ブリッジレポート
(7776:JASDAQ) セルシード 企業HP
橋本 せつ子 社長
橋本 せつ子 社長

【ブリッジレポート vol.20】2015年12月期上期業績レポート
取材概要「この半年で、「日本発の細胞シート工学を基盤とした新たな治療法を一日も早く患者さんにお届けするという私たちの目標の実現にさらに一歩近づ・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年9月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社セルシード
社長
橋本 せつ子
所在地
東京都新宿区原町3-61 桂ビル4F
事業内容
日本発の再生医療基盤技術に基づく、世界初の「細胞シート再生医療」の世界普及を推進
決算期
12月末日
業種
精密機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年12月 86 -601 -577 -582
2013年12月 105 -534 -581 -584
2012年12月 75 -846 -842 -913
2011年12月 86 -1,418 -1,358 -1,442
2010年12月 66 -1,204 -1,002 -1,009
2009年12月 87 -785 -788 -790
2008年12月 61 -778 -644 -650
2007年12月 40 -809 -614 -616
2006年12月 23 -672 -464 -470
2005年12月 34 -412 -336 -343
2004年12月 53 -257 -214 -215
株式情報(8/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
601円 8,674,292株 5,213百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - - - 287.00円 2.1倍
※株価は8/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
セルシードの2015年12月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(細胞をシート状に組織化したもの)」を用いて従来の治療では治癒できなかった疾患や障害を治す再生医療「細胞シート再生医療」の世界普及を目指している。
事業は、細胞シート再生医療製品及びその応用製品の研究開発・製造・販売を通じて、細胞シート再生医療の普及を推進する「細胞シート再生医療事業」、細胞シートの基盤ツール(培養器材)である温度応答性細胞培養器材及びその周辺製品の研究開発・製造・販売を行う「再生医療支援事業」に分かれる。
 
【細胞シート工学と細胞シート再生医療】
「細胞シート工学」は再生医療の汎用的なプラットフォーム技術となるもの。患者から細胞を採取し、これをシート状に培養し治療に用いるが、「細胞シート工学」の画期的なところは、温度応答性細胞培養器材を用いる事で、従来不可能だった無傷の状態での細胞回収を可能にした事だ。
細胞は通常、培養皿で培養する(増殖させる)が、この場合、細胞は培養皿の表面に密着して増殖する。そして細胞を回収する際に皿から剥がすが、その際、トリプシン等のタンパク質加水分解酵素を用いて剥がすため、細胞表面のタンパク質(細胞外マトリクス)が壊れてしまい、本来の生きた細胞とは異なったものになってしまう(傷付けてしまう)。このため、これを再生医療に用いても、きちんと生着できず機能を十分に発揮できない。
一方、同社が開発した温度応答性細胞培養器材は、温度を変える事で細胞が密着している培養面の表面の性質が変わり、表面から細胞が自然と剥がれるため、タンパク質を保持した生の状態に近い細胞をシートとして回収できる(生体組織、臓器に近いものを手に入れる事ができる)。細胞表面のタンパク質(細胞外マトリクス)は、細胞外の空間を充填すると共に、骨格的役割や細胞間結合の足場的役割を担う他、細胞の増殖・分化も制御する。細胞を細胞として機能させるために不可欠な物質であり、患部の修復(再生)に働く。
 
温度応答性細胞培養器材は温度を下げると、温度応答性ポリマーの性質が変わり、細胞シートが剥離するため、細胞表面のタンパク質(細胞外マトリクス)を破壊する事無く回収できる。
従来、細胞の回収に際してトリプシン等のタンパク質加水分解酵素を用いていたが、タンパク質加水分解酵素は細胞間の結合因子や接着因子を破壊し、細胞に大きな傷害を与える。
 
 
市場環境とセルシードのミッション
 
 
経済産業省の資料によると、2012年に国内90億円、海外1,000億円だったと推計される再生医療市場は、2050年にそれぞれ2.5兆円、38兆円規模に拡大する見込み。日本では2014年11月25日に医薬品医療機器等法(薬事法が改正・名称変更された)や再生医療等安全性確保法が施行され、再生医療の承認に向けた法体系が確立された。医薬品医療機器等法において早期承認制度が導入された事や再生医療等安全性確保法において細胞培養加工の外部委託が認められた事は世界中の再生医療関連企業が注目するところ。食道再生上皮シートや軟骨再生シート等、複数の再生医療パイプラインを有する同社にとっても大きなビジネスチャンスだ。
 
