ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.21

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.21】2015年3月期業績レポート
取材概要「主力のバルブ事業は引き続き売上の増加と収益性の改善が期待できる。売上の面では、M&A及び子会社設立で販売ネットワークの拡充が進むアジアや・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年6月23日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 117,036 6,886 7,581 6,881
2014年3月 117,355 6,470 6,501 3,564
2013年3月 111,275 6,558 6,521 4,039
2012年3月 108,446 4,638 4,388 2,480
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(5/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
574円 108,216,989株 62,117百万円 9.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 2.3% 47.12円 12.2倍 686.47円 0.8倍
※株価は5/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キッツの2015年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。バルブでは、国内トップ、世界でもトップ10に入り、ベスト3入りが目標。バルブの素材は、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われ、同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社29社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)の他、ホテル事業等も手掛けている。
 
【企業理念 -キッツは、創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指します-】
「企業価値」とは「中長期的な株主価値」であり、「中長期的な株主価値」の向上には、顧客の信頼を得る事によって利益ある成長を持続していく必要がある、と言うのが同社の考え。そして、企業価値を向上させる事により、株主をはじめとして、顧客、社員、ビジネスパートナー、社会に対して様々な形で寄与し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えている。
同社は、これらの思いを「キッツ宣言」に込め、更なる飛躍を目指している。
 
キッツ宣言
キッツは、
創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指し、ゆたかな社会づくりに貢献します。
KITZ’ Statement of Corporate Mission
To contribute to the global prosperity,
KITZ is dedicated to continually enriching its corporate value
by offering originality and quality
in all products and services.
 
行動指針(Action Guide)
Do it KITZ Way
・ Do it True(誠実・真実)
・ Do it Now(スピード・タイムリー)
・ Do it New(創造力・チャレンジ)
 
Do it True
人と人との関係で忘れてならないのが誠実に対応する心。また、表面的なものでなく物事の本質を追い求める心も必要。この基本を忘れる事なく企業活動を進めるための合言葉。
Do it Now
情報をいち早くキャッチし、迅速な意思決定と確実に実践していく躍動的な社員像を表現した言葉。
Do it New
変化に対応するために従来の発想から抜け出して秘められた創造力を発揮し、新しい事にチャレンジする社員像を表現した言葉。
 
【事業セグメントの概要】
事業は、バルブ事業、伸銅品事業及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、15/3期の売上構成比は、それぞれ77%、18%、5%(利益ベースでは、95.2%、2.5%、2.3%)。
 
バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「通す」、「止める」、「流れを絞る」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。
特に、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用され、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブは、国内で高いシェアを持つ主力商品である。販売先は、建築設備、各種工業設備・プラント、環境、エネルギー、半導体等多岐にわたる。鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、グローバルコストの実現に向けて海外生産拠点の強化にも取り組んでいる。
 
 
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークスの事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」を製造・販売している(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)。
 
その他
子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。尚、バルブ事業への更なる特化と経営資源の再配分を目的に、フィットネス事業を手掛けていた100%子会社(株)キッツウェルネスの全株式を、14年10月1日付けでダンロップスポーツ(株)に売却した。
 
【キッツグループ(バルブ事業)】
総合バルブメーカーとして、国内では、主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外では、インド、U.A.E.、韓国に駐在員事務所を置く他、中国、シンガポール、タイ、アメリカ、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産では、国内7拠点の他、海外に11拠点(中国、台湾、タイ、インド、ドイツ、スペイン)を展開し、最適地生産を目指した生産ネットワークを構築している。
 
 
 
国内バルブ事業では、建築設備向けが43%を占め、水関連(上下水道等、14%)、半導体関連(12%)や機械装置(9%)等の比率も高いが、石油精製・石油化学、一般化学、食品・製紙、ガス、電力等、幅広い分野に製品を供給している(15/3期実績)。
 
 
海外バルブ事業のエリア別売上構成比は、アジア54%(アセアン・その他36%、中国13%、中東4%)、北米31%、欧州・その他15%(15/3期実績)。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE =売上高当期純利益率×総資産回転率×レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
15/3期は(株)キッツウェルネス株式の売却益21億56百万円を特別利益に計上した事もあり、ROEが前期の5.70%から9.83%に上昇した。一時的な利益である株式売却益を排除して試算すると8.3%程度になる(株式売却益にかかる税率を50%と想定)。値上げ効果と原価低減による主力のバルブ事業の利益率改善がROE向上の原動力となった。
 
