ブリッジレポート
(6826:東証1部) 本多通信工業 企業HP
佐谷 紳一郎 社長
佐谷 紳一郎 社長

【ブリッジレポート vol.10】2016年3月期業績レポート
取材概要「及第点となった「DD15」を終え、いよいよ過去最高業績に挑戦する「GC20」が本格的に進行する。本文中にもあるが、佐谷社長は今期を徹底し・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年6月21日掲載
企業基本情報
企業名
本多通信工業株式会社
社長
佐谷 紳一郎
所在地
東京都品川区北品川5-9-11 大崎MTビル
事業内容
コネクタ中心。通信やFAなどの産業機器向けで長年培ったコア技術を自動車や医療機器向けなどに展開。パナソニックと提携、生産の半分は中国
決算期
3月末日
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 17,119 1,301 1,237 1,364
2015年3月 16,639 1,415 1,565 1,440
2014年3月 14,824 932 975 1,479
株式情報(6/3現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
908円 12,053,676株 10,944百万円 14.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 2.9% 95.41円 9.5倍 804.22円 1.1倍
※株価は6/3終値。発行済株式数、BPSは直近期決算短信より。ROEは前期実績。
 
本多通信工業の2016年3月期決算概要、中期経営計画「GC20」の進捗などをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
通信インフラ、FA機器、民生機器、車載用途向けの電気コネクタおよび光コネクタの製造販売を行う。「Segments No.1」を掲げ、特定分野での高い競争力を追求している。長い歴史の中で培われた幅広い設計技術力、産業用機器向けで培った長期信頼性と堅牢性に関するノウハウ、多品種少量生産体制などが特長。子会社ではソフトウエア開発なども手掛けている。グループ認知度の向上に向けて、複数存在していたブランドを「HTK」に統一。グループは同社と連結子会社7社(国内2社、海外6社)の計9社で構成されている。(2016年3月末現在)
 
【沿革】
1932年5月に精密ねじ加工業として現在の東京都目黒区で創業。第二次大戦後は、日本電信電話公社(現NTT)の電話交換機用プラグ・ジャック、防衛庁向けプラグ・ジャックを始め、その発展形となるコネクタの製造販売を手掛け、業容を拡大。2001年に東証2部に上場した。だが、ITバブル崩壊で売上が急減。数度のリストラクチャリングを経て、成長路線への復帰と拡大発展をめざし、2008年に松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)と資本業務提携契約を締結。2014年2月、約80年に亘って本社を置いていた目黒から品川区へ本社を移転した。 2016年3月、東証1部に上場した。
 
【経営理念など】
特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事をめざし、「Segments No.1」を掲げている。
また、新中期経営計画「GC20」策定に際し、グループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。
 
【佐谷 紳一郎社長プロフィール】
佐谷紳一郎社長は1957年11月生まれの現在58才。松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)では事業戦略企画部門に在籍し、M&Aや他社とのアライアンス締結等に長年に亘り携わってきた。そうした中、コネクタ事業のアライアンス先として幅広い技術力・製品ラインアップを有する企業を調査している中、本多通信工業の実力に着目し、アライアンスを推進、2008年資本業務提携を実現させた。同年、取締役就任。2009年にはパナソニック電工を退社し、同社副社長に就任。2010年4月に同社社長に就任した。社長就任後は中期経営計画「Plan 80」を策定・実行。基本戦略として「Segments No.1」を設定し、複数のニッチ分野でNo.1となることを目指すと共に、様々な構造改革を断行し、黒字体質の確立、財務基盤の安定化を実現した。中期経営計画「DD15」で事業拡大と体質強化を進めた現在は、良い会社(Good Company)かつ過去最高業績更新をターゲットとする新中期経営計画「GC20」を推進中で、ワンランク上の企業作りに取り組んでいる。
 
