ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

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ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.22

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
高島 武郎 社長
高島 武郎 社長
【ブリッジレポート vol.22】2016年2月期第2四半期業績レポート
取材概要「足元、主力の分譲マンション販売で契約が順調な事や賃貸不動産の稼働率が高い水準で安定している事、更には分譲マンション販売における・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年11月10日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
高島 武郎
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年2月 30,097 2,831 2,055 1,180
2014年2月 32,480 2,872 1,981 1,066
2013年2月 25,396 2,650 1,964 761
2012年2月 22,550 2,569 1,849 671
2011年2月 28,231 2,048 844 428
2010年2月 29,890 573 -370 -226
2009年2月 32,333 2,577 1,548 118
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(10/20現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
707円 9,999,798株 7,070百万円 7.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 3.7% 120.00円 5.9倍 1,650.02円 0.4倍
※株価は10/20終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
和田興産の2016年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
明治32年(1899年)創業の老舗不動産会社。兵庫県神戸市・明石市・阪神間を主要地盤に、マンションや戸建て住宅の分譲、不動産賃貸、及び土地有効活用等、地域密着型の不動産事業を展開。同社は仕入と企画に特化し、設計・建築・販売業務を他社に委託している。ブランド名「ワコーレ」を冠するマンション分譲は30戸~50戸程度の中規模マンションを中心とし、神戸市内では、14年連続で「供給戸数」第1位、17年連続で「供給棟数」第1位。エリアを近畿圏全体に広げても、「供給棟数」第4位の実績を誇る(いずれも2014年)。2015年8月末現在の累積供給実績は413棟15,554戸(着工ベース)。
 
【企業理念-共生(ともいき) 自分の生き方が他の人の幸せにつながる-】
人と人とのつながりを大切に、共に支え合い、自分の生き方が他の人の幸せにつながることを歓びとする「共生(ともいき)」の思想。同社はこの想いのもと、プロダクトコンセプトとして「PREMIUM UNIQUE (プレミアムユニーク)」を掲げ、住まう一人一人の気持ちに応えながら、自身の生き方にフィットするオンリーワンの住まいづくりを目指している。
 
 
【沿革】
1899年1月、神戸市で不動産賃貸業を創業。1966年12月に和田興産(有)として法人化され、79年9月に和田興産(株)に改組。分譲マンションの一棟売り等で実績をつくり、91年3月、自社ブランド「ワコーレ」による分譲マンション事業を本格化。95年1月の阪神淡路大震災後は、震災復興のための優良建築物等整備事業にも従事し地域の復興に貢献した。04年9月に株式をJASDAQ市場に上場。07年6月に「ワコーレ」シリーズが着工ベースで10,000戸を突破し、08年3月には戸建事業推進室(現 戸建事業部)を新設して木造戸建事業を本格化した。
 
【事業セグメント】
事業セグメントは、「ワコーレ」ブランドで展開する分譲マンション販売、「ワコーレノイエ」ブランドで展開する戸建て住宅販売(販売は両事業共に外部委託)、宅地や賃貸マンションの販売等を手掛けるその他不動産販売、マンション(賃貸マンションブランド「ワコーレヴィータ」他)、店舗、駐車場等の賃貸を行う不動産賃貸収入、及び保険代理店手数料など報告セグメントに含まれない「その他」に区分される。
15/2期の売上構成比は、分譲マンション販売83.9%、戸建て住宅販売7.1%、その他不動産販売2.0%、不動産賃貸収入6.9%、その他0.2%(セグメント利益の構成比は、分譲マンション販売69.2%、戸建て住宅販売2.6%、その他不動産販売3.2%、不動産賃貸収入23.6%、その他1.3%)。
 
分譲マンション販売事業
神戸・明石地区(兵庫県神戸市、明石市周辺)、阪神地区(兵庫県芦屋市、西宮市、尼崎市)、及び兵庫県伊丹市、宝塚市周辺を主要エリアとし、大手マンション事業者と競合しない30戸~50戸程度の中規模マンションを中心に「ワコーレ」ブランドで展開。人気の高いエリアにフォーカスし、同一地域で異なるタイプのマンションを供給し消費者の多様なニーズの取り込みと高い販売効率を実現する地域密着戦略に加えて複数の物件を同時に一つの常設マンションギャラリーで扱う事で販売コストを抑制するマンションギャラリー戦略等、独自の戦略で高収益な事業モデルを確立している事が強み。また、近年では、大型プロジェクトへの対応や神戸・阪神間の隣接地域への事業エリアの拡大で新たな可能性を追及している。
 
