ブリッジレポート
(4634:東証1部) 東洋インキSCホールディングス 企業HP
北川 克己 社長
北川 克己 社長

【ブリッジレポート vol.2】2016年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「国内における印刷需要が構造的に縮小傾向にある中、中国経済の減速もあり通期予想は増収・増益から増収・減益に転じた。下方修正後の進捗率は・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年12月22日掲載
企業基本情報
企業名
東洋インキSCホールディングス株式会社
社長
北川 克己
所在地
東京都中央区京橋3-7-1
事業内容
印刷インキ国内首位。凸版印刷系。液晶パネル用顔料が収益源。サカタインクスと資本提携
決算期
3月末日
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 286,684 18,210 19,411 13,304
2014年3月 279,557 19,728 20,553 12,260
2013年3月 248,689 17,547 18,468 8,714
株式情報(12/17現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
487円 298,312,444株 145,278百万円 6.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 3.1% 40.23円 12.1倍 694.62円 0.7倍
※株価は12/17終値。株式数は直近決算短信の期末株数より。ROE、BPSは前期末実績。
 
東洋インキSCホールディングス株式会社の2016年3月期第2四半期決算概要などをご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルター材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外67社の連結子会社、12社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界24か国で事業を展開している。「中期経営計画SCC-III」において「スペシャリティケミカルメーカーからサイエンスカンパニーへの変革」を標榜。新製品の開発と海外展開の加速による成長を目指している。
 
【沿革】
1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。
当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。
印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶フィルム部材など他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。
 
【経営理念など】
企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念」を、1993年4月に制定した。
2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。
 
 
この理念体系は理念カード(クレド)として全社員が常に携帯し、毎週部単位で行われる5分間ミーティングで読み合わせ、ディスカッションを行うなどして繰り返し確認し、より深い理解、実践を図っている。
また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。
 
【市場環境】
◎概要
(市場動向)
日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2014年までのCAGR(年平均成長率)は+3.4%と堅調に拡大している。
 
 
一方、海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。
 
(印刷会社と印刷インキ会社)
経済産業省「平成25年工業統計表・産業編」によれば、2013年の印刷・同関連業の事業所数は全国で27,026だが、うち98.5%にあたる26,626事業所は従業員数100人未満の中小企業である。
 
 
同社の顧客である印刷会社は印刷インキを購入して印刷を行うが、単純に印刷インキと紙をセットして機械を動かせば印刷できるというものではない。印刷会社が直面する「初めての紙を使用する際のインキの選択」、「特別な色を出す」、「今まで以上の高級感を出す」といったニーズや、印刷効率の向上や環境対策といった課題に対し、印刷インキ会社は顧客ニーズに合致した新製品の紹介や、様々なアドバイスを印刷会社に提供している。
国内約27,000社のうち、殆どの印刷会社は、こうしたソリューション無しにはスムーズに業務を進める事は難しく、印刷産業において印刷インキ会社は極めて重要な役割を担っている。
このため顧客である印刷会社は同社との直接取引を求めており、その結果、同社国内売上の8割近くが顧客への直接販売となっている。こうした顧客との強固な関係性は同社の大きな特徴となっている。
 
◎同業他社
インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている。(2位は欧州企業)
(4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。
今期の営業利益率は6社中最も高いが、ROEは最大手DICを下回り、PBRは1倍未満となっている。
 
 
【事業内容】
◎「印刷インキ」について
同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。
 
 
この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。
 
 
◎事業セグメント
「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。
 
 
 
 
印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルタ材料を生み出した。
さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。営業利益の約4割を構成している。
 
 
 
中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。
 
 
 
グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。
 
 
 
創業以来の中心セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。
印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。
 
◎海外展開
大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2015年3月末現在、49社の海外子会社、50ヶ所の工場を有し、世界24か国で事業を展開している。
 
 
 
 
決算短信内、「目標とする経営指標」の項目において、売上・利益の拡大と共に、高付加価値企業としてROA・ROEの向上にも言及している。
マージンおよび効率性(総資産回転率)の向上によるROEの上昇が望まれる。
 
【特徴と強み】
①高い技術力
前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。
 
②優れた課題解決能力
同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。
 
③環境に対する取り組み
同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。
 
④経営戦略の独自性
M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。
 
 
2016年3月期第2四半期決算概要
 
 
売上横這い。販売数量減少等で減益
売上高は前期比1.0%増の1,409億円。国内では印刷需要の低迷、海外では中国景気の減速という環境の中、横這いにとどまった。営業利益は同6.1%減の84億円。円安による採算改善(9億円)、価格改定(5億円)など販売における利益率改善(14億円)、原材料価格低下(5億円)があったものの、販売数量減(11億円)、高機能製品の減少(9億円)、固定費増加(4億円)により減益となった。
期初計画に対しては、売上、利益共に下回った。
 
