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ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.34

(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス 企業HP
岡本 泰彦 社長
岡本 泰彦 社長

【ブリッジレポート vol.34】2016年5月期第1四半期業績レポート
取材概要「保育関連サービス事業、介護関連サービス事業共に、人材サービスを手掛けるジェイコム(株)との連携の成果で課題だった人材の確保が進んで・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年10月13日掲載
企業基本情報
企業名
ジェイコムホールディングス株式会社
社長
岡本 泰彦
所在地
大阪市北区角田町8番1号 梅田阪急ビルオフィスタワー19階
決算期
5月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年5月 18,067 470 502 331
2014年5月 14,951 303 374 259
2013年5月 15,196 798 906 599
2012年5月 17,518 914 1,044 603
2011年5月 15,905 901 955 489
2010年5月 13,522 789 834 475
2009年5月 14,162 913 953 340
2008年5月 12,404 885 907 489
2007年5月 9,605 812 786 444
2006年5月 6,657 594 552 274
2005年5月 4,684 284 281 152
2004年5月 3,271 142 141 56
2003年5月 2,222 90 88 45
2002年5月 1,616 77 76 40
2001年5月 1,369 73 70 34
株式情報(10/9現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,019円 9,168,935株 9,343百万円 6.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
30.00円 2.9% 179.96円 5.7倍 537.79円 1.9倍
※株価は10/9終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ジェイコムホールディングスの2016年5月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
携帯電話・アパレル業界向け販売員や保育士、介護士等の派遣・紹介等の総合人材サービス事業と、保育施設運営の保育関連サービス事業、介護施設運営の介護関連サービス事業を展開。「…planning the Future ~人を活かし、未来を創造する~」をグループの経営理念として掲げ、人生のどの段階においても必要とされる企業グループを構築する。
 
【事業セグメントとジェイコムグループ  -人に係る領域でこれから社会に必要とされる部分を追及-】
事業セグメントは、人材派遣、業務受託、紹介予定・職業紹介等の総合人材サービス事業、介護施設運営の介護関連サービス事業、携帯電話キャリアショップ運営のマルチメディアサービス事業、及び16/5期より新たにセグメントされた公的保育施設運営と受託保育の保育関連サービス事業に分かれる。3事業による15/5期の売上構成比は、それぞれ総合人材サービス69.4%、介護関連サービス25.1%、マルチメディア関連サービス5.5%。
総合人材サービス事業の契約形態別売上構成比は、派遣契約78.5%、業務委託契約(同社から見た場合、業務受託)19.5%、紹介予定・職業紹介契約2.0%。業界別売上構成比は、携帯電話業界74.3%、アパレル業界9.2%、保育業界1.0%等。

グループは、純粋持株会社である同社の他、連結子会社6社及び持分法非適用関連会社2社。連結子会社は、派遣や業務請負等の総合人材サービスと携帯電話キャリアショップの運営を手掛けるジェイコム(株)、事務職を中心とした人材派遣・人材紹介やビジネススクール事業を手掛ける(株)エースタッフ、介護施設運営の(株)サンライズ・ヴィラ、介護関連投資のACAヘルスケア・再編1号投資事業有限責任組合、及びサクセスホールディングス(株)とその傘下で認可保育園等の運営を手掛ける(株)サクセスアカデミー。
 
 
 
2016年5月期第1四半期決算
 
 
前年同期比18.3%の増収、同189.6%の経常増益
売上高は前年同期比18.3%増の51億65百万円。セグメント別では、大型販売業務の受注で請負が伸びた総合人材サービス事業の売上が37億85百万円と同27.0%増加した他、介護関連サービス事業も、入居率の改善による売上増で子会社売却の影響を吸収して同1.0%減の12億04百万円と前年同期並みの売上を確保した(前年同期は給食サービスを手掛けていたジャパンコントラクトフードの売上が含まれていた)。

営業利益は同186.1%増の2億85百万円。総合人材サービス事業における収益性の高い請負の売上構成比の上昇と介護事業における入居率改善で(連結)売上総利益が同29.4%増加。一方、販管費は、保育・介護等の拡大に向けた先行投資の一環で採用教育費が増加したものの、コストコントロールの成果で全般に経費効率が改善し、同3.8%増と小幅な増加にとどまった。

