化学品卸業界に属し、プラスチック専門商社として唯一の上場企業である。
 
【経営理念】
合成樹脂の専門商社として、次の4項目を経営理念として掲げている。
 
①合成樹脂市場におけるメーカーとユーザーのベストマッチングを推進する役割を果たす
②顧客の立場に立った発想で合成樹脂の戦略的パートナーとしての機能を発揮する
③商いは人なりの精神を重視し、組織の人々との協調を重視する
④よき企業市民として、地球環境と地域社会に配慮しつつ、適正な利潤を出し、以って社会貢献を果たす
 
そして、これら企業理念実現のため、会社の経営方針として以下の項目を掲げている。
 
・中長期的な企業価値の最大化を目指す経営
・ステークホルダーから信頼される経営
・環境問題に積極的に取り組む経営
・常にQCD(QUALITY,COST,DELIVERY)の改善を図り、CS(顧客満足)を高める努力を継続する経営
 
 
【国内外に広がるネットワーク】
国内営業拠点 東京本社、大阪支社、名古屋支店、静岡支店、九州支店(大分)、弘前営業所、長崎出張所
国内子会社
 
 
【プラスチックと同社事業の特性】
石油精製の過程で得られるナフサ(粗製ガソリン)を高温熱分解して得られるエチレンやプロピレン等の出発原料を重合すると(分子同士を結合させて高分子にする事)、プラスチック、合成繊維原料、合成ゴム等、基礎製品の原料(樹脂原料)となりポリエチレンやポリプロピレン等の高分子が生まれる。

同社は500社の仕入先と1,300社(国内800社、海外500社)の顧客を有し、樹脂原料(ベース樹脂)やコンパウンド(目的とする性能や機能を得るために樹脂原料に強化材や添加剤を配合したもの)を原料メーカーからペレット(加工しやすいように3~5 ㎜ 程度の粒子状にしたもの)として仕入れて、OA機器、家電、自動車部品メーカー等の顧客に販売している。
 
 
相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系やスチレン系の樹脂原料の取扱が60%超
売上高の83.9%がプラスチック原料で(この他、製品14.4%、関連機器・シート1.7%。15/3期実績ベース)、相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系(45.6%)やスチレン系(20.0%)の樹脂原料が中心。エンジニアリング系樹脂原料とはポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等で、用途はOA・事務機器、光学機器(カメラ等)、精密部品(ギア等の機構部品)等。一方、スチレン系樹脂原料とは、ポリスチレンやABS樹脂等で、エアコン、冷蔵庫等の白物家電、パソコン・同周辺機器、FAX、及び玩具等で使われている(この他、家電・医療機器向け等のオレフィン系樹脂10.9%、建材向け等の塩化ビニール系材料4.9%、その他樹脂2.5%)。

販売先業界別の構成比(個別ベース売上高上位100社)は、日本メーカーが圧倒的な強みを持つ事務機器・OA・光学機器向けが32.3%、スチレン系・オレフィン系が中心の家電(白物家電)・電子(PC・周辺機器)向けが14.8%、オレフィン系のポリエチレン・ポリスチレン等の医療機器向け11.9%、塩化ビニール系材料が中心の建材9.6%、自動車向け6.0%、容器・化粧品4.5%、玩具・その他20.9%。
 
重点仕入先と仕入商品及び用途
旭化成グループ    スチレン系樹脂原料  : 冷蔵庫、エアコン等
東洋インキグループ  コンパウンド     : OA・事務機器
帝人グループ     エンジニア系樹脂原料 : カメラ・プリンター外装

