ブリッジレポート
(3747) 株式会社インタートレード

スタンダード

ブリッジレポート:(3747)インタートレード vol.5

(3747:東証2部) インタートレード 企業HP
尾﨑 孝博 社長
尾﨑 孝博 社長

【ブリッジレポート vol.5】2015年9月期業績レポート
取材概要「16/9期は、金融ソリューション事業において、ミドルウエアの内製化と来期以降のカスタマイズ販売に向けたコンポーネントの作り込みに力を入れる・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年1月12日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インタートレード
社長
尾﨑 孝博
所在地
東京都中央区新川1-17-21 茅場町ファーストビル
決算期
9月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年9月 2,463 -107 -103 -119
2013年9月 2,725 -98 -95 -128
2012年9月 2,811 -129 -104 7
2011年9月 3,335 47 66 172
2010年9月 3,856 -258 -277 -920
2009年9月 5,386 68 -26 -222
2008年9月 4,970 145 51 -326
2007年9月 3,417 -776 -756 -653
2006年9月 3,853 899 801 408
2005年9月 2,872 655 661 388
2004年9月 1,715 623 607 348
株式情報(12/3現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
232円 7,185,600株 1,667百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% 9.74円 23.8倍 244.50円 0.9倍
※株価は12/3終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インタートレードの2015年9月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
証券ディーリングシステム、外国為替証拠金取引システム、取引所外取引システム等の開発・保守を中心とする金融ソリューション事業を主力とし、エンジニア派遣を安定収益源にグループ経営管理パッケージソフトや経営支援・IT管理業務支援サービス等を手掛けるビジネスソリューション事業(ITソリューション事業から名称変更)、ハナビラタケ関連のサプリメントや化粧品等の生産・販売を手掛けるヘルスケア事業、及び金融ソリューション事業の補完的な位置づけの自己資金運用事業を展開している。
グループは、同社の他、経営管理パッケージソフトの開発・保守等を手掛ける(株)ビーエス・ジェイ(出資比率66.7%)、ハナビラタケの生産・加工を手掛ける(株)らぼぉぐ(同100%)、ハナビラタケ関連商品等健康食品のカタログ通販やWeb通販を手掛ける(株)健康プラザパル(同100%)、及び自己資金運用事業の(株)トレーデクス(出資費率100%)、の連結子会社4社(2015年11月1日付けで、(株)健康プラザパルが、20代をターゲットとした美容品Webサイト運営の(株)ビューティーグルカンを吸収合併)。
 
【沿革】
日本勧業角丸証券(株)〔現:みずほ証券(株)〕出身者が中心となり1999年1月に設立。創業者の経験を活かしてフロントシステムのコンサルティングからスタートし、ディーリング・トレーディング業務向けパッケージソフトの開発に展開した。

パッケージ型ディーリングシステムのパイオニア的存在であり、2000年9月に証券業務向けディーリングシステムのパッケージ「Trade Office-SX」の販売を開始。東証の立会場の廃止(99年4月末)に伴う市場部員(いわゆる場立ち)の活用や手数料自由化に伴う仲介業務の収益性低下の補完等を目的とした証券各社のディーリング業務強化の流れをとらえ業績が拡大した。04年9月に東証マザーズに株式を上場。その後、証券のトータルソリューションを志向し、ミドルシステム(約定ポジションに対するリスク計測等のリスク管理システム等)や証券バックオフィスシステム(顧客情報や口座残高等の管理システム)でも実績を残した。
05年1月に私設取引システム「IT Monster」の販売を開始し、07年8月には外国為替証拠金取引(FX)システムの販売を開始する等、パッケージソフトのラインナップを順次拡充。07年4月には、フロントシステムのシェア拡大を図るべく、競合先であった(株)ブラディアを子会社化(08年10月に吸収合併)。同年8月には両社の強みを融合した証券ディーリング/トレーディングシステム「TIGER Trading System」の販売を開始した。

12年以降は事業の多角化に取り組んでおり、同年10月に経営管理ソリューションを開発する(株)ビーエス・ジェイを子会社化すると共に、今後の高齢化時代に必要となるヘルスケア事業(当時はフードサービス事業)の育成を目的に、子会社インタートレード投資顧問(株)を(株)らぼぉぐに商号変更し組織を変更。13年にはヘルスケア事業の販路確保を目的に、2月に通信販売業の(株)パル(現(株)健康プラザパル)を子会社化した。
 