 
医薬品は、1900年頃から化学合成による化合物医薬品の製造が始まり(スタートはアスピリン)、1980年頃には遺伝子組み換えタンパク質による抗体医薬品等の「バイオ医薬品」の市場が生まれ、その後、遺伝子を医薬品として使う「遺伝子医薬品」、がん免疫療法等の生きた細胞を用いる「細胞医薬品」、更には生きた人体組織を治療ツールとして用いる組織医薬品(再生医療)へと技術革新が進んできた。そして、普及期を迎えつつある再生医療のプラットフォーム技術である「細胞シート工学」を基盤技術としているのが同社である。尚、医薬品医療機器等法や再生医療等安全性確保法に示されている再生医療等製品は、再生医療による「組織医薬品」に加え、「遺伝子医薬品」や「細胞医薬品」も含まれている。

「バイオ医薬品」が登場した当時は、技術的な難易度の高さやコスト面での課題(高額な医療費が必要になる)に加え、現在のように法整備による後押しも政策的な支援もなかったため(逆に化合物医薬品を前提にした法規制がバイオ医薬品普及の足かせとなった)、市場の確立そのものが疑問視されていたが、30年たった今では医薬品の売上の3割を占めるに至っている。現状では技術面やコスト面でハードルが高い「組織医薬品」ではあるが、安倍政権の成長戦略の一翼を担う分野であり、実際、医薬品医療機器等法による「早期承認制度」や再生医療等安全性確保法による「細胞培養加工の外部受託」の導入等に代表されるように、法改正も含めて普及に向けた環境の整備が進んでいる事等から、「バイオ医薬品」等よりも速いスピードで普及が進むと見られている。
 
(3)セルシードのミッション
・再生医療を一日も早く実現する
・細胞シート工学技術を世界に発信する
・安全で品質の高い製品及びサービスの提供による医療の変革に貢献する
 
上記のミッションを遂行する事で再生医療産業化の動きを先取りして成長速度を加速させ、これまでの「大学の基礎研究シーズを臨床開発につなげる」ステージの“研究支援会社”から、「収益を創出しながら、再生医療を実現する」ステージの“事業会社”へとステップアップしていく考え。
 
 
中期戦略(15/12期〜17/12期)と進捗状況
 
【中期経営計画の概要  −細胞シート再生医療製品を開発し、世界市場への普及を目指す−】
2014年11月の再生医療関連新法の施行を踏まえて日本を細胞シート再生医療開発最優先拠点と位置付けた。再生医療関連機器の開発・販売で収益を確保しつつ、再生医療製品の早期事業化に取り組んでいく考え。優先的に自社開発を進めるパイプラインとして、「食道再生上皮シート」と「軟骨再生シート」を設定しており、開発した細胞シート再生医療製品はグローバル展開も進めていく。
 
 
先行投資が続く見込みで、中期経営計画期間内の利益計上は見込んでいない。現在、最も事業化に近い「食道再生上皮シート」について、15/12期下期に国内での治験届提出を予定しており、スウェーデンでも治験開始に向けた準備が進んでいる。次いで研究が進んでいる「軟骨再生シート」については、16/12期に自己細胞の治験を開始するための準備を進めている。また、器材の新製品開発を進める他、細胞の培養に必要な細胞培養施設(バイオクリーンルーム:Cell Processing Center。以下、CPC)を建設し、量産体制整える。
売上高については、再生医療支援事業の売上のみを織り込んだ。ラインナップの拡充を図ると共に情報提供やカスタマーサービスを強化して、再生医療分野はもとより、細胞を扱う多様な研究機関や企業等にも販路を広げていく。損益については、治験関連費用、営業強化等による人件費の増加、更には温度応答性細胞培養器材の新製品開発等に伴う開発費用の増加を織り込んでいる。また、CPCが16/12期中に稼働する予定であり、CPCの減価償却費も織り込んだが、17/12期は売上増によるスケールメリットや温度応答性細胞培養器材の大日本印刷(株)への製造移管等による収益性の改善で売上の増加以上に損益の改善が進む見込み。
 