【事業内容】
事業セグメントはコネクタ事業と情報システム事業の2つ。
 
◎コネクタ事業
「2016年3月期 売上高 14,668百万円、営業利益 1,169百万円、営業利益率 8.0%、売上構成比 86%」
 
<コネクタとは?>
電子回路や光通信において配線基板同士を接続し、電気や信号を繋ぐために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。
 
<利用分野>
長年の経験で培われた高い技術力により、以下の6分野を中心に付加価値の高く、顧客志向のコネクタを始めとした製品をラインアップしている。
 
 
 
2016年3月期の分野別売上構成比率(全売上高に対する構成比)は、車載分野34%、FA分野19%、通信分野18%、民生分野12%となっている。
最も構成比の高いで車載分野において、安全性や運転性能向上の観点から車載カメラやセンサの搭載台数が増加しているカーエレクトロニクスの成長に対応して投資や製品開発を進めている。
 
◎情報システム事業
「2016年3月期 売上高 2,450百万円、営業利益 131百万円、営業利益率 5.3%、売上構成比 14%」
 
通信分野でのソフトウエアの重要性が高まる中、1983年に事業をスタート。
システム開発から保守運用まで幅広いソリューションを展開している。なかでも仮想化(*)サーバの構築では業界屈指の技術を有し、クラウドコンピューティングの広がりに貢献している。
世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れている。
 
*仮想化とは?:1台のサーバ(物理サーバ)を複数台の仮想的なサーバ(仮想化サーバ)に分割して利用する仕組み。それぞれの仮想化サーバではOSやアプリケーションを実行させることができ、あたかも独立したコンピュータのように使用することが可能となる。
サーバ台数の適正化や消費電力を含めた運用管理コストの低減など、企業のITコスト見直しニーズに対応し、注目が集まっている。
また、仮想化環境下ではハードウェア等を新たに購入しなくても新サーバを容易に追加することができるため、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するというITシステムニーズに対する有効なソリューションの一つとなっている。
 
【特徴と強み】
① 幅広い設計技術力
前述のように、同社のコネクタは、様々な分野で用いられている。
同社は、日本電信電話公社(現NTT)を始めとした多くの顧客からの様々なニーズに対応したカスタマイズによる製品作りに長年取り組んできた。この「顧客密着度の高さ」が、同社の幅広い設計技術力の源泉である。
 
② 長期信頼性と堅牢性
制御装置に用いられる「1.27mmピッチコネクタ」、FTTH(Fiber To The Home:光通信のための光ファイバーを家屋内に引き込むこと)に用いられる「シャッター付きSC形プラグ」、プロジェクタに用いられる「高耐圧電源用コネクタ」などで強みを持っている。
これらは、顧客から長期信頼性や堅牢性が求められる分野であり、長年に亘って培ってきた同社の技術力や製造能力が顧客に高く評価されている証となっている。こうした強みを活かし、安全性という面でハードルの高い車載分野での売上を大きく伸ばしている。
 
③ 多品種少量生産
同社は現在約4,000品目のコネクタを生産しているが、このうちの月間生産個数が1万個未満の品目数は94%を占める。また生産金額ベースでも1万個未満の生産が62%、1万個以上が38%と、多品種少量生産が同社の特長となっている。
こうした状況に対応し、国内工場、海外工場の2つの車輪で最適なものづくりを行っている。
国内工場(安曇野工場:旧松本工場)は1万個未満の多品種少量生産の拠点。今後も同社の得意技を磨き、迅速な納入を行うため国内で稼動を続ける。
海外工場(深圳工場)は1万個以上の中量品の一気通貫生産を行い、機動力を高め世界で戦うための拠点とする。

一方、多品種少量生産ながらも短納期を実現させ、顧客から発注を受けたら1週間以内での製品配送を確約する「1weekデリバリーサービス」に2013年から積極的に取組んでいる。
現在の取扱品目数はシステム化を進めた安曇野物流ハブの完成によりそれまでの倍にあたる約1,000品目に拡大している。
 