 
成長戦略
 
金融ソリューション事業において、2015年10月稼働の「TIGER Trading Platform Prospect」を進化させ、大手及び外資系証券との取引拡大を推進すると共に、ビジネスソリューション事業において、エンジニア派遣、サポートセンター、パッケージを3本柱とする安定した収益体質の構築に取り組む。また、ヘルスケア事業においては、共同研究によるハナビラタケの科学的根拠に基づくエビデンスを取得し、エビデンスに裏打ちされた自社オリジナル製品の販売を拡大させる。
 
【金融ソリューション事業】
「TIGER Trading Platform Prospect」
2010年以来取り組んでいるMIOP構想(マーケット運営会社、情報ベンダー、金融機関等とサービスを共同で展開し、統合されたプラットフォームの下で、「株式」、「金利」、「為替」、「商品」等、多彩な金融商品のワンストップ取引の実現を目指す)を具現化するプラットフォームとなるのが、2015年10月に稼働した「TIGER Trading Platform Prospect」(以下、「Prospect」)である。「Prospect」はASP方式で提供され、同社の高速処理サーバーと大容量回線を介して国内証券取引所やPTS(私設証券取引システム)等に接続する。また、国内証券取引所やPTSの代わりに、ビジネスパートナー契約を結んだ、国内大手証券や外資系証券、或いはFX事業者等のビジネスパートナーを介する事で、海外の証券取引所や為替、商品先物取引所等での売買も可能だ。
また、「Prospect」は取引コストの低減にも寄与する。証券会社が売買に伴い負担する実質的取引コストには、証券取引所や保管振替機構に払う手数料に加え、取引所(PTS含む)間の価格差も含まれている。この実質的取引コストは、取引所の価格と複数あるPTSの価格を比較して、最も有利な価格を選んで売り買いする事で極小化する事ができる。「Prospect」はビジネスパートナーとの連携等によりワンストップで多様な市場へアクセスし、完成度の高いアルゴリズムによって瞬時に最も有利な価格を選んで売買注文を発注するため実質的取引コストの極小化を図る事ができる。この他、マーケットインパクトコストを回避するための取引手法や売買に係る手数料を削減するサービスを提供する事で最良執行の実現をサポートしていく。
 
ワンストップと売買コストの低減を強みに顧客開拓を推進
事業の収益拡大には、既存顧客における売買の活発化と売買する市場や金融商品の多様化(株式以外に、債券、FX等)、及び新規の顧客開拓が必要となる。そしてその際の訴求ポイントとなるのが、ビジネスパートナーとの連携によるワンストップでの多様な市場(金融商品)へのアクセスであり、完成度の高いアルゴリズムによる売買コストの低さである。また、同社自身が新規開拓を行う事はもちろんだが、ビジネスパートナーの存在が有力な支援材料(顧客の紹介等)となる。

また、売買注文の処理等を行うOMS(Order Management System)機能や、その機能の一部であるAlgorithm Trading Method(コンピューターが自動行う売買)、SOR(Smart-Order Routing:複数の市場から最良価格がある市場を選び売買を執行する)、Liquidity Analyzer(流動性分析)といった「Prospect」が搭載する機能は、国内外の大手証券会社等から高い評価を受けているため、17/9期以降になるが、各機能をコンポーネントとしてカスタマイズ販売もしていく考え。
 
収益性の改善、そして売上の拡大へ
16/9期は「Prospect」の安定稼働と通信制御等のミドルウエアの内製化に取り組みつつ、取引所端末「J1」の販売を強化する事で15/9期並みの売上の確保と収益性の改善を目指している。ミドルウエアについては、これまでサードパーティ製品を使用していたが、内製化により高性能化とコストダウン効果が期待できる。さらにミドルウエアから一貫開発する事で、解析が困難な障害の発生を大幅に低減できる(過去のトラブルはミドルウエアに起因しているケースが多く、しかも自社製品でないためトラブルの解消に時間を要していた)。また、取引所端末「J1」については、2016年の年央に予定されている大阪取引所デリバティブシステム「J-GATE」のバージョンアップが商機として期待できる上、「J1」が東京商品取引所(TOCOM)に対応した事で、新たに当業者等の商品系企業へのシステム販売の道が開かれた。海外では証券、為替、商品の一体化が普及しているが、国内で統合化されたものは殆どない。「Prospect」は国際化に向けて、広範囲なトレードを可能にする統合プラットフォームになる。