この他、双日グループ、JNCグループ、三井化学グループ、出光興産グループ等からの仕入も多い。
 
【コアコンピタンス】
高付加価値商材の拡販の原動力となっているのが、(1)合成樹脂原料に関する高い専門性、(2)商社としてのネットワークを駆使した、メーカーを巻き込んでの提案力、及び(3)顧客との質の高いコミュニケーションが可能とする少量多品種即納体制、の3点。いずれも合成樹脂専門商社に不可欠な要素であり、最もQCDに厳しい日本の優良企業との継続的取引の中で同社が磨き上げてきたコアコンピタンスである。高い専門性を背景にメーカーと一体となって提案営業を進める事でビジネスを広げ、少量多品種の即納対応及び顧客密着型の営業展開で顧客満足度を高めている。
 
【ビジネスチャンス! 軽量化を追い風に自動車向けの市場が拡大】
デザインの自由度の高さ、優れた加工性、軽度の衝撃エネルギー吸収性、耐腐食性等の長期耐久性、軽量(鉄との比較)、といった特性から、国産車のプラスチック使用量は重量比で10%に上る。また、重量ベースの自動車1台当たりのプラスチック使用量は、2002年には118㎏だったが、2010年には151㎏に増加し、更に2017年には201㎏に拡大すると見られており、自動車産業におけるプラスチックの需要は更なる拡大が期待されている。
 
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
14/3期は厚生年金基金脱退損失2億66百万円など特別損失2億97百万円を計上したためROEが低下したが、15/3期は特別損失が大幅に減少したためROEも改善した。過去5年間で同社のROEに大きな影響を与えているのは売上高である。売上高が増えれば、総資産回転率が上昇し、資金需要も増加するためレバレッジも拡大する。一方、特別損失等の計上が無ければ、概ね売上高当期純利益率は安定している。

現在、同社が力を入れているのは、中国・アジア地域に進出している顧客である海外進出日系企業のニーズに対応するための海外拠点の充実である。これによって、日系企業の“Made by Japan”の高い品質を、高機能素材の安定供給ときめ細やかなサポート体制で強力にバックアップする事ができれば、売上高当期純利益率の向上につながる。
 
【成長戦略】
国内は、顧客密着型の営業を徹底する事で顧客と共に成長を図る。一方、海外は、アジア全体に生産拠点を拡大する顧客の動向に合わせて、同社も海外拠点整備の重点エリアを中国からアジアに広げ、顧客ニーズに応えていく(アジアの拠点整備は14/3期で一巡しており、現在は拠点強化に軸足が移っている)。
当面の目標としては、17/3期に経常利益10億円を掲げており、30%の自己資本比率の維持を念頭に財務面にも配慮する。また、株主には安定配当を継続していく考え。
 
海外
中国、インド、東南アジアを中心とした世界的な人口の増加と生活水準の向上による消費の増加を背景に消費財・耐久消費財の素材であるプラスチックの需要増が続いており、市場は拡大傾向にある。同社はアジアを中心に海外の顧客ニーズを取り込む事で更なる事業拡大を図るべく、重点エリアを中国からアジアへと広げ、拠点整備を進めてきた。アジアでの拠点整備は14/3期に一巡しており、15/3期以降、アジアの成長を本格的に取り込んでいく考え。
 
国内
同社は強みである顧客密着型の営業を徹底する事で国内でのシェアアップを図ると共に、海外拠点を有機的に活用する事で海外進出日系企業との取り組み拡大にもつなげていく考え。
尚、同社の顧客は、精密機器、医療機器、家電・電子等の勝ち組企業が多く、いずれの顧客も国内外での生産バランスに配慮した経営を行っている。このため、国内でも取引の拡大余地を残している。
 
 
2015年3月期決算
 
 
前期比4.2%の減収、同2.9%の経常減益
売上高は前期比4.2%減の570億37百万円。消費税率引き上げ後の個人消費の回復の遅れや新設住宅着工戸数の減少等で国内売上が380億円88百万円と同4.1%減少。アジアでの拠点整備の効果でその他地域が同28.9%と伸びたものの、中国の景気減速で香港が落ち込んだ他、上海も前期並みにとどまり、海外売上も同4.5%減少した。