 
第2期中期経営計画(14/3期~16/3期)は、アベノミクス効果や円安による国内設備投資の増加と復興需要を含めた建築設備市場の拡大を前提としたが、国内設備投資が盛り上がりを欠き、建築設備市場も人手不足による工事遅延で需要の顕在化が遅れた。このため、計画を下回る推移となっているが、増収基調が維持され、利益率も期を追う毎に改善している。
 
 
2015年3月期決算
 
 
前期比0.3%の減収ながら、同6.4%の営業増益
主力のバルブ事業において、北米の好調や円安効果で海外売上が増加したものの、14年1月に実施した価格改定に伴う駆け込み需要の反動、流通在庫調整、更には人手不足による工事遅延等で国内売上が減少。(株)キッツウェルネスの連結離脱の影響もあり、売上高は1,170億36百万円と前期比0.3%減少した。

利益面では、国内での価格改定効果と原価低減によるバルブ事業の収益性改善等で売上総利益が同5.2%増加。円安による海外子会社の円建て経費の増加等による販管費の増加を吸収して営業利益が68億86百万円と同6.4%増加した。為替差益の増加(1億64百万円→4億01百万円)等により営業外損益が改善。(株)キッツウェルネスの株式売却益21億56百万円を特別利益に計上した事で当期純利益は68億81百万円と同93.1%増加した。

第2四半期に発表した修正予想に対して、営業利益が約6億円下振れしたが、バルブ事業の国内市場での建築設備向けの伸び悩みと、市況の悪化による伸銅品事業の第4四半期の利益の下振れが主な要因。
 
 
バルブ事業
売上高は前期比2.6%増の901億52百万円。このうち国内売上は同1.1%減の560億26百万円。14年1月に実施した価格改定に伴う仮需の反動と流通在庫調整が12月まで続いた事が響いた。ただ、改定後の価格は順調に浸透しており、主力の建築設備向けも人手不足等で工事が遅れていた物件への納入が第4四半期から始まった(本格的な回復は16/3期第2四半期以降になる見込み)。ステンレス製バルブが多く使用される工業用バルブ(機械装置、石油精製・石油化学、一般化学、食品製紙)は維持・更新が中心となり、総じて低調な推移となった。一方、半導体製造装置向けは海外半導体メーカーの設備投資が期を通じて継続し同26%増と伸長。耐震型の好調で水市場向けも同3%増加した。
海外販売は同9.2%増の341億25百万円。円安が追い風となる中、北米が同25%増と伸長。アジアは、タイの政変やインドネシアの大統領選の影響によるアセアン・その他の減少を中国・中東の増加でカバーして同2%増加。ヨーロッパ・その他は低迷が続いたものの、円安効果で4%増加した。

営業利益は同10.6%増の95億06百万円。相対的に採算の良い国内の減益や円安による海外子会社の円建て経費の増加を価格改定効果と原価低減で吸収した。尚、ドル建て販売と海外子会社からのドル建て仕入が概ねバランスしているため、売上総利益ベースでの円安の影響はほとんどなかった。
 
伸銅品事業
売上高210億21百万円(前期比0.3%増)、営業利益2億48百万円(54.7%減)。2014年度の国内黄銅棒市場は、数量ベースで同3.6%減少したものの、重量ベースではほぼ横ばい(前年度比0.3%減)の15,364トン/月。同社においては、1月の銅相場の下落を受けて2、3月の販売価格が下落したものの、第3四半期までは前年同期を上回る価格で推移していたため、売上高がわずかに増加した。利益面では、生産性向上のために期初に導入した設備(原材料の洗浄装置)の立ち上げに時間を要した(歩留まりが悪化)事と販売価格下落による2、3月の採算悪化が響いた。
 
その他
売上高58億63百万円(前期比31.1%減)、営業利益2億31百万円(同18.9%減)。(株)キッツウェルネスの連結離脱で減収減益となったものの、(株)ホテル紅やが手掛けるホテル事業は客室リニューアル効果で売上高が同1.3%増加し、損益が黒字転換した。ホテル事業の前期は修繕費(外壁塗装工事費)が負担となり損失を計上した。
 