 
☆色材・機能材関連事業
前年同期比減収・減益で、計画も下回った。
主要新製品については、リチウムイオン二次電池用カーボン分散体は目標を上回ったが、太陽電池用マスターバッチは未達だった。
 
<化成品>
前年同期比で減収・減益だった。
汎用顔料は印刷インキや塗料の原料として販売しているが、国内印刷インキ需要が印刷物の減少により低迷しており低調に終わった。CF(液晶カラーフィルター)ペーストについては、主に韓国液晶パネルメーカーが各々自社関連企業で内製しているRGBレジストインキの原料として輸出しているが、こちらも韓国市場のモデル変更による生産調整の影響を受けた。
 
<表示材料>
減収・減益だった。
表示材料とは液晶カラーフィルターに使用されるRGB各色のレジストインキであり、上記<化成品>に含まれるCFペーストを加工しインキ化した製品である。当前半期は、台湾市場における占有率の低下と新製品の採用遅延により大幅な減益となった。また、液晶パネルメーカーの稼働率低下の中、パネル価格下落に伴い部材価格も下落した。
 
<着色剤>
減収・減益だった。
容器市場は堅調に推移したが、海外のOA機器市場の低迷により低調だった。
 
☆ポリマー・塗加工関連事業
前年同期で増収・増益。売上高は計画を下回ったが、利益は上回った。
新製品では、ヘルスケア用粘着剤は計画を上回り、新規開発の光学用粘着剤は目標を大きく上回った。
 
<塗工材料>
前年同期比で減収・減益だった。
機能性フィルムは韓国や中国において拡販が進んだ。一方サイン関連は8月以降市況が低迷している。
 
<粘・接着剤>
増収・増益だった。
工業用粘着剤など高付加価値品の増加とコスト削減効果により堅調だった。
 
<塗料樹脂>
増収・増益だった。
国内製缶塗料市場では新規獲得テーマが実績に結び付いた。樹脂ではエネルギー関連材料の販売が拡大した。
 
☆パッケージ関連事業
前年同期比で増収・増益だったが、計画に対しては、売上、利益とも下回った。
新製品である食品包装用リキッドインキ、フィルム用フレキソインキは共に計画を上回った。
 
<リキッドインキ(国内)>
増収・増益だった。
6月以降は需要も回復し、プライベートブランドも堅調に推移している。
 
<リキッドインキ(海外)>
増収・増益だった。
原料や生産処方を各地で見直し、どこの国でも入手できる原料をベースに生産処方、原料の共通化をすすめることで、コスト削減に一定の成果がみられるようになった。また中国・東南アジアを中心に環境への意識が強くなる中、環境対応型汎用インキの拡販が進んでいる。
 
☆印刷・情報関連事業
前年同期比で増収・減益。計画に対しては、売上、利益とも下回った。
新製品ではディスプレイ用光学ハードコート剤は計画を大きく上回ったが、UVインクジェットインキは計画を下回った。
 
<オフセットインキ(国内)>
減収・減益だった。
市場の縮小が継続しているが、比較的付加価値の高いUVインキは需要の高まりとともに堅調に推移した。
 
<オフセットインキ(海外)>
増収・増益だった。
国内では縮小傾向にあるオフセット印刷需要も新興国では伸長が続いており、各地の生産販売体制の強化により実績も伸長している。各地でUVインキも伸長した。
 
 
現預金、売上債権減などで流動資産は前期末に比べ24億円減少。固定資産は建設仮勘定増、投資有価証券減などで同9億円減少し、資産合計は同34億円減少の3,607億円となった。
買入債務の減少等で負債合計は同52億円減少の1,453億円。
純資産は利益剰余金の増加などで同17億円増加の2,154億円となった。
自己資本比率は前期末の56.9%から0.9ポイント上昇し、57.8%となった。
 
 
利益の減少に加え、前年同期にあった退職給付信託返還額が無くなったことなどで営業CFのプラス幅は縮小した。
有形固定資産の売却による収入減少などで投資CFのマイナス幅は拡大した。この結果フリーCFはマイナスに転じた。
短期借入金の増加により財務CFのマイナス幅は縮小した。
キャッシュポジションは上昇した。
 
 
2016年3月期業績見通し
 
 
増収増益から増収減益へ通期予想を下方修正
高機能製品の需要減少や、新興国の景気減速など、上期の業績乖離要因は下期も継続すると予想されることから通期業績予想を下方修正した。
売上高は前期比1.2%増の2,900億円を計画。色材・機能材は減収となるが、他は増収を計画。
営業利益は同1.2%減の180億円の予想。売上高同様、色材・機能材は減益、他セグメントは増益の予想。
配当予想に変更は無く、0.50円/株増配の15.00円/株を予定。予想配当性向は37.3%。
 
