ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.24

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.24】2016年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「修正された通期予想は保守的である模様。12月決算のため既に第4四半期が終了している海外子会社は、11月、12月が特に厳しい状況だったようで・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年3月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 117,036 6,886 7,581 6,881
2014年3月 117,355 6,470 6,501 3,564
2013年3月 111,275 6,558 6,521 4,039
2012年3月 108,446 4,638 4,388 2,480
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(2/8現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
509円 108,113,216株 55,029百万円 9.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 2.6% 39.74円 12.8倍 686.47円 0.7倍
※株価は2/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
キッツの2016年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器の総合メーカー。バルブ事業では、国内トップ、世界でもトップ10に入り、ベスト3入りが目標。バルブは、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われ、同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社約31社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)の他、ホテル事業等も手掛けている。
 
【企業理念  -キッツは、創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指します-】
「企業価値」とは「中長期的な株主価値」であり、「中長期的な株主価値」の向上には、顧客の信頼を得る事によって利益ある成長を持続していく必要がある、と言うのが同社の考え。そして、企業価値を向上させる事により、株主をはじめとして、顧客、社員、ビジネスパートナー、社会に対して様々な形で寄与し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えている。
同社は、これらの思いを「キッツ宣言」に込め、更なる飛躍を目指している。
 
キッツ宣言
キッツは、
創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指し、ゆたかな社会づくりに貢献します。
KITZ’ Statement of Corporate Mission
To contribute to the global prosperity,
KITZ is dedicated to continually enriching its corporate value
by offering originality and quality
in all products and services.
 
行動指針(Action Guide)
Do it KITZ Way
・ Do it True(誠実・真実)
・ Do it Now(スピード・タイムリー)
・ Do it New(創造力・チャレンジ)
 
Do it True
人と人との関係で忘れてならないのが誠実に対応する心。また、表面的なものでなく物事の本質を追い求める心も必要。この基本を忘れる事なく企業活動を進めるための合言葉。
Do it Now
情報をいち早くキャッチし、迅速な意思決定と確実に実践していく躍動的な社員像を表現した言葉。
Do it New
変化に対応するために従来の発想から抜け出して秘められた創造力を発揮し、新しい事にチャレンジする社員像を表現した言葉。
 
【事業セグメントの概要】
事業は、バルブ事業、伸銅品事業及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、15/3期の売上構成比は、それぞれ77%、18%、5%(利益ベースでは、95.2%、2.5%、2.3%)。
 
バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「流す」、「止める」、「流量を調整する」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。
特に、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用される、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブは、国内で高いシェアを持つ主力商品である。販売先は、建築設備、各種工業設備・プラント、環境、エネルギー、半導体等多岐にわたる。鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、グローバルコストの実現に向けて海外生産拠点の強化にも取り組んでいる。
 
 
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークス及び北東技研工業(株)の事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)及びその加工品を製造・販売している。
 
その他
子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。尚、バルブ事業への更なる特化と経営資源の再配分を目的に、フィットネス事業を手掛けていた100%子会社(株)キッツウェルネスの全株式を、14年10月1日付けでダンロップスポーツ(株)に売却した。
 
【キッツグループ(バルブ事業)】
総合バルブメーカーとして、国内では、主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外では、インド、U.A.E.、韓国に駐在員事務所を置く他、中国、シンガポール、タイ、アメリカ、ブラジル、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産では、国内7拠点の他、海外に12拠点(中国、台湾、タイ、インド、ドイツ、スペイン、ブラジル)を展開し、最適地生産を目指した生産ネットワークを構築している。
 
 
 
国内バルブ事業では、建築設備向けが43%を占め、水関連(上下水道等、14%)、半導体関連(12%)や機械装置(9%)等の比率も高いが、石油精製・石油化学、一般化学、食品・製紙、ガス、電力等、幅広い分野に製品を供給している(15/3期実績)。
 
 
海外バルブ事業のエリア別売上構成比は、アジア54%(アセアン・その他36%、中国13%、中東4%)、北米31%、欧州・その他15%(15/3期実績)。
 
 
2016年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比2.0%の増収、同2.0%の営業減益
売上高は前年同期比2.0%増の882億42百万円。フィットネス事業の連結離脱が約27億円の減収要因となる一方(2014年10月に子会社を売却)、円安が約21億円の売上押し上げ要因となった。主力のバルブ事業は同5.8%の増収。半導体製造装置向けを中心に国内が同2.4%、円安を追い風に海外が同11.4%、それぞれ増加。伸銅品事業も、数量増とM&A効果で同4.0%増加した。

営業利益は同2.0%減54億22百万円。収益性の高い半導体製造設備向けの寄与と原価低減等でバルブ事業の収益性が改善したものの、銅相場の下落を受けて伸銅品事業が営業損失となった事に加え、フィットネス事業の連結離脱でその他事業の利益も半減した。
為替差益が減少する(3億76百万円→72百万円)一方、社債発行費(61百万円)を計上する等で経常利益は53億81百万円と同7.3%減少。旧京都ブラス跡地売却に伴う有形固定資産売却益75百万円やキッツジーアンドアイの保険代理業の外部譲渡に伴う事業譲渡益1億70百万円等を特別利益に計上したものの、前年同期にフィットネス事業を手掛ける子会社株式の売却益(関係会社株式売却益として21億56百万円)を計上した反動で最終利益は38億円と同31.2%減少した。
 