【進捗状況】
(1)細胞培養施設の新設
CPCを東京都江東区青海二丁目5番10号 テレコムセンタービル内に新設する(延べ床面積:約763 屐法設備投資額は630百万円を予定しており、完成予定は2016年上期。商業生産を視野に細胞シートの安定的な供給体制を早期に確立し、2014年11月施行の「再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」に準拠した設備運営を行っていく。CPCは4つの独立したユニットからなり、現在の培養方法で年100人分の細胞シートの作成が可能。自動化装置の開発も進め、生産性や生産能力の増強にも取り組んでいく。また、業務の効率化を図るため、本社機能も同ビルに移転する(2016年1月を予定)。
 
(2)再生医療製品の早期事業化
食道再生上皮シート
食道再生上皮シートは、食道がん再生治療法(食道狭窄予防)として東京女子医大先端研が開発した治療法で、患者の口腔粘膜から細胞を採取し、温度応答性培養皿を用いてこれを培養し作成した細胞シートを、食道がん切除内視鏡手術後の食道潰瘍面に移植する。
 
 
ただ、現状では移植作業に高度な技術を要するため、作業負担の軽減につながる細胞シート移植用デバイスも開発する(相手先は未公表だが、既に製造委託契約締結済み)。日本では細胞シートとのコンビネーション製品として、欧州では医療機器(承認取得が必要)として販売していく。
 
 
国内外で30症例の医師主導臨床研究の実績
食道再生上皮シートを用いた食道がん再生治療は、医師主導臨床研究で、日本20症例(東京女子医科大学10症例、東京女子医科大学他10症例)とスウェーデン10症例(全てカロリンスカ大学病院)の実績があり、論文や学会報告等でこの治療法の有効性・安全性が報告されている。
 
日本とスウェーデンで企業治験を開始
企業治験に向け、日本では東京女子医科大学と開発基本合意契約を締結した。今期中の治験届提出に向け、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に戦略相談を含めて、治験実施体制の整備を進めている。また、海外では、欧州での販売承認取得に向け、スウェーデンでの企業治験を計画しおり、その推進役となるCellSeed Sweden AB(スウェーデン)を15年5月に設立した(後述)。
尚、PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)は医薬品や医療機器等の安全性向上のための製造業者等への指導及び助言を行っている。
 
市場規模
国立がん研究センター対策情報センター及び日本経済新聞「食道がん治療の実力病院・80症例以上の手術ありの47病院」調査を基にした同社の推計によると、2012年の食道癌患者は20,700人で、このうちの約20%(4,140人)の症例が内視鏡による癌切除手術を受けている。この4,000人強が、細胞シートによる治療対象患者と考える事ができる。食道がんは男性に多く、年々、罹患率は上昇しているが、死亡者数は罹患数ほど増えていない事から、食道癌除去後の手術部位治癒及び食道狭窄防止のニーズは増えていると推測できる。
 
軟骨再生シート
軟骨再生シートは、スポーツによる損傷やエイジングを原因とする軟骨欠損や変形性関節症を適応症としており(いずれも、現在、根治する方法がない)、軟骨細胞を培養して作製した細胞シート(軟骨再生シート)を患部に移植し、軟骨表面を根本的に再生する。
 
 
東海大学整形外科佐藤正人教授の下で2011年11月に第1例目臨床研究が始まり、全8例の移植を実施した。2014年11月には全例の1年後評価が終わり、自己細胞を用いた臨床研究が終了した。いずれも術後の経過は良好だ。次のステップとして、多指症患者軟骨組織を採取し、同種細胞シートとして移植する「同種細胞シート(他人の細胞を基にした細胞)による関節治療を目指した臨床研究」を計画しており、2014年8月に大臣に通知を発出した。(株)セルシードは、上記自己細胞シートの臨床研究を引き継ぎ、2016年中の企業治験開始を目指して準備を始めていく。
 
 
(3)世界へ向けた事業展開
既に説明した通り、15年5月、スウェーデンに100%子会社 CellSeed Sweden ABを設立した(ABは日本における株式会社の意)。CellSeed Sweden ABが欧州での食道再生上皮シート治験の母体となる(既に現地CROとの契約も締結済みである)。また、6月にスウェーデンのストックホルムで開催された国際幹細胞学会(ISSCR)にも参加し、カロリンスカ研究所の教授達とディスカッションを行った。
 