 
 
成長戦略
 
新製品、新市場に関し以下のような取り組みを進めている。
 
◎レジスト関連製品
①独自開発顔料によるCF材料占有率の向上
液晶パネルにおいては、ハイグレード品では「高画素化・高精細化」、汎用品では「省電力化」というように異なる品質が要求されている。CFレジストインキでは前者においては色域の拡大や高濃度化、後者においては透過率の向上や高明度化が要求される性能となる。
同社では、緑、青、赤の三色の独自顔料を開発し、それぞれ2017年3月期第1四半期、2016年3月期第4四半期(2016年1月)、2017年3月期第3四半期の市場投入を予定している。
 
②成長するイメージセンサー用途製品の拡充
IoT社会の到来で需要の急拡大が予想されるセンサーには、可視光領域から全波長領域に亘り様々な波長に合わせた分光フィルタなど新たな機能が要求される。
同社では多様な色材設計技術と超微分散技術を活用した高機能センサー用製品を今期より投入し、来期からの業績寄与を目指している。
 
③TV用途における特化製品の展開
中国市場では大手メーカーのパネル工場が次々と稼働を開始し、レジストインキ需要は今年の月間240トンから3年後には420トンへ急増すると見ている。そこで、汎用品市場向け製品を拡充すると共に、現地生産を視野に入れたマーケティングを開始し中国市場における商圏を拡大する。

これらの取り組みによりCFレジストインキの売上高については、今期126億円、来期150億円、再来期165億円と計画している。
 
◎ヘルスケア市場への事業展開
ポリマー技術を軸とした保有技術を活用した、「医療機器用素材樹脂・テープ」、「医療用粘着剤」、「ヘルスケア関連素材」、「パッケージ関連材料」などの機能性材料・製品群のヘルスケア分野での応用展開を進めている。

ヘルスケア関連売上高は、前期10.3億円の実績に対し、今期12.7億円(上期5億円)、来期14億円の計画。
 
◎UV事業の拡大
欧州に生産拠点を持ち、欧州ブランドオーナーのニーズを把握している東洋インキ アレッツと、インキ開発力やカラーマネジメント力で高い能力を有する東洋インキのシナジー効果の最大化を追求している。
包装・ラベル市場、商業印刷市場、新興市場(中南米、中近東、アフリカ)での拡販を進め、来期売上高300億円を起点に、更なる拡大を目指していく。

また、高付加価値製品であるUV硬化接着剤においても、UV素材の自社開発による技術の差別化や製品カスタマイズ力といった強みを活かし、日本・韓国・台湾・中国の光学部材市場での製品投入を進めていく。
 
◎グローバル
①重点投資拠点の収益拡大
中国においては、成長エリアである内陸部での拠点構築と拡販を進めるために成都グラビアインキ工場、四川オフセットインキ工場を軌道に乗せるほか、ポリマー関連や環境対応製品などの高機能製品投入による収益拡大を目指す。

インドでは印刷インキの拡販や食品包装用インキにおける差別化製品の投入を進めるとともに、販売体制を強化する。また、着色剤やインクジェット用インキの事業を拡大し、高機能粘着剤の市場を開拓する。
売上高前期比4割増を目指す。
ブラジルでは、現地生産を強化して競争力を向上させるとともに、レアル安を活かし、周辺国への輸出を強化する。年内にオフセットインキ生産能力を2割拡大する。
また、ボリュームゾーンの軟包装市場での新製品を投入すると同時に、高品位市場への拡大も進める。
 
②新エリアへの展開
2015年1月に販売法人として設立した東洋インキ(トルコ)は、今後の生産拠点化も視野に、欧州、中東、アフリカ、ロシアへの商圏拡大を見据えている。
枚葉インキ・UVインキの拡販、食品包装用リキッドインキと塗料の新規顧客開拓を進める。

高付加価値プラスチック容器市場を足掛かりとしたメキシコ自動車市場への本格参入を目的に2015年11月に設立した東洋インキ(メキシコ)は、2016年春には工場稼働予定。
日系メーカーを中心に拡大させるのと並行して米国系、欧州系メーカーへの納入も目指していく。またグループの総合力を活かし、UVインキや粘着剤にも商材を拡大させる。
 
 
今後の注目点
 
国内における印刷需要が構造的に縮小傾向にある中、中国経済の減速もあり通期予想は増収・増益から増収・減益に転じた。下方修正後の進捗率は売上、利益共に5割以下とはなっているが、過去3期の進捗率もほぼ同程度であることから、短期的には通期予想にどれだけの上積みがなされるかを注目したい。
一方、中長期的に投資家が期待するのは海外売上の拡大や、同社がもつ素材・技術力を活かしたエネルギー関連やヘルスケア関連製品の展開など、液晶用カラーフィルター材料に次ぐ利益の柱がどのように立ち上がってくるのかという点となろう。
 