 
 
バルブ事業
売上高は前年同期比5.8%増の697 億47百万円。このうち国内での売上高は同2.4%増の422億20百万円。主力の建築設備向けは同2%の増収。回復が遅れていたが、足元、代理店在庫の過多状態が解消された事で持ち直しつつある。水市場向けは耐震型製品が引き続き好調に推移し、同3%の増収。一方、機械装置、一般化学、食品・製紙等、ステンレス鋼製バルブが多く使用される工業用バルブ市場は、市場環境に大きな変化は見られず。半導体製造装置向けは上期の好調により同19%増加したものの、第3四半期に入り業界全体がスローとなっている。

海外での売上高は同11.4%増の275億27百万円。金額ベースで28億円強の増収だが、このうち21億円は円安による押し上げ。地域別では、アセアンや中国の回復でアジアが同20%(約25億円)の増収。北米も10%(約8億円)増加したが、厳しい事業環境が続いたヨーロッパその他が同14%(約5億円)減少した。

営業利益は同7.5%増の 76億87百万円。円安の影響で海外グループ会社の販管費が増加した他、のれん償却費(M&Aに伴う)や研究開発費等も増加したが、数量効果、原価低減、原材料価格の低下等で吸収した。また、ソフトウェア関連費用やM&A関連費用などの一般管理費用の増加に加え、需要の伸び悩みによる国内での価格競争の激化等もあり、計画に届かなかった。
 
伸銅品事業
売上高は前年同期比4.0%増の159億62百万円、営業損失76百万円(前年同期は2億43百万円の利益)。2015年度第3四半期の国内黄銅棒市場は14,706トン/月と前年同期比5.1%減少したが、同社の伸銅品事業では銅相場の下落に伴う製品価格の低下を販売数量の増加(1.2%増)と北東技研工業の子会社化効果(2015年7月)で吸収して売上が増加した。ただ利益面では、5月以降の銅相場の継続的な下落による収益性の低下の他、鍛造工場の増設等による減価償却費の増加も負担になった。
 
その他
売上高は前年同期比51.9%減の25億32百万円、営業利益は同45.4%減の1億69百万円。売上・利益の大半を占めるホテル事業が同1.4%の増収、同1.3%の増益と堅調に推移したものの、フィットネス事業が連結離脱した影響で大幅な減収・減益となった。
 
 
 
第3四半期末の総資産は前期末に比べて4億40百万円増の1,162億30百万円。資産の部では、第2回無担保公募社債(SB)60億円を償還した事で現預金が減少する一方、M&Aに伴い有形固定資産と無形固定資産が増加した。負債の部では、第2回SBの償還で短期有利子負債が減少する一方、償還に備えて事前に第3回SB(発行額100億円)を発行したため長期有利子負債が増加した。自己資本比率は64.9%と前期末に比べて0.7ポイント改善した。

尚、2015年2月にインドの工業用バルブメーカーMicro Pneumatics Pvt. Ltd.を、2015年7月に伸銅加工製品を製造する北東技研工業(株)を、2015年11月にブラジルの工業用ボールバルブメーカー MGAを、それぞれ子会社化する一方、2015年6月30日に(株)キッツジーアンドアイの保険事業を外部保険会社に売却し、基幹事業への経営資源の集中を進めた。
 
 
資金効率の改善に加え、減価償却費(26億38百万円→29億15百万円)の増加もあり、前年同期を上回る61億68百万円の営業CFを確保した。ただ、バルブ事業を中心にした設備投資の増加(25億39百万円→32億8百万円)やM&Aにより、フリー・キャッシュ・フローはマイナスとなった。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
前期比0.5%の減収、同5.6%の営業減益
第3四半期決算発表と共に通期予想を修正した。売上面では、バルブ事業において、国内建築設備向けの回復の遅れと競争激化で、キッツ(個別)と東洋バルヴの売上が伸び悩んでいる事が響く。海外も、ヨーロッパで厳しい事業環境が続く中、原油価格の大幅な下落と中国経済の減速の影響で北米・アジア市場を中心に売上が伸び悩んでいる。利益面では、バルブ事業において、販売数量の下振れでコストダウン効果が想定を下回っている。また、銅相場の下落による伸銅品事業の苦戦も続いている。

期末配当は1株当たり7円を予定しており、年13円となる見込み。
 
 
 
 
今後の注目点
修正された通期予想は保守的である模様。12月決算のため既に第4四半期が終了している海外子会社は、11月、12月が特に厳しい状況だったようで、これを織り込んだ。また、国内の第4四半期も、代理店へのリベートや評価損等を保守的に見ている。
来17/3期については、国内建築設備向けの回復が見込めるものの、国内工業用バルブ市場が楽観できない事に加え、今期好調だった半導体関連も減速傾向にある。海外は、昨年、11月、12月の状況から一段と厳しい事業環境が予想される。このため、調達の見直し、製品の統廃合、部品の共有化及びコストダウンにつながる設備投資等を推進し収益力の強化を図っていく。また、新製品の開発にも積極的に取り組んでいく考え。17/3期は第3期中期経営計画のスタートの期でもあるが、売上を伸ばし難い事業環境を想定し、収益力の強化に重点を置いた計画となりそう。