来17/9期については、ビジネスパートナーとなる大手及び外資系証券向けコンポーネントの開発及び販売で収益拡大を図る考え。先進的機能と導入の柔軟性を兼ね備えたコンポーネントのカスタマイズ販売は、従来のパッケージ販売に比べて顧客1社当たりの付加価値向上にもつながる。
 
【ビジネスソリューション事業(ITソリューション事業から名称変更)】
ビジネスソリューション事業では一般企業向けのサービスを提供しており、保守・運用を中心に展開するエンジニア派遣(SES)サービス、各種経営支援を行うサポートセンターサービス、及び自社パッケージである「GroupMAN@IT e2」(以下、「e2」)及び「Gadics MAN@IT」(以下、Gadics)を中心にしたパッケージサービスを3本柱とする。

エンジニア派遣サービスは、高い信頼性を必要とする証券ディーリングシステムや外国為替証拠金取引システムの開発・運用実績を強みとし、設計・構築を中心に案件を選別しながら事業を進めている。

パッケージサービスでは、経営統合管理ソリューション「e2」とITの運用管理全般をサポートする「Gadics」を中心に展開している。「e2」は経営分析用のパッケージ(プロアクティブな経営を支えるシステム基盤)であり、柔軟性の高いインターフェイス「FLEX I/O」を備えているため、同一企業内の、ベンダーが異なるシステム間のデータ連携やシステムが異なる親子会社間でのデータ連携が可能だ(同社の「FLEX I/O」技術には、証券取引の情報を交換するためのアイデアが活かされている)。企業は、会計、人事/給与、営業管理等の複数の業務システムを導入しているが、システム毎に提供するベンダーが異なるケースが多く、また、同じ業務でも、親会社と子会社で業務システムが異なるケースも多いが、この場合、企業内やグループ内で経営情報の統合管理ができない。このため、多くの企業が高価な投資が必要な連携用のシステムを別途構築しているが、「e2」ではパッケージとして提供し、コストの低減と導入期間の短縮を図る。一方、「Gadics」は機能として提供するのではなく、セキュリティー対策等、本来システム管理者が行う業務を自動化し、低価格でパソコン等の運用管理を、「収集」、「判断」、「実施」、「確認」の4つの視点からクラウドベースで自動サポートする。2016年からマイナンバー(社会保障・税番号制度)が導入されるが、「Gadics」はマイナンバーの技術的安全管理措置対策としても利用できる。

サポートセンターサービスは、パッケージベンダーやプロダクト、周辺ビジネス等に対して様々な支援を行う。経営統合管理ソリューション「e2」は様々な管理系システムと連動し、一括管理するシステムであるため、管理系システムを展開する多くのパッケージベンダーや事業会社との接点が広がり、「e2」導入以外の案件が発生する。現在、Super Stream(スーパーストリーム(株)の会計システム)移行、企業支援機関向けサービス、教育支援等を手掛けている。サポートセンターはこれまで培った業務と技術のノウハウを活かしたサービスで、このサービスをきっかけに「e2」の経営分析機能を活かした経営分析データの作成等、様々な案件が寄せられるようになってきた。

尚、提供するサービスの充実に伴い、16/9期よりセグメントの名称をITソリューション事業からビジネスソリューション事業に変更した。従来よりも一段高いビジネス視点から最適なソリューションを提供していく考え。
 
 
【ヘルスケア事業】
健康産業ビジネスで期待されるハナビラタケの由来成分について科学的根拠に基づくエビデンスを取得し、エビデンスに裏打ちされた自社オリジナル商品(有効成分を用いた健康食品や生活習慣病対策商品等)の販売を拡大させていく。現在、ハナビラタケ由来成分の生理活性等について、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)及び学校法人東京女子医科大学(同、東京女子医大)と共同研究を進めており、並行して、医療機関、アンバサダーショップ、海外販売等、販路の開拓に取り組んでいる。また、健康を得る事は美しさを得る事にもなるため、美容関連分野(化粧品及び化粧品原料)にも展開している。
 
