ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

東証1部

ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.36

(4829:東証1部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.36】2016年5月期第3四半期業績レポート
取材概要「第3四半期決算のポイントは二つ。一つは、コンテンツサービス事業において、キャリア定額サービスの収益環境の悪化を踏まえて、競争力の強い・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年5月10日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年5月 5,116 189 204 177
2014年5月 4,508 335 340 437
2013年5月 4,134 372 391 354
2012年5月 2,790 304 318 170
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(4/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
240円 40,547,200株 9,731百万円 3.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
3.00円 1.3% 3.45円 69.6倍 122.33円 2.0倍
※株価は4/4終値。
 
日本エンタープライズの2016年5月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。交通情報、エンターテインメント、ライフスタイル等のコンテンツを制作しスマートフォン等に配信するコンテンツサービス事業と、企業のコンテンツ制作・運営、システム構築、広告(店頭アフィリエイト)、リバースオークションやIP電話といった業務支援サービス(コスト削減ソリューション)等のソリューション事業が2本柱。また、海外展開にも力を入れており、中国とインドに事業基盤を有する。
2001年2月16日に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(現JASDAQ市場)へ株式上場。2007年7月10日の東京証券取引所市場第二部への市場変更を経て、2014年2月28日に同市場第一部の指定を受けた。
 
【経営理念】
同社の経営理念は「綱領・信条・五精神」及び「日エン経営原則」に刻まれており、「これを繰り返し学ぶ事で基本理念を永遠に堅持していく」事が同社社員の責務。こうした正しい考えと正しい行動の下にこそ、長い目で見た「株主価値の極大化」、すなわち「資本という大切な“お預かりもの”を1円もムダにせず、最大化していくことが可能である」と言うのが同社を率いる植田社長の考えである。
そもそも同社は、「社業を通じて社会のお役に立ちたい」という強い一念から植田社長が興した会社であり、様々なIT機器を通して便利で面白い多種多様なコンテンツを制作し提供する事でユーザーの満足度を高めると共に社会貢献していく事を目指している。
こうした植田社長の経営哲学の下、創業初年度の経常利益は、ほぼ全額が日本赤十字社・各地社会福祉協議会・児童養護施設等に寄付され、東日本大震災の折には、被災した方々の支援と東北地方の復興に寄与するべく日本赤十字社に寄付が行われた。
 
綱領
我々は商人たるの本分に徹しその活動を通じ社会に貢献し、文化の進展に寄与することを我々の真の目的とします。
 
信条
我々は以下に掲げる五精神をもって一致団結し力強く職に奉じることを誓います。
 
日本エンタープライズ株式会社の遵奉する精神
一、商業報国の精神
一、忘私奉職の精神
一、収益浄財の精神
一、力闘挑戦の精神
一、感謝報恩の精神
日エン経営原則

1. 心を高める経営を行う
2. 衆知を集めた全員経営を行う
3. 公明正大に利益を追求する
4. 原理原則にしたがう
5. お客様第一主義を貫く
6. 経営家族主義で経営する
7. 実力主義に徹する
8.「協力し、信頼する仲間」をベースに
  仕事を進める
 
 
【企業グループ 連結子会社9社、非連結子会社5社】
連結子会社は、広告事業等の(株)ダイブ、音楽事業等のアットザラウンジ(株)、交通情報を中心にした情報提供の交通情報サービス(株)、Web・Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、ネイティブアプリを主としたモバイルコンテンツ事業の(株)HighLab、音声通信関連ソリューションの(株)and One、スマートフォン向けアプリケーション企画・開発等の(株)会津ラボの国内7社、中国事業の統括に加え、携帯電話販売店を運営する因特瑞思(北京)信息科技有限公司、及びIT系教育事業の瑞思創智(北京)信息科技有限公司、の中国子会社2社。
非連結子会社は、2015年6月に設立したスマートコミュニティ事業の山口再エネ・ファクトリー(株)、同年7月に第三者割当増資を引き受け子会社化したスマートフォン向けアプリ自動キッティングツール開発等の(株)プロモート、2015年10月に設立する中国における卸売事業等を行うNE銀潤(株)の国内3社、モバイル向けコンテンツ配信やキャラクターライセンス事業の瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、インド現地法人NE Mobile Services(India)Private Limitedの海外2社。
 