 
2016年3月期のROEは前期を下回ったが14.8%と引き続き高水準にある。
2020年に向けた目標とする経営指標に「ROE 13%以上」を掲げている。
新製品の開発によるマージンの向上に加え、在庫水準のコントロールによる総資産回転率の向上にも取組んでいく考えだ。
 
 
2016年3月期決算概要
 
 
車載分野、情報システムが好調も、戦略的投資と基幹分野減収で営業利益は減益
売上高は前期比2.9%増の171億19百万円。引き続き車載分野、情報システム分野、民生分野が2桁増と好調だったが、FA、通信の基幹分野が減収となった。
営業利益は同8.1%減の13億1百万円。合理化効果、円安効果はあったが、戦略的投資増に加え、通信、FA分野での減収に伴うマイナスを車載等でカバーできなかった。前期に134百万円あった為替差益が無くなり、110百万円の為替差損に転じたことから経常利益は同21.0%減の12億37百万円となった。
当期純利益は同5.3%減の13億64百万円。補助金収入、退職年金制度を確定給付型から確定拠出型に変更したことに伴う引当金の戻しがあった。
 
 
 
現預金が増加し、流動資産は前期末比2億60百万円増加した。国内外での設備投資により有形固定資産が増加したこと等で、固定資産は同1億6百万円増加し、資産合計は同3億65百万円増加の133億8百万円となった。
仕入債務、退職給付に係る負債の減少等で負債合計は同6億13百万円減少した。
利益剰余金の増加などで純資産は、同9億79百万円増加。自己資本比率は前期末比5.5%上昇し、72.8%となった。
 
 
仕入債務の減少等で営業CFのプラス幅は若干縮小。投資有価証券の取得による支出の減少で投資CFのマイナス幅は縮小。フリーCFのプラス幅は拡大した。
新たな長期借入による収入が無くなり、財務CFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
積極的投資の継続により売上、利益共に横這い。
売上高は前期比2.2%増の175億円の予想。好調な車載分野が引き続き牽引する。前期の円高によるマイナス、車載分野の商流変更(タイに販社を設立したため代理店が保有していた在庫が同社の在庫に計上)を除くと実質的には同7%の増収。
営業利益はほぼ変わらずの13億円の予想。人件費、償却費増を、車載分野に加え、FA分野の回復、合理化効果でカバーする。円高のマイナス効果を除くと実質的には同14%の増益。
当期純利益は同15.7%減の11億50百万円の予想。前期にあった退職年金引当金の戻しおよび補助金収入の特別利益を除くと実質的には同8%の増益となる。
期中平均為替レートは、1ドル=110円の設定。(前期は120円)
一株当たり配当金は26円の予定。前期は東証1部上場の記念配5円を含む30円だったため、実質的には1円の増配となる。予想配当性向は27.3%。

業績は横這いだが、過去最高業績を達成するため、前期からの3年間「Season 1」は「仕込みの3年間」と位置付けている。
このため、以下の様に、前期以来行っている仕込みのための積極投資を継続していく。
 
 
設備投資は、増産、合理化中心に14年度比1.5倍の7億50百万円。
新商品創出の金型投資、自動化・合理化投資増により減価償却費は同1.3倍の4億50百万円。
研究開発費は、車載次世代商品や、POF(Plastic Optical Fiber)商品化のために、同11%増の8億50百万円。
人件費は、人員増、ベースアップ、教育投資により同13%増の51.2億円。
 
(2)各分野の見通し
各分野の見通しは以下の通り。車載、情報システムは好調が続く一方、通信、FAの急回復は期待しづらい状況だ。
 
 
 
中期計画「DD15」の成果
 
2014年3月期から2016年3月期の3年間の中期計画である「DD15」が終了した。

その骨子は、『前の中期計画「Plan80」で確立した黒字体質を基盤に「攻め」に転じ、成長性、収益性、効率性のワンランクアップを目指す。』というもの。

事業においては、多品種少量生産の磨き上げ、車載事業の基幹事業化を進めた。
財務面では、本社の売却、政策保有株式の解消、年金改革を進め筋肉質化を図った。
その他、コーポレートガバナンスにおいては社外役員を選任し、指名/報酬委員会を設置した。
またグループ企業理念の制定やGC(Good Company)運動の展開にも取組んだ。