戸建て住宅販売事業
2007年より「ワコーレノイエ」ブランドで、神戸市以西を中心に中小規模の開発を行っている。数多く寄せられるマンション用地情報の中には、立地、面積、地形等の面で戸建分譲に適した物件が含まれる(賃貸マンションに適した物件であれば不動産賃貸事業となる)。また、分譲マンションの事業期間が2年弱であるのに対して当事業は1年程度と短いため、分譲マンション竣工の谷間を埋める事ができる上(資金の回転も効く)、マンションほどに建築資材高の影響を受けない等の事業メリットを有する。マンション分譲で培ったデザイン性や環境面を配慮した設計・企画力等を活かしパワービルダーとの差別化を図っている。
 
その他不動産販売事業
賃貸マンション等の収益物件の企画開発及び販売(1棟売り)、宅地・工業用地等の販売を手掛けている。物件情報を有効活用する機能を担う他、資産の入れ替えを伴う賃貸物件(棚卸資産)の売却収益も当セグメントに計上される。投資家向け一棟売り賃貸住宅を強化するべく、入居者の斡旋や管理業務、更には売却時の仲介業務等に強みを持つ東証2部上場の(株)日住サービス(8854)と資本・業務提携している。
 
不動産賃貸事業
住居系を中心に(15年2月末現在、保有資産全体の76.2%)、店舗・事務所(同20.1%)、駐車場(同0.8%)、トランクルーム(同2.9%)を運営。安定的なキャッシュ・フローが得られるビジネスとして創業時より継続する事業であり、マンション分譲という市況に左右されがちな事業のウエイトが高い同社にあって、収益の安定化に寄与している。稼働率(入居率)の向上による安定収益の確保と物件入替によるポートフォリオの質の維持・向上を基本戦略とし、主力の住居系は、一定期間経過後の入れ替えも念頭に、個人の富裕層等で購入希望者が多い2~3億円の物件を中心とした資産構成。稼働率は95%水準を維持している。また、資産と負債を適切に管理する事で投資回収期間が長期にわたるリスク、及び資産が過大になる事に伴うリスクの軽減を図っている。各物件の表面利回りは9~10%と高く、将来的には人件費等の負担を賃貸事業の安定収益でカバーすることを目指している。
 
【強み】
同社の強みは、①日本有数の住宅地である神戸市、明石市、阪神間を事業エリアとしており、②事業エリアにおいて「ワコーレ」ブランドが浸透している事。また、不動産市況の変動による経営リスクにさらされがちな業界にあって、③徹底したリスク管理により健全な財務体質を維持し高い経営の安定性を有している事。そして、④「PREMIUM UNIQUE」のプロダクトコンセプトの下、中規模マンションを中心に事業展開する事で大手不動産会社や鉄道系不動産会社等との差別化に成功する一方、大規模マンションへの対応力も有する事である。近年では、物件選定には慎重ながら、大規模マンションへの対応を強化すると共に既存事業エリアと隣接する兵庫県姫路市や大阪府下(北摂)へ事業エリアを広げており、潜在成長力を高める取り組みとして注目されている。
 
日本有数の住宅地が事業エリア
日本有数の住宅地である神戸市、明石市、阪神間を主要な事業エリアとする事で旺盛な住宅需要を取り込むと共に情報力で比較優位を確立しており、地域に根差したコミュニティづくりでも定評がある。
 
 
関西における「ワコーレ」ブランドの浸透
関西において「ワコーレ」ブランドは浸透しており、そのブランド力は大手マンションデベロッパーに引けを取らない。日本経済新聞社大阪本社が実施した「第15回(2012年) マンションブランドアンケート」において、「個性がある」ブランド部門及び「親しみがある」ブランド部門の両部門で第5位にランクされた。
 
 
徹底したリスク管理による健全な財務体質
過度なレバレッジを避け、リスク管理を徹底する事で健全な財務体質を維持しており、資金の調達先もバランスがとれ、かつ、安定している。この結果、多くの上場企業が淘汰されてきた不動産業界にあって、創業から110年以上を超える社歴の中で損失計上はリーマン・ショックの影響を受けた10/2期のみ。配当を継続する事で株主への還元も続けている。
 