【特徴・強み】
同社の特徴であり、強みにもなっているのが “自社開発へのこだわり”である。「提供するコンテンツの権利(IP/知的財産)を自社で保有する事で高い収益性を実現」する同社独自のビジネスモデルをベースとしている。そして携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売(独自に開発した店頭アフィリエイト)システムと連動させる事でコンテンツの拡販を図っている。加えて、この経験値が企業のモバイル活用ソリューションに活かされている。
 
コンテンツの一例
女性にとって大切な生理サイクルの記録・管理をはじめ、妊娠しやすい期間、生理日・排卵日の予測等、様々な情報やアドバイスを提供している。
「“おでかけ”をもっと便利に!もっと楽しく!」をコンセプトに、道路交通情報、渋滞ライブ映像、駐車場検索を配信している。 『交通情報』の提供元である子会社 交通情報サービス(株)では、スマートフォンユーザ向けコンテンツの他、大型ショッピングモールやTBSテレビ「次世代スマートテレビ」へも情報を提供している。
 
 
16/5期の取り組みと進捗状況
 
スマートデバイス時代における事業領域の拡大を念頭に、新規事業と新技術分野への展開を進めている。この第3四半期累計期間は、コンテンツサービス事業において、交通情報の会員獲得を強化すると共に、エンターテインメント及びライフスタイルでライナップを拡充した。一方、ソリューション事業においては、ソリューション(受託開発他、自社サービス、地方創生)、広告(広告代理サービス)、及び海外(中国での携帯電話端末販売)の強化に取り組んだ。
 
 
交通情報は、16/5期上期に実施した携帯電話販売会社との協業による優先販売(タイアップ広告企画)で会員獲得が進んだ(累計約20万人)。新たに獲得した会員への課金が始まった事で、15/5期第1四半期をピークに減少傾向が続いていた売上が、16/5期第1四半期を底に増加に転じた。今後、飛行場やショッピングモールへの道路情報等、ソリューション事業への展開も進めていく。

エンターテインメントは、キャリアプラットフォームを中心に人気ジャンルで30超のコンテンツを継続運営しており、新規コンテンツ配信に向けアライアンスにも力を入れている。この第3四半期累計期間では、auスマートパス及びApp Passで配信していた「ココロと身体ミュージック♪」の配信を、2016年2月15日にdメニュー(NTTドコモ)で開始した。

ライフスタイルでは、アライアンスの強化とカバー領域の拡大によるライフサポートプラットフォームの構築に取り組んでいる。この第3四半期累計期間では、「女性のリズム手帳」、「Fivetalk」、「Dealing」といった既存コンテンツの強化と共に、カバー領域の拡大に向け、「毎日いぬねこダイアリー」の配信をキャリアプラットフォームで順次開始した他(2015年10月2日~12月17日)、2015年12月17日に知育アプリ「おこさまランチをつくろう」及び「プリンスルームへようこそ」の配信をApp Store及びGoogle Playで開始した。
 
 
また、ライフスタイルでは、EC市場の拡大に伴い需要が増えているエスクローエージェントサービスを強化する。エスクローとは、商取引において、信頼のおける第三者(エージェント)を介入させて取引を担保するシステムの事で、同社は、フリマアプリ「Dealing」(出品無料のアプリ)事業の一環としてエスクローエージェントサービスを手掛けている。個人間商取引の市場規模拡大に対応して、個人向けサービスのサービス領域を広げていく他、小売店向けの商取引・流通システムの構築に取り組む考え。
 
 
 
広告(広告代理サービス)は、キャリア商材との競争激化や行政による通信サービスへの規制強化で事業環境が厳しさを増しているが、第3四半期(12-2月)の同社の広告は、「市場環境への柔軟な対応」と「営業施策の着実な実施」により、四半期ベースで過去最高の売上を計上した。具体的には、「映画、ドラマ、アニメ見放題」、「旅行ガイド」、「音楽聴き放題」等の優良コンテンツ獲得に成功した事に加え、12月、1月の端末販売数急伸(端末0円販売、キャッシュバック施策廃止に伴う需要増)の好機を捉えた営業推進が成果をあげた。また、既存携帯電話販売店との継続的な関係強化や、コンテンツ特性を活かした新たな販路(他業種店舗)の開拓で販路の強化・拡充も進んだ。一方、海外(中国での携帯電話端末販売)は、法人の端末需要の取り込みに成功し、端末販売台数が前年同期の3倍に拡大した。

