ブリッジレポート
(3034:東証1部) クオール 企業HP
中村 勝 社長
中村 勝 社長

【ブリッジレポート vol.31】2016年3月期業績レポート
取材概要「改定された調剤報酬への対応が今期のポイントの一つになるが、その中で同社は、かかりつけ薬剤師・薬局対策として、患者の安心感・信頼感の醸成に・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年6月14日掲載
企業基本情報
企業名
クオール株式会社
社長
中村 勝
所在地
東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー37階
事業内容
調剤薬局チェーン大手。首都圏中心に全国に店舗展開。
決算期
3月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 124,957 6,709 6,655 3,641
2015年3月 114,363 4,243 4,262 2,155
2014年3月 100,966 2,105 2,208 777
2013年3月 76,783 2,812 2,829 1,349
2012年3月 66,201 3,308 3,238 1,560
2011年3月 60,915 2,804 2,807 1,137
2010年3月 56,305 2,031 2,032 828
2009年3月 49,010 1,526 1,506 653
2008年3月 38,002 1,314 1,298 547
2007年3月 24,827 937 875 403
2006年3月 21,701 779 763 333
2005年3月 20,193 611 580 74
2004年3月 18,500 28 10 -134
2003年3月 11,869 253 413 -33
2002年3月 8,107 5 153 68
株式情報(6/6現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,431円 34,470,400株 49,327百万円 18.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
24.00円 1.7% 107.52円 13.3倍 604.49円 2.4倍
※株価は6/6終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
クオールの2016年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
首都圏を中心に全国展開を進める業界3位の調剤薬局チェーン。従来、調剤薬局と言えば、大病院の近くに出店し顧客獲得を競う門前薬局が主流だったが、同社は医療機関とのマンツーマン体制による出店戦略を推進し独自の勝ちパターンを確立。近年では、異業種との提携等による人々が集まる導線上への出店に力を入れており、(株)LAWSONとの資本業務提携による「コンビニエンスストア(以下、CVS:Convenience Store)併設型調剤薬局」(調剤薬局とCVSの融合)の街ナカ展開、家電量販店大手の(株)ビックカメラとの連携による駅チカ展開、更にはJR西日本グループとの業務提携による「駅クオール薬局」といった駅ナカ展開が進行中である。また、中間持株会社クオールSDホールディングス(株)を通してCSO事業、治験事業といったBPO受託事業も手掛けている。
 
企業理念    わたしたちは、すべての人の、クオリティ オブ ライフに向きあいます。いつでも、どこでも、あなたに。
 
【沿革】
1992年10月  中村 勝氏(現社長)が50歳の時に医薬品卸の営業本部長から転身して創業 兜町に1号店を出店
2006年 4月  大阪証券取引所「ヘラクレス」(現JASDAQ)上場
2008年12月  LAWSONと業務提携
2010年 8月  CVS併設店舗1号店(東京都港区城山トラストタワー)
2011年12月  東証2部上場
2012年 8月  JR西日本デイリーサービスネットと業務提携
2012年 8月  LAWSONと資本提携
2012年10月  アポプラスステーションを子会社化
2012年12月  東証1部上場
2013年 4月  会社分割(新設分割)により関連事業を統括する中間持株会社クオールSDホールディングスを設立
2014年 7月  ココカラファインと業務提携
 
【事業概要】
事業セグメントは、クオール(株)等が手掛ける調剤事業とクオールSDホールディングス(株)傘下の企業が手掛けるCSO事業、治験事業等のBPO受託事業に分かれ、16/3期は調剤事業の売上が全体の92.3%を占めた。調剤事業は調剤薬局の経営が中心だが、CVS併設型調剤薬局(「LAWSON」の法人オーナーとして展開)における物販の収益も含まれている。
一方、クオールSDホールディングス(株)が統括するBPO受託事業は、アポプラスステーション(株)によるCSO事業や薬剤師の派遣事業、クオールRD(株)の治験支援事業、メディカルクオール(株)の出版関連事業からなる。MRの派遣は製薬会社のコスト削減(MRの削減)に対応したもの。
 