 
<参考:中期経営計画SCC-III>
 
(1)中期経営計画SCC-III
同社は、SCC(サイエンスカンパニーチェンジ)と名付けた中期経営計画を2008年4月からスタートさせ、2014年4月からはその3期目にあたる「SCC-III エボリューションプラン」(2014年4月から2017年3月)が始まった。
 
 
◎事業ドメインと技術プラットフォーム
SCC-IIIにおいては、「スペシャリティケミカルメーカーからサイエンスカンパニーへの変革」を標榜しており、そのために、3つの事業ドメインと、5つのテクノロジープラットフォームを定め、ホールディングスの持つ研究所「グループテクノロジーセンター」と国内外グループ各社の事業部門が連携して、基礎研究や製品開発を行っていく。
 
<事業ドメイン>
それぞれの事業ドメインには注力すべき重点分野を設定し、時代の変化や市場のニーズに合わせた製品を継続的に開発し、提供する。現時点での進捗は様々であるが、『サスティナビリティーサイエンス』における二次電池関連部材の開発は今期より実績が出始めているという。
 
 
<TPF(テクノロジープラットフォーム)の拡張>
TPF(テクノロジープラットフォーム)とは、新たな開発を進める際の基礎・基盤となる技術集積および基盤技術の事を言う。
同社では、現有素材をスペシャリティ素材へと進化させる『スペシャリティマテリアル』、スペシャリティ素材に独自の加工技術で高機能化・高付加価値化を施す『素材プロセッシング』、多様化・高度化市場ニーズに合わせ素材を加工する『部材コンバーティング』の従来の3つのTPFから発展させ、より顧客に近い視点から製品の検証を行い、開発に反映する『モジュールデザイニング』、意匠性、設計、組み合わせなどの提案を行いながら、利用者にとって価値のある製品を作り上げる『ソリューション』の2つを加え5つのTPFに拡張した。
 
 
◎事業セグメント別施策
4事業セグメントをバランスよく拡大させることを目指している。
現在営業利益の約4割を占める液晶用カラーフィルター材料を中心とした「色材・機能材関連事業」は、成長性は高い反面、景気動向に影響される部分が大きい。これに対し、印刷インキはさほど大きな成長は期待できないものの、好不況の波は小さい。印刷・情報、パッケージセグメントを海外、特に新興国市場の開拓を「地産地消」により進めて安定収益のベースとしつつ、色材・機能材、ポリマー・塗加工セグメントで高付加価値の新製品を開発・販売し成長を追求してゆく。
 
 
 
◎海外展開
SCC−IIIでは海外売上高比率50%を目指している。(2015年3月期43%)
インドおよびブラジルの印刷インキ現地生産体制は前中計期間中にほぼ完成した。今期以降は生産量拡大を加速させると共に、アジア地域やアメリカにおける接着剤の生産・販売を強化し多角化を進める。
また、新市場開拓においては、メコン川流域やメキシコでのマーケティング、将来的な現地生産を視野に入れたトルコでの営業を展開する。
新興国市場においては、国内同様のハイスペック製品に加え、高品質・環境対応といった同社ならではの特長付けをしたミドルスペックのボリュームゾーン製品もコストダウンを図りながら拡販に取組んでゆく。
また、先進国においては日本製印刷機械の導入が欧米で伸びていることから、同社が強みを持つUVインキの拡販に努める。2013年4月に子会社化したアレッツインターナショナル株式会社(現東洋アレッツインターナショナル株式会社)が強みを持つパッケージ用UVインキも強力な武器となる。
 
◎経営基盤の強化
上記のような事業拡大に取り組むと同時に、コストダウンを中心とした「モノづくり強化」、CO2排出量削減などの「環境経営促進」、ダイバーシティ拡大による「人材の育成・活用」、グローバルレベルでの統合システム導入による「経営効率化」など、経営基盤の強化にも努める。
 
 
(2)投資家へのメッセージ
当社は経営理念にあるように生活文化創造企業として常に生活者の視点に立った製品開発を目指している。
当社の名前をご存じなくても、身も周りの様々な場面で当社製品が使われている事を是非知っていただきたい。
今後も単にインキメーカーとしてではなく、サイエンスカンパニーとして当社の顧客企業のさらに先を見据え、世の中に不可欠とされる製品バリュエーションの幅を拡大していく考えだ。
また、行動指針に昨年より「株主価値の向上」を新たに加えたように、企業、社員の意識変革も大きく進んでいる。
新製品開発と海外展開により着実な成長を目指していく当社を、是非中長期の視点で応援していただきたい。
 
 
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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