 
大手との差別化に成功。事業エリアの拡大余地も
近畿圏では、リーマン・ショック後の不動産不況で中堅・中小のマンション事業者の淘汰が進み、大手不動産会社や鉄道系不動産会社等に絞られてきたが、これらの不動産会社は大型物件や沿線開発を得意とするため、30戸~50戸程度の中規模マンションを中心に展開する同社とは用地取得等で競合するケースが少ない。ただ、同社は更なる業容拡大に向け、既存エリアの中心市街地で大型物件の開発に取組むと共に、既存事業エリアと隣接する兵庫県姫路市や大阪府下へ事業エリアを拡大中である。
 
 
 
【CSR活動】
児童の住宅への興味促進を目的に、2010年から「こども絵画コンクール」を実施している他、神戸新聞社が子育てに夢を持ち、皆で支え合う地域社会を目指して取り組んでいる子育て支援プロジェクト「すきっぷ21」に協賛している。この他、ヴィッセル神戸の育成部門「Jアカデミー神戸育成センター」をサポートするアカデミーパートナー第1号として、1997年8月から、サッカーを通じた青少年の健全育成を支援している。
 
 
 
*ROE(自己資本利益率)=売上高当期純利益率×総資産回転率×レバレッジ(自己資本比率の逆数)
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
同社の特徴は、景気や市況変動等で業績が振れやすい業界にあって、健全な財務体質と安定成長を志向し、これを実現している事。近年では、マンション分譲において、大型プロジェクトへの対応や神戸・阪神間の隣接地域への事業エリア拡大を進めると共に、戸建住宅の育成・強化に取り組んでいる。エリアを絞った中規模の分譲マンション事業で業績を拡大させてきた同社にとって、いずれの取り組みも、潜在成長力の顕在化につながる。実際、大型プロジェクトに取り組む事で建築費等の上昇によるコスト増を吸収して売上高当期純利益率を改善させており、その一方で、総資産回転率を一定の範囲内にコントロールしている。今後、一段の業容拡大と共にROEの更なる向上が期待できよう。
 
 
 
 
2016年2月期上期決算
 
 
前年同期比28.3%の減収、同78.0%の経常減益
16/2期は第4四半期(12-2月)に分譲マンションの引渡(売上計上)が集中するため、上期の前年同期比減収・減益は当初から想定していた。分譲マンションは、通常、竣工前に購入者との間で売買契約が締結され(販売)、竣工後に引渡が完了した時点で売上が計上される。このため、契約締結日と売上計上日が一致せず、概ね6カ月~1年程度のずれが生じる。この上期は引渡戸数が193戸と前年同期の実績380戸を187戸下回ったため売上が103億25百万円と前年同期比28.3%減少したが、販売(契約獲得)に苦戦した訳ではない。契約戸数自体は減少したが、これは大型物件の発売があった前年同期の反動で発売戸数が前年同期の606戸から176戸に減少したため。発売戸数の減少で販促費を中心とした販管費が1億81百万円減少したが、売上の減少による売上総利益の減少をカバーできず営業利益は6億06百万円と同49.2%減少した。

期初予想との比較では、分譲マンション及び木造戸建住宅の引渡が第3四半期以降に期ずれした事等で売上高が3億円弱下回った。一方、利益面では、分譲マンションにかかる販促費用を中心とした経費が未消化となったため、営業利益が1億円強上回った。尚、9月25日に上期の業績予想を修正しており、ほぼ修正値に沿った着地となった。
 
 
分譲マンション販売
売上高77億21百万円(前年同期比37.7%減)、セグメント利益4億19百万円(同59.2%減)。引渡戸数の減少で売上・利益が減少したが、今期は引渡が第4四半期に集中する見込みであり、上期の減収・減益は当初から想定していた。大型プロジェクト(「ワコーレシティ神戸三宮」、総戸数471戸・完売)の引渡が16/2期から17/2期にかけて行われる事がその要因。このため、契約済未引渡戸数は同5.3%増の988戸と高水準だ。上記大型プロジェクトの影響で発売戸数が減少したため契約戸数も減少したが、低金利の持続で販売(契約)自体は堅調に推移しており、上期末時点で通期引渡計画の91.7%の契約を完了している。
 