 
業容の拡大とキャッシュ・フロー(CF)の改善で期末総資産は1,157億90百万円と前期末に比べて82億07百万円増加した。流動比率248.2%(前期269.8%)、固定比率69.9%(同78.7%)、自己資本比率64.2%(同61.1%)、と流動性、長期的な財務の安定性共に良好。
 
 
利益の増加と資金効率の改善により前期は46億67百万円だった営業CFが89億23百万円に増加。設備投資は前期並みだったが、(株)キッツウェルネスの株式売却で投資CFのマイナス幅も縮小し、79億12百万円のフリーCFを確保した。借入金の約定返済で財務CFがマイナスとなったものの、79億23百万円だった現金及び現金同等物期末残高が125億75百万円に増加した。
 
(4)株主還元
同社は継続性と安定性に留意して配当を実施しており、当面の配当性向については連結当期純利益の25%前後を望ましい水準と考えている。また、利益配分の目標として、「自己株式の取得も含めて、連結当期純利益の3分の1前後を目指す」としている。

15/3期の期末配当は、1株当たり2円増配の7円を予定しており、中間配当6円(1円増配)と合わせて年3円増配の13円となる予定。配当金の総額は14億12百万円となり、配当性向は20.6%。2014年12月に実施した自己株式の取得費用4億87百万円と合わせた総還元額は18億99百万円となり、総還元性向は27.6%となる。一時的な収益である子会社株式売却益を除いた配当性向は27.8%、総還元性向は37.4%となる。
 
【Topics -グローバル・スタンダード・トラニオン・ボールバルブの投入、バンコクに販売現法の設立-】
(1)グローバル・スタンダード・トラニオン・ボールバルブをラインナップ
同社、KITZ corporation of Europe, S.A.(スペイン)、Perrin(ドイツ)の3社が、独自に開発していたトラニオン・ボールバルブの製品仕様を統合し、グループスタンダードモデルとして新たにラインナップした。統一モデルとする事でグローバルな部材調達や最適地生産が可能となり、コスト・納期の両面での競争力の強化につながる。
同社は、グローバル・スタンダード・トラニオン・ボールバルブをけん引役に、15/3期は35億円だったトラニオン・ボールバルブ全体の売上を、21/3期に70億円に引き上げたい考え。

尚、トラニオン・ボールバルブ(トラニオン型ボールバルブ)は、大口径または高圧用途に適したボールバルブであり、石油・ガス市場、石油化学市場、電力市場等、様々な工業分野で使用される。弁体であるボールを上部と下部の2本のステムまたはプレートで固定する構造のため、流体圧力による作動トルクへの影響が少ない。
今回ラインナップしたグローバル・スタンダード・トラニオン・ボールバルブは、工業用バルブの規格として重要なAPI 6D、及びISO14313はもちろん、各市場で求められる規格・認証を取得済みである。
 
(2)バンコクに新たな販売現地法人を設立
バンコクに設立した新しいグループ会社「KITZ Valve & Actuation(Thailand) Co., Ltd.」(以下、KVT)が、4月1日より活動を開始した。同社グループのグローバル戦略上、重要地域と位置付けられているアセアンは、「KITZ Corporation of Asia Pacific Pte. Ltd.(シンガール)」(以下、KAP)が統括しているが、KVTは同地域の最重要国であるタイでの販売・マーケティングを強化するべく、KAPのサテライト現地法人として設立された。

これまでタイでは、KAPを通して営業活動を行っていたが、KVTの設立により顧客の近くでの営業活動が可能になる。タイはもちろん、アセアンにおけるビジネスの一段の拡大につなげるべく、21/3期に55億円の売上を目指す。
 
KITZ Valve & Actuation(Thailand) Co., Ltd.
所在地  タイ王国 バンコク
事業内容 バルブ及びその他の流体制御用機器等の仕入・販売
設立   2015年3月
資本金  6,000千バーツ
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
前期比2.5%の増収、同23.4%の営業増益予想
(株)キッツウェルネスの連結離脱の影響を考慮した実質ベースでは、前期比2.1%の増収、9.5%の営業増益。主力のバルブ事業において、駆け込み需要の反動及び流通在庫調整の一巡と建築設備市場の回復で国内販売が同2%増加する他、欧州の苦戦が続く海外も、アセアンや中国を中心とするアジア及び北米をけん引役に同9%の増加が見込まれる。