この結果、成長性においては売上高は「Plan80」3年間累計416億円に対して486億円と17%増加させることができた。車載売上も同じく30億円を135億円と4.5倍に拡大させることができた。
収益性においては、営業利益率を4.7%から7.5%へ、ROEは10.7%から14.6%へ、ROAも7.0%から11.4%へと大きく引き上げることができた。
効率性においてはCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を79日から70日へ9日短縮する事が出来た。

加えて、かねてから目標としていた東証1部への上場も果たし、ワンラックアップを実現することができたと会社側は自己評価している。
 
 
中期計画「GC20」の進捗
 
全てのステークホルダーから信頼と期待をされる「よい会社」であるとともに、過去最高の売上、利益を更新し持続的成長企業へのスケールアップを目指すのが2021年3月期を最終年度とする新中期経営計画「GC20」。
 
◎事業戦略
事業戦略としては、特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事を目指す「Segments No.1戦略」を更に発展させ、各事業分野におけるNo.1商品を核に水平展開と次世代化で「Segments No.1 領域」を創り出し、特長のある価値を提供する事で持続的成長を目指していく。
 
*車載用コネクタSegments No.1戦略
「計画」
自動車の安全系機能の進化に伴い、車載カメラ向けに加え、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)向けコネクタの開発を進め、将来価値を倍化させる。
 
「進捗」
車載カメラ向けのシェアアップ(搭載車種の増加、新規ユーザーの獲得)、ADAS向け新商品である「防水中継用コネクタ TATシリーズ」の発売開始に加え、新型デジタル製品、車載カメラ用コネクタ「デジタル3兄弟」の開発を完了させた。
 
◎車載カメラ用コネクタ「デジタル3兄弟」を開発
自動運転に向けて進化するデジタル車載カメラに最適な車載カメラ用コネクタ「デジタル3兄弟」の開発を完了し、ベースモデルの提供を開始すると発表した。

<開発の背景>
カーエレクトロニクス市場では、アナログ車載カメラによるパーキングアシストから、安全な運転をアシストするADAS、そして事故を未然に防ぐ自動運転への進化に伴い情報量が飛躍的に拡大する中で、高速デジタル・センシング・モジュールの飛躍的な搭載量拡大が見込まれている。

<デジタル3兄弟とは?>
デジタル3兄弟の特長は、業界最高水準の防水性と耐ノイズ性を兼ね備え、デジタル高速伝送を可能としていること。
 
 
コネクタの接続形式によりLVDSタイプ2品目と同軸タイプ1品目の合計3品目がある。
アナログ車載カメラで実績があるLVDSタイプと、欧州系カーメーカからのニーズが高い同軸タイプのそれぞれの長所・短所を踏まえて全方位への提案活動を展開する。
2016年6月より、ベースモデルを顧客に提供しつつ、改良を加え、2020年に車載コネクタ売上100億円を目指していく。
 
*業務用コネクタ Segments No.1戦略
「計画」
長年培ってきた堅牢性や長期信頼性というハードの強みに、少量短納期、カスタマイズに加え、コネクタに付随する適切なハーネスもあらかじめ接続するワンストップ受注といった「サービス」を融合させ、顧客満足度を引き上げる。
 
「進捗」
物流ハブが本格的に稼働を開始したのに伴い、1weekデリバリーの取扱品目が従来の500から1,000に拡大。また、コネクタのハーネス1〜20本という少量を注文から10稼動日以内に発送する「2weekハーネス」を開始するなど、同社が得意とする多品種少量生産体制のブラッシュアップが進んでいる。
またこれまで開発は東京で行っていたが、設計の一部を安曇野工場で行う等、カスタマイズのスピードアップを図り、これまでの通信、FAに加えセキュリティ、医療、鉄道、海外などヨコ展開を進めていく。
加えて、次世代商品である8K向け高速POF(Plastic Optical Fiber)の商品化は着実に進行しており、展示会でも好評を得ているという。
 