IT-はなびらたけプロジェクト(産総研、東京女子医大との共同研究)
ハナビラタケについて、その有効成分を細胞・分子レベルで探索し、有効性のメカニズムを解明するべく、産総研及び東京女子医大と共に、産学官連携共同研究を進めている。共同研究においては、臨床試験に関するデータ解析を東京女子医大が、細胞及び遺伝子レベルの探索と成分分析を産総研が、それぞれ担当し、同社グループはハナビラタケ抽出物の製品化と情報の収集及び分析を行う。ちなみに、国立研究開発法人とは、各府省の行政活動から分離された一定の事務・事業を担当する独立の法人格を持った機関の事で、業務の質の向上や活性化、効率性の向上、自律的な運営、透明性の向上を図る事を目的としている。言い換えると、各府省の行政活動の一部を代行する組織であり、担当する事務・事業は国政そのもの。今回のように産総研が共同研究に加わると言う事は、経済産業省が国益事業の可能性として予算立てした事を意味するとも言える。
 
 
2015年9月期決算
 
 
前期比0.2%の減収、1億65百万円の営業損失
売上高は前期比0.2%減の24億59百万円。新規顧客の開拓が進み顧客数が増加したものの、解約の影響等で金融ソリューション事業の売上が同5.6%減少したものの、経営管理及びIT管理業務を支援するサポートセンターサービスの好調でITソリューション事業が同67.0%増と伸びた他、ヘルスケア事業の売上も自社ブランド商品を中心に同2.4%増加した。

利益面では、棚卸評価損をインフラ費用や協力会社費用を中心にしたコスト削減で吸収して、売上総利益率が2.9ポイント改善したものの、研究開発費の増加(1億46百万円→3億24百万円)で営業損失が拡大。ヘルスケア事業における棚卸資産及び投資有価証券の評価減や固定資産の減損など特別損失1億53百万円の計上により、最終損失は3億31百万円となった。
 
 
また、切り口を変えて、売上高を、システムの新規導入や改編等のイニシャル売上、ASP利用料や保守料等の毎月の定期的な収入であるランニング売上、及びヘルスケア売上に3区分してみてみると、新規顧客の開拓が進みイニシャル売上が5億64百万円と同18.5%増加したものの、ランニング売上が17億10百万円と同5.3%減少した。
 
 
在庫評価の影響が大きい棚卸増減の影響を除くと、営業費用は前期の27.36億円から25.38億円へ7%程度減少しており、経費削減に向けた取り組みは一定の成果をあげている。人件費を含めた研究開発費の総額は、前期の1億46百万円から3億24百万円に増加した。
 
 
金融ソリューション事業は、証券ディーリングシステムと外国為替証拠金取引システムの売上減少でセグメント売上高が減少。複数の新規開拓があったものの、解約顧客の中に比較的取引額が大きい顧客が含まれていたためカバーできなかった。コスト面では、次期基幹システム「TIGER Trading Platform Prospect」(以下、「Prospect」)の開発費負担となったものの、ASP化の進展により、証券ディーリングシステムの運用及び保守の効率向上で保守料、施設利用料等が減少した他、業務効率化によるエンジニアの工数削減も進み、特に第4四半期の外注費が大きく減少した。

ITソリューション事業は、エンジニア派遣サービスが堅調に推移する中、当期から開始した自社サポートセンターにて顧客の経営管理及びIT管理業務を支援するサポートセンターサービスの寄与で売上高が損益分岐点を超えた。経営統合管理プラットフォーム「e2」等はいくつかの商談が最終段階にある。

ヘルスケア事業は、粗利率が高い自社ブランド品の販売に力を入れた結果、自社ブランド商品の売上構成比が高まり、粗利率が改善した。ただ、上記取り組みの一環として、カタログ(年4回発行)での掲載数が減少した仕入商品の売上が減少したためセグメント売上高は小幅な伸びにとどまった。産総研及び東京女子医大との産学官共同研究に伴う研究開発費や雑誌媒体への広告宣伝費等、先行投資を継続した。
 
 
 
期末総資産は前期末に比べて23億27百万円と4億21百万円減少した。キャッシュ・フローがマイナスになった事で現預金が減少し、最終損失となった事で純資産が減少した。流動比率468.6%(前期末521.4%)、固定比率22.8%(同27.0%)、自己資本比率75.5%(同76.4%)。
 
 
営業損失が拡大したものの、棚卸資産の削減等による資金効率の改善で営業CFが黒字転換。フリーCFも大幅に改善した。投資支出の主なものは「Prospect」関連の支出である。
 