調剤事業
クオール薬局
「処方箋は病院の近くで処理するもの」と言う固定観念が強いため、処方箋を受け取った患者が自ら薬局を選ぶ事は稀で、病院等の近くの薬局(門前薬局)を利用するケースが一般的であった。このため、調剤薬局は大病院など大手医療機関の門前に店舗を構え、好立地を活かした店舗運営を志向してきた。これに対して、同社は門前薬局の出店を進めつつも、多くの医療機関と1対1の密接な関係(処方元医療機関の医師との強固な信頼関係)を構築するマンツーマン薬局を志向すると共に、1店舗で複数の医療機関が発行した処方箋を応需する面対応の店舗展開を進めてきた。
 
 
クオール薬局は門前薬局が中心だが、近年、面対応タイプが増加している。首都圏中心に出店しており(出店の約50%)、全国のクオール薬局で利用可能なクオールカード(175万人)、処方せん送信アプリと言ったIT化により、近隣の大病院に頼らない面対応の継続的な取り組みが成果をあげており、新患率は毎月8%前後で安定して推移している。
 
面対応強化の一環として異業種と連携  −広範囲な市場をカバー−
2010年以降は異業種との連携により多様なチャンネル展開にも力を入れており、LAWSONとの提携による調剤薬局併設のCVS運営(2014年4月以降は、調剤、CVS、ドラッグストアのヘルスケア融合型にシフト)、駅前の好立地に店舗展開し、高い集客力を誇るビックカメラ店舗でのインストア展開、JR西日本グループとの提携による駅構内での店舗展開を進めている。現在、患者の20%超は能動的に調剤薬局を選択していると言われており、こうした患者の取り込みを図るための差別化戦略であり、患者との接点を点から面に広げる事で広く処方箋を獲得しようとするもの。将来的には宅配サービスも視野に入れており、薬だけでなく、介護用品や弁当等を届ける体制を整備したい考え。
 
 
流通改革
2014年3月、調剤薬局・ドラッグストア16社と共に、医薬品の競争入札を行う医薬品調達機構を立ち上げた。医薬品調達機構は、医薬品を5つのカテゴリーに分け、このうち新薬創出加算品、特許品、及び長期収載品の3カテゴリーについて、カテゴリー別に事前に各社へ購入予定価格を通知、その価格に対して一般競争入札を行う。残りのGE医薬品、エッセンシャルドラッグ(その国の保険医療に最低限必要な医薬品)は従来通り、各々が仕入先と交渉する。これまで同社はすべての医薬品を一括購入していたため、値引き率には限界があった。15/3期より入札制度を実施し、適正かつ公正な価格での交渉・妥結が可能となり、利益率の改善につながっている。

これまで同社の通期業績は、第4四半期(1-3月)に医薬品の仕入価格交渉が最終決着し、その結果いかんで大きく変動する事があった。特に13/3期、14/3期は影響が大きかったが、仕入価格(仕入原価)を確定した上で仕入れを行うと言う本来の商習慣への回帰を目指す医薬品入札制度を導入した事で15/3期は大きな波乱なく着地できた。
 
BPO受託事業
製薬企業は生き残りをかけ、事業の選択と集中のプロセスに移行している。このため、先発品に特化し、長期収載品については売却も含めて縮小を進めている。また、販管費の低減(固定費の圧縮・変動費化)にも取り組んでおり、メーカーMRや開発人員の削減等による人員整理を進める一方で、CSO・CRO企業の利用を増やしている(外注先の利用による費用の変動費化)。
こうした製薬企業の動きに対応して、同社グループではクオールSDHD傘下のアポプラスステーション(株)が「メーカーMRからCSOへ切り替え(コントラクトMR)」に対応したサービスを提供している。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
 
2016年3月期決算
 
 
前期比9.3%の増収、同58.1%の営業増益
売上高は前期比9.3%増の1,249億57百万円。調剤事業は既存店の好調とM&A効果で売上が1,153億08百万円と同11.7%増加し、BPO受託事業は子会社の売却で売上が96億49百万円と同13.2%減少した。
営業利益は同58.1%増の67億09百万円。入札制度による医薬品調達コストの削減やGE医薬品の増加で売上総利益率が12.6%と1.2ポイント改善する中、子会社売却による人件費の減少等で販管費は90億51百万円と同3.2%の増加にとどまった。
設備投資19億27百万円(前期17億52百万円)、減価償却費16億07百万円(同16億11百万円)、のれん償却費15億69百万円(同14億97百万円)。
期末配当は1株当たり4円増配の14円を予定している(上期末配当と合わせて、年間配当は4円増配の24円)。
 