*情報システム Segments No.1戦略
「計画」
仮想化技術、クラウドソリューション、ビッグデータ基盤ソリューションのインテグレーションで事業価値を倍化させる。
 
「進捗」
同社が得意とする仮想化技術はクラウドサービスのベースとなるものであり、機器制御技術はハードとハードを繋ぐまさにIoTそのもの。スマートファクトリーの実現を目指し、「IoT開発センター」を開設した。
 
◎組織力強化
経営陣、従業員共にレベルアップを図りよい会社を目指していく。

コーポレートガバナンスにおいては、新設した指名/報酬委員会において社外取締役2名体制に向けてもう1名の人選を進めているほか、役員報酬の中長期インセンティブ導入も検討している。
この他、中長期戦略の議論や次世代経営陣の育成も重要な課題である。

また全社挙げてのマンパワー強化を目指し、社員総活躍プロジェクト、業務フローの見直しを中心としたGC運動、生産性向上のためのJ/E活動(Job Evolution)などを継続的に展開している。
 
◎CFイメージ
GC20の6年間に獲得する営業CFは、利益93億円、減価償却30億円の見込みであり、50億円強を、金型、工場、自動化、増産、新規事業開発等の投資に振り向ける。
また2021年3月期までに配当性向を30%に引き上げることで20億円超を株主に還元する。
 
 
佐谷社長に聞く
 
佐谷社長に、「DD15」の振り返り、「GC20」の進捗などについて伺った。
 
「DD15は80点。体質強化は着実に進み、車載分野も大きく成長した。」
DD15、3つのDouble Digit(2ケタ)のうち、「基幹分野で2ケタ利益率」は1week デリバリーで取扱い品目を500から1,000に拡大させることができたなど成果も上がったが、通信分野での売上減少が想定以上のスピードだったため残念ながら2ケタには達しなかった。ただし、体質は着実に強化できたと考えている。
一方、新・旬分野の2ケタ成長は、車載分野、情報システムを大きく伸ばすことができた。特に車載売上は、「Plan80」3年間の売上合計の4.5倍となった。
他の新・旬分野では、セキュリティは監視カメラ向けコネクタが中国の大手メーカーに採用され成果が出始めている。一方、医療、環境はもう少し時間がかかりそうだが、地道に進めていく。
また、経営効率 2ケタのROAは、2016年3月期11.4%で達成することができたし、次の目標であるROEも引き上げることができた。
自己資本比率、配当とも上場来最高を記録することができたこと等も含め、十分及第点を与えることができると思う。
 
「過去最高業績に向けて組織力を強化」
本当の意味での良い会社になるには組織力を質・量ともに強化しなければならない。そのために様々な取り組みを進めている。
1つが「社員総活躍プロジェクト」。これはもともと女性活躍推進法の成立を受けて、女性社員がより活躍できる環境作りを目指し、女性社員のグループで議論を始めたのだが、彼女たちから「女性だけでなく男性社員も含めて働きやすい会社を作るにはどうすればいいか、を考えた方が良いのでは」という意見が出てきたので「社員総活躍」とした。
適切なワーク・ライフ・バランス、介護や育児での離職・退職を無くすような勤務体系・制度などを話し合っている。近々提言書がまとまり、今期中には制度作りまで進む予定だ。
生産性向上のためのJ/E活動というものもある。これは、Job Evolutionの略。10人程度のサークルで、生産性向上のために何をすべきかを話し合い、そのための取り組みを提言するもの。優れた提言には「優秀賞」として表彰を行っている。3年程前から始めたものだが、草の根運動としてしっかりと根付いている。
 