 
2016年9月期業績予想
 
 
営業損益の黒字転換を見込む
売上高が前期比微増の25億円にとどまるものの、コスト削減で営業損益が2億55百万円改善する見込み。具体的には、開発の内製化により協力会社費用等を1億10百万円削減する他、ハナビラタケ関連製品の生産抑制による在庫の適正化で棚卸評価損の発生リスクが低下。更に、利用中の外部ソフトウェア(ミドルウエア)の代替品を自社開発して保守を削減する等で18百万円のコスト削減を上積みして営業費用を絞り込む。また、売上はわずかな増加にとどまるが、限界利益率の高いサポートセンターサービスの増加が要因のため、利益貢献は比較的大きい。
 
 
金融ソリューション事業  セグメント利益率30%
16/9期の課題は、20億円規模の売上を維持しつつ、セグメント利益率を約5ポイント引き上げる事。売上面では、取引所端末「J1」の販売を強化する。「J1」は2016年の年央に予定されている大阪取引所デリバティブシステム「J-GATE」のバージョンアップが大きな商機として期待できる上、「J1」の東京商品取引所(TOCOM)対応を完了した事で当業者の商品系企業への販売の道が開かれた。一方、コスト面では、効率化・内製化による開発コストの削減と少人数オペレーションの実現による他セグメントへ人材供給。通信ソフトなどミドルウエアの内製化、さらに基本設計から結合テストまでの自社完結によるコスト削減に加え、開発言語をC#に結合し開発効率を向上させる。また、システムのコンポーネント化による開発と社員の生産性向上で少人数オペレーションを実現し、余剰人員をビジネスソリューション事業やヘルスケア事業の開発部門に振り分ける。17/9期は大手・外資系証券会社向けに「Prospect」のコンポーネントのカスタマイズ販売を開始する予定。
 
ビジネスソリューション事業  3本柱確立
16/9期の課題は、エンジニア派遣サービス(SES)、サポートセンターサービス、パッケージサービスの売上の売上構成比を、いずれも20%以上に引き上げ収益基盤を強化する事。 エンジニア派遣サービスについては、堅調な人材需要が続いており、前々期、前期に続いて安定的な売上の計上が見込まれる。サポートセンターサービスについては、足元の好調な受注に加え、Super Streamの移行案件や各種支援サービス案件などにより増収基調が続く見込み。また、既存案件の契約方式変更による収入安定化効果も期待できる。パッケージサービスについては、現在商談中の「e2」の早期受注を目指す他、マイナンバーの技術的安全管理措置対策として、「Gadics」を中小規模の事業主体に一斉展開する。
 
 
ヘルスケア事業  粗利額50%増(粗利率:約25%→約38%)
16/9期の課題は、粗利益の額を前期実績の約50百万円から50%以上増額する事。このため、生産よりも販売に重きを置く考えで、販売子会社を合併して販売を強化する一方、生産量を抑制する。また、自社ブランド商品の訴求活動と並行して、売れ筋の仕入商品の高回転売買で売上と粗利を上積みする。

生活習慣病対策商品としての認知獲得へ
同社の資料によると、生活習慣病対策商品市場は1,978億円(2011年)と巨大な市場であり、同社が注力している「免疫賦活」分野に限定しても255億円規模。また、きのこ由来健康食品市場は126億円で、このうちハナビラタケを素材とする健康食品市場は6億円程度と言う(1位はアガリクスの45億円、次いで霊芝の32億円等)。
一方、同社のヘルスケア事業の15/9期売上高は1億84百万円で、このうちハナビラタケ商品は約30百万円にとどまり、従前からハナビラタケ由来健康食品を購入している層への販売から脱却しきれていない。ハナビラタケ自体は非常に高い機能性が認知されていたものの、その生産には高度な技術が必要であり大量生産が難しく研究されるケースも少なかった。近年の技術で生産問題は克服できたため、現在、産総研及び東京女子医大と進めている共同研究において、ターゲットとするハナビラタケ由来成分の免疫賦活効果等が確認できれば展望が一気に開ける。共同研究は、現在、マウスによる前臨床試験で安全性や機能性を確認中で、17/9期に結果が出る予定。狙い通りの結果が出れば、生活習慣病対策商品市場においてハナビラタケ商品のプロモーションをかけていく考えで、セグメント損益の早期黒字化が現実味を増してくる。このため、16/9期は販路の拡大を最優先事項とし、露出度高めると共に認知度向上に向け活動を活発化させる。