ソリューションでは、受託開発他や自社サービスの強化に加え、地方創生関連事業の育成に取り組んだ。企業の情報システム投資が拡大する中、ITエンジニア不足が深刻化しており、受託開発他の事業環境は良好。この第3四半期累計期間は、大手エステティックサロンや大手出版社向けのWEB構築、ゲーム会社向けの分散処理サーバシステム構築やデバッグサービス等が伸びた。新規案件では、キャリアの懸賞サービスや病院予約システムの開発案件の獲得に加え、IVR+WEBサービスの開発・運営受託に成功。3月の年度末需要の取り込みに向けた新規顧客開拓も進んだ。尚、IVR(Interactive Voice Response)とは自動音声応答システムの事。
また、企業のスマホ・タブレットの導入に対応したサービスである自社サービスでは、子会社(株)プロモートが手掛けるスマホ向けキッティングツール事業(キッティング事業者向け販売)が好調だった。
 
 
上記の他、事業領域の拡大を図るべく、産学連携による研究開発(ドローン、HEMS、スマート農業等)を進めた他、ソリューションでの開発力と営業力の強化を目的に、2016年2月18日に(株)スマートバリューと業務資本提携した。(株)スマートバリューは、関西を地盤にクラウドソリューション事業とモバイル事業を手掛けており、開発力強化に加え、営業エリア相互補完効果も期待できる(同社は広告での販路拡大効果も期待している)。

(株)スマートバリューの概要
・代表者  :代表取締役社長 渋谷順
・所在地  :大阪府大阪市
・設立   :1947年6月9日
・資本金  :250百万円
・市場   :東京証券取引所JASDAQ(証券コード:9417)
・事業内容 :クラウドソリューション事業、モバイル事業
 
 
地方創生は、総務省による「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を背景にした自治体による取組みの活発化を追い風に、スマート農業、少子化対策、再エネルギー、観光の各分野でプロジェクトが進んでいる。これまでの実績及び受注案件は下記の通り。

結婚・妊娠・出産・子育て支援アプリ「ちばMy Style Diary」(千葉県)
スマート農業(福島県会津若松市)
再生エネルギーの視える化(福島県)
観光事業(インバウンド)工場見学アプリ(埼玉県)
観光事業ナビアプリ「指さしナビ」福島県から全国へ
観光事業歴史探検ARナビ「白石しろしろナビ」(宮城県白石市)
少子化対策子育て支援アプリ「しもだこどもDiary」(静岡県下田市)
太陽光発電を軸とした地域ICTサービス(山口県宇部市)
行政⇔町民の情報共有アプリ(千葉県横芝光町)
 
 
2016年5月期第3四半期決算
 
 
交通情報の月額課金会員増とソリューション(受託開発他)・広告(広告代理サービス)の売上伸長等で営業損益が大幅に改善
第3四半期(12-2月)の売上高は14億74百万円。ソリューション及び広告をけん引役にソリューション事業の売上が前年同期及び前四半期の売上を大きく上回った。一方、コンテンツサービス事業の売上は前年同期の実績を下回ったものの、課金会員の増加で交通情報の売上が前四半期比で増加した他、ライフスタイルの売上も前四半期並みを確保。2四半期連続の減収となったエンターテインメントも落ち着きを取り戻しつつある。

利益面では、ソリューション事業の売上構成比の上昇で原価率が上昇したものの、売上の増加と広告宣伝費を中心にした販管費の減少で、前四半期は13百万円の損失だった営業損益が1億08百万円の利益に転じた。前年同期は上期にゲームを中心に積極的に広告宣伝費の投下を行い、今期は第1・第2四半期(上期)に携帯電話販売会社との協業による優先販売を実施する(タイアップ広告企画)等、交通情報に重点的に広告宣伝費を投下した。第3四半期の交通情報の売上増は、新たに獲得した月額課金会員が売上に寄与し始めた事による。一方、広告宣伝費の投下は上期で一巡した。
 
 
交通情報は、タイアップ広告企画で獲得した会員の課金が順次始まっている。ライフスタイルは前年同期の水準を下回っているものの、16/5期に入り、底堅い推移。「女性のリズム手帳」、「Fivetalk」、「Dealing」を軸にアライアンスによる収益モデルの構築に取り組んでいる。キャリアプラットフォームを中心に人気ジャンルでの30超のコンテンツを運営しているエンターテインメントは、広告効果の希薄化等でキャリアプラットフォーム向けコンテンツの減収が続いているものの、徐々に落ち着きを取り戻しつつある。
 