利益面では、銅価上昇やIT投資等も含めた費用増に加え、円安による子会社の円建て販管費の増加も見込まれるが、国内市場の回復による数量増効果に加え、引き続き原価低減効果も見込め、主力のバルブ事業の収益性改善が進む。伸銅品事業も、市況の安定を前提に本来の収益性を目指す。

配当は、1株当たり上期末6円、期末7円の年13円を予定している。
 
 
設備投資はほぼ倍増
コストダウン投資や開発投資の強化で設備投資が前期の35億円弱から69億円に増加する。また、M&Aにも機動的に対応していく考え。
 
 
バルブ事業
売上高946億円(前期比4.9%増)、営業利益113億円(前期比18.9%増)。国内は前期比2%の増収を見込む。増収のけん引役となる建築設備市場は、駆け込み需要の反動減及び流通在庫調整の一巡により、実需に沿った受注が期待できる。足元、首都圏の再開発物件を中心に緩やかながら回復傾向にあり、前期に新規開設した東京事務所(東京都中央区)を拠点として需要の取り込みを図ると共に改定後の新価格の維持を目指す。一方、ステンレスバルブが多く使用される工業用バルブの市場については、コンビナートの統合等により工場投資が弱く、大規模な設備投資計画がない。機械装置、食品・製紙はエンドユーザーへの営業強化で需要の掘り起こしを図る。前期好調だった半導体市場は引き続き高水準を維持する見込みだが、下期以降は不透明。

海外は同9%の増収を見込む。アジアは、アセアン、中国、中東と主要地域で売上が増加する。アセアンは、タイ、インドネシアが前下期から回復傾向にあり、プラント案件の取り込みに注力すると共にOil&Gas市場へのアプローチを図る。タイは新設した販売現法の寄与が見込まれる。中国は景気の減速で工業用バルブの受注環境の悪化が予想されるが、営業強化と新規アイテム投入による建築設備を中心とする汎用バルブの拡販でカバーする。
一方、北米は引き続き好調を維持するものの、前期に比べると若干弱含み。強みを有するダウンストリームで化学プラント向けの案件の取り込みを図ると共にクロム製バルブの販売を強化する。
欧州は景気の下振れリスクが懸念される等、引き続き苦戦が予想されるため、代理店との連携を強化する。中国の石油関連プロジェクトへの依存度が高いPerrinは米州・アジアでの営業を強化中である。
 
伸銅品事業
2015年度の生産量を3,300トン/月(前年度3,109トン/月)、銅価格を78万円/トン(前年度の電気銅建値76.6万円/トン)と想定している。一時的な要因(期初に導入した設備の立ち上がりの遅れによる歩留まり悪化)がなくなり、収益性が本来の姿に戻る。
 
その他
(株)キッツウェルネスの連結離脱の影響で減収・減益となるが、ホテル事業個別では、リニューアルしたLake Resort Spa「稀石の癒」の集客強化、Web予約の強化、外国人旅行者の誘致(インバウンド需要の取り込み)等により増収・増益を見込んでいる。
 
 
 
今後の注目点
主力のバルブ事業は引き続き売上の増加と収益性の改善が期待できる。売上の面では、M&A及び子会社設立で販売ネットワークの拡充が進むアジアや工業用バルブで一定の評価を得ている北米で着実に売上を伸ばしており、足元、マクロ景気の影響を受けて苦戦が続く欧州も中期的には売上の押し上げ要因となろう。加えて、成熟した国内でも、建築設備向けで工事が遅れていた物件への納入が期待できる他、工業用バルブでも納期や価格競争力を強みにシェアアップの余地が大きい。収益性の面では、グローバル・スタンダード・トラニオン・ボールバルブに代表されるように設計段階から取り組みを進めており、引き続き部材の共通化や管理工数の削減等が期待できる。また、中期的には設計の3D化・モジュール化による効果も期待できよう。一方、ラインの改善では、各工場においてライン毎の生産性の改善を追及している。収益性の改善に向けた取り組みは今に始まった事ではなく、派手さもないが、ここ数年の成果は顕著だ。加えて、価格改定効果と異なり、継続的な効果が期待できるだけに注目される。