 
戸建て住宅販売
売上高5億53百万円(前年同期比0.3%減)、セグメント損失42百万円(前年同期は11百万円の損失)。建築コストの上昇等で厳しい事業環境が続く中、「ワコーレノイエ藤原台北町」(神戸市北区、22戸)を発売し、前年同期と同数の17戸の引渡を行った。一方、仕入では、神戸市内で100区画規模の大型開発用地を取得した。
 
 
その他不動産販売
売上高9億15百万円(前年同期比132.7%増)、セグメント利益1億11百万円(同31.2%増)。2年前より本格的に開始した小型賃貸住宅開発の取り組みを進めた(既に累計で20棟弱の実績)。前期、自社保有用地を専門学校に売却したが、この上期はその土地に建築した寮の引渡を行う等、宅地・建物4物件の販売を行った。
 
不動産賃貸収入
売上高10億97百万円(前年同期比6.5%増)となり、セグメント利益4億54百 万円(同7.0%増)。高稼働率を維持しつつ、ポートフォリオ最適化の観点から物件入替を推進した。物件の入替に当たっては、立地特性に応じてホテル開発や介護施設へも投資する等、住居系物件中心だった投資対象の幅を広げた。新規購入物件は、2015年7月に購入した賃貸マンション「ワコーレアルテ中山手」(神戸市中央区)及び2015年8月に購入したグループホーム「まんてん堂 あかし野々池」(明石市)の2物件。「ワコーレアルテ中山手」は住戸39戸、店舗1戸で現在満室稼働中。「まんてん堂 あかし野々池」は運営委託物件である。
 
 
 
上期末の総資産は前期末に比べて29億35百万円増の685億86百万円。資産では、引渡が第4四半期に集中する事や分譲用地の仕入が順調だった事を反映して棚卸資産(販売用不動産及び仕掛販売用不動産)が増加した他、賃貸用不動産2物件の取得で有形固定資産も増加した。負債では、前期引渡物件の建築費支払が完了したため支払債務が減少する一方、運転資金の増加やプロジェクト資金の調達等で有利子負債が増加した。上期末の自己資本比率は24.1%(前期末25.3%)。
 
 
棚卸資産の増加、仕入債務の決済等で営業CFのマイナス幅が拡大する中、賃貸用不動産2物件の取得で投資CFのマイナス幅も拡大した。一方、借入金の積み増しで財務CFの黒字幅が拡大し現金及び現金同等物の上期末残高は48億38百万円と前期末に比べて44億74百万円減少した(前年同期末との比較では31億35百万円減)。
 
 
 
2016年2月期業績予想
 
 
前期比2.0%の減収、同2.7%の経常減益
売上高は前期比2.0%減の295億円。戸建て住宅販売やその他不動産販売が増加する他、不動産賃貸収入も堅調な推移が見込まれるが、引渡の減少で分譲マンション販売が減少する。戸建て住宅販売は引渡戸数が70戸と前期に比べて10戸増加する見込みで、その他不動産販売は開発用地や小型の賃貸マンション等の販売が寄与。一方、分譲マンション販売は、引渡が17/2期にまたがる大型プロジェクト(ワコーレシティ神戸三宮、総戸数471戸・完売)の引渡戸数を保守的にみている。

営業利益は同2.9%減の27億50百万円。「ワコーレシティ神戸三宮」の寄与等による原価率の低下で売上総利益がわずかに増加するものの、販売体制の整備に向けた人員の拡充や前期に広告宣伝費を抑制できた反動もあり、販管費が同5.6%増加する。

配当は、普通配当を1株当たり1円増配すると共に、法人設立50年の記念配3円を加えた26円を予定(16/2期に創業116年、法人設立50年を迎える)。配当性向は21.7%となる見込み。
 
 
分譲マンション販売
下期の引渡は「ワコーレシティ神戸三宮」を中心に6棟・507戸を予定しており、上期末時点で465戸(契約率91.7%)を契約済である。また、収益への寄与は来期以降になるが、主力エリアの一つである神戸の市街地中心部での100戸~200戸規模の大型プロジェクト、事業エリア拡大に伴う近隣地域(姫路、北摂)でのプロジェクト、更には市街地商店街の再開発プロジェクトが、それぞれ複数進行中である。
 