 
ソリューションは、同社や(株)フォー・クオリアが手掛ける受託開発やデバッグが堅調に推移する中、(株)and Oneや(株)会津ラボといった子会社の連結効果もあり売上が増加した。広告は、優良コンテンツの獲得や販路の強化・拡充効果に加え、規制強化を前にした携帯電話の駆け込み需要もあり、四半期売上高が過去最高を更新。海外は、法人需要で端末販売の好調が続いている。
 
 
前期比7.5%の増収、同33.1%の経常増益
売上高は前年同期比7.5%増の40億22百万円。キャリアプラットフォーム向けコンテンツを中心にコンテンツサービス事業の売上が16億93百万円と同11.4%減少したものの、ソリューションをけん引役にソリューション事業の売上が同27.3%増の23億28百万円と伸びた。営業利益は同32.8%増の1億52百万円。ソリューション事業の売上構成比上昇(48.9%→57.9%)による原価率の上昇で売上総利益が17億71百万円と同1.3%減少したものの、広告宣伝費(5億82百万円→4億71百万円)を中心に販管費が16億18百万円と同3.7%減少した。四半期純利益が減少したのは、投資有価証券売却益の減少による(3億31百万円→17百万円)。
 
 
コンテンツサービス事業はキャリアプラットフォーム向けコンテンツにおける広告効果の希薄化等で苦戦したが、既に説明した通り、交通情報は、上期のタイアップ広告企画の効果が顕在化してきた。エンターテインメント(ゲーム、メール、音楽、電子書籍、海外)及びライフスタイルは前年同期との比較で落ち込んではいるものの、足元、落ち着きつつある。
一方、ソリューション事業は、受託開発等を中心にソリューションが大きく伸びた他、海外も、中国での端末販売が法人向けを中心に前年同期比3倍に拡大。広告(広告代理サービス)は前年同期の特需の反動を吸収して高水準の売上を維持した。
 
 
法人税及び配当金の支払いや投資有価証券の売却等で第3四半期末の総資産は59億15百万円と前期末に比べて3億72百万円減少した。現預金の減少は、法人税や配当金の支払い、及び長期預金の積み増しによるもの(余資運用の一環)。一方、ソフトウェアで無形固定資産が増加した他、長期預金の増加で投資その他が増加した。借入金や社債等の有利子負債はなく、無借金経営。自己資本比率は83.9%と前期末に比べて1.7ポイント上昇した。
 
 
2016年5月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比2.4%の増収、同12.4%の経常増益
通期予想に対する進捗率は、売上高76.8%(前年同期の実績ベースの進捗率73.1%)、営業利益72.6%(同60.5%)、経常利益72.9%(同61.6%)と順調。
コンテンツサービス事業においては、引き続き、新規コンテンツ開発、ユーザエンゲージメント向上、及びアライアンス拡充に取り組み、ソリューション事業においては、3月の年度末需要の取込みを図る。
配当は前期と同額の1株当たり3円の期末配当を予定している。
 
 
 
今後の注目点
第3四半期決算のポイントは二つ。一つは、コンテンツサービス事業において、キャリア定額サービスの収益環境の悪化を踏まえて、競争力の強いコンテンツである交通情報に重点的に広告宣伝費を投下した効果が顕在化してきた事。そして、もう一つは、優良コンテンツの獲得や販路の強化・拡充(提携先携帯電話販売会社:15年2月末7社→16年2月末10社)といった取り組みの成果によるソリューション事業における広告(広告代理サービス)の売上急伸である。
また、伸び悩みの感があった自社サービスにおいて、子会社(株)プロモートが手掛けるスマホ向けキッティングツール事業が好調な事も朗報。他のサービスも、引き続き認知度の向上に取り組んでおり、3月18日には、クラウド型リバースオークションシステム「Profair」のPRを兼ねてコスト削減ソリューションセミナーを開催した。4月8日にはセミナー第2弾が開催されており、取り組みの成果が期待される。
11/5期以降、売上は順調に伸びたが、利益が追従しなかった。しかし、先行投資の効果が現れてきた事と的を絞った広告戦略の奏功で16/5期は3期ぶりの増収・増益が見込まれる。引き続き利益の増加を伴った売上の増加を実現できるかが、来期のポイントと考える。