 
調剤事業
売上高1,153億08百万円(前期比11.7%増)、営業利益66億78百万円(同51.2%増)。対象店舗数の増加で既存店売上高が62億06百万円(同19.0%)増加する中、M&Aによる押し上げが75億94百万円(同13.4%)あった。一方、新規出店の減少で新店は13億80百万円の減収要因。処方箋応需枚数は同6.6%増の10,182千枚、処方箋単価はC型肝炎治療薬の増加で10,270円と619円(6.4%)上昇した。利益面では、医薬品調達コストの削減やGE医薬品の推進に加え、人件費のコントロールや不採算店舗20店舗の閉店(主に売店)効果もあり、利益率が改善した。期末のGE医薬品変更比率は64.4%と前期末(60.5%)に比べて3.9ポイント上昇した。

期末店舗数は前期末に比べて25店舗増の563店舗(このうちLAWSON店舗は32店舗)。45店舗(M&A34、クオール10、LAWSON 1)を出店する一方、20店舗(売店12、LAWSON 6、クオール2)を閉店した。また、クリーンルーム設置は21店舗で、在宅対応は220店舗。在宅売上高は前期比15.0%増の23億円(施設:居宅=64.1%:35.9%)、在宅受付回数は同7.4%増の22万回。

LAWSON店舗の売上高は前期比6.1%増加した(CVS部門が同5.7%増、調剤部門が同8.9%増)。単月黒字化した調剤部門は、処方箋受付回数が2.7%増加し、処方箋単価が6.3%上昇。ビックカメラへのインストア展開は、4店舗合計の応需医療機関総数が約10,500と前期比8.1%増加し、処方箋単価も同4.5%上昇。ビックカメラのバックアップもあり、面処方薬局としての存在感の確立に成功した。JR西日本グループの駅構内へ出店している3店舗も(期末に4店舗目となるJR垂水駅内店舗を出店)、認知度向上で処方箋応需枚数が同67.9%増加し、処方箋単価も10.6%上昇。ドラッグストア併設の集客力に加え、健康フェア等、JR西日本グループの積極的なバックアップも援軍となっている。応需医療機関数も、JR大阪駅内店舗が2,600を超え、他店舗も1,000を超えた。
 
 
BPO受託事業
売上高96億49百万円(前期比13.2%減)、営業利益10億00百万円(同38.5%増)。子会社売却の影響で売上が減少したものの、人件費の減少とアポプラスステーション(株)の不採算事業からの撤退等で大幅な営業増益となった。
 
 
 
 
業容拡大と無担保転換社債型新株予約権付社債(以下、新株予約権付社債)の発行による資金調達等で期末の総資産は699億21百万円と前期末に比べて103億48百万円増加した。新株予約権付社債の発行による資金調達は、2015年10月27日の払い込みで調達額は100億円。調達した資金を向こう3年間の調剤事業におけるM&Aのための資金に加え、クオール薬局や新業態店舗の新規出店と既存店舗の改修、及び借入金の返済に充当していく考え。自己資本比率29.8%(前期末32.1%)。
 
 
税金費用が増加したものの(11億38百万円→19億85百万円)、ほぼ前期並みの営業CFを確保した。フリーCFは前期の27億75百万円から41億91百万円に増加した。
 
 
2017年3月期業績予想
 
(1)クオールの新体制  代表取締役の異動
同社は、1992年の設立以来、調剤事業を主力事業として、新規出店とM&Aを推進する事で事業規模を拡大させ、安定した医療の提供に努めてきた。保険薬局業界の環境変化に対応して、更なる企業価値の向上とグループの持続的な成長発展に向け経営体制の強化を図るべく、今回、社長を交代する事とした。6月開催予定の第24期定時株主総会における承認及び、その後開催される取締役会の決議を経て、現代表取締役副社長の中村 敬氏が代表取締役社長COOに、現社長の中村 勝氏が代表取締役会長CEOに、それぞれ就任する予定。
 
 
前期比10.4%の増収、同1.3%の営業増益
売上高は前期比10.4%増の1,380億円。出店はクオール薬局10店舗、LAWSON 8店舗、M&A128店舗の計146店舗を計画しており、期末店舗数はLAWSON 40店舗を含む709店舗(前期末:LAWSON 32店舗を含む563店舗)となる見込み。診療報酬改定への対応が進む事で、調剤基本料、かかりつけ薬剤師指導料、基準調剤加算、及びGE医薬品調剤体制加算等が徐々に増加してくるとみている。