 
「ワコーレシティ神戸三宮」を2~3月に引渡
16/2期業績への影響が大きい、「ワコーレシティ神戸三宮」(JR神戸線「三ノ宮」駅徒歩10分)は総戸数471戸を誇る大型プロジェクト。2014年5月に販売を開始し、同年11月に完売しており、2015年10月に竣工し、2016年2月から3月にかけて引渡が行われる予定だ。「ワコーレシティ神戸三宮」は、東棟、西棟、及び南棟の3棟で構成され、16/2期は東棟、西棟の300~320戸の引渡を予定しており、17/2期は南棟を中心に残りの戸数を予定しているが、2月引渡予定物件の一部が3月(17/2期)にずれ込む可能性があるため、16/2期業績予想には保守的に織り込んだようだ。
 
進行中の大型プロジェクト
「ワコーレシティ神戸三宮」近隣での2018年2月期竣工予定の「神戸三宮プロジェクト」(総戸数200戸規模)や、新幹線新神戸駅徒歩圏での2018年2月期竣工予定の「新神戸プロジェクト」(総戸数100戸超規模)といった都心回帰需要をにらんだ大型プロジェクトが進行中である。
 
事業エリア拡大
JR「姫路」駅・「山陽姫路」駅徒歩8分、総戸数30戸の「ワコーレ姫路ゲートプレイス」の引渡が2016年3月に予定されている他、大阪府池田市で「仮称:ワコーレ上池田プロジェクト」、「仮称:ワコーレ五月丘プロジェクト」、大阪府豊中市で「仮称:ワコーレ豊中少路プロジェクト」、兵庫県姫路市で「ワコーレ姫路忍町プロジェクト」の4プロジェクトが進行中である。兵庫県姫路市で「ワコーレ北条口プロジェクト」の用地仕入が完了している。
 
再開発プロジェクト  市街地商店街「市場」の再開発
同社は、社会構造の変化に対応するため市街地商店街(「市場」等)の再開発に取り組んでおり、この一環として手掛けた「ワコーレ岡本レジデンス」(旧称:本山市場プロジェクト)の建築工事が現在進行中である。
本山市場プロジェクトは神戸市東灘区の旧本山市場の再開発案件。周辺地域は神戸市が「都市景観形成地域」の1つに指定しており、阪急神戸線「岡本」駅徒歩2分、JR神戸線「摂津本山」駅徒歩3分と最寄駅へのアクセスに優れる上、人気の学校区を有する。「岡本」駅は2015年のMAJOR 7 マンショントレンド調査(関西圏)「住んでみたい街アンケート」において第3位にランキングされており人気の程がうかがえる。
「ワコーレ岡本レジデンス」は、鉄筋コンクリート造で地上5階、地下1階、総戸数23戸のオーダーメイドマンションである。1戸当たり平均価格は9,420万円と高額だが既に完売しており、2016年4月に引渡が予定されている。

足元、同様のプロジェクトが複数進行中であり、新たに市営住宅地の再開発案件の落札にも成功している。
 
 
その他の事業
戸建て住宅販売において神戸市西部・北部、明石市を中心に、5区画~20区画規模の開発を継続する他、その他不動産販売においては小型賃貸住宅開発への取り組みを進める。また、不動産賃貸では、ビジネスホテル「東横INN JR神戸駅北口」(神戸市中央区)が2015年10月に開業する。「東横INN JR神戸駅北口」はJR神戸線「神戸」駅北口徒歩5分の好立地を活かした自社開発の新規物件で、ビジネスホテルチェーンの運営会社である(株)東横インに運営を委託する。
 
 
今後の注目点
足元、主力の分譲マンション販売で契約が順調な事や賃貸不動産の稼働率が高い水準で安定している事、更には分譲マンション販売における事業エリアの拡大や再開発、その他不動産販売における小型賃貸住宅開発といった新たな取り組みでも成果をあげている事を考えると、17/2期の見通しは明るい(不動産賃貸における、介護施設やビジネスホテルへの展開も興味深い)。また、国土交通省「住宅着工統計」新築住宅工事費予定額を基に同社が独自に作成した「新築住宅・分譲共同住宅RC(坪単価)」のグラフを見ると、建設資材価格の上昇が一段落した事が見て取れる等、コスト面での支援材料もある。中国の景気減速等で先行きの業績に不透明感が出てきた企業もあるようだが、同社の17/2期は、15/2期、16/2期と続いた踊り場からの脱却が期待できよう。不安材料を挙げるとすれば、横浜市のマンション傾斜問題が購入意欲に水を差す事だろうか。今後、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の顕在化が見込まれるだけに、これ以上、問題が広がらない事に期待したい。