商材別では、医療機器向けを中心にオレフィン系樹脂が同3.3%増と増加した他、主にOA・事務機器、光学機器、精密部品等に使われるエンジニアリング系樹脂がほぼ前期並みの水準を維持。白物家電向けが堅調に推移したスチレン系樹脂もわずかな減少にとどまったが、国内の新設住宅着工戸数の減少による建材需要の減少等で塩化ビニール系材料が大きく落ち込んだ。

営業利益は同4.2%減の7億98百万円。付加価値の高い商材が健闘した事で売上総利益率が5.7%と0.2ポイント改善したものの、売上の減少が響き売上総利益がわずかに減少。一方、販管費は、経費節減に努めたものの、アジアの各拠点が営業活動を本格化したため、わずかに増加した。

受取配当金の増加や為替差益の計上(前期は差損を計上)で営業外損益が改善する一方、特別損失が大きく減少した事で当期純利益は4億90百と同75.2%増加した(前期は厚生年金基金脱退損失2億66億円など2億97百万円を特別損失に計上)。
 
 
 
 
期末総資産は前期末と同水準の247億85百万円。借方では、CFの改善で現預金が増加した他、株式相場の上昇による投資有価証券の評価額の増加等で投資その他も増加。一方、売上の減少で売上債権が減少した他、償却により有形固定資産や無形固定資産が減少した。貸方では、仕入債務や有利子負債が減少する一方、純資産が増加した。
流動比率147.3%(前期140.0%)、固定比率33.6%(同31.9%)。流動性に富み、かつ長期的な財務の安定性も有する。同社が重視している経営指標である自己資本比率は34.4%と目標である30.0%を超えた(同30.5%)。引き続き30.0%レベルを維持する事を目標としていく考え。
 
 
利益の増加や売上債権の減少等による資金効率の改善で前期は7億68百のマイナスだった営業CFが8億61百万円の黒字に転じた。定期預金の預け入れの減少や設備投資の減少で投資CFのマイナス幅も縮小し、7億70百万円のフリーCFを確保した。借入金の約定返済や配当金の支払いで財務CFはマイナスとなったものの、現金及び現金同等物期末残高は31億10百万円と前期末に比べて2憶35百万円(8.2%)増加した。
 
 
2016年3月期業績予想
 
(1)16/3期の基本方針
①海外拠点を有機的に活用する事で得意先である海外進出日系企業との取り組みを拡大し、顧客密着型の営業を徹底し、共に成長を図る。
②国内・海外の連結子会社を含め、グループ全体としての連携強化に努め、更なる商いの拡大を目指す。
 
 
前期比4.3%の増収、同2.5%の経常増益予想
欧州経済の停滞、中国をはじめとする新興国の成長鈍化、更には原油価格の下落に伴う合成樹脂原料価格の価格調整の予定がある、として慎重な業績予想となった。為替の前提は1USドル=120円00銭。

配当は1株当たり1円増配の年16円を予定(上期末8円、期末8円)。同社は将来の事業展開及び事業投資と経営基盤・財務基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定的な配当の継続を実施していくことを基本方針としている。
 
 
今後の注目点
当面の厳しい事業環境を踏まえて、16/3期の業績予想は慎重なものとなった。しかし、下期以降の事業環境には明るい話題が多い。海外では、中国が、もたつく国内景気を刺激するべく金融緩和に踏み切った。昨年11月から本年4月にかけ3度実施しており、15/3期は精彩を欠いた香港及び上海の両拠点にとって追い風となるはずだ。一方、国内では、消費税率引き上げ後の消費の回復が遅れているが、雇用や賃金は回復しており個人所費の回復に向けた下地はできつつある。加えて、合成樹脂原料価格に影響を与える原油価格も上昇基調にあり、WTI、北海ブレント、ドバイのいずれもが、年初の40ドル前後から足元60ドル前後に上昇している。このため、事業環境は徐々に明るさを取り戻してくると思われる。早期に業績底打ちから回復への道筋を付けたいところだ。