販路開拓の進捗  共同研究の結果発表に向けて
16/9期は販売ネットワークの拡大が最優先の取り組み事項である。有力な販路の一つであり、ユニーグループ・ホールディングス(株)傘下で総合スーパーを展開するユニー(株)の店舗への「Beauty Glucan」ブランド商品の納入が拡大している。現在の納入店舗数は15店舗で、うち半分の店舗では専用の陳列棚が設置されている。また、加盟店が累計で100店舗を超える等、アンバサダーショップの開拓も順調で、16/9期は各店舗との連携を強化し、単価アップに取り組んでいく。この他、大手クリニックや動物病院での取り扱いも始まった。
一方、海外販売では、16/9期に入りアジア向けで複数の販売会社との取引を開始しており、いずれも取引金額が比較的大きいため、粗利ベースでの貢献が期待できる。この他、提携関係を活かしてアジア向け化粧品原料の販売も増加する見込み。

コスト削減  当期連結業績への貢献に向けて
生産子会社(株)らぼぉぐの体制を縮小し、販売への人員配置を推進する。また、広告宣伝の取捨選択にも取り組み、3年間のデータから、効果がある宣伝手法に資金を集中させる考え。
 
 
 
尾﨑社長に聞く
 
15/9期の決算説明会から1週間が経過した12月2日、東京都中央区の本社に尾﨑社長を訪ね、15/9期の総括と16/9期の取り組み及び17/9期以降の展望についてお話をうかがった。
 
連結業績に反映されるまでには至らないものの、各事業での取り組みが順調に進捗しているように感じられます。これまでの取り組みを含めて、15/9期を総括して頂けますでしょうか。
 
金融ソリューション事業において、当社は、創業以来、トレーディングビジネス向けパッケージシステムの開発・販売に力を入れてきたが、「システムの保有」から「システムの利用」への流れを見据えて、いち早くトレーディングシステムのASP化に取り組んだ。ただ、ASP化で、当社がトレンド以上に注目したのは、従来は東証や大証等の取引所へ直接流れていた顧客の注文が、ASP化する事によって当社のセンターを経由して取引所等に流れるようになると言う事。このため、東証・大証等での取引所にとどまらず、「金利」、「為替」、「商品」等、多彩なマーケットを当社がIntegrateする事で、顧客はワンストップで多彩なマーケットにアクセスできるようになる。そして、顧客が多彩なマーケットを利用すれば、当社の収益機会も拡大する。
 
PTS等のマーケット運営会社、国内大手証券、外資系証券、FX事業者、商品先物取引会社等をパートナーとする事で、多彩なマーケットのIntegrateは可能であり、それにより顧客にワンストップサービスを提供すると共に、当社とパートナーが収益機会を拡大させる、これがMIOP(Market Integrating Open Platforms)構想である。そのプラットフォームとなる「TIGER Trading Platform Prospect」(以下、「Prospect」)が2015年10月に稼働した。「Prospect」のOMS(Order Management System)は、国内外の証券会社等から高い評価を受けており、パートナーとの連携を活かして高精度のSORも実現している。「Prospect」が稼働した事でMIOP構想は、いよいよ離陸の時を迎えたと言える。
 
ビジネスソリューション事業では、3本柱の枠組みができてきた。
特にサポートセンターサービスは成長ドライバーとしての期待が高まっている。高い信頼性を必要とする証券ディーリングシステムや外国為替証拠金取引システムの開発・運用実績が当社の技術力の裏付けとなっており、加えて、小回りの効いた機動的な対応が高く評価されている。サポートセンターサービスの具体的な業務は、Super Stream(スーパーストリーム(株)の会計システム)移行、企業支援機関向けサービス、更には教育支援等である。サポートセンターはこれまで培ってきた業務と技術の両面からのアプローチでユーザのビジネスを支えるサービスであり、このサービスをきっかけに「e2」の経営分析機能を活かした経営分析データの作成等、様々な案件が寄せられるようになってきた。
エンジニア派遣サービスも高い信頼性を必要とする金融ソリューション事業での実績が評価され、引き合いは堅調だ。このため、設計構築を中心に案件を選別しながら事業を進めている。パッケージサービスでは、「e2」で複数の商談が最終段階にある。「e2」は柔軟性の高いインターフェイス「FLEX I/O」を備えているため、異なるベンダーのシステム間や親子間でのデータ連携を低コストで実現できる。本格的な営業活動を開始して1年足らずで実績が乏しい事がネックになっているが、商品力は強いため、導入実績ができれば販売が加速していくと考えている。
 