持分法投資利益の増加(22百万円→54百万円)等で経常利益は3億41百万円と同189.6%増加。持分法適用関連会社だったサクセスホールディングス(株)及びその連結子会社である(株)サクセスアカデミーの連結子会社化に伴い、株式の段階取得に係る差益12億30百万円を特別利益に計上したため、最終利益は14億59百万円と同6.5倍に拡大した。

尚、株式の公開買い付けにより、2015年7月3日付けで(みなし取得日:同年6月30日)、サクセスホールディングス(株)及びその連結子会社(株)サクセスアカデミーを連結子会社化したが、第1四半期は貸借対照表のみを連結し、損益計算書の連結は第2四半期から。このため、第1四半期はサクセスホールディングス(株)の収益が持分法投資利益として連結業績に反映されており、第2四半期以降は、保育関連サービス事業として売上高及び営業損益に反映される。
 
 
(2)総合人材サービス事業の動向
第1四半期の総合人材サービスの売上高は37億85百万円と前年同期比27.0%増加した。
契約形態別では、モバイルと光回線やタブレット等の副商材とのセット販売の全国的な販売業務を受託した事で業務委託契約の売上が前年同期比173.0%増と大きく伸びた他、業界を問わず人材不足が深刻化しており派遣契約の売上も同3.5%増加。一方、抵触日を迎えた派遣社員の直雇用化に伴う手数料収入の計上がなかったため、紹介予定・職業紹介の売上が減少した。

一方、業界別では、上記販売業務案件の寄与で携帯電話業界向けが同30.0%増加した他、保育業界向けも、サクセスホールディングス(株)との連携強化で前期の24百万円から53百万円に増加(保育士は徒歩や自転車で通勤可能な職場を希望するケースが多いため、グループ施設への通勤が難しい求職者については、積極的に他社への紹介を行った)。一方、介護業界向けは14百万円から11百万円に減少したものの、連結相殺された(株)サンライズ・ヴィラとの取引を含めると、30百万円から40百万円への増加。その他では、コールセンターや物流等向けの売上が増加した。
 
 
 
 
サクセスホールディングス(株)及びその連結子会社(株)サクセスアカデミーを連結子会社化した事で第1四半期末の総資産は192億82百万円と前期末に比べて100億03百万円増加した。上記要因により、借方では、現預金、売上債権、有形固定資産、無形固定資産(のれん:5億16百万円→38億78百万円)等が増加しており、貸方では、未払金、有利子負債、純資産等が増加している。自己資本比率は32.8%(前期末53.1%)。
 
 
2016年5月期業績予想と今後の展開
 
(1)2016年5月期業績予想
第1四半期決算の発表と共に上期及び通期の業績予想を上方修正した。修正の主な理由は、サクセスホールディングス(株)等の子会社化に伴い、販管費での計上を見込んでいた投資直後の体制整備等にかかる初期費用の一部が特別損失での計上となる事、子会社化に伴い発生した株式の段階取得に係る差益12億30百万円を第1四半期決算において特別利益に計上した事、及び総合人材サービス事業における適正利益での受注の拡大、の3点。
上期予想は、売上高125億円(前年同期比45.1%増)、経常利益4億80百万円(同97.0%増)、通期予想は、売上高300億円(前期比66.0%増)、経常利益12億45百万円(同147.6%増)。配当は1株当たり上期末15円、期末15円の年30円を予定している。
 
 
 
 
 
上記売上・利益計画の達成に向け、ジェイコムホールディングス(株)はグループ全体の企業価値を早期に向上できる体制の構築に取り組む考え。ポイントとして、人材サービス、保育関連サービス、介護関連サービスを営む各事業会社における知識・ノウハウの同レベルでの共有と、それによる意思決定スピードの最大化を挙げている。