「コーポレートガバナンスにも注力。よりオープンな会社になってきた。」
私は「よい会社」になるためのコーポレートガバナンスの重要性を強く意識している。コーポレートガバナンス・コード適用が始まった昨年は、まず「コーポレートガバナンス基本方針」を制定し、コーポレートガバナンス報告書も株主総会の直後7月に東証に提出した。
社外取締役との意見交換会も定期的に開催しており、その議論の中で、指名委員会・報酬委員会を設置する事が望ましいという結論に至った。来年の株主総会では社外取締役をもう1名選任すべく現在議論を進めている。
この他、取締役会の実効性評価、役員報酬へのインセンティブ要素組入れにも取組んだ。
また、政策保有株式の見直しも行った。いくつか基準を設けた後、2015年3月末の簿価で約2,000万円の株式を売却した。今後も年1回、見直しを行い適切な状況を維持していく。
 
 
今後の注目点
及第点となった「DD15」を終え、いよいよ過去最高業績に挑戦する「GC20」が本格的に進行する。
本文中にもあるが、佐谷社長は今期を徹底した仕込みの時期と位置付けており、売上高250億円達成に向けて積極的な投資を実施する。そのため円高の進行もあり、今後業績は前期比横ばいとなるが、中期的な視点で投資の成果を見守りたい。同時に、足元ではADAS向け新商品「防水中継用コネクタ TATシリーズ」の販売動向にも注目したい。
 
 
 
<参考1:中期経営計画「GC20」(前回レポートより)>
 
全てのステークホルダーから信頼と期待をされる「よい会社」であるとともに、過去最高の売上、利益を更新し持続的成長企業へのスケールアップを目指すのが2021年3月期を最終年度とする新中期経営計画「GC20」。
 
(1)基本コンセプト
GC20の基本コンセプトは、『事業戦略として「Segments No.1戦略の深耕」、プラットフォーム戦略として「コンパクト経営の追求」により価値を創造し続けるGood Companyを目指す。』というもの。
また、Good Companyを持続的なものにするのが、グループ企業理念とコーポレートガバナンス基本方針である。
 
(2)グループ企業理念
今回のGC20策定に際し、同社ではグループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。
 
 
(3)コーポレートガバナンス基本方針
金融庁と東京証券取引所により策定された「コーポレートガバナンス・コード」が2015年6月1日から適用されるのに先立ち、2015年5月22日、「コーポレートガバナンス基本方針」を公表した。
株主を始めとした全てのステークホルダーとの信頼関係構築のためのコーポレートガバナンスの重要性を深く認識したうえで、最良のコーポレートガバナンスを実現することが自社の責務であると宣言している。
 
(4)事業戦略
特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事を目指すのが「Segments No.1戦略」。
これまでも同社では、様々なNo.1商品を生み出してきたが、現在の形ではそれぞれの商品の持続性・継続性は不十分と考えている。
 
そこで、それぞれのNo.1商品を核に水平展開と次世代化で「Segments No.1 領域」を創り出し、特長のある価値を提供する事で持続的成長を目指していく。








その展開モデルは、現在のSegments No.1商品/サービスを核に、次世代商品やサービスを創出し、顧客の具体的な欲求である「ウォンツ」を解決するというもの。
同社の強みである、スピード、カスタム対応、少量短納期、周辺技術を差異化要因とし、新たな顧客、新たな市場への展開を図る。
 
分野別のSegments No.1 戦略は以下の通りである。
 
①業務用コネクタ Segments No.1 戦略:サービスとの融合戦略で顧客価値を倍化
長年培ってきた堅牢性や長期信頼性というハードの強みに、少量短納期、カスタマイズに加え、コネクタに付随する適切なハーネスもあらかじめ接続するワンストップ受注といった「サービス」を融合させ、顧客満足度を引上げる。
世界的にIoT、4Kや8Kの高画質化ニーズが高まる中、通信分野(海外における光通信化)、FA分野(グローバルな生産性向上ニーズ)、業務分野(セキュリティニーズ)において、堅牢性や長期信頼性といったノウハウの展開や高速POFによる市場創出により、通信分野やFA分野で規模と収益性を堅持する。
 