ヘルスケア事業では、ハナビラタケ商品の販路の拡大で一定の成果をあげた。総合スーパーを展開するユニー(株)のハナビラタケ商品に対する期待は大きく、専用の陳列棚を用意してくれているほど。産官学で進めている共同研究の成果が出るまでは、その期待に十分に応える事はできないのだが、商品導入店舗の拡大を積極的に進めてくれている。共同研究のパートナーである産総研は行政活動の一部を代行する組織であり、担当する事務・事業は国政そのもの。今回のように産総研が共同研究に加わると言う事は、経済産業省が共同研究の予算立てしたという意味合いにもとれる。同じく共同研究のパートナーである東京女子医大への配慮も含めて、共同研究の結果が出るまでは情報開示が制約される。
 
16/9期の取り組みと、17/9期以降の展望について、ご説明頂けますでしょうか。
 
金融ソリューション事業では、ミドルウエアの開発と「Prospect」のコンポーネントを整備する。離陸前の準備作業も最終段階に来ていると言える。ミドルウエアは、当社に限らず、サードパーティ製品を利用する事が一般的だ。ただ、ミドルウエアは、データベースの様に完成度の高いシステムがある一方で、通信関連のミドルウエアのように課題の多いものもある。他社製品のためトラブルの修復に時間を要するケースが多く、そもそも、トラブルの原因究明に時間がかかっていた。このため、通信関連のミドルウエアを内製する事にした。もちろん、コストダウン効果も大きい。
17/9期は「Prospect」の既存顧客の深耕と新規顧客の開拓に力を入れる事はもちろんだが、「Prospect」のコンポーネント展開を開始する。コンポーネントは大手証券や外資系証券等をターゲットとして、ASPではなく、カスタマイズ対応による売り切りだ(保守料として継続的な収入も発生する)。収益機会の拡大に加え、大手証券や外資系証券との関係強化にもつながる。
 
ビジネスソリューション事業では、サポートセンターサービスが伸び、実績ができれば、「e2」の販売も加速するだろう。引き続きエンジニア派遣の安定した収益貢献も期待できる。17/9期の見通しも明るいと考えている。一方、「Gadics」はマイナンバー需要の取り込みがポイントであり、16/9期が正念場と言える。
 
ヘルスケア事業では、ハナビラタケ商品の販路を拡大させたい。17年には共同研究の結果が出る予定であり、良い結果が出ると思っている。このため、それまでに可能な限り、販路を広げておく必要がある。当社では、共同研究の結果が、ハナビラタケ商品を生活習慣病対策商品市場全体へ展開するきっかけになると考えている。ハナビラタケ商品の販売拡大はもちろんだが、セグメント全体の売上ボリュームを増やす必要もあるため、16/9期は改めて仕入商品の強化も並行する。
 
最後に投資家の皆さんへのメッセージをお願いします。
 
証券会社の相次ぐディーリング撤退で厳しい経営を強いられてきたが、金融ソリューション事業で事業基盤の再構築が進んでおり、ビジネスソリューション事業及びヘルスケア事業の基盤整備も順調である。このため、17/9期以降、収益の拡大期を迎えるとみている。投資を回収し、株主還元にも力を入れていく考えだ。
 
 
今後の注目点
16/9期は、金融ソリューション事業において、ミドルウエアの内製化と来期以降のカスタマイズ販売に向けたコンポーネントの作り込みに力を入れる。ビジネスソリューション事業では、サポートセンターサービスをけん引役に売上が順調に伸びる見込み。サポートセンターサービスは、システムの信頼性や処理速度、更にはセキュリティ等が高いレベルで要求される金融システムでの実績(技術力の裏付け)と小回りの効いた機動的な対応が高く評価されているようだ。一方、ヘルスケア事業では販路の拡大が順調。産官学の共同研究で良好な成果が出るまでは我慢が必要だが、その間に販売ネットワークをできるだけ大きくしておく必要がある。
真価が問われるのは17/9期以降になるが、先ずは16/9期の営業損益を期初予想通りに黒字転換させて投資家を安心させる事が必要だ。