セグメント別では、総合人材サービス事業において、携帯電話業界、アパレル業界、保育業界、介護業界にとどまらず、コールセンターや物流等、様々な業界が抱える課題である「人材確保」についてソリューションを提供していく。具体的には、教育・就業フォローの強化等でサービス品質の向上を図り、顧客・求職者双方の満足度を高め、求職者数の最大化につなげていく。
保育関連サービス事業においては、保育を必要とする家庭・職場・地域のために、全国で24時間保育や英語教育等の付加価値の高い保育サービスを提供し、保護者から選ばれる企業を目指す。また、総合人材サービスとの連携を強化して保育業界の課題である保育士の確保にも取り組んでいく。
介護関連サービス事業においては、24時間看護や看取り等、差別化された付加価値の高い介護サービスを提供する事でサービス利用者から選ばれる企業となる事を目指している。このため、運営体制を整備・強化して早期の利益体質定着を図ると共に、介護業界の課題である介護従事者の確保に向け総合人材サービス事業との連携を強化していく。
 
【事業会社間連携とセグメント別の取り組み】
事業会社間連携
グループの各事業会社が一体となって事業展開を進めるべく、ジェイコムホールディングス(株)の岡本泰彦社長が各事業会社の代表取締役を兼任する。また、同じレベルでの知識・ノウハウの共有を可能にするべく事業会社間で人事交流を活発化させる他、総合人材サービスのジェイコム(株)の持つ採用ボリュームを活かし(株)サクセスアカデミー及び(株)サンライズ・ヴィラの人材確保の効率化を図る。
 
 
総合人材サービス事業
モバイル業界は、光回線等とのセット販売や格安スマホの参入等で、説明力や販売力のある人材に対する需給が強い。このため、ジェイコム(株)の実績を活かし、教育機能を強化して就業経験のない人材の戦力化を図り、就業者数を増加させていく。一方、アパレル業界は、販売員の定着率が低水準で推移しており、特に地方のアウトレット等での人材不足が深刻だ。ジェイコム(株)は、全国展開の強みと販売員供給の実績を活かし、求職者に多様な勤務地、雇用形態を紹介する事で、求職者と顧客企業の双方で満足度の高いマッチングを実現していく。

また、保育士・介護士等が枯渇している保育・介護業界向けでは、ジェイコム(株)と(株)サクセスアカデミー及び(株)サンライズ・ヴィラがノウハウを共有する事で人材確保とマッチング力強化につなげていく。また、介護については、海外からの人材受入れの検討も進める。

この他、物流やコールセンター等との取引拡大にも取り組んでいく考えで、週3~4日勤務等、多様化する求職者の希望に合わせた顧客企業への人材活用提案に力を入れる。また、公的機関からの委託訓練も手掛ける(株)エースタッフ、法人顧客向け研修サービスを手掛ける(株)キャリアデザイン・アカデミーと連携して、就業経験のない求職者やステップアップを希望するスタッフ向けの教育・研修機能を強化・拡充する。

尚、(株)キャリアデザイン・アカデミーは、法人顧客向け研修サービスの提供を目的にジェイコム(株)と携帯電話販売代理店最大手の(株)ティーガイア(東証1部:3738)の共同出資により、2015年4月に設立された。資本金8,000万円で、出資比率は(株)ティーガイア80%、ジェイコム(株)20%。両社の強みを活かして販売関連業務に従事する人材の育成に取り組んでいく考えで、就業前の充実した基礎研修と就業後のきめ細かいフォローにより、定着率アップとキャリアアップを実現できる環境を提供する。
 
※ 労働者派遣法改正の影響
労働者派遣法改正法が成立し、2015年9月30日に施行された。改正のポイントは、①労働者派遣事業の許可制への一本化、②労働者派遣の期間制限の見直し、及び③雇用安定措置の3点。総じて同社にポジティブな改正となった。

①労働者派遣事業の許可制への一本化
一般労働者派遣事業(許可制)、特定労働者派遣事業(届出制)の区別が廃止され、全ての労働者派遣事業が許可制となった。これに伴い、基準資産額(資産―負債)2,000万円以上、現預金額1,500万円以上、派遣労働者のキャリア支援制度を有する等の基準が設けられ、規模と質が求められるようになった。上場企業としての優れた財務体質に加え、社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている同社にとって、質の面から基準が設定された事は追い風だ。