利益面では、システム投資費用やのれん償却費等を中心に販管費が増加するものの、前期比16.5%の増益が見込まれるアポプラスステーション(株)の寄与もあり、営業利益が同1.3%増の68億円とわずかに前期実績を上回る見込み(のれん償却前営業利益は同9.5%増の90億65百万円)。

設備投資は33億01百万円(前期19億27百万円)を計画しており、減価償却費17億63百万円(同16億07百万円)、のれん償却費22億65百万円(同15億69百万円)を織り込んだ。

配当は1株当たり上期末12円、期末12円の年24円を予定している。
 
 
(3)セグメント別の取り組み
調剤事業
平成28年度調剤報酬改定は、処方箋に基づく処方よりも、患者への服薬指導という「対人業務」に重きが置かれ、かかりつけ薬剤師・薬局に対する評価を高める一方、大型の門前薬局にとっては厳しいものとなった。加えて、GE医薬品調剤体制加算も施設基準が見直され、ハードルが高くなった。この影響で、2016年5月現在、同社も、下記の通り、調剤基本料、基準調剤加算、GE医薬品調剤体制加算の店舗割合が変わった。
 
 
調剤基本料については、かかりつけ薬剤師を増やす事で20点、25点店舗の41点店舗への引上げを図る。基準調剤加算については、積極的な在宅対応、週45時間以上の開局対応、更にはプライバシーへの配慮等の施策を通して高加算店舗比率の引き上げを図る。また、新設された「かかりつけ薬剤師指導料」については、マンツーマン薬局として85%の高い再来率とクオールカード会員175万人を強みにかかりつけ薬剤師の同意の取り付けに取り組んでいく。
一方、GE医薬品調剤体制加算については、上期中に新基準を達成して下期の拡大につなげていきたい考え。
 
BPO受託事業
新規事業として、海外事業、OMR(OTCのMR)事業、H&B(ヘルス&ビューティー)事業を育成していく。海外事業ではタイに拠点展開して国内製薬企業のタイ進出をサポートする。OMR事業はCSO事業の課題解決のための新規事業であり、H&B事業はヘルスケアサプリメントの病院向け、薬局向けの営業代行である。
 
海外事業
タイ投資委員会(BOI)の新投資奨励政策を活用して、アポプラス・タイランド(株)を2016年7月に設立する予定である。タイへの医薬品及びヘルスケア品の輸出入時の申請代行業務を手掛け、国内製薬企業のタイ進出をサポートする。
 
 
OMR事業
CMRは2年契約のプロジェクトが多く、派遣契約満了後、次のプロジェクトが決まるまでの間、非稼働となる。OMR事業は、次のプロジェクトの開始までに一時的に非稼働となったCMRを活用した事業であり、製薬企業、ドラッグストア、アポプラスステーションの3者にとってメリットのある事業として独創的な視点から事業を創造していく。
 
H&B事業
医療費削減の国策(サプリメント強化)にマッチした新たなBPO受託事業として、医薬品を扱うMRを抱えるアポプラスステーションの強みを活かして、独創的な視点から事業を創造していく。
 
 
今後の注目点
改定された調剤報酬への対応が今期のポイントの一つになるが、その中で同社は、かかりつけ薬剤師・薬局対策として、患者の安心感・信頼感の醸成につながる疾患別薬剤師の育成に取り組むと共に、マンツーマン薬局の強み(6ヵ月以内の再来率85%)を活かして、175万人のクオールカード会員の「かかりつけ」への移行を促していく。基準調剤加算については、65歳以上の患者割合が48%を占め、在宅受付回数の順調な増加で(16/3期は同7.4%増)、在宅売上が伸びている事が強みである(同15.0%増)。
この他、収益力強化に向け、在庫管理が難しいGE医薬品の在庫管理について、ヤマトグループとの提携による物流改革が進んでおり、中長期の目標である売上高3,000億円の達成に向けては、オーガニックグロースとM&Aによる事業拡大と共に、間接コストの削減も必要なため、ホールディングス構想も進めていく考え。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社はコーポレートガバナンス・コード適用以降のコーポレートガバナンス報告書を2015年12月18日に提出しており、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施している。
 
 
 
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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