CellSeed Sweden ABの概要
所在地:Vollmervägen 12 SE-187 36 Täby Sweden
事業内容:欧州における細胞シート再生医療事業
出資金:6,800,000 SEK (約1億円)
代表取締役:橋本せつ子
取締役、カントリーマネージャー:ErikWalden(取締役)、HelenaNilshans(取締役)、Camilla Huse Bondesson(カントリーマネージャー)
 
(4)器材開発の促進と収益機会の拡大
「温度応答性細胞培養器材」の大日本印刷(株)による受託製造(同社における委託製造)が、この春に本格化した。また、細胞培養器材や細胞シート移植用デバイス等の新製品開発にも力を入れ、従来からの研究用分野での製品開発に加え、臨床応用用途での製品開発にも力を入れ収益の拡大につなげていく。
 
(5)資金調達 :第三者割当による新株予約権の発行
17/12期にかけての治験に必要な資金は既に確保しているが、自社細胞培養施設の準備・運営資金、再生医療支援事業関連仕入、及び国内外での業務推進のための運転資金の確保を目的に、2015年8月31日、第三者割当方式により新株予約権を発行する。
 
第13回新株予約権
割当日2015年8月31日(月)
新株予約権の個数と発行価額(払込金額)2,000個、総額6,400千円(新株予約権1個当たり3,200円)
当該発行による潜在株式数2,000,000株(本新株予約権1個当たり1,000株)、希薄化率23.06%
当初行使価額行使価額の修正
条項
705円。行使価額の修正あり(修正の下限は行使価格、上限なし)
割当先マイルストーン・キャピタル・マネジメント(株)
行使請求期間2015年8月31日〜2017年8月30日
資金調達の額約1,400百万円(当初行使価格にて全権行使の場合)
 
また、公的助成金・補助金等の活用についても引き続き検討していく。
 
 
2015年12月期上期決算及び通期業績予想
 
 
温度応答性細胞培養器材の販売で29百万円の売上を計上
再生医療支援事業において、下期に受注を予想していた製品の受注が上期に発生した事で売上高が29百万円と期初予想の25百万円を上回った。一方、損益面では、細胞シート再生医療事業において、当初は上期に予定していた一部の研究開発費の計上が下期にずれ込んだ事ため営業損失が期初予想を大きく下回った。販管費の内訳は、研究開発費134百万円(前年同期98百万円)、その他209百万円(同227百万円)。
 
 
上期末の総資産は前期末に比べて369百万円減の2,682百万円。現預金残高は2,587百万円を数え、中期経営計画における17/12期までの治験を中心にした資金需要を賄える計算だ。加えて、既に説明した通り、8月31日に実施する第三者割当方式での新株予約権の発行で最大で約1,400百万円の資金調達余地が生まれる。
 
 
通期業績予想に変更はなく、中期経営計画に示された通り、売上高90百万円、営業損失1,100百万円、経常損失1,085百万円、当期純損失1,090百万円。
売上高については、再生医療支援事業の売上のみを織り込んだ。一方、損益については、治験関連費用、営業強化等による人件費の増加、更には温度応答性細胞培養器材の新製品開発等に伴う開発費用の増加等が織り込まれている。
 
 
今後の注目点
この半年で、「日本発の細胞シート工学を基盤とした新たな治療法を一日も早く患者さんにお届けするという私たちの目標の実現にさらに一歩近づいてきた事を実感している」と言うのが、上期を振り返っての橋本社長の感想だ。そして、「食道再生上皮シートの治験開始に向け、年末に向け一層スピードを上げて取り組む決意を新たにしている」と言う。
下期から来期にかけては、食道再生上皮シートと軟骨再生シートにおける治験届提出と治験実施病院との治験契約締結がマイルストーンとなる。また、角膜再生上皮シートにおいて、米国での既存提携契約(Emmaus Medical 社)の見直し結果を踏まえた今後の開発の方向性、及び日本での関係各所との協議結果を踏まえた今後の開発の方向性が示され、心筋再生パッチにおいても、ヒト骨格筋筋芽細胞シートの実用化に関する同社関連特許の審査結果を踏まえた今後の開発の方向性が示される予定である。
新経営陣の下で進められている、「大学の基礎研究シーズを臨床開発につなげる」ステージの“研究支援会社”から、「収益を創出しながら、再生医療を実現する」ステージの“事業会社”へのステップアップは順調なようだ。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。
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