②労働者派遣の期間制限の見直し
26業務への派遣での期間無期限が撤廃されると共に、期間制限が業務単位から人単位へ変更された。期間制限が業務単位から人単位へ変更された事で、派遣労働者が派遣先で最長3年働けるようになる。これにより、人材派遣会社は安定した人材の提供が可能になり、派遣労働者はキャリア形成が可能になる。

③雇用安定措置
派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣元事業主による無期雇用等、雇用安定措置が強化された。有期雇用の派遣労働者が無期雇用に転換すると、派遣会社の負担が増加する。
 
保育関連サービス事業
ジェイコムホールディングス(株)が議決権の50.1%を保有するサクセスホールディングス(株)が、子会社(株)サクセスアカデミーを通して、病院、企業、学校が保有する保育施設の運営受託と公的保育施設の運営を手掛けている。受託保育事業では、東京大学、大阪大学をはじめとした病院、企業、学校内の保育施設173ヵ所の受託運営を手掛けており、公的保育事業では、認可保育園・認証保育所、公設民営保育園、学童クラブ等103ヵ所を運営している(2015年10月13日現在)。

保育士の確保・増員を図るべく、ジェイコム(株)との連携を強化しており、サクセス・グループの人材開発部の責任者(新卒採用、中途採用、臨時雇用者採用を担当)にジェイコム(株)からの出向者が就任する一方、ジェイコム(株)の保育・介護業界向けサービスの責任者にサクセス・グループからの転籍者が就任した。足元、サクセス・グループにおいては保育士の採用が順調に進んでおり、ジェイコム(株)においては、サクセス・グループの持つ施設運営や保育士育成等のノウハウを、マッチング、未経験の人材活用、就業時のフォロー等に反映させている。今後、離職率の引き下げにもノウハウを活かしていく考え。
 
介護関連サービス事業
2013年10月に連結子会社化したサンライズ・ヴィラ(株)が、21施設(デイサービス2施設含む)、1,123室を運営している。新規オープンのサンライズ・ヴィラ春日部(2014年6月オープン)及び北春日部(2014年11月オープン)を含めた入居率は88.3%で、新規オープンの2施設を除く入居率は90.4%(2015年8月末現在)。
 
 
介護人材の確保が成長のボトルネックになっているため、ジェイコム(株)との人事交流により、採用機能の強化、採用効率の向上、及びマッチング力の向上に取り組んでいる。人材を効率的に確保し入居率の改善を図る事で、利益体質の早期定着につなげていく。また、外国人人材の受入れも検討している。
 
 
中期的な人材確保
資格取得・教育・研修による人材の育成と外国人の活用
厚生労働省の推計によると、高齢化率がピークを迎える2025年には介護職員が37.7万人不足する見通し。同社グループは、就業経験のない人材を社会で活躍する人材へと育成する独自のノウハウを活かして人材を確保していく考え。この一環として、資格取得支援・教育・研修による未経験者の即戦力化と外国人人材の活用に取り組んでいく。
資格取得支援・教育・研修では、介護職員初任者研修講座を開設し、「働きながらの資格取得」を可能にした。スキル・経験不足等の課題解決をサポートし、介護人材を創出していく。また、外国人人材の活用については、海外での人材確保と就業サポートの体制整備を進めていく考えで、外国人技能実習制度の見直し(介護職が追加され、期間も最大5年に延長)が追い風になる。
 
 
今後の注目点
保育関連サービス事業、介護関連サービス事業共に、人材サービスを手掛けるジェイコム(株)との連携の成果で課題だった人材の確保が進んでいる。一方、総合人材サービス事業は、民主党政権下での派遣法改正で逆風にさらされたが、2015年9月に施行された改正労働者派遣法は「求職者と企業の多様なニーズをマッチングさせる」と言う労働者派遣制度の本来の考え方に沿った内容に改正されており、その施行は充実した教育・研修システムを有する同社にとって追い風となろう。現在進行中の中期経営計画を経て、総合人材サービス、保育、介護の三本柱による強固な収益体質が構築されていくものと思われる。