 
②車載用コネクタ Segments No.1 戦略:ADASコネクタへ進化させ、将来価値を倍化
自動車の安全系機能の進化スピードは目を見張るものがある。
自動車の目となる車載カメラも、パーキングアシストなど「撮る」機能から、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)というコンセプトの下、車線検知、歩行者認識、衝突防止といった「測る」機能がより重要になると同時に、各自動車メーカーに限らずGoogleなど大手IT企業も含め、自動運転システムの開発が加速している。

ADASを構成するものは、車載カメラに加え、センサ、ミリ波レーダー(ミリ波帯の電波を用いて100m程度の範囲の状況を探知可能なレーダーシステム)、レーザー、ECU(エンジンコントロールユニット:エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際に、それらを総合的に制御するマイクロコントローラ)、電子ミラー、カーナビ、HUD(Head Up Display:フロントガラスに運転者向けの基本的な情報の画像を提供する)など、多岐にわたり、その全てがデジタル高速伝送により情報のやり取りが行われ、コネクタの活躍するシーンはますます拡大する。

こうした流れの中、車載カメラ数量は2014年度から2020年度で約3.5倍の14,000万個に、ADAS市場も同期間に2.5倍の7,700億円に急成長すると見られており、同社では高速伝送、小型化などコネクタメーカーならではのノウハウを注入したADAS用コネクタを開発し、急成長市場に投入する。

販売は、北米のTier1(自動車部品メーカーのうち、自動車メーカーに直接納入する一次サプライヤー)メーカーへの参入を狙う。また、製造においては中国、東アジアに次ぐ拠点づくりの検討を開始している。
 
 
③情報システム Segments No.1 戦略:インテグレーションで事業価値を倍化
サーバー効率化のための仮想化において業界屈指の技術を有しており、現在はクラウドコンピューティングの広がりの中、世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れ高付加価値の一括案件の獲得を進めている。今後は、データの収集から分析までを一括して請け負うビッグデータ基盤ソリューションを提供し、特徴あるSegments No.1の獲得を目指す。
成長市場において、企画から運用までフルサポートする総合提案で収益性の向上にも取り組む。
 
 
(4)プラットフォーム戦略:コンパクト経営の追求
以上の様な事業戦略の下で営業利益率の向上を目指す同社だが、繰越欠損が無くなること等から今後の実効法人税率の上昇は避けられず、市場の期待に応える水準のROE、ROAを実現するためには「資産の軽量化/高回転化」、具体的には総資産回転率の引き上げが重要な課題となる。
前期の同回転率は1.39回だったが、以下のような取り組みによって1.4〜1.5の達成を目指す。
 
ROICを意識した事業投資。設備は小型、省スペースおよび転用が可能なものとする。またEMSの活用など、社外リソースとの共創を進める。
ロスや無駄をなくしての生産性向上。製造や業務品質の向上。遊休資産や過剰在庫の極小化に取り組む。
CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮
機動的な資本政策
 
(5)目標とする経営指標
2016年3月期から2018年3月期までの「貯めのSeason1」と、2019年3月期から2021年3月期までの「収穫のSeason2」の2つの期間から構成される「GC20」において、以下のような経営指標の達成を目指している。
 
 
(6)よい会社に向けて
全てのステークホルダーからの信頼と期待の下、組織力と人材力の強化に最注力し、持続的成長を遂げる「よい会社」を目指す。
またその過程で、東証1部上場の準備も進めていく。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社はコーポレートガバナンス・コード適用以降のコーポレートガバナンス報告書を2015年7月に提出後、数度の改定を行い、直近は2016年3月25日に更新を行っている